じゅげむの将棋ブログ https://shogijugem.com 将棋の戦法や定跡のまとめ、囲い、格言、自戦記、ゆるゆる研究シリーズなど。 Sat, 08 Jul 2017 05:06:25 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.5.3 111067373 王位戦第1局▲羽生善治王位 vs △菅井竜也七段の感想と将棋ソフト「技巧」による棋譜解析 https://shogijugem.com/ouisen-habu-sugai-5811 Sat, 08 Jul 2017 05:06:25 +0000 https://shogijugem.com/?p=5811 王位戦第1局▲羽生善治王位 vs △菅井竜也七段戦は、序盤・中盤・終盤のすべてで見所が多い大熱戦となりました。 序盤は早々に、羽生善治王位が公式戦で初めて指す驚きの一手が盤上に出現します。 挑戦者の菅井竜也七段も得意の戦...

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王位戦第1局(感想戦での両対局者)

王位戦第1局▲羽生善治王位 vs △菅井竜也七段戦は、序盤・中盤・終盤のすべてで見所が多い大熱戦となりました。

序盤は早々に、羽生善治王位が公式戦で初めて指す驚きの一手が盤上に出現します。

挑戦者の菅井竜也七段も得意の戦型となり、互いの力を存分に出せる状況で、濃密な中盤戦が繰り広げられます。

終盤まで互角の戦いが続く緊迫した展開で、地力が試される難解な局面が次々と現れます。

最終盤で一瞬の形勢の揺れ動きもあり、最後まで勝敗の分からない大熱戦でした。

 

王位戦公式サイト:https://live.shogi.or.jp/oui/
棋譜中継:https://live.shogi.or.jp/oui/kifu/58/oui201707050101.html
中継ブログ:https://kifulog.shogi.or.jp/oui/

※ 王位戦はAbemaTVでも動画中継があります。

 


将棋世界 2017年8月号

王位戦:▲羽生善治王位 vs △菅井竜也七段の序盤戦

羽生善治王位の驚きの3手目▲9六歩

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(3手目▲9六歩)

序盤でまず驚いたのが、羽生善治王位の3手目▲9六歩(図1)です。

相振り飛車の含みや、端歩の駆け引きといった高度な意味合いだと思うのですが、羽生王位が3手目▲9六歩を指したのは初めてです。

菅井竜也七段も驚いたと思うのですが、4分の少考で△9四歩と端歩を受けます。

意外なことに、次の▲2六歩に羽生王位は18分も考えています。

持ち時間が8時間の対局なので、1日目の午前中はゆっくり考えているのかもしれませんが、端歩を受ける普通の△9四歩に対して早くもこれだけ時間を使っているのは不思議です。

どうやら、あらかじめ作戦を決めていたというわけではなさそうな雰囲気です。

羽生王位の3手目▲9六歩の意図の謎

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(角交換型向かい飛車)

羽生王位が▲2六歩を突いて居飛車に決めたので、菅井七段は飛車を3→2筋に途中下車しながら向かい飛車にします。(図2)

菅井七段は指し慣れた戦型で、丸山忠久九段、渡辺明竜王を相手に採用して勝っています。

本局の序盤戦では、羽生王位が時間を多く使っており、常に菅井七段の持ち時間を上回っています。3手目▲9六歩で注文をつけたのに、注文をつけた側の羽生王位の方が考え込んでいるのは奇妙な感じです。3手目▲9六歩は菅井七段の研究を警戒したのでしょうか?

菅井七段といえば、昔はゴキゲン中飛車の第一人者の一人として有名で、今では居飛車を含めて何でも指しこなしますが、その序盤研究には定評があります。

ところが、菅井七段は研究熱心であると同時に、未知の局面を楽しむという面があります。対局当日に盤の前に座ってから作戦を考えるようなところもあるそうです。

羽生王位が研究を警戒して3手目▲9六歩と突いたのだとしたら、逆に菅井七段の指し慣れた戦型になってしまった上に、自分の方が時間を多く使ってしまったので完全に裏目です。

それとも、丸山忠久九段や渡辺明竜王を破った戦法にあえて誘導するために、3手目▲9六歩を初めて指してみたのでしょうか?

真相は分かりませんが、結果的には序盤で時間を使いすぎてしまったかもしれないです。

王位戦第1局の棋譜解析(序盤1)

将棋ソフト「技巧」の評価値は300点ぐらいで、羽生王位の指しやすさを示しています。もともと、振り飛車は評価値が低く出る上に、3→2筋と飛車を途中下車している手損の分もあると思います。

ところが、駒組みが進んでみると、徐々に評価値の差が小さくなっており、中盤戦に差し掛かる頃にはほぼ互角となっているのが面白いところです。

王位戦:▲羽生善治王位 vs △菅井竜也七段の中盤戦

両対局者の決断の角打ち

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(角打ちを決断)

図3は、羽生王位が両取りの▲6六角を打った局面です。8四の歩は取れますが、打った角がやや狭いという問題もあります。この手を境にして、中盤戦に突入します。

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(決断の自陣角)

持ち駒に歩を手に入れた先手は、3筋からの桂頭攻めを狙いますが、これを受けての菅井七段の△6二角の自陣角が決断の一手です。

実は一手前の△5五歩のところで46分の長考をしており、かなりの読みを入れていることが分かります。△6二角と打たずに、△4四歩→△4三金と桂頭を守る手もあるので比較が難しかったのでしょう。ちなみに、技巧は△4四歩の方を推奨しています。

王位戦第1局の棋譜解析(序盤から中盤)

この辺りは、技巧の評価値によると、ほぼ互角の形勢が続いています。両者ともに長考して慎重に指し手を進めており、上手くバランスを取っているようです。

実戦の進行と技巧の推奨手との一致率も高くなっています。

ここからは、どちらの角がよく働くかが一つのポイントになりそうです。

菅井七段の封じ手の大長考

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(封じ手の大長考)

図5が封じ手の局面です。菅井七段が封じ手に費やした時間は1時間32分で大長考です。

封じ手の△5六同歩は自然な一着ですが、実は技巧は△2四歩を推奨しています。菅井七段の大長考も△2四歩との比較が理由だったのでしょうか?

技巧はこの局面の後も何度も△2四歩を示しており、2筋の逆襲を推奨しています。一方で、実戦の手順では5筋に手をかけています。

形勢の方はというと、技巧の評価値はやや羽生王位よりで約300となっており、少し先手が指しやすくなったのかもしれないです。角は互いに手放しましたが、先手だけ持ち駒に歩を2枚持っています。玉の囲いもしっかりしているので、それほど不満はないかもしれません。

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(先手は穴熊に組み換え)

本局は互いに駒組みの繰り替えがあり、長い中盤戦となっています。羽生王位がややペースを握っているとはいえ、評価値で200~300ぐらいの微差です。いつの間にか、両対局者の持ち時間は残り半分の約4時間で、同じぐらいになっています。

王位戦第1局の棋譜解析(中盤1)

菅井七段も戦いながら玉を穴熊に組み換える

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(後手も穴熊に組み換え)

中盤の競り合いがずっと続いているのですが、菅井七段も玉を穴熊に組み換えます。(図7)

既に駒はぶつかっているのですが、戦いながら玉を囲う感覚が参考になります。互いに無理な動きをせずに、じりじりとした展開になっています。

ただし、△4六歩や△3六歩など後手から動く変化がいろいろあり、先手としては警戒する必要があります。

この辺りは、羽生王位が時間を多く使っていて、感想戦でもまとめづらくて苦労していたとのことです。一方、菅井七段はそれほど時間を使わずにテンポよく指しています。

王位戦第1局の棋譜解析(中盤2)

技巧の評価値では羽生王位が指しやすさをキープしているのですが、指し手に苦労しているのは羽生王位の方です。既に持ち時間を6時間以上使っており、菅井七段との差も1時間以上に広がっています。

将棋ソフトと人間の違いが現れていて興味深いです。

玉頭戦が始まり局面が一気に激しくなる

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(焦点の歩の手筋)

菅井七段の△7五歩あたりから玉頭戦が始まります。玉頭戦になると、先手の▲2八角や▲4七銀が遊ぶ可能性がありますし、素晴らしい判断だったようです。

▲6五歩の瞬間に△8五歩(図8)が手筋の焦点の歩で、▲8五同銀なら△7五銀、▲8五同金なら△6五銀があります。玉頭戦なので角を取ってもあまり嬉しくなく、金銀の厚みの方が重要な将棋になっています。

王位戦第1局の棋譜解析(中盤3)

技巧の評価値ではほぼ互角ですが、羽生王位は形勢をやや悲観していたようです。中盤戦の半ばぐらいから、ずっと後手の動きを警戒する必要があり、主導権を握れなかったのが原因かもしれません。▲2八角と▲4七銀の活用が遅れているのも気になります。

王位戦:▲羽生善治王位 vs △菅井竜也七段の終盤戦

難解な終盤戦だが、菅井七段の方が正確な形勢判断?

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(難解な終盤戦)

ほぼ互角で終盤戦に突入しましたが、羽生王位はやや悲観しており、一方で菅井七段は難しいと思っていたようです。

対局後の感想戦と、技巧の評価値から判断すると、菅井七段の方が正確な形勢判断をしていた可能性があります。

図9の▲7一銀は後手玉にプレッシャーをかける一手ですが、4五の金を取って▲8八金打と埋めた方が良かったかもしれないです。

その後も、8二の金を取って早めに▲8八金打と埋める手順が感想戦で示されており、先手が面白い変化も現れていたようです。

王位戦第1局の棋譜解析(終盤1)

技巧の評価値では、先手がやや指しやすい局面が多かったのですが、羽生王位が悲観していたというのは先ほど書いた通りです。

したがって、この辺りは互いに形勢に自信がなかったことになります。

それでも、どちらも大きな疑問手を指していないというのは流石の一言です。バランスの取れた局面が長く続く大熱戦となっています。

互いの疑問手があり、羽生王位は一瞬のチャンスを逃す

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(羽生王位の疑問手?)

形勢に差がつき始めたのは、図10のあたりからです。図10の▲6四歩から▲6五銀で飛車角両取りをかけた方針が良くなかったようで、▲5五銀から遊び駒のさばきを優先させた方が勝りました。これが終盤で勝敗を分けたポイントの一つです。

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(菅井七段が優勢に)

図11で△7八歩成とした局面では、菅井七段が優勢となっています。先手は角筋に駒が重複していて、攻めが遅くなっています。

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(実は悪手で一瞬だけ互角に)

終盤戦の最後のポイントとなったのが、図12の局面でした。

実は△7六歩は悪手で、図12で▲6八歩の手筋なら大変だったようです。感想戦でも指摘された一手で、先手玉の危険度を下げることができます。

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(敗着となった勝負手)

▲6八歩ではなく、代わりに指した▲7三角(図13)が結果的に敗着となってしまいました。後手玉に王手がかかるようにするための勝負手ですが、△5二飛で逃げられた飛車が受けに働き、菅井七段の勝勢が決定的なものとなります。

▲6八歩を発見できなかったのは、残り時間が10分になっていたのも大きいと思います。持ち時間がない状況で、一瞬だけ生まれたチャンスをものにするというのは難しいです。

王位戦第1局の棋譜解析(終盤2)

菅井七段が勝ち切り、タイトル戦初勝利

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(先手玉に即詰みがある)

図14は、5五の銀を6六に引いた局面で、角道を通しながら▲6六の銀を受けに働かせた攻防の一手です。しかし、ここでは先手玉に即詰みがあります。

王位戦第1局▲羽生善治王位△菅井竜也七段戦(投了図)

投了図以下、▲9九玉なら△8八金、▲8七玉なら△7七金打から△8八銀、▲9七玉なら△8八銀から△7七金打でいずれも先手玉は即詰みです。

菅井七段は初戦を勝ち切り、嬉しいタイトル戦初勝利となりました。

王位戦第1局の棋譜解析(終盤3)

王位戦第1局のまとめ

王位戦第1局の本局は、羽生善治王位の3手目▲9六歩という驚きの一手で始まりました。

しかし、菅井竜也七段は落ち着いており、得意としている戦型に持ち込みます。

中盤戦はじっくりとした将棋になり、戦いながら玉を囲い直す展開です。形勢はやや羽生王位が指しやすかったようですが、まとめにくい形で苦労したようです。

ほぼ互角で終盤戦に突入し、難解な局面が続きましたが、形勢を悲観していた羽生王位が疑問となる手順を選び、菅井七段が優勢となります。

最後の最後で羽生王位が一瞬のチャンスを逃し、菅井竜也七段がそのまま勝ち切りました。

これで王位戦七番勝負は菅井竜也七段の先勝です。

第2局の日程は、7月25、26日(火、水)です。次の対局も大熱戦を期待しています。

 

<王位戦七番勝負第1局 ▲羽生善治王位 vs △菅井竜也七段>(flash盤の棋譜)
※ iPhoneの場合は、Puffin Web Brouserなどflash対応のブラウザで見ることができます。

 


将棋世界 2017年8月号

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棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖の感想と将棋ソフト「技巧」による棋譜解析 https://shogijugem.com/kiseisen-habu-saito-3-5756 Sun, 02 Jul 2017 05:00:23 +0000 https://shogijugem.com/?p=5756 棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖戦は、序盤戦略の面白さと将棋の怖さが詰まった一局となりました。 序盤は羽生善治棋聖が意外な戦法を採用します。昔プロでも大流行して、アマでは今でも大人気の戦法です。 中盤で...

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棋聖戦第3局羽生斎藤(対局開始直前の様子)

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖戦は、序盤戦略の面白さと将棋の怖さが詰まった一局となりました。

序盤は羽生善治棋聖が意外な戦法を採用します。昔プロでも大流行して、アマでは今でも大人気の戦法です。

中盤で未知の局面に突入してから、勝負は一つの山場を迎えます。形勢不明の中盤戦で、お互いの読みの力が試されます。

終盤は、将棋というゲームの怖さがよく分かる展開になってしまいました。非常に鮮やかな手順が盤上に現れます。

本記事では、将棋ソフト「技巧」を用いて、棋聖戦第3局の棋譜解析をしながら、ポイントとなった局面を振り返っています。

<棋聖戦公式サイト>
棋譜中継:https://live.shogi.or.jp/kisei/kifu/88/kisei201707010101.html
中継ブログ:https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/
ニコニコ動画:https://live.nicovideo.jp/watch/lv296742187

 


将棋世界 2017年8月号

棋聖戦:▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖の序盤戦

羽生善治棋聖が四間飛車の藤井システムを採用

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段△羽生善治棋聖戦(羽生棋聖の四間飛車)

序盤早々に驚いたのが、羽生善治棋聖の戦法です。2手目△3四歩で横歩取りかと思われたのですが、なんと4手目△4四歩と角道を止めてからの6手目△4二飛(図1)で四間飛車となりました。

最近では、羽生善治棋聖の四間飛車はなかなか珍しいのですが、藤井システムが流行っていた時期は居飛車側も振り飛車側もかなり指していたと思います。

予想されにくく、かつ経験が豊富な戦法を選んだと言えます。あるいは、2連勝して余裕ができたために、振り飛車を選んだということでしょうか?

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段△羽生善治棋聖戦(藤井システムを牽制)

斎藤慎太郎七段は、19手目▲3六歩(図2)で急戦を見せて、居玉のままの藤井システムを牽制します。

この辺りの指し方は、藤井システムが流行していた時期にかなり細かく研究されていたと思います。四間飛車側の待ち方としても、△6四歩、△9五歩、△4三銀など組み合わせが色々とあり、どのような布陣にするかは難しいところです。

棋聖戦第3局の棋譜解析(序盤1)

将棋ソフトでは振り飛車の評価値が低めに出るという話があるのですが、本局の序盤でも技巧の評価値は200ぐらいとなっており、居飛車がやや指しやすい数値を示しています。

羽生善治棋聖が△8五桂の仕掛けを見送る

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段△羽生善治棋聖戦(序盤の大きな分岐点)

図3が序盤の大きな分岐点です。△8五桂の仕掛けも考えられる局面ですが、羽生棋聖は△7一玉で囲いを優先して、仕掛けを見送りました。

△7一玉で16分も時間を使っているので、有力だったのかもしれないです。

藤井システムは振り飛車側からの急戦が大きな特徴ですが、本局では藤井システムらしい展開ではなく普通の四間飛車になりました。

斎藤慎太郎七段の駒組みが慎重で、後手に仕掛けのチャンスを与えなかったのか、それとも羽生善治棋聖が本局の進行でも十分とみたのでしょうか?

棋聖戦第3局の棋譜解析(序盤2)

将棋ソフト「技巧」の読み筋でも、△8五桂と仕掛ける手は示されていないようです。

評価値はほぼ互角ですが、先手は居飛車穴熊、後手は美濃囲いなので、玉の堅さには大きな差があります。

棋聖戦:▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖の中盤戦

斎藤慎太郎七段が仕掛けて中盤戦に突入

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段△羽生善治棋聖戦(斎藤七段が仕掛ける)

41手目▲3五歩(図4)の仕掛けで中盤戦に突入します。

この仕掛けには前例があり、2006年12月の棋聖戦▲羽生善治三冠 vs △藤井猛九段戦と全く同じ手順です。

先手は3筋と2筋の歩を突き捨てて▲6五歩から角交換を狙います。△6五同桂が銀に当たるので駒損になりますが、▲2四飛まで進むと飛車先を突破することができます。

棋聖戦第3局の棋譜解析(中盤1)

仕掛けの手順は、将棋ソフト「技巧」の推奨手順とも完全に一致します。この辺りは、選択肢がなく一本道ということなのでしょう。

55手目▲6七金寄で前例から離れて未知の局面に

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段△羽生善治棋聖戦(ここまで羽生藤井戦と同一)

54手目△4八角(図5)の局面までは▲羽生△藤井猛戦と同じでしたが、55手目▲6七金寄で前例を離れて未知の局面に突入します。

羽生棋聖は昔自分が居飛車を持って指した将棋なので、その時に色々な変化手順を研究したのではないでしょうか。本局で羽生棋聖が逆の四間飛車側を持っているということは、少なくとも互角以上には戦えるとみているのでしょう。

羽生棋聖の過去のタイトル戦をいろいろと並べていると、途中まで前例と全く同じで、そのまま優勢になって、自然に勝ち切っている将棋がちょこちょこあります。いわば、経験や知識で勝っている将棋です。

斎藤七段は▲6七金寄のところで46分の長考をしています。このタイミングで長考をするということは、前例の▲羽生△藤井猛戦は当然把握しているということでしょう。前例と同じままでずるずると行くよりは、早い段階で変化した方が得策だと判断したのでしょうか?

ただし、ここで長考したために斎藤七段の残り時間は2時間を切ってしまい、羽生棋聖とは1時間近くの差があります。

ここまでの展開を結果だけで見てみると、羽生棋聖が経験のある形に誘導したために、持ち時間ではかなり有利になっています。

序盤の戦法選択からの駆け引きで、羽生棋聖が持ち時間のアドバンテージを得たと考えると、なかなか興味深い展開です。

棋聖戦第3局の棋譜解析(中盤2)

実は、将棋ソフト「技巧」の推奨手は、55手目▲6七金寄ではなく▲6八金でした。ただし、▲6八金は守りの金が玉から離れるので、人間的にはかなり指しにくい一手です。

また、55手目▲6七金寄からは、実戦の指し手と技巧の推奨手が食い違うケースがかなり多くなります。有力手が多くて変化が幅広い中盤の難所に入ったということです。

この辺りは本局の勝負所の一つだったのだと思います。羽生棋聖も時間をたっぷりと使ったために、持ち時間の残りもほとんど同じになっています。

形勢はどうかというと、技巧の評価値ではほぼ互角で推移し、両対局者ともミスなく難解な中盤戦を乗り切ったことが分かります。

棋聖戦:▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖の終盤戦

ほぼ互角の形勢で終盤戦に突入

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段△羽生善治棋聖戦(ほぼ互角で終盤戦に突入)

中盤までに形勢が傾くことがなく、ほぼ互角で終盤戦に突入したので、あとは終盤の読みの勝負ということになります。

羽生棋聖の66手目△5五桂(図6)は自然な攻めですが、技巧の推奨手の△2八龍よりも勝っているということで「好手」とソフトに認定されています。ソフトが自分で間違えを認めているみたいで、不思議な気分になります。

もう終盤戦なので、厳密に読めば勝ち負けの結論が出るはずです。

しかし、将棋ソフトの膨大な読みを持ってしても、終盤戦は難しいということが分かってきており、最近では終盤まで持ち時間を残す傾向になっているようです。

本局でも△5五桂の辺りで、両対局者とも1時間ぐらい持ち時間を残しています。

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段△羽生善治棋聖戦(斎藤七段の疑問手?)

羽生棋聖の70手目△6八銀、斎藤七段の71手目▲3四馬(図7)は、もしかすると疑問手かもしれません。技巧の評価値が200以上振れています。

しかし、ソフトも間違えることがありますし、評価値の変化もものすごい大きいわけではないので、本当に疑問手かどうかはよく分からないです。

ずっと互角に近い形勢で、バランスの取れた白熱した終盤戦となっています。

棋聖戦第3局の棋譜解析(終盤1)

羽生棋聖の失着をとがめ、斎藤七段が一気に勝勢へ

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段△羽生善治棋聖戦(羽生棋聖の敗着)

ここまでほぼ互角の熱戦が続いていましたが、羽生棋聖の78手目△6七桂(図8)が一手ばったりの敗着となってしまいました。将棋の怖さがよく分かる一手です。

次の79手目▲7三金のタダ捨てが鋭い一手で、後手玉は一気に寄ってしまいます。

棋聖戦第3局の棋譜解析(終盤2)

敗着の△6七桂からは完全に一本道です。技巧の読み筋と実戦の進行は完全に一致し、評価値はずっと1500ぐらいで斎藤七段の勝勢です。

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段△羽生善治棋聖戦(後手玉への寄せが決まる)

87手目▲5二金(図9)のところでは、もう後手玉に受けがなくなっています。

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段△羽生善治棋聖戦(王手龍取りがかかるが)

羽生棋聖は苦し紛れに王手龍取り(図10)をかけて、先手の攻め駒を抜きますが、駒を渡しすぎてしまったので大勢は決しています。

棋聖戦第3局の棋譜解析(終盤3)

斎藤七段が長手数の詰みを読み切ってタイトル戦初勝利

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段△羽生善治棋聖戦(後手玉に詰みがある)

98手目△4一角(図11)では、後手玉に即詰みがあります。

実は一手前の97手目▲6七桂の合駒が上手い一手で、この桂馬が詰みに働いて華麗な収束となります。

棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段△羽生善治棋聖戦(投了図)

投了図の▲7五同桂(図12)までで、先手の斎藤慎太郎七段の勝ちとなりました。

投了図から、△7四玉や△9四玉や△7二玉なら▲8三角以下、△9二玉や△8二玉なら▲8三金以下、△9三玉でも▲9四金以下、いずれも即詰みとなります。

これで、斎藤慎太郎七段にとっては嬉しいタイトル戦初勝利となりました。

棋聖戦第3局の棋譜解析(終盤4)

棋聖戦第3局のまとめ

棋聖戦第3局の本局は、羽生善治棋聖が四間飛車の藤井システムを採用するという驚きの序盤からスタートしました。

中盤の途中まで前例のある将棋でしたが、未知の局面に突入してからは、形勢不明の難解な中盤戦が繰り広げられます。

ほぼ互角で終盤に突入し、終盤勝負という展開でしたが、羽生善治棋聖に痛恨のミスが出てしまい、一手ばったりで斎藤慎太郎七段の勝勢となりました。

最後の斎藤慎太郎七段の決め方は、非常に鮮やかだったと思います。

これで、棋聖戦五番勝負は斎藤慎太郎七段の1勝、羽生善治棋聖の2勝となりました。

次の第4局は、斎藤慎太郎七段にとっては再びの角番で、羽生善治棋聖にとっては棋聖戦10連覇がかかった一局となります。

第4局の日程は7月11日(火)です。次も熱戦を期待したいと思います。

 

<棋聖戦五番勝負第3局 ▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖>(flash盤の棋譜)
※ iPhoneの場合は、Puffin Web Brouserなどflash対応のブラウザで見ることができます。

 


将棋世界 2017年8月号

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棋書の紹介(7月の新刊、6月の新刊、藤井聡太四段関連書籍のまとめ) https://shogijugem.com/books-201707-5746 Sat, 01 Jul 2017 02:28:23 +0000 https://shogijugem.com/?p=5746 藤井聡太四段の関連書籍・グッズ、2017年7月の新刊、2017年6月出版の棋書をまとめています。 将棋世界の新連載で、「聖の青春」の大崎善生が書く藤井聡太四段ドキュメントがスタートします。将棋ソフト関連では、激指将棋道場...

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藤井聡太四段の関連書籍・グッズ、2017年7月の新刊、2017年6月出版の棋書をまとめています。

将棋世界の新連載で、「聖の青春」の大崎善生が書く藤井聡太四段ドキュメントがスタートします。将棋ソフト関連では、激指将棋道場の5年ぶりの最新作が7月発売予定です。定跡書では飯島栄治七段の飯島流引き角戦法の本に注目です。

 

<このページの目次>
藤井聡太四段の関連書籍・グッズ
棋書の紹介(7月の新刊)
棋書の紹介(6月の新刊)

 

藤井聡太四段の関連書籍・グッズ

こちらは8月に発行予定の新刊で、Amazonで予約受付中です。


天才棋士降臨・藤井聡太 炎の七番勝負と連勝記録の衝撃(2017/8/28)

天才藤井聡太、その強さの秘密に迫る!

羽生善治三冠が14歳の中学生棋士に敗れる――。

平成29年4月23日、誰も予想できなかった結果に将棋界は騒然となりました。ニューヒーローの名は藤井聡太。藤井四段はその後プロ公式戦で連戦連勝、それまでのデビュー戦からの連勝記録10をはるかに上回り、勝ち続けました。

本書はスター誕生の舞台となった炎の七番勝負と驚異の連勝記録について、藤井四段の自戦解説をメインとし、羽生善治三冠をはじめとする対局相手棋士のコメント、七番勝負の企画者でありすべての対局に立ち会った鈴木大介九段の感想で振り返るものです。

また、師匠の杉本昌隆七段による藤井聡太論も収録しています。

藤井四段の棋士人生の輝かしい第一歩、その軌跡を本人と、関係した多くの棋士たちが綴った記念碑的一冊です。

 

藤井聡太前人未踏の連勝棋譜(1勝目)(加藤一二三九段編)
藤井聡太 前人未踏の連勝棋譜 1勝目 加藤一二三九段編(2017/6/29)

プロ棋士としてデビューしてから連勝記録を伸ばし続ける藤井聡太四段。
彼のデビュー戦にして連勝記録の1戦目となった加藤一二三九段の棋譜を収録。

 


藤井聡太四段 扇子 大志

 

棋書の紹介(7月の新刊)


将棋世界 2017年8月号

大崎善生が書く 天才棋士「藤井聡太四段」

●巻頭カラー
・第75期名人戦七番勝負[第6局] 佐藤天彦名人×稲葉陽八段
「持ちこたえた防衛戦」【自戦解説】佐藤天彦名人 【構成】大川慎太郎
・第58期王位戦挑戦者インタビュー・菅井竜也七段
「絶対に勝つ」という気持ちで 【構成】池田将之

●新連載!
・「聖の青春」の大崎善生が書く 藤井聡太四段ドキュメント
『神を追いつめた少年 ―藤井聡太の夢―』 第1章「将棋との邂逅」【記】大崎善生

 

激指定跡道場4
マイナビ 激指 定跡道場4(2017/7/21)

世界コンピュータ将棋選手権最多4回の優勝を誇る激指と、定跡伝道師・所司和晴七段の最新講座のコラボでユーザーの棋力アップを強力にサポートする激指 定跡道場。その最新作が5年ぶりに登場!

 


対振りの秘策 完全版 飯島流引き角戦法(飯島栄治、2017/7/27)

引き角戦法のバイブル2冊を1冊で!

本書は、飯島栄治七段が編み出した独自の対振り飛車作戦を解説した「飯島流引き角戦法」と「新・飯島流引き角戦法」の2冊を合わせて、文庫化したものです。

角道を開けないで指すという画期的な指し方は升田幸三賞を受賞しました。
しかし、発表当時は飯島七段だけが使う特殊戦法のような立ち位置でした。
現在、この引き角戦法が見直されつつあります。
まず、角を交換しない戦法なので、今はやりの角交換型の振り飛車をすべて封じることができます。
また、堅く囲うことができる点も現代風です。

今、その価値が改めて見直されている引き角戦法。
そのバイブルともいえる2冊が1冊で読める本書は、まさにファン必携の一冊です。

 


大山 VS 米長全局集(大山康晴・米長邦雄、2017/7/27)

全局集シリーズ第2弾は大山VS米長!

大正12年3月23日、大山康晴誕生。 遅れること20年、昭和18年6月10日、米長邦雄誕生。 世代の異なる両雄は昭和44年の初対決以降、四半世紀に及ぶ戦いを繰り広げました。その全103局を詳細な解説付きで収録。また、自戦記も6局収めました。 対戦成績は大山から見て58勝46敗(1不戦敗)。タイトル戦で激突すること6回。その他にも棋戦決勝、タイトル戦挑決、A級順位戦など、数々の大舞台で火花を散らしました。 両者の対局は長手数が多く、絶対に負けられないという気合いを感じられるものばかりです。 まさに死闘とも言える名局の数々。たっぷりとご堪能ください。

 


完全版 森下の対振り飛車熱戦譜(森下卓、プレミアムブックス版、2017/7/18)

森下流の振り飛車破りの名局100局収録!

本書は森下卓九段の対振り飛車の実戦集「森下の四間飛車破り」と「森下の対振り飛車熱戦譜」の2冊を合わせてオンデマンド書籍として復刊するものです。

森下九段の振り飛車破りは「将棋のお手本」。手厚い陣形から優位を拡大する指し回しはすべての将棋ファンの参考になるものです。

森下流の珠玉の将棋が合計100局収録された記念碑的一冊、ぜひ盤に並べてご堪能ください。

 

棋書の紹介(6月の新刊)


堅陣で圧勝! 対振り銀冠穴熊(増田康宏、2017/6/14)

若手精鋭による対振り飛車新戦法!

第47期新人王戦決勝三番勝負第2局。

石田直裕四段の四間飛車に対し、増田康宏四段は▲6六角から見たこともない駒組みで序盤から圧倒的な優位を築き、最後は鮮やかな詰み。初タイトル新人王を勝ち取りました。

増田四段の使った作戦は銀冠穴熊。しかもただの銀冠穴熊ではありません。
旧来の左美濃からの発展形としての銀冠穴熊ではなく、最初から銀冠穴熊を含みにします。▲6六角から角道を開けたまま駒組みするのがポイントで、相手の△6五桂の両取りを防ぎつつ堅く囲うことができるという仕組みです。

相手が無理な動きをしてくればそれをとがめればよし、持久戦になれば自玉は無類の堅陣となります。

実は、この「対振り銀冠穴熊」はコンピュータが指しはじめたもの。増田四段がたまたまアマチュア将棋ファンのブログを見て知り、プロでも通用する戦法に仕上げたといいます。

まだ誕生して間もないものの、駒組みがわかりやすく、狙いがシンプルな戦法なので、アマチュアでも十分指しこなせます。何しろ堅陣に囲えるので勝ちやすいのが大きな魅力でしょう。

本書で増田流銀冠穴熊をマスターして、ぜひ振り飛車対策の一つとして加えてください。

 


将棋・序盤完全ガイド 相振り飛車編(上野裕和、2017/6/14)

1冊で相振り飛車の序盤がわかる!

プロの序盤戦術を分かりやすく解説し、多くの方に序盤の魅力をお伝えする「将棋・序盤完全ガイド」シリーズ。

大好評いただいた「振り飛車編」、「相居飛車編」に続く、待望の第3弾は「相振り飛車編」です。

相振り飛車は、相居飛車や居飛車対振り飛車の戦いと比べ、指し手の自由度が高く、定跡が確立されていない分だけ基本の駒組みや全体像をつかむのが難しいジャンルでもあります。

そこで本書がその道しるべとなります。

第1部の「相振り飛車の基礎知識」では「相振り飛車って何ですか?」から始まり、将棋においてどのような形を相振り飛車というのか、どんな囲いや駒組みをするものなかを説明します。

第2部は「相振り飛車の歴史を振り返る」。その戦法の歴史をさかのぼって解説することでより深い理解を得られるのが本シリーズの真骨頂。上野裕和五段の深い研究と分かりやすい進化の解説を読むことができます。

第3部は「相振り飛車、4つの戦法の解説」。多岐にわたる相振り飛車の戦型を
(1)先手向かい飛車
(2)先手三間飛車
(3)先手四間飛車
(4)先手中飛車
の4つに分けてそれぞれの特徴や歴史、最新形まで解説しています。

相振り飛車における序盤戦術の基本から最新形までを、大まかに、楽しく理解していただける一冊です。

 


サクサク解ける 詰将棋練習帳 風の巻(詰将棋パラダイス編、2017/6/23)

詰パラが贈る3~7手詰の良問200題!

将棋上達の最短ルートは短手数の詰将棋を数多く解くことだと言われます。

詰将棋を解くことはどんな戦法を得意にしているかに関係なく、将棋を指す方全員の棋力アップに役立つもので、やって無駄になることがありません。

詰将棋を頭のなかで考え、玉を詰ますのを繰り返すことで将棋の基礎体力となる「読む」力が磨かれますし、詰みテクニックを学ぶこともできます。

本書は詰将棋専門誌「詰将棋パラダイス」編集による詰将棋問題集です。

形がキレイで解きやすく、棋力アップにつながる3~7手詰200問を収録しています。

サクサク解いて、ドンドン将棋の力を磨いてください。

 


将棋戦型別名局集6 横歩取り名局集(中原誠監修、2017/6/23)

古今の横歩取りの名局を100局

厳選本書は戦型別名局集の第6弾です。
序盤から大駒が飛び交い、いきなり終盤戦になることもある激しい戦型の横歩取り。その名局を100局厳選し、詳細な解説で堪能できる内容になっています。

「横歩3年の患い」という、横歩取り後手有利という定説に挑み、それを覆してみせた木村義雄十四世名人。空中戦法で華麗に戦った内藤國雄九段。一番好きな戦法は横歩取りの羽生善治三冠。横歩取りを武器に名人の座を射止めた佐藤天彦名人など、名棋士達の名局を余すことなく収録。

また、前人未到の七冠王誕生の一局や、歴史のターニングポイントになった8五飛戦法の1号局など、棋史に残る対局も鑑賞できます。

珠玉の100局を盤に並べることで、棋士が試行錯誤を積み重ねて進化させてきた横歩取りの歩みを追体験してください。

 


9マス将棋の本(青野照市、2017/6/29)

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【四間飛車 vs 急戦】鷺宮定跡の基本手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(14) https://shogijugem.com/shikembisha-saginomiya-joseki-17-5714 Tue, 20 Jun 2017 02:30:33 +0000 https://shogijugem.com/?p=5714 四間飛車の定跡を将棋ソフト「技巧」を使って研究しています。 対四間飛車の急戦定跡である鷺宮定跡の続きで、四間飛車の△1二香・△6四歩型に対して、▲6八金直△1四歩の交換が入った形を調べています。 この形では定跡手順と技巧...

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鷺宮定跡(対四間飛車急戦)

四間飛車の定跡を将棋ソフト「技巧」を使って研究しています。

対四間飛車の急戦定跡である鷺宮定跡の続きで、四間飛車の△1二香・△6四歩型に対して、▲6八金直△1四歩の交換が入った形を調べています。

この形では定跡手順と技巧の推奨手が異なる局面が多く、前回の記事では前半の変化をまとめましたが、本記事では後半の変化をまとめています。

 

激指定跡道場4
マイナビ 激指 定跡道場4

四間飛車:鷺宮定跡(△1二香・△6四歩型、▲6八金直△1四歩の交換あり)の基本手順

基本手順については、前回の記事で紹介した手順と全く同じです。

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲6八玉△9四歩▲9六歩△7二銀▲7八玉△3二銀▲5八金右△6二玉▲5六歩△7一玉▲6八銀△5二金左▲2五歩△3三角▲3六歩△8二玉▲5七銀左△1二香(図1)が、対四間飛車(△1二香型)の急戦の基本図です。

△1二香型の基本図

図1から▲3八飛△6四歩▲6八金直△1四歩(図2)が今回研究する形で、四間飛車の△1二香・△6四歩型に対して、▲6八金直△1四歩の交換が入っています。

▲6八金直△1四歩の交換を入れる理由は、従来の定跡では▲3五歩とすぐに仕掛けるのが無理と考えられているからです。しかし、以下の研究で明らかにしたように、すぐに▲3五歩と仕掛けても互角に戦える変化があります。

【四間飛車 vs 急戦】鷺宮定跡の基本手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(12)~定跡の結論を覆す可能性~

▲6八金直△1四歩の交換あり

図2から▲5五歩(図3)と5筋の位を取るのが、定跡書の推奨手です。5筋の位を取るのが狙いではなく、角交換を拒否することで戦いを有利に進めることが狙いです。

5筋の位を取る

図3から△4三銀▲3五歩△同歩▲4六銀△4五歩▲3五銀△3四歩▲同銀△同銀▲同飛△4六歩▲5七銀打△4七歩成▲同銀△5四歩(図4)が定跡手順の一例です。この辺りは、形勢不明の変化手順が多く、図4の結果図まで進んでも形勢不明です。

鷺宮定跡の結果図

上記の鷺宮定跡の基本手順は「四間飛車の急所2(藤井猛著)」を参考にしています。定跡手順の解説や変化手順が非常に詳しく書かれています。


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

将棋ソフト「技巧」による鷺宮定跡の解析

四間飛車(鷺宮定跡17)のソフト解析結果

定跡手順と将棋ソフト「技巧」の推奨手が異なることが多くなります。

基本図の5手目△1四歩以降で、定跡手順と将棋ソフト「技巧」の推奨手が異なるのは、

①6手目▲5五歩(技巧の推奨手は▲3五歩。以下括弧内が技巧の読み筋))
②8手目▲3五歩(▲5六銀)
③10手目▲4六銀(▲3七銀)
④11手目△4五歩(△3二飛)
⑤13手目△3四歩(△5四歩)
⑥14手目▲3四同銀(▲2四歩)
⑦21手目△5四歩(△4四飛)

の計7手です。

前回の記事では前半の①~④までの変化を研究したので、本記事では後半の⑤~⑦の変化と、定跡本手順である図4以下の変化を研究します。

⑤13手目△5四歩の変化(定跡では△3四歩)

鷺宮定跡の変化図1

①13手目△5四歩(変化図1)以下、▲3四歩△5五角▲同角△同歩▲1一角△3二飛▲5五角成△6三金(変化図2)が将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。

先手の居飛車は▲3四歩と押さえた上に急所に馬を作っているので良さそうに見えますが、技巧の評価値は37でほぼ互角です。

鷺宮定跡の変化図2

変化図2以下は、▲1一馬△2二角▲同馬△同飛▲3三歩成△同桂▲2四銀△同歩▲3三飛成△5五角▲4三龍△9九角(変化図3)となります。

派手な手順になりますが、バランスは取れています。変化図3の技巧の評価値は33で、依然として形勢はほぼ互角です。

鷺宮定跡の変化図3

⑥14手目▲2四歩(定跡では▲3四同銀)

鷺宮定跡の変化図4

⑥14手目▲2四歩(変化図4)以下、△同歩▲3四銀△同銀▲同飛△4六歩▲2二歩△4七歩成▲同銀△4六歩▲5六銀△4七銀(変化図5)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。

▲2四歩の突き捨ては▲2二歩が狙いですが、変化図5の評価値は0で、千日手になる可能性があります。

鷺宮定跡の変化図5

変化図5以下、▲2一歩成△5六銀成▲3三飛成△4七歩成▲4四歩△5八と▲同金△3二歩▲3五龍△5七金▲5九銀(変化図6)となると、千日手の可能性があります。

金駒を打って取っての繰り返しが続くと千日手です。どちらかが打開をすると、形勢としてはほぼ互角ですが、玉が薄い先手の方がやや勝ちづらいかもしれないです。

鷺宮定跡の変化図6

⑦21手目△4四飛(定跡では△5四歩)

鷺宮定跡の変化図7

⑦21手目△4四飛(変化図7)以下、▲3五飛△3四歩▲3六飛△5四歩▲4六銀左△5五歩▲2四歩△3五銀▲同飛△同歩▲2三歩成△1五角(変化図8)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順の一例です。

この辺りはかなり有力な変化手順が多くて難解ですが、変化図8のように進むと、技巧の評価値は221で先手やや優勢となります。

鷺宮定跡の変化図8

定跡の本手順である図4以下の変化

鷺宮定跡の結果図

鷺宮定跡の結果図である図4以下、▲3七桂△5五角▲同角△同歩▲3一角△5六歩▲6六銀△5七銀▲同銀△3三歩▲3六飛△5七歩成▲同金左△2七角▲4二角成△同金▲5六飛(変化図9)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順の一例です。

途中は有力な変化手順が多くて難解ですが、変化図9まで進むと、技巧の評価値は222で先手やや優勢となります。

鷺宮定跡の変化図9

まとめると、⑤13手目△5四歩は後手の四間飛車の変化として有力で、ほぼ互角となります。

⑥14手目▲2四歩は千日手の可能性があります。千日手を打開したとしても、先手の居飛車の玉がかなり薄いので、実戦的には勝ちづらいかもしれません。

⑦21手目△4四飛の変化は先手やや優勢になりますが、定跡の本手順の△5四歩を選んでも評価値は同じぐらいになります。比較は難しいと思います。

鷺宮定跡(△1二香・△6四歩型、▲6八金直△1四歩の交換あり)のまとめ

前回の記事の結果と合わせて、最終的な結論をまとめます。

四間飛車の△1二香・△6四歩型に対して、▲6八金直△1四歩の交換を入れてから鷺宮定跡の仕掛けを行う形を研究しました。

先手の居飛車としては、①6手目▲3五歩、②8手目▲5六銀の変化が有力で、形勢は互角に近いです。ただし、②8手目▲5六銀は5筋位取りの戦型となるので好みによります。

逆に、③10手目▲3七銀、⑥14手目▲2四歩はイマイチです。必ずしも不利になるわけではありませんが、他の変化を選択した方が良さそうです。

定跡手順通りに進んで図4になると先手がやや優勢ですが、そうならないように後手の四間飛車が変化してくる可能性があります。

④11手目△3二飛、⑤13手目△5四歩は有力で、ほぼ互角となります。

⑦21手目△4四飛は疑問手というわけではありませんが、先手やや優勢となってしまうので、こうなる前に④11手目△3二飛、⑤13手目△5四歩のどちらかを選ぶ方が勝ります。

この形の最終的な結論としては、ほぼ互角と言えるでしょう。

 

激指定跡道場4
マイナビ 激指 定跡道場4

 


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

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【四間飛車 vs 急戦】鷺宮定跡の基本手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(13) https://shogijugem.com/shikembisha-saginomiya-joseki-16-5659 Mon, 19 Jun 2017 00:56:35 +0000 https://shogijugem.com/?p=5659 四間飛車の定跡を将棋ソフト「技巧」を使って研究しています。 対四間飛車の急戦定跡である鷺宮定跡の続きで、今回は四間飛車の△1二香・△6四歩型に対して、▲6八金直△1四歩の交換が入った形を調べます。 定跡手順と技巧の推奨手...

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鷺宮定跡(対四間飛車急戦)

四間飛車の定跡を将棋ソフト「技巧」を使って研究しています。

対四間飛車の急戦定跡である鷺宮定跡の続きで、今回は四間飛車の△1二香・△6四歩型に対して、▲6八金直△1四歩の交換が入った形を調べます。

定跡手順と技巧の推奨手が異なる局面が多いので、本記事では前半の変化をまとめています。

 

激指定跡道場4
マイナビ 激指 定跡道場4

四間飛車:鷺宮定跡(△1二香・△6四歩型、▲6八金直△1四歩の交換あり)の基本手順

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲6八玉△9四歩▲9六歩△7二銀▲7八玉△3二銀▲5八金右△6二玉▲5六歩△7一玉▲6八銀△5二金左▲2五歩△3三角▲3六歩△8二玉▲5七銀左△1二香(図1)が、対四間飛車(△1二香型)の急戦の基本図です。

△1二香型の基本図

図1から▲3八飛△6四歩▲6八金直△1四歩(図2)が今回研究する形で、四間飛車の△1二香・△6四歩型に対して、▲6八金直△1四歩の交換が入っています。

▲6八金直△1四歩の交換を入れる理由は、従来の定跡では▲3五歩とすぐに仕掛けるのが無理と考えられているからです。しかし、以下の研究で明らかにしたように、すぐに▲3五歩と仕掛けても互角に戦える変化があります。

【四間飛車 vs 急戦】鷺宮定跡の基本手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(12)~定跡の結論を覆す可能性~

▲6八金直△1四歩の交換あり

図2から▲5五歩(図3)と5筋の位を取るのが、定跡書の推奨手です。5筋の位を取るのが狙いではなく、角交換を拒否することで戦いを有利に進めることが狙いです。

5筋の位を取る

図3から△4三銀▲3五歩△同歩▲4六銀△4五歩▲3五銀△3四歩▲同銀△同銀▲同飛△4六歩▲5七銀打△4七歩成▲同銀△5四歩(図4)が定跡手順の一例です。この辺りは、形勢不明の変化手順が多く、図4の結果図まで進んでも形勢不明です。

鷺宮定跡の結果図

上記の鷺宮定跡の基本手順は「四間飛車の急所2(藤井猛著)」を参考にしています。定跡手順の解説や変化手順が非常に詳しく書かれています。


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

将棋ソフト「技巧」による鷺宮定跡の解析

四間飛車(鷺宮定跡17)のソフト解析結果

定跡手順と将棋ソフト「技巧」の推奨手が異なることが非常に多いという印象です。

基本図の5手目△1四歩以降で、定跡手順と将棋ソフト「技巧」の推奨手が異なるのは、

①6手目▲5五歩(技巧の推奨手は▲3五歩。以下括弧内が技巧の読み筋))
②8手目▲3五歩(▲5六銀)
③10手目▲4六銀(▲3七銀)
④11手目△4五歩(△3二飛)
⑤13手目△3四歩(△5四歩)
⑥14手目▲3四同銀(▲2四歩)
⑦21手目△5四歩(△4四飛)

の計7手です。

変化手順が多いので、本記事では前半の①~④までの変化を研究します。

①6手目▲3五歩の変化(定跡では▲5五歩)

鷺宮定跡の変化図1

①6手目▲3五歩(変化図1)以下、△同歩▲7七角(変化図2)が面白い一手です。仕掛けてから▲7七角と一呼吸置くのが独特です。この手は、▲6八金直△1四歩の交換を入れない形でも有力です。(以下は参考記事)

【四間飛車 vs 急戦】鷺宮定跡の基本手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(12)~定跡の結論を覆す可能性~

鷺宮定跡の変化図2

変化図2では(A)△4三銀と(B)△4五歩が有力です。

(A)△4三銀は以下、▲4六銀△4五歩▲3五歩△7七角成▲同桂△3二飛▲4一角△2二飛▲3四銀△同銀▲同飛(変化図3)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。

評価値は94でほぼ互角なので、先手の居飛車としても十分に戦える変化です。

鷺宮定跡の変化図3

(B)△4五歩は以下、▲3五飛△7七角成▲同桂△3三銀▲3八飛△4三角(変化図4)が、技巧の推奨手順です。この手順は▲6八金直△1四歩の交換がない形でも、技巧が推奨しています。

変化図4の評価値は158で、ほぼ互角~先手がやや指しやすいぐらいの形勢です。

(A)△4三銀、(B)△4五歩のいずれも互角に近いですが、居飛車が悪くなるわけではないので、6手目▲3五歩とすぐに仕掛けるのは有力だと思います。

鷺宮定跡の変化図4

②8手目▲5六銀の変化(定跡では▲3五歩)

鷺宮定跡の変化図5

②8手目▲5六銀(変化図5)以下、△2二飛▲2八飛△6三金▲4六歩△3二飛▲5七銀△7四歩(変化図6)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。

▲5六銀は5筋の位を取る自然な手です。鷺宮定跡というよりは、5筋位取りという戦型になりますが、評価値は14で形勢は互角です。

上記の手順中、先手の飛車は▲3八飛→▲2八飛と戻り、後手の飛車は△2二飛→△3二飛と移動しています。後手が四間飛車から三間飛車に変わっていますが、互いに飛車を往復しているので手の損得はないです。

鷺宮定跡の変化図6

③10手目▲3七銀の変化(定跡では▲4六銀)

鷺宮定跡の変化図7

③10手目▲3七銀(変化図7)以下、△3二飛▲4六銀右△6三金▲3五銀△1五角▲3六飛△3四歩▲2六銀△5一角▲5六銀(変化図8)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。

▲3七銀→▲4六銀右→▲3五銀と銀を五段目に進出しますが、△1五角→△3四歩の手順で銀を追い返されてしまいます。こうなると、2六の銀がやや使いづらそうです。

評価値は-104でほぼ互角ですが、先手としてはやや選びづらい変化かもしれません。

鷺宮定跡の変化図8

④11手目△3二飛の変化(定跡では△4五歩)

鷺宮定跡の変化図9

④11手目△3二飛(変化図9)は以下▲5七銀上となり、②10手目▲3七銀の変化と合流することになります。

変化図8まで進むと評価値は-104でほぼ互角なので、後手の変化としては有力です。

まとめ

鷺宮定跡の△1二香・△6四歩型で、▲6八金直△1四歩の交換がある場合の変化手順の前半を研究しました。

①6手目▲3五歩の仕掛けは有力で、形勢は「ほぼ互角~先手がやや指しやすい」になりやすいです。この仕掛けは、▲6八金直△1四歩の交換がない場合でも有力です。

▲3五歩の突き捨てを入れた後に、▲7七角と一呼吸置いてから仕掛けるのがポイントです。

②8手目▲5六銀は、戦型が5筋位取りになります。鷺宮定跡とは違いますが、形勢はほぼ互角で有力な戦法です。

③10手目▲3七銀と④11手目△3二飛は、同じ変化に合流します。形勢はほぼ互角ですが、先手の居飛車としては①6手目▲3五歩や②8手目▲5六銀を選んだ方が良さそうです。逆に後手の四間飛車としては有力な変化になります。

 

激指定跡道場4
マイナビ 激指 定跡道場4

 


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

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棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖 vs △斎藤慎太郎七段の感想と将棋ソフト「技巧」による棋譜解析 https://shogijugem.com/kiseisen-habu-saito-2-5681 Sun, 18 Jun 2017 07:33:23 +0000 https://shogijugem.com/?p=5681 棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖 vs △斉藤慎太郎七段戦は、中盤から終盤にかけて見所が多い熱戦となりました。 序盤は流行の最新形となり、途中から未知の局面に突入します。 中盤は本局の一番の見所です。互いに急所の角を放ち、どち...

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棋聖戦第2局の両対局者の様子

棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖 vs △斉藤慎太郎七段戦は、中盤から終盤にかけて見所が多い熱戦となりました。

序盤は流行の最新形となり、途中から未知の局面に突入します。

中盤は本局の一番の見所です。互いに急所の角を放ち、どちらの角がよく働くかが見物です。攻めるか守るか難しい局面が現れ、読みの力と大局観が試されることになります。そして、ごちゃごちゃした局面での細かな対応の違いで形勢が動いてしまいます。

終盤は、逆転を許さない非常に正確な指し手が目立ちました。

本記事では、将棋ソフト「技巧」を用いて、棋聖戦第2局の棋譜解析をしながら、ポイントとなった局面を振り返っています。

<棋聖戦公式サイト>
棋譜中継:https://live.shogi.or.jp/kisei/kifu/88/kisei201706170101.html
中継ブログ:https://kifulog.shogi.or.jp/kisei/
ニコニコ動画:https://live.nicovideo.jp/watch/lv296742142

 

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棋聖戦:▲羽生善治棋聖 vs △斉藤慎太郎七段の序盤戦

戦型は角換わりの最新形に

棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖△斎藤慎太郎七段戦(戦型は角換わりの最新形)

戦型は角換わりの最新形です。

先手の羽生善治棋聖は、流行している▲4八金・▲2九飛型を選択し、後手の斎藤慎太郎七段も△6二金・△8一飛型の同型で追随しています。

それ以外の駒組みのポイントとしては、最近では△4二銀ではなく△2二銀と上がる形が主流になっていることです。▲5五角の筋を警戒するとともに、△3一玉→△2二玉まで囲うのではなく、△4二玉型で戦う展開も視野に入れています。

棋聖戦第2局の棋譜解析(序盤1)
(初手から31手目▲5六銀までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)

将棋ソフト「技巧」の棋譜解析によると、形勢は全くの互角です。

斎藤慎太郎七段は右玉の構想。直後に未知の局面へ突入

棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖△斎藤慎太郎七段戦(後手は右玉の構想)

上図は4二の玉を△5二玉と動かした局面です。後手の斎藤慎太郎七段が、攻め合いの方針ではなく、手待ちをしながら右玉の構想であることがはっきりします。

△5二玉の一手前までは、プロの実戦例が9局あります。この△5二玉で実戦例が2局に減り、次の▲8八玉からは未知の局面になります。

後手は右玉に組み換えながら手待ちをして、先手が打開を狙う展開となります。

このように、腰掛け銀から右玉に組み換える将棋は最近では増えてきており、流行最先端の戦型となっています。

棋聖戦第2局の棋譜解析(序盤2)
(32手目△3三銀から50手目△5一飛までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)

将棋ソフト「技巧」の評価値は、-200から200の範囲内でほぼ互角です。

羽生善治棋聖の自陣角から中盤戦に突入

棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖△斎藤慎太郎七段戦(自陣角から中盤戦に突入)

上図の▲4七角の自陣角が、羽生善治棋聖の決断の一手です。

一手前に▲9八香と上がってから▲4七角と打つのが独特の間合いの測り方です。

ところが、将棋ソフト「技巧」は、一手前の▲9八香のところですぐに▲4七角と打つ手を推奨しています。また、▲9八香と上がった後は、▲4七角ではなく素直に▲9九玉と潜る手を推奨しています。

すなわち、将棋ソフトの方が自然な手順を示しており、羽生善治棋聖の方が凝った手を指しているということになります。この辺りの違いは面白いです。

棋聖戦第2局の棋譜解析(序盤から中盤)
(51手目▲9八香から62手目△7四同銀までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)

将棋ソフトと羽生善治棋聖の指し手は違いますが、形勢としてはほぼ互角です。将棋ソフトの推奨手を外したからといって、すぐに不利になるというわけではありません。

▲4七角の自陣角から将棋は中盤戦に突入します。

棋聖戦:▲羽生善治棋聖 vs △斉藤慎太郎七段の中盤戦

中盤戦の難所を迎える

棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖△斎藤慎太郎七段戦(中盤戦の難所)

上図の辺りで中盤戦の難所を迎えます。斎藤慎太郎七段は感想戦で「ここからわからなかった」と話しています。

△4四同銀は▲5二歩が気になるので、実戦は△5四銀でしたが、将棋ソフト「技巧」の推奨手は△4七歩の叩きです。

この辺りは感想戦でも熱心に検討されましたが、なかなか結論が出ない難解な中盤戦となっています。

棋聖戦第2局の棋譜解析(中盤1)
(63手目▲4四歩から71手目▲4五角までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)

将棋ソフト「技巧」で棋譜解析すると、63手目▲4四歩、64手目△5四銀、66手目△6三銀、67手目▲7五歩は、実戦の進行と技巧の推奨手が異なっています。

しかし、形勢としてはほぼ互角で、局面のバランスを保っています。

急所の角打ちから局面が動く

棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖△斎藤慎太郎七段戦(急所の角打ち)

上図の辺りが中盤戦の山場の一つだったと思います。

後手の斎藤慎太郎七段が急所の角を打った局面ですが、どうやらこの辺りから先手の羽生善治棋聖が徐々に優勢になっているようです。

△7四角は△9五歩の端攻めを狙っており、厳しい一手に見えるのですが、この角打ちが疑問手だったのでしょうか?

棋聖戦第2局の棋譜解析(中盤2)
(72手目△7四角から86手目△9六歩までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)

将棋ソフト「技巧」は、72手目△7四角~74手目△9五歩の攻めよりも、△4二歩の受けを推奨しています。

74手目△9五歩の後は、しばらく先手も後手も技巧の推奨手順の通りに進むのですが、79手目▲7五金のところでは既に評価値が約500で、先手がはっきり優勢となっています。

後手の斎藤慎太郎七段が悪くなったのは、図5で△7四角~△9五歩と攻めた方針が問題だった可能性はあります。もしそうでなければ、図4あたりが問題だったことになるでしょう。

本局の明暗を分けた2つの疑問手で斎藤七段が劣勢に

棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖△斎藤慎太郎七段戦(明暗を分けた局面)

上図は中盤戦から終盤戦に突入するあたりの局面です。

本局で明暗を分けたのはこの辺りです。非常に難しい局面で、両者にチャンスがあったと思いますが、最終的には先手の羽生善治棋聖が力を見せています。

棋聖戦第2局の棋譜解析(中盤から終盤)
(87手目▲2一とから95手目▲8七歩までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)

将棋ソフト「技巧」の棋譜解析の結果によると、最初に大きな疑問手を指したのが後手の斎藤慎太郎七段で、図6での△8六歩がその疑問手です。

技巧の推奨手は△9五銀ですが、△8六歩の一手で評価値が82から477まで大きく先手優勢に振れています。

しかし、直後の羽生善治棋聖の▲8六同歩も疑問手で、今度は評価値が477から177まで大きく後手の方に傾いています。ここで▲8六同銀なら先手優勢だったようです。

しかし、その後の斎藤慎太郎七段の92手目△8六銀が、また疑問手だったらしく、ここでは△8七歩の叩きを入れた方が良かったようです。

両者とも最善を逃していた可能性が高いですが、図6での△8六歩、92手目△8六銀の2度の疑問手を指してしまった斎藤慎太郎七段が、最終的には劣勢になってしまいました。

棋聖戦:▲羽生善治棋聖 vs △斉藤慎太郎七段の終盤戦

攻めに活路を見出す斎藤慎太郎七段の勝負手

棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖△斎藤慎太郎七段戦(攻めに活路を見出す勝負手)

劣勢で終盤を迎えてしまった斎藤慎太郎七段としては、どこかで逆転を狙った勝負手を放つ必要があります。

上図の96手目△9七歩成は勝負手の一つで、攻めに活路を見出そうとしています。技巧の評価値は悪くなりますが、攻めないと逆転のチャンスは生まれないということでしょう。

棋聖戦第2局の棋譜解析(終盤1)
(96手目△9七歩成から106手目△5四香までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)

勝負手は正確に対応されると悪くなるという性質の手なので、評価値が1000以上になってしまったのも仕方のないことです。

ここからは、羽生善治棋聖の正確な差し手が目立ちます。将棋ソフト「技巧」との一致率が高いですし、一致しない手でも評価値が下がっているわけではないので、有力な手が複数あるということだと思います。

最終盤で選択肢がある局面でも冷静な羽生善治棋聖

棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖△斎藤慎太郎七段戦(最終盤での選択肢)

既に先手の羽生善治棋聖がどのように決めるかという局面になっています。

上図では▲7三同桂成と踏み込んでも勝ちですが、冷静に▲5四角と香車を取って勝勢を確実なものにしています。

棋聖戦第2局の棋譜解析(終盤2)
(107手目▲6三桂成から117手目▲6八玉までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)

ソフトの評価値を解析していると、終盤戦では羽生善治棋聖と技巧の指し手の一致率がかなり高いことが分かります。

そして、指し手が一致していないのに、急激に評価値が上がることもあります。

たとえば、109手目▲7三香成の後で、評価値が1767から2488に急激に上がっています。おそらく、技巧の推奨手よりも羽生善治棋聖の指し手の方が勝っているからです。

逆に、ソフトの踏み込みが素晴らしいこともあり、図8での▲7三同桂成のような手は、リスクを恐れないソフトらしい決め方と言えます。

羽生善治棋聖が勝利して2勝目を上げる

棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖△斎藤慎太郎七段戦(後手玉に即詰みがある)

上図では後手玉に即詰みがあります。

▲7三桂成から詰まして、先手の羽生善治棋聖の勝ちとなりました。

投了図以下は、△8三同玉▲7二角成△9三玉▲8四金△9二玉▲8三金△9一玉▲8二金までの即詰みです。

棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖△斎藤慎太郎七段戦(投了図)

棋聖戦第2局の棋譜解析(終盤3)
(118手目△9七飛成から投了図までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)

棋聖戦第2局のまとめ

棋聖戦第2局となる本局は、中盤戦が一番の見所でした。

非常に難解な局面が続き、読みの正確さと大局観が試される展開で、地力に勝る羽生善治棋聖がねじ伏せたという印象です。

終盤では羽生善治棋聖の正確な指し手が目立ち、斎藤慎太郎七段の勝負手にもチャンスを与えることなく、見事に勝ち切っています。

これで、棋聖戦五番勝負は羽生善治棋聖の2連勝となりました。

次の第3局は羽生善治棋聖にとっては、棋聖戦10連覇がかかった将棋になります。斎藤慎太郎七段にとっては角番で、まずは1局返したいところです。

第3局の日程は、7月1日(土)です。両対局者による熱戦を期待したいと思います。

 

<棋聖戦五番勝負第1局 ▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖>(flash盤の棋譜)
※ iPhoneの場合は、Puffin Web Brouserなどflash対応のブラウザで見ることができます。

 

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【四間飛車 vs 急戦】鷺宮定跡の基本手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(12)~定跡の結論を覆す可能性~ https://shogijugem.com/shikembisha-saginomiya-joseki-15-5635 Sat, 17 Jun 2017 02:23:54 +0000 https://shogijugem.com/?p=5635 四間飛車の急戦定跡を将棋ソフトを用いて研究しています。 現在は鷺宮定跡の研究をしているのですが、従来の定跡の結論とは異なる変化がいくつも現れています。今回も将棋ソフトで調べてみると、新しい変化が発見されました。 今回研究...

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鷺宮定跡(対四間飛車急戦)

四間飛車の急戦定跡を将棋ソフトを用いて研究しています。

現在は鷺宮定跡の研究をしているのですが、従来の定跡の結論とは異なる変化がいくつも現れています。今回も将棋ソフトで調べてみると、新しい変化が発見されました。

今回研究している形は、鷺宮定跡の△1二香・△6四歩型です。定跡では無理とされている仕掛けですが、互角に戦える手順をソフトは示しています。

 

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四間飛車:鷺宮定跡(△1二香・△6四歩型)の基本手順

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲6八玉△9四歩▲9六歩△7二銀▲7八玉△3二銀▲5八金右△6二玉▲5六歩△7一玉▲6八銀△5二金左▲2五歩△3三角▲3六歩△8二玉▲5七銀左△1二香(図1)が対四間飛車(△1二香型)の急戦の基本図です。

△1二香型の基本図

図1から▲3八飛△6四歩▲3五歩(図2)が、△1二香・△6四歩型の四間飛車に対する鷺宮定跡の仕掛けです。

鷺宮定跡の仕掛け

図2から△3五同歩▲4六銀△4五歩▲3三角成△同銀▲3五銀△4六歩(図3)が鷺宮定跡の定跡手順です。

図3の△4六歩が急所の一手で、▲同歩でも▲同銀でも△2七角の筋で後手良しになります。

急所の一手

図3から▲3四歩△4七歩成▲3三歩成△5八と▲4二と△6九と▲5二と△7九金▲8八玉△6八角(図4)という一直線の攻め合いが定跡手順です。図4の△6八角が詰めろで、後手の四間飛車が勝ちとなります。

上記の手順では、先に手を戻した方が不利となります。そこで、互いに受けを手抜いて攻める展開になりますが、図4の結果図まで進むと後手の勝ちがはっきりします。

鷺宮定跡の結果図

上記の鷺宮定跡の基本手順は「四間飛車の急所2(藤井猛著)」を参考にしています。定跡手順の解説や変化手順が非常に詳しく書かれています。


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

将棋ソフト「技巧」による鷺宮定跡の解析

四間飛車(鷺宮定跡16)のソフト解析結果

図2の仕掛け(4手目▲3五歩)から、しばらくはほぼ互角の評価値で進みます。

しかし、14手目▲3三歩成の悪手で一気に後手の四間飛車が優勢となり、その後の18手目▲5二との悪手で四間飛車が勝勢となります。

定跡手順と将棋ソフト「技巧」の推奨手が、図2の仕掛け以降で異なるのは、

①6手目▲4六銀(技巧の推奨手は▲7七角。以下括弧内が技巧の読み筋)
②12手目▲3四歩(▲2四歩)
③14手目▲3三歩成(▲4七同銀)・・・悪手
④18手目▲5二と(▲6九同玉)・・・悪手

の4手となります。

後手の四間飛車は、将棋ソフト「技巧」の推奨手と完全に一致します。

ずっと技巧の推奨手を指しているわけですから、定跡手順をそのまま進めて、後手の四間飛車が勝ちになるのも納得です。

先手の居飛車はどのように対応するべきだったのでしょうか?

①6手目▲7七角の変化(定跡では▲4六銀)

鷺宮定跡の変化図1

①6手目▲7七角(変化図1)以下、△4五歩▲3五飛△7七角成▲同桂△3三銀▲3八飛△4三角▲6八金上△7六角▲3四歩△2二銀(変化図2)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図2の評価値は133で、ほぼ互角~先手がやや指しやすいぐらいの形勢です。

▲3五歩と仕掛けてから、いったん▲7七角と一呼吸置くのが面白い指し方です。△4五歩の反発があるので、最初から▲4六銀と出ない方針のようです。

変化図2のように、後手の四間飛車が角を手放してくれて、▲3四歩と押さえることもできれば、先手の居飛車も十分に戦えそうです。

鷺宮定跡の変化図2

②12手目▲2四歩の変化(定跡では▲3四歩)

鷺宮定跡の変化図3

②12手目▲2四歩(変化図3)以下、△同歩▲2八飛△4七歩成▲同銀△3九角▲2六飛△8四角成(変化図4)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図4の評価値は-4で、形勢はほぼ互角です。

変化図4はやや手が広く、▲4六歩、▲3四歩、▲8八角などが有力です。

鷺宮定跡の変化図4

③14手目▲4七同銀の変化(定跡では▲3三歩成)

鷺宮定跡の変化図5

③14手目▲4七同銀(変化図5)以下、△4四銀▲同銀△同飛▲5五角△4五飛▲3三歩成△2五飛▲4二と△同金▲3一飛成△4一歩(変化図6)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図6の評価値は-90で、形勢はほぼ互角です。

四間飛車の美濃囲いの方が堅いのですが、先に飛車を成り込めますし、角の位置が良いので意外と微差のようです。

鷺宮定跡の変化図6

④18手目▲6九同玉の変化(定跡では▲5二と)

鷺宮定跡の変化図7

④18手目▲6九同玉(変化図7)以下、△4二金▲2二飛△4一歩▲5八玉(変化図8)が将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図8の評価値は-1487で、後手勝勢です。

もともとの評価値が-1000ぐらいだったので、▲5二とでも▲6九同玉でも、どちらを選んでも先手の居飛車は敗勢となります。

どちらの方が逆転の可能性が高いかの判断は難しいですが、一直線の変化ではすぐに負けになるので、変化図8の方がマシかもしれないです。

鷺宮定跡の変化図8

まとめると、①6手目▲7七角、②12手目▲2四歩、③14手目▲4七同銀は先手の居飛車の変化として有力で、互角に近い形勢となります。

これらの変化は、従来の鷺宮定跡の結論を覆す可能性があります。

③14手目▲4七同銀のところで、代わりに定跡手順の▲3三歩成の悪手を指してしまうと挽回は難しくなります。ただし、その場合に④18手目▲6九同玉を選んだ方が、定跡手順の▲5二とよりも粘れるかもしれないです。

鷺宮定跡(△1二香・△6四歩型)のまとめ

鷺宮定跡の△1二香・△6四歩型は、図4の結果図で後手の四間飛車の勝ちとなるので、図2の仕掛けは成立しないと考えられていました。

ところが、先手の居飛車には、①6手目▲7七角、②12手目▲2四歩、③14手目▲4七同銀という有力な変化手順があり、互角に近い形勢となります。

従来の定跡の結論とは異なり、先手の居飛車も十分に戦える可能性があります。

 

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四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

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【四間飛車 vs 急戦】鷺宮定跡の基本手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(11) https://shogijugem.com/shikembisha-saginomiya-joseki-14-5616 Fri, 16 Jun 2017 02:00:05 +0000 https://shogijugem.com/?p=5616 四間飛車の定跡を将棋ソフト「技巧」を使って研究しています。 対四間飛車急戦の鷺宮定跡の続きで、前回と同じく四間飛車の△1二香型・△5四歩型に対する仕掛けです。今回はその中でも、先手の居飛車の方から▲6六歩と角道を止めて、...

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鷺宮定跡(角交換拒否型)

四間飛車の定跡を将棋ソフト「技巧」を使って研究しています。

対四間飛車急戦の鷺宮定跡の続きで、前回と同じく四間飛車の△1二香型・△5四歩型に対する仕掛けです。今回はその中でも、先手の居飛車の方から▲6六歩と角道を止めて、角交換を拒否する形を研究します。

定跡手順では居飛車優勢となりますが、それほど簡単ではなく、四間飛車も戦えそうな変化手順が見つかりました。

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四間飛車:鷺宮定跡(△1二香・△5四歩型、角交換拒否型)の基本手順

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲6八玉△9四歩▲9六歩△7二銀▲7八玉△3二銀▲5八金右△6二玉▲5六歩△7一玉▲6八銀△5二金左▲2五歩△3三角▲3六歩△8二玉▲5七銀左△1二香(図1)が対四間飛車(△1二香型)の急戦の基本図です。

△1二香型の基本図

図1から▲3八飛△5四歩▲6六歩(図2)と角交換を拒否する指し方があります。

定跡では▲6六歩の代わりに▲3五歩の仕掛けは上手くいかないと考えられているからです。しかし、前回の研究によると先手の居飛車がほぼ互角で戦える変化があります。(詳細については、以下の記事を参考にしてください。)

【四間飛車 vs 急戦】鷺宮定跡の基本手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(10)~定跡の結論を覆す可能性~

図2の▲6六歩に対しては、①△6四歩と6筋の位取りを拒否する手と、②△4三銀で6筋の位を取らせてしまう指し方があります。本記事では①△6四歩の変化を研究します。

角交換を拒否

図2から△6四歩▲3五歩△同歩▲4六銀△4五歩▲3五銀△6五歩(図3)が鷺宮定跡の定跡手順です。先手の居飛車は▲3五歩から仕掛けますが、後手の四間飛車は6筋から反撃をします。角道を通して、攻めの目標になっている角をさばくのが狙いです。

6筋からの反撃

図3から▲5七銀△6六歩▲同銀△3四歩▲同銀△4六歩▲3三銀成△同桂▲9七角(図4)が、鷺宮定跡(△1二香・△5四歩型、角交換拒否型)の結果図です。図4の結果図で先手良しというのが定跡の結論です。

角交換拒否型の結果図

上記の鷺宮定跡の基本手順は「四間飛車の急所2(藤井猛著)」を参考にしています。定跡手順の解説や変化手順が非常に詳しく書かれています。


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

将棋ソフト「技巧」による鷺宮定跡の解析

四間飛車(鷺宮定跡15)のソフト解析結果

図2の▲6六歩以降、定跡手順における先手の居飛車の指し手は、ほぼ将棋ソフト「技巧」の推奨手順と一致しています。

唯一、18手目▲3三銀成のところで、銀を成るか不成かの違いはありますが、どちらにしても直後で取られる駒なので結果的には合流します。

一方で、後手の四間飛車の定跡手順は、将棋ソフト「技巧」の推奨手とは異なることが多いです。具体的には、

①9手目△4五歩(技巧の推奨手は△4三銀。以下括弧内が技巧の読み筋)
②11手目△6五歩(△4三金)
③15手目△3四歩(△6五歩)
④19手目△3三同桂(△3三同銀)

の4手が定跡と技巧の推奨手が異なります。

定跡手順で先手の居飛車が優勢となるのは、これらの技巧の推奨手を見逃しているからなのでしょうか?

①9手目△4三銀の変化(定跡では△4五歩)

鷺宮定跡の変化図1

①9手目△4三銀(変化図1)以下、▲3五銀△3二飛▲3四歩△4二角▲4六歩△5三角▲6八金上△4二金(変化図2)が将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図2の技巧の評価値は121で、ほぼ互角か先手がやや指しやすい形勢です。

変化図2では▲6五歩、▲5七銀、▲6七金右、▲4七銀が有力で、やや手が広い局面です。

通常、急戦で居飛車の銀が五段目に進出できて、▲3四歩と押さえている形は居飛車が優勢になることが多いです。しかし、この場合は▲6六歩と角道を止めているので、互角に近い形勢になっています。

鷺宮定跡の変化図2

②11手目△4三金の変化(定跡では△6五歩)

鷺宮定跡の変化図3

②11手目△4三金(変化図3)以下、▲5七銀△5五歩▲3四歩△1一角▲3六飛△5六歩▲同銀△5二飛▲3七桂△5四金(変化図4)が将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図4の評価値は195で、先手がやや指しやすいです。

△4三金は力強い受けで、手順のように△5二飛で中飛車に振り直すことを狙っていました。ただし、守りの金が玉から離れることの影響が評価値に現れています。

鷺宮定跡の変化図4

③15手目△6五歩の変化(定跡では△3四歩)

鷺宮定跡の変化図5

③15手目△6五歩(変化図5)以下、▲7七銀△3四歩▲同銀△7七角成▲同角△4六歩▲8六角△4一飛▲4五銀△4七歩成▲3二飛成△4五飛▲6八金寄(変化図6)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図6の評価値は147で、ほぼ互角から先手がやや指しやすいぐらいの形勢です。

定跡書「四間飛車の急所2(藤井猛著)」では味消しとされている△6五歩ですが、技巧はかなり激しい手順を読んでいました。角切りから飛車をさばくことができ、「と金」もできるので有力だと思います。

鷺宮定跡の変化図6

④19手目△3三同銀の変化(定跡では△3三同桂)

鷺宮定跡の変化図7

④19手目△3三同銀(変化図7)以下、▲9七角△4四飛▲4六歩△同飛▲3七飛△4九飛成▲3一角成△2九龍▲2一馬(変化図8)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図8の評価値は372で、先手優勢です。

定跡手順でも先手優勢となるので、△3三同銀か△3三同桂の比較は難しいと思います。

鷺宮定跡の変化図8

まとめると、①9手目△4三銀、②11手目△4三金、③15手目△6五歩はいずれも後手の四間飛車の変化として有力で、形勢は「ほぼ互角~先手指しやすい」の範囲内に収まります。これらの変化は、定跡の結果図に進むよりも勝っている可能性があります。

④19手目△3三同銀は、この局面になってしまった時の変化としては有力ですが、形勢は先手優勢です。後手の四間飛車としては、この局面になる前に上記の①~③のいずれかを選ぶ方が勝ると思います。

鷺宮定跡(△1二香・△5四歩型、角交換拒否)のまとめ

四間飛車の△1二香・△5四歩型に対する鷺宮定跡で、▲6六歩と突いて居飛車から角交換を拒否する形は、図4の結果図で先手優勢というのが従来の定跡でした。

しかし、後手の四間飛車が①9手目△4三銀、②11手目△4三金、③15手目△6五歩の変化手順を選ぶと、定跡手順に比べて微差となります。

これらの変化手順でも、先手の居飛車が指しやすくなりやすいのは事実ですが、ほぼ互角と言ってもおかしくないぐらいの微差です。特に、四間飛車の美濃囲いがそのまま残っている変化なら、むしろ玉の堅さの差で勝ちやすい可能性すらあります。

 

激指定跡道場4
マイナビ 激指 定跡道場4

 


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

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棋書の紹介(6月の新刊、5月の新刊のまとめ) https://shogijugem.com/books-201706-2-5612 Thu, 15 Jun 2017 02:00:11 +0000 https://shogijugem.com/?p=5612 棋書の紹介記事です。2017年6月の新刊と、2017年5月出版の棋書をまとめています。 定跡書では「堅陣で圧勝! 対振り銀冠穴熊」がAmazon1位のベストセラーとなっています。銀冠穴熊の本は少ないですし、本書で紹介され...

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棋書の紹介記事です。2017年6月の新刊と、2017年5月出版の棋書をまとめています。

定跡書では「堅陣で圧勝! 対振り銀冠穴熊」がAmazon1位のベストセラーとなっています。銀冠穴熊の本は少ないですし、本書で紹介されているのは、コンピュータが指しはじめた新しいタイプの銀冠穴熊とのことです。

また、詰将棋パラダイス編集の詰将棋本や、横歩取りの名局集が6月の後半に出版されます。

<このページの目次>
棋書の紹介(6月の新刊)
新書・読み物(5月出版)
入門書・初級者向けの本(5月出版)
戦法書・定跡書(5月出版)
棋譜集(5月出版)

 

棋書の紹介(6月の新刊)

Amazonの将棋ランキングで1位のベストセラーです↓


堅陣で圧勝! 対振り銀冠穴熊(増田康宏、2017/6/14)

若手精鋭による対振り飛車新戦法!

第47期新人王戦決勝三番勝負第2局。

石田直裕四段の四間飛車に対し、増田康宏四段は▲6六角から見たこともない駒組みで序盤から圧倒的な優位を築き、最後は鮮やかな詰み。初タイトル新人王を勝ち取りました。

増田四段の使った作戦は銀冠穴熊。しかもただの銀冠穴熊ではありません。
旧来の左美濃からの発展形としての銀冠穴熊ではなく、最初から銀冠穴熊を含みにします。▲6六角から角道を開けたまま駒組みするのがポイントで、相手の△6五桂の両取りを防ぎつつ堅く囲うことができるという仕組みです。

相手が無理な動きをしてくればそれをとがめればよし、持久戦になれば自玉は無類の堅陣となります。

実は、この「対振り銀冠穴熊」はコンピュータが指しはじめたもの。増田四段がたまたまアマチュア将棋ファンのブログを見て知り、プロでも通用する戦法に仕上げたといいます。

まだ誕生して間もないものの、駒組みがわかりやすく、狙いがシンプルな戦法なので、アマチュアでも十分指しこなせます。何しろ堅陣に囲えるので勝ちやすいのが大きな魅力でしょう。

本書で増田流銀冠穴熊をマスターして、ぜひ振り飛車対策の一つとして加えてください。

 


将棋・序盤完全ガイド 相振り飛車編(上野裕和、2017/6/14)

1冊で相振り飛車の序盤がわかる!

プロの序盤戦術を分かりやすく解説し、多くの方に序盤の魅力をお伝えする「将棋・序盤完全ガイド」シリーズ。

大好評いただいた「振り飛車編」、「相居飛車編」に続く、待望の第3弾は「相振り飛車編」です。

相振り飛車は、相居飛車や居飛車対振り飛車の戦いと比べ、指し手の自由度が高く、定跡が確立されていない分だけ基本の駒組みや全体像をつかむのが難しいジャンルでもあります。

そこで本書がその道しるべとなります。

第1部の「相振り飛車の基礎知識」では「相振り飛車って何ですか?」から始まり、将棋においてどのような形を相振り飛車というのか、どんな囲いや駒組みをするものなかを説明します。

第2部は「相振り飛車の歴史を振り返る」。その戦法の歴史をさかのぼって解説することでより深い理解を得られるのが本シリーズの真骨頂。上野裕和五段の深い研究と分かりやすい進化の解説を読むことができます。

第3部は「相振り飛車、4つの戦法の解説」。多岐にわたる相振り飛車の戦型を
(1)先手向かい飛車
(2)先手三間飛車
(3)先手四間飛車
(4)先手中飛車
の4つに分けてそれぞれの特徴や歴史、最新形まで解説しています。

相振り飛車における序盤戦術の基本から最新形までを、大まかに、楽しく理解していただける一冊です。

 


サクサク解ける 詰将棋練習帳 風の巻(詰将棋パラダイス編、2017/6/23)

詰パラが贈る3~7手詰の良問200題!

将棋上達の最短ルートは短手数の詰将棋を数多く解くことだと言われます。

詰将棋を解くことはどんな戦法を得意にしているかに関係なく、将棋を指す方全員の棋力アップに役立つもので、やって無駄になることがありません。

詰将棋を頭のなかで考え、玉を詰ますのを繰り返すことで将棋の基礎体力となる「読む」力が磨かれますし、詰みテクニックを学ぶこともできます。

本書は詰将棋専門誌「詰将棋パラダイス」編集による詰将棋問題集です。

形がキレイで解きやすく、棋力アップにつながる3~7手詰200問を収録しています。

サクサク解いて、ドンドン将棋の力を磨いてください。

 


将棋戦型別名局集6 横歩取り名局集(中原誠監修、2017/6/23)

古今の横歩取りの名局を100局

厳選本書は戦型別名局集の第6弾です。
序盤から大駒が飛び交い、いきなり終盤戦になることもある激しい戦型の横歩取り。その名局を100局厳選し、詳細な解説で堪能できる内容になっています。

「横歩3年の患い」という、横歩取り後手有利という定説に挑み、それを覆してみせた木村義雄十四世名人。空中戦法で華麗に戦った内藤國雄九段。一番好きな戦法は横歩取りの羽生善治三冠。横歩取りを武器に名人の座を射止めた佐藤天彦名人など、名棋士達の名局を余すことなく収録。

また、前人未到の七冠王誕生の一局や、歴史のターニングポイントになった8五飛戦法の1号局など、棋史に残る対局も鑑賞できます。

珠玉の100局を盤に並べることで、棋士が試行錯誤を積み重ねて進化させてきた横歩取りの歩みを追体験してください。

 


9マス将棋の本(青野照市、2017/6/29)

 


将棋世界 2017年7月号(2017/6/2)

トップ棋士が見た藤井聡太の将棋

●巻頭カラー
・第88期棋聖戦挑戦者インタビュー・斎藤慎太郎七段
「対局は勝負と表現の場」 構成/諏訪景子

・第75期名人戦七番勝負[第3局]佐藤天彦名人×稲葉陽八段
「充実の挑戦者」解説/阿久津主税八段 構成/大川慎太郎

・インタビュー・藤井聡太四段「十四歳の地図」構成/北野新太

 


内藤國雄の短編詰将棋(将棋世界2017年7月号付録)

将棋世界誌に巻頭詰将棋を出題中、「5分で詰ませばアマ初段〜九段」と書いたことがある。九段とはどういう意味だと、棋士たちに不思議がられた。いま頃になってその事情を説明すると、ある日メモ帳の中から形のよいのを選び、出題しようとしたらそれが詰まない。2分ほどで諦めて破って捨てた。とたんに答えが分かった。試しにアマ初段くらいの友人に見せたら、駒を動かしまくってすぐに詰めた。それで良心的(?)にアマ初段〜九段としたのだった。仲よくしてもらった先輩・二上達也さんの「近頃、自分の作った詰将棋が詰まねぇんだよ」の言葉を懐かしく思い出す。今回は、面倒な変化もないのに解きにくいと思う短編(5手〜13手)を集めてみました。配列は手数の短い順ではありません。「全題詰まして九段」の意気で挑戦してみてください。(はしがきより)

 


NHK将棋講座 2017年7月号(2017/6/16)

 

棋書の紹介(5月出版)

新書・読み物(5月出版)


不動心論(大山康晴、2017/5/19)

『3月のライオン昭和異聞』の田中七郎名人のモデル、プロ将棋棋士:大山康晴(十五世名人/永世十段・王位・棋聖・王将)が、自らの「強靭な精神を磨く思考術」を伝授。

勝負強さの秘訣は「不動心」にあり! 不運に取りつかれた時、あきらめてはいけない。あきらめは心の乱れであり、不動心を失っている状態である。

 


棋士とAIはどう戦ってきたか~人間vs.人工知能の激闘の歴史(松本博文、2017/5/2)

棋士とコンピュータとの戦いは、人類とAIの未来を暗示している!?
2017年4月1日、現役タイトル保持者が、はじめてコンピュータ将棋ソフトに敗れた。
AI(人工知能)が、ついに人間の王者を上回ったのだ。
それは予想だにしない奇跡だったのか、それとも必然だったのか?
コンピュータ将棋の開発が始まってから40年あまり、
当初、「人間に勝てるはずがない」ともいわれたコンピュータ将棋は、
驚異的な進化を遂げて、いま、人間の前に立ちはだかる。
この間、棋士は、そしてソフト開発者は何を考え、何をめざしてきたのか?
そして、人間とAIは、どのような関係へと向かうのか?
将棋界の最前線を十数年取材してきた将棋記者の、懇親のルポルタージュ!

 


将棋から学んできたこと これからの道を歩く君へ(羽生善治、2017/5/1)

天才棋士・羽生善治がこれからの道を歩む若い人に向けて語った
「力を伸ばすプロセス」
「挑戦する姿勢」
「正解なき道の歩み方」
「才能よりも大事なこと」など珠玉のメッセージ。
将棋ブームの今、親子で読む本としても最適な一冊!

 

入門書・初級者向けの本(5月出版)


一冊で差がつく! 将棋 上達のコツ50 勝ち方がわかる本(屋敷伸之、2017/5/30)

◎ 第1章
将棋は礼に始まり、礼に終わる

◎ 第2章
将棋に勝つための「基本」を知ろう
◆1 最初の一手は何か?
◆2 飛車の位置、居飛車と振り飛車
◆3 なぜ“王”を囲わないといけないのか?
◆4 陣形のバランス

◎ 第3章
手筋と格言で将棋に強くなる
手筋を覚えて棋力アップ
◆1 桂、香、金、銀、角、飛の手筋
◆2 歩、玉の手筋
◆3 格言いろいろ

第4章
詰め将棋10題
なぜ詰め将棋が棋力アップにつながるのか!

 


おもしろいほどよくわかる羽生善治の将棋入門(羽生善治、2017/5/24)

ルールが難しいイメージのある「将棋」。しかし、実際は駒の動かし方や基本的部分さえ覚えてしまえば、子供からお年寄りまで、年齢の垣根なく楽しむことができるゲームなのです。

そんなコミュニケーションツールとしても活躍する「将棋」を羽生善治名人監修で、簡単に解説していきます。

本書はビギナーにも分かりやすいように、イラストつきで駒の動かし方や役に立つ手筋を掲載。中身はパート分けしてあるので、徐々にステップアップしていく楽しみもあります。

また、羽生名人が語る幼年期のエピソードや将棋が強くなるためにはどうすればいいのか?

プロになるためにはなどの読み物も盛り込まれているため、将棋の基礎の基礎はこの1冊があれば十分理解できるでしょう。

 

戦法書・定跡書(5月出版)


今日からすぐ勝てる 奇襲虎の巻(神谷広志、2017/5/24)

一発勝負は奇襲で勝て!

本書は神谷広志八段による「奇襲虎の巻」と「居飛穴なんかコワくない―振り飛車の逆襲」の2冊を合わせて文庫化したものです。

「奇襲虎の巻」では、四間飛車独走銀、ハメ手中飛車、△7四歩戦法、カニカニ銀、相掛かり宇宙戦法など、相手が一手受け間違えればたちまち勝勢になるような破壊力抜群の奇襲が紹介されています。

「居飛穴なんかコワくない」では三間飛車、向かい飛車、四間飛車の3つの戦型でそれぞれユニークな居飛車穴熊破りを解説しています。

どちらも神谷八段ならではの独特の指し回しがユーモアあふれる口調で語られており、楽しく読んで棋力アップにもつながる内容です。本書でレパートリーを増やして普段勝てない相手をアッと言わせてください。

 


1冊でわかる右四間飛車 その狙いと対策 (藤倉勇樹、2017/5/17)

四間飛車VS右四間飛車の決定版!

指されて困る戦法は何ですか? この質問の答えとして最もよく聞くのが右四間飛車です。飛車、角、銀、桂を理想的なポジションに配置し、4五(または6五)の地点から集中砲火を浴びせます。この攻めがあまりにも強力すぎて、わかっていても受け切れないのが悔しいところで、多くの将棋ファンを悩ませ続けています。

本書は、現在は振り飛車党で、奨励会時代には右四間飛車を多用して独自に研究を進めていたという藤倉勇樹五段が「四間飛車VS右四間飛車」という戦型について、徹底的に解説した一冊です。右四間飛車の圧倒的な破壊力と、四間飛車の正しい対応の両方を熟知している藤倉五段だからこそ書けたこの戦型の決定版です。

第1章で「右四間飛車の基本形」を学んだあと、第2章からは「右四間飛車急戦型」、「右四間飛車左美濃型」、「右四間飛車穴熊型」と右四間の3つの形における成功例と対策を解説しています。また、第6章では「その他の戦型」と題して、飛先不突き右四間や早めの▲6五歩といった変則的な形を網羅しています。

四間飛車に対して右四間飛車で攻め倒したい方も、いつも右四間に悩まされている四間飛車党の方も必見の一冊です。

 


これだけで勝てる 石田流のコツ(大平武洋、2017/5/17)

石田流はこの1冊でOK

本書は各戦法で勝つために必要な定跡や考え方を伝授する「これだけで勝てるシリーズ」の石田流編です。

振り飛車の中でも最も攻撃力の高いのが石田流。玉の囲いは最小限にして、さばきが生命線となります。ただ、組み上がりまでの手順に変化が多いのでそこはしっかりと押さえておかなければなりません。

本書第1章で解説されている石田流の3つのコツは以下の通り。
(1)組み上がるまで油断しない
(2)低い形で戦う
(3)▲7七桂と▲7七角を使い分ける

これらのコツを念頭に置きながら具体的な指し方を第2章以降で学んでいきます。

第2章「石田流に組むまで」で駒組みを覚えた後、対急戦、対左美濃、対居飛車穴熊と一通りの居飛車の形に応じた指し方を解説しています。

振り飛車を指したくて、しかも攻めたい。という方にぴったりの戦法です。

ぜひ本書で指し方のコツを身につけて、実戦で試してください。

 


村山慈明の居飛車対振り飛車 知って得する序盤術(村山慈明、2017/5/12)

序盤研究家の著者が、駒組みを丁寧に解説

『将棋講座』テキスト(2016年4~9月号)の「村山慈明の知って得する序盤術」を単行本化。本書は特に、居飛車対振り飛車の対抗形にしぼった内容を紹介する。居飛車党の著者が、対振り飛車の序盤対策を惜しみなく解説。振り飛車党の方に参考になるエッセンスも満載!

 

棋譜集(5月出版)


将棋戦型別名局集5 中飛車名局集(将棋戦型別名局集5、鈴木大介、2017/5/24)

古今の中飛車の名局を100局厳選

本書は戦型別名局集の第5弾です。中飛車の名局を100局厳選し、鈴木大介九段が指し手の解説と共に、「鈴木大介の見た急所」として現代の目線で一局を通した分析を行っています。

前半は大山康晴十五世名人、升田幸三実力制第四代名人らがツノ銀中飛車で居飛車急戦を迎え撃った名局を中心に収録。後半は近藤正和六段が生み出したゴキゲン中飛車に久保利明王将、鈴木大介九段、菅井竜也七段らが工夫を凝らして中飛車を進化させてきた足跡を辿ることができます。

受身の戦法だったかつての中飛車と、後手番でも主導権を握って積極的に攻勢を取る現代のゴキゲン中飛車。同じ中飛車ながらテイストの違う将棋の見所を解説の鈴木九段はこう言います。「大山先生の時代の中飛車は一手一手の味わいを見てもらいたい。また、進歩した現代の将棋とどこが変わってどこが変わらないのかというところにも注目です。新しい時代の中飛車は一手一手の積み重ねはもちろん、思想や細かい考え方に着目して並べてもらえればと思います」

一冊で中飛車の歴史の全てが分かる、中飛車党のみならず全将棋ファン必携の書です。ぜひ、盤上中央で繰り広げられる華麗な戦いを堪能してください。

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【四間飛車 vs 急戦】鷺宮定跡の基本手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(10)~定跡の結論を覆す可能性~ https://shogijugem.com/shikembisha-saginomiya-joseki-13-5593 Wed, 14 Jun 2017 02:50:30 +0000 https://shogijugem.com/?p=5593 四間飛車の定跡を将棋ソフト「技巧」を使って研究しています。 対四間飛車急戦の鷺宮定跡の続きで、四間飛車の△1二香型に対する仕掛けです。 △1二香型もいくつかのパターンに分かれ、前回の記事では△1二香・△4三銀型を調べまし...

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鷺宮定跡(対四間飛車急戦)

四間飛車の定跡を将棋ソフト「技巧」を使って研究しています。

対四間飛車急戦の鷺宮定跡の続きで、四間飛車の△1二香型に対する仕掛けです。

△1二香型もいくつかのパターンに分かれ、前回の記事では△1二香・△4三銀型を調べましたが、今回の記事では△1二香・△5四歩型を研究します。

従来の定跡手順の結論は千日手でしたが、今回の研究によって先手の居飛車の打開手段が発見されました。

四間飛車:鷺宮定跡(△1二香・△5四歩型)の基本手順

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲6八玉△9四歩▲9六歩△7二銀▲7八玉△3二銀▲5八金右△6二玉▲5六歩△7一玉▲6八銀△5二金左▲2五歩△3三角▲3六歩△8二玉▲5七銀左△1二香(図1)が対四間飛車(△1二香型)の急戦の基本図です。

△1二香型の基本図

図1から▲3八飛△5四歩▲3五歩(図2)が、△1二香・△5四歩型の四間飛車に対する鷺宮定跡の仕掛けです。

鷺宮定跡の仕掛け

図2から△3五同歩▲4六銀△4五歩▲3三角成△同銀▲3五銀△6四角(図3)が鷺宮定跡の定跡手順です。

△1二香・△5四歩型では、図3の△6四角が狙いの角打ちです。

狙いの角打ち

図3から▲3四歩△2二銀▲2八角△同角成▲同飛△6四角▲3七角△5三角▲2六角△6四角(図4)と進むのが定跡手順です。

以下、先手の居飛車は▲3七角→▲2六角→▲3七角の往復を繰り返し、後手の四間飛車も△3三角→△6四角→△5三角の往復を繰り返すと千日手となります。

千日手は先手が打開すべきという共通認識があるので、図4になれば後手の四間飛車が十分というのが定跡の結論です。

千日手模様となる

上記の鷺宮定跡の基本手順は「四間飛車の急所2(藤井猛著)」を参考にしています。定跡手順の解説や変化手順が非常に詳しく書かれています。


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

将棋ソフト「技巧」による鷺宮定跡の解析

四間飛車(鷺宮定跡14)のソフト解析結果

図2の仕掛け(4手目▲3五歩)から、将棋ソフト「技巧」の評価値はほぼ互角で推移しています。一時的にややマイナスが続く範囲もありますが、千日手の手順に入ってからは評価値はゼロになります。

評価値ゼロというのは、千日手の場合に将棋ソフトが示す値です。

鷺宮定跡と将棋ソフト「技巧」の読み筋が、図2の仕掛け以降で異なるのは、

①13手目△2二銀(技巧の推奨手は△1九角成。以下括弧内が技巧の読み筋)

の1手のみです。技巧の推奨手順は、鷺宮定跡の定跡手順とほぼ一致することが分かります。

そうなると、技巧で検討すべき内容がほとんどなくなってしまうので、今回は先手の居飛車の打開手段について研究します。定跡書「四間飛車の急所2(藤井猛著)」では、

②12手目▲2四歩(定跡書と技巧の推奨手は共通して▲3四歩)
③14手目▲3七角(定跡書と技巧の推奨手は共通して▲2八角)

の2つの変化手順が示されており、いずれも先手の居飛車が上手くいかないとされていますが、これらの変化を技巧で確認してみます。

①13手目△1九角成の変化(定跡では△2二銀)

鷺宮定跡の変化図1

①13手目△1九角成(変化図1)以下、▲3三歩成△同桂▲2四銀△3七歩▲同飛△同馬▲同桂△2四歩▲3四歩△3二歩▲3三歩成△同歩(変化図2)が将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図2の評価値は94で、形勢はほぼ互角です。

▲3四歩の銀取りを放置するのもすごいですが、その直後の▲2四銀のタダ捨てもすごい手です。派手な手の応酬になりますが、変化図2まで進むとバランスが取れているようです。

形勢判断の要素としては、

・駒の損得:「先手の角桂 vs 後手の飛車香」以外は同じです。駒の損得はほぼないです。
・玉の堅さ:「船囲い vs 美濃囲い」で後手が勝ります。
・駒の効率:後手の△4二飛と△1二香の働きが悪いです。
・手番:先手

ということで、互いに主張点があってほぼ互角になっています。

鷺宮定跡の変化図2

②12手目▲2四歩の変化(定跡書と技巧の推奨手は▲3四歩)

鷺宮定跡の変化図3

②12手目▲2四歩(変化図3)以下、△1九角成▲2三歩成△2九馬▲3三と△同桂▲3六飛△1八馬▲2六飛△2五歩▲1六飛△1四歩(変化図4)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順の一例です。変化図4の評価値は-26で、こうなれば形勢はほぼ互角なので先手も戦えます。

鷺宮定跡の変化図4

定跡書「四間飛車の急所2(藤井猛著)」で指摘されているのは、②12手目▲2四歩に対して△3七歩▲同銀△2四銀▲同銀△同歩の変化で、後手が指せると書かれています。

しかし、②12手目▲2四歩△3七歩に対して▲同桂△2四銀▲同銀△同歩▲6五銀(変化図5)と進むと、変化図5の技巧の評価値は162で、むしろ先手がやや指せています。

変化図5からは△5三角や△2七銀が有力ですが、いずれも技巧推奨手順だと評価値がプラスのまま指し手が続きます。

したがって、定跡書の結論とは異なり、②12手目▲2四歩は有力です。にもかかわらず、技巧は12手目▲3四歩を最善としているのが面白いところです。将棋ソフトの演算能力にも限界がありますし、精度の問題だと思います。

鷺宮定跡の変化図5

③14手目▲3七角(定跡書と技巧の推奨手は▲2八角)

鷺宮定跡の変化図6

③14手目▲3七角(変化図6)以下、△5三角▲2八飛△3三歩▲同歩成△同銀▲5五歩△4三金▲5四歩△同金(変化図7)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図7の評価値は-334で、形勢は後手優勢となります。

上記の手順中で△3三歩の合わせの歩が好手で、後手良しとなるのは定跡書「四間飛車の急所2(藤井猛著)」の結論と一致します。

したがって、③14手目▲3七角は疑問手で、先手の居飛車としては定跡通りに千日手を選ぶしかないようです。

鷺宮定跡の変化図7

まとめると、①13手目△1九角成は後手の四間飛車の変化として有力で、ほぼ互角です。

②12手目▲2四歩は先手の居飛車の変化として有力で、ほぼ互角です。この部分は、定跡書の結論を覆している可能性があります。

③14手目▲3七角は疑問手で、後手優勢となります。

鷺宮定跡(△1二香・△5四歩型)のまとめ

鷺宮定跡の△1二香・△5四歩型では、互角に近い変化が多くなります。

従来の定跡では互いに最善を尽くすと千日手になり、先手の居飛車の打開は難しいというのが結論でした。

しかし、②12手目▲2四歩を選べば、居飛車が打開できる可能性があります。

打開できたとしてもほぼ互角なので、四間飛車を簡単に潰せるわけではありませんが、定跡の結論は覆している可能性があります。

 


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

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