【四間飛車 vs 急戦】山田定跡のまとめ ~基本的な攻め方の手順と重要な4つのパターン~

山田定跡のまとめ(山田定跡の仕掛け)

四間飛車は人気の戦法で、将棋倶楽部24や将棋ウォーズでもよく現れます。

じゅげむ自身も四間飛車は得意戦法で、定跡書を10冊以上も読んでいます。

四間飛車に対する攻め方を知りたいと思ったら、急戦定跡を覚えるのがオススメです。
急戦定跡には攻め方のエッセンスが詰まっているので、棋力アップにも役立ちます。

本記事のテーマである山田定跡は、対四間飛車で代表的な急戦定跡の一つです。
シンプルな仕掛けで狙いが分かりやすく、覚えやすい定跡だと思います。

<このページの目次>
山田定跡とは?
山田定跡の重要な4つのパターン
これだけは覚えておきたい山田定跡の基本手順(flash盤)
山田定跡のまとめ


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

山田定跡とは?

山田定跡とは、四間飛車(ノーマル四間飛車)の急戦定跡として最も基本的な定跡体系の一つです。

昭和の時代の棋士である山田道美九段が研究したことで知られています。山田道美九段は棋聖2期獲得、順位戦A級の当時のトップ棋士の一人です。打倒大山康晴に闘志を燃やし、対四間飛車の急戦定跡である山田定跡の指し方を創案した棋士として有名です。

山田定跡には大きなポイントが3つあります。

① 四間飛車の△3二銀型に対する攻め方
② 居飛車は▲5七銀左と上がった船囲い
③ いきなり▲3五歩で角頭を攻める

これらの3点を押さえておくと、山田定跡の駒組みや攻め方を覚えやすくなります。

四間飛車の△3二銀型に対する攻め方

山田定跡のまとめ(四間飛車の△3二銀型)

山田定跡は四間飛車の△3二銀型(上図)に対する攻め方です。△4三銀型の四間飛車に対しては山田定跡は使えないので注意してください。

ちなみに、△4三銀型の四間飛車に対しては、棒銀、斜め棒銀(下図)、▲4五歩早仕掛けなどの急戦定跡が代表的です。

山田定跡のまとめ(四間飛車の△4三銀型に対する斜め棒銀)

居飛車は▲5七銀左と上がった船囲い

山田定跡のまとめ(▲5七銀左と上がった船囲い)

山田定跡は居飛車が船囲いで急戦を仕掛ける戦法です。船囲いはいくつかのバリエーションがありますが、上図のように▲5七銀左と上がった船囲いが急戦での基本形です。

上図の居飛車の駒組みからの急戦を総称して「5七銀左戦法」と呼ぶことがあります。5七銀左戦法には、山田定跡、鷺宮定跡、棒銀、斜め棒銀、▲4五歩早仕掛けなどが含まれます。

山田定跡は左銀が攻めの主役となる戦法なので、玉を堅くできないです。四間飛車の美濃囲いに比べると玉が薄いので、右辺の攻めではっきりと優勢を築く必要があります。

いきなり▲3五歩で角頭を攻める

山田定跡のまとめ(山田定跡の仕掛け)

いきなり▲3五歩で角頭を攻めるのが山田定跡の攻め方です。△3五同歩と取られて歩のタダ損に見えますが、▲4六銀と進出して攻めが成立します。

3筋の歩を早めに突き捨てても大丈夫なのは、四間飛車が△3二銀型で角頭の守りが一手遅れているからです。(△4三銀型に対しては、いきなりの▲3五歩は無理)

さらに、あらかじめ▲5七銀左と上がっているので、すぐに▲4六銀で攻め駒の銀を進出させることができるという理由もあります。

すなわち、山田定跡で「③いきなりの▲3五歩」が成立するためには、「①四間飛車が△3二銀型」「②居飛車が▲5七銀左と上がった船囲い」の条件が必要なので、3つのポイントを覚えておくと実戦で役立ちます。

山田定跡の重要な4つのパターン

四間飛車の3通りのパターン

山田定跡のまとめ(5七銀戦法の基本図)

上図は5七銀左戦法の基本図です。ここから後手の四間飛車の指し手は、①△5四歩、②△6四歩、③△1二香、④△4三銀などに分かれます。

山田定跡のまとめ(四間飛車の△5四歩型)山田定跡のまとめ(四間飛車の△6四歩型)

山田定跡のまとめ(四間飛車の△1二香型)山田定跡のまとめ(四間飛車の△4三銀型)

①△5四歩、②△6四歩、③△1二香の3つはいずれも有力ですが、山田定跡の攻め方が成立します。別の言い方とすると、山田定跡に対する四間飛車の布陣には、①△5四歩型、②△6四歩型、③△1二香型の3通りのパターンがあります。

詳しい定跡手順については、以下の記事を参考にしてください。

山田定跡(△5四歩型)の定跡手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果
山田定跡(△6四歩型)の定跡手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(その1)
山田定跡(△6四歩型)の定跡手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(その2)
山田定跡(△1二香型)の定跡手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(その1)
山田定跡(△1二香型)の定跡手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(その2)

(ちなみに、④△4三銀の場合は山田定跡の攻め方は成立しません。山田定跡はあくまでも△3二銀型に対する攻め方です。)

居飛車が▲6八金直を入れるパターン

一方、居飛車の布陣としては▲6八金直を入れるパターンがあります。この場合は、四間飛車がもう一手指せるので、

(A)「△5四歩と△6四歩」
(B)「△5四歩と△1二香」
(C)「△6四歩と△1二香」
(D)「▲6八金直と△1四歩を交換」

などの布陣があります。

山田定跡のまとめ(四間飛車が△5四歩と△6四歩) 山田定跡のまとめ(四間飛車が△5四歩と△1二香)山田定跡のまとめ(四間飛車が△6四歩と△1二香) 山田定跡のまとめ(▲6八金直と△1四歩を交換)

このうち、(A)「△5四歩と△6四歩」の組み合わせなら、山田定跡ではなく鷺宮定跡の攻め方が有力と考えられています。また、(B)「△5四歩と△1二香」の組み合わせは、①△5四歩型の定跡手順と類似しています。同じように、(C)「△6四歩と△1二香」の組み合わせは、②△6四歩型の定跡手順と類似しています。

結局、山田定跡の▲6八金直型の変化としては、(D)「▲6八金直と△1四歩を交換」のパターンが重要になります。このパターンでは、端歩の△1四歩を生かした四間飛車の上手い一手があるので、覚えておく必要があります。

詳しい定跡手順については、以下の記事を参考にしてください。

山田定跡(▲6八金直と△1四歩を交換)の定跡手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果

山田定跡のパターンのまとめ

この他に、1筋の端歩の関係、先後の関係などでバリエーションがあります。ただし、先後については、四間飛車が先手番だと▲6七銀型(△4三銀型)になることが多く、山田定跡とは別の戦法が採用されやすいです。

まとめると、

・四間飛車は△5四歩型、△6四歩型、△1二香型の3通りのパターン
・居飛車は▲6八金直を入れるかどうかで2通りのパターン
・1筋の端歩の関係、先後の関係

これらの組み合わせがメインとなります。どのような組み合わせでも、よく似ている局面に見えますが、ちょっとした形の違いで優劣が逆転することも少なくありません。

そして、これらの組み合わせのうち上述の①△5四歩型、②△6四歩型、③△1二香型、(D)「▲6八金直と△1四歩を交換」の4パターンが最も重要な変化になります。

<山田定跡の重要な4つのパターン>
①△5四歩型(参考記事
②△6四歩型(参考記事1参考記事2
③△1二香型(参考記事1参考記事2
(D)「▲6八金直と△1四歩を交換」(参考記事

4パターンそれぞれの詳しい定跡手順については、「参考記事」と書かれたリンク先で解説・研究をしています。

しかし、いきなり細かなパターンの違いを理解しようとしても、なかなか頭に入ってこないと思います。

そこで、まずは山田定跡の最も基本的な手順を覚えて、その後で細かな形の違いや変化手順について理解する、という順番がオススメです。最初に覚えておきたい山田定跡の基本手順は、次の項目で解説したいと思います。

これだけは覚えておきたい山田定跡の基本手順

初手からの駒組みの手順(flash盤)

まずは、初手からの駒組みの手順です。後手は基本的な四間飛車の組み方です。先手は船囲いを作って、急戦を狙った駒組みをします。

▲5七銀左と上がった局面が「5七銀左戦法」の基本図で、ここから山田定跡、鷺宮定跡、棒銀、斜め棒銀、▲4五歩早仕掛けなどのさまざまな急戦定跡に枝分かれします。

flash盤を見られない方のために初手からの手順を書くと、▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲6八玉△9四歩▲9六歩△7二銀▲7八玉△3二銀▲5八金右△6二玉▲5六歩△7一玉▲6八銀△5二金左▲2五歩△3三角▲3六歩△8二玉▲5七銀左(下図)で、「5七銀左戦法」の基本図となります。

山田定跡のまとめ(5七銀戦法の基本図)

山田定跡の最も基本的な手順(flash盤)

山田定跡の最も基本的な攻め方の手順です。flash盤は△5四歩型の例ですが、△6四歩型や△1二香型などでも同様の手順があります。

flash盤を見られない方のために「5七銀左戦法の基本図(上図)」からの定跡手順を書くと、△5四歩▲3五歩△同歩▲4六銀△3六歩▲3五銀△4五歩▲3三角成△同銀▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛△3三角▲2一飛成△2二飛▲同龍△同角(下図:山田定跡の結果図)となります。

山田定跡のまとめ(山田定跡の基本手順からの結果図)

「山田定跡の結果図(上図)」の△2二同角まで進んだ局面で、細かな形の違いによって優劣が分かれます。

居飛車が優勢になるパターン

山田定跡のまとめ(△1二香型の結果図)山田定跡のまとめ(△1二香型の結果図2)

△1二香型(結果図1)・・・以下、▲6六桂△2八飛▲2一飛△2九飛成に▲7四桂(結果図2)が好手で居飛車優勢となります。

結果図2以下、△同歩▲2二飛成△同龍▲5五角の王手龍取りがあります。△5四歩か△6四歩を突いていれば王手龍取りの筋を防げるのですが、△1二香型では王手龍取りをくらって四間飛車が不利になります。

山田定跡のまとめ(▲4六歩▲3六歩型の結果図)山田定跡のまとめ(▲4六歩▲3六歩型の結果図2)

▲4六歩▲3六歩型(結果図1:先後逆)・・・以下△4四桂(結果図2)が急所の一手で、居飛車が優勢となります。

△4四桂は△3六桂の王手を狙った控えの桂の手筋です。この手が厳しいので、▲3六歩を突いた形の美濃囲いだと、山田定跡の基本手順の進行で四間飛車が不利になります。

四間飛車が後手番の△6四歩△7四歩型でも、先後が逆なだけで理屈は同じです。▲6六桂の控えの桂が打てるので、結果図まで進むと居飛車優勢となります。

四間飛車が優勢になるパターン

山田定跡のまとめ(△5四歩型の結果図)山田定跡のまとめ(△5四歩型の結果図2)

△5四歩型(結果図1)・・・以下、▲6六角△同角▲同歩△2八飛(結果図2)で後手の四間飛車が優勢になります。

居飛車は瞬間的に桂得になっていますが、△2九飛成で駒損を回復されます。そうなると、玉の堅さの差が響いて、居飛車不利となります。

山田定跡のまとめ(△6四歩型の結果図)山田定跡のまとめ(△6四歩型の結果図2)

△6四歩型(結果図1)・・・以下、▲6六角△同角▲同歩△2八飛(結果図2)で後手の四間飛車が優勢になります。

△6四歩型では▲4四角のラインで7一の地点を狙う筋がなく、△5四歩型よりも美濃囲いが堅くなります。したがって、△5四歩型よりもさらに後手が良くなります。

山田定跡のまとめ

山田定跡は対四間飛車の急戦定跡として代表的な戦法の一つです。

「四間飛車の△3二銀型に対する攻め方」「居飛車は船囲いで▲5七銀左と上がる」「いきなり▲3五歩で角頭を攻める」の3点が山田定跡の特徴です。

山田定跡のバリエーションとして、①△5四歩型、②△6四歩型、③△1二香型、(D)「▲6八金直と△1四歩の交換」の4つのパターンが特に重要です。

最も基本的な定跡手順から覚えるのがオススメです。


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)