四間飛車の定跡を将棋ソフト「技巧」を使って研究しています。
対四間飛車の急戦定跡である山田定跡です。前回は△6四歩型に対してすぐに▲3五歩と仕掛ける手順を調べましたが、今回は▲6八金直△1四歩の交換が入っている形を研究します。
定跡では後手良しとされていますが、互角の変化が発見されたので、定跡の結論が覆る可能性があります。
<山田定跡の記事>
山田定跡の基本手順1、基本手順2、基本手順3(前回)
四間飛車:山田定跡(△6四歩型)の基本手順
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲6八玉△9四歩▲9六歩△7二銀▲7八玉△3二銀▲5八金右△6二玉▲5六歩△7一玉▲6八銀△5二金左▲2五歩△3三角▲3六歩△8二玉▲5七銀左△6四歩(図1)が対四間飛車(△6四歩型)の急戦の基本図です。
図1から▲6八金直△1四歩の交換を入れてから▲3五歩(図2)と仕掛けるのが、今回研究する山田定跡の形です。
図2から△3五同歩▲4六銀△3六歩▲3五銀△4五歩▲3三角成△同銀▲8八角△1三角(図3)と進むのが、山田定跡の定跡手順です。図3の△1三角が打てるのが、△1四歩型のメリットです。
図3から▲2四歩△同歩▲1六歩△2二飛▲1五歩△2五歩▲4四銀△同銀▲同角△3三銀▲7七角△2六歩(図4)が定跡手順で、形勢は後手良しとなります。図4での将棋ソフト「技巧」の評価値は-1237で、定跡の結論と同じく後手良しで一致します。
上記の山田定跡の基本手順は「四間飛車の急所2(藤井猛著)」を参考にしています。定跡手順の解説や変化手順が非常に詳しく書かれています。
将棋ソフト「技巧」による山田定跡の解析
図2の仕掛けからしばらくほぼ互角が続きますが、図3の一手前の11手目▲8八角から将棋ソフト「技巧」の評価値が-200ぐらいになり、後手やや優勢になります。そして、17手目▲1五角の悪手で技巧の評価値が-1000ぐらいとなり、後手勝勢と言える形勢判断になります。
山田定跡と将棋ソフト「技巧」の読み筋が、図2の仕掛け以降で異なるのは、
①9手目▲3三角成(技巧の推奨手は▲6六歩。以下括弧内が技巧の読み筋)
②11手目▲8八角(▲2六飛)
③16手目△2二飛(△2五歩)
④17手目▲1五歩(▲2六銀)・・・悪手
⑤23手目▲7七角(▲5五角)
の計5手です。④の悪手からは形勢が決定的に離れてしまっているので、①~④までの変化を研究します。
①9手目▲6六歩の変化
①9手目▲6六歩(変化図1)以下、△4三銀▲3八飛△6五歩▲2四歩△同歩▲5七銀(変化図2)が将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図2の技巧の評価値は-64で、形勢判断はほぼ互角です。
変化図2は、△4一飛、△6六歩、△2五歩など手が広い局面です。変化図2から△4一飛▲3六飛△6六歩▲3四歩△6七歩成▲同金右△8八角成▲同玉△2八角(変化図3)が技巧の推奨手順の一例です。変化図3の評価値は133で、ほぼ互角~先手がやや指しやすいです。
②11手目▲2六飛の変化
②11手目▲2六飛(変化図4)に対しては、△3二飛と△4三金が将棋ソフト「技巧」の推奨手で、どちらもほぼ互角になります。
△3二飛以下は、▲4一角△2二飛▲3六飛△4二飛▲5二角成△同飛▲3四歩△4二銀▲3七桂(変化図5)が技巧の推奨手順の一例です。変化図5の評価値は66で、形勢判断はほぼ互角です。
変化図4の▲2六飛に対して△4三金の順は、以下▲7七角や▲7七桂や▲5七銀など有力な手が多いです。△4三金以下の技巧の推奨手順の一例は、▲7七角△1三角▲3六飛△3四歩▲2六銀△4四銀▲1六歩△2二角(変化図6)です。変化図6の技巧の評価値は29で、形勢判断はほぼ互角です。
②11手目▲2六飛の変化は、後手の四間飛車側が△3二飛と△4三金のどちらかを選ぶことができますし、先手の攻めが簡単には決まらないという印象です。ただし、互角ぐらいにはなるので、他の変化が悪ければこちらを選ぶことになりそうです。
③16手目△2五歩の変化
③16手目△2五歩(変化図7)以下は、▲同飛△2二飛▲同飛成△同銀▲2八飛△3五角▲2二飛成△2四飛▲同龍△同角▲2八飛△6八角成▲同金△4六歩(変化図8)が将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図8の評価値は-358で、後手優勢になります。
④17手目▲2六銀の変化
④17手目▲2六銀(変化図9)以下、△4六歩▲1七桂△3四銀▲4六歩△2五歩▲同桂△4六角▲2九飛△2四飛(変化図10)が将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図10の評価値は-253で、形勢判断は後手優勢です。
まとめると、①9手目▲6六歩、②11手目▲2六飛は先手の居飛車側の変化として有力で、ほぼ互角となります。これらの変化は、定跡の結論を覆す可能性があります。
③16手目△2五歩は後手の四間飛車側の変化として有力で、後手優勢となります。
④17手目▲2六銀の変化は後手優勢となりますが、定跡手順の▲1五歩(技巧の解析では悪手)よりは勝ります。
山田定跡(△6四歩▲6八金直△1四歩型)のまとめ
山田定跡の△6四歩▲6八金直△1四歩型では、図3の△1三角があるので、後手良しというのが定跡の結論でした。
たしかに、図3の△1三角以降は後手の四間飛車側が優勢となります。
しかし、先手の居飛車側は△1三角を打たれる前に、①9手目▲6六歩、②11手目▲2六飛と変化することができます。これらの変化も簡単ではありませんが、将棋ソフト「技巧」の形勢判断はほぼ互角となります。
図2の仕掛けで後手良しという定跡の結論は覆る可能性があります。