【四間飛車 vs 急戦】山田定跡の基本手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(5)

山田定跡(対四間飛車急戦)

四間飛車の定跡を将棋ソフトを使って研究しています。

対四間飛車の急戦定跡である山田定跡です。山田定跡の△5四歩型と△6四歩型は以前の記事で研究しました。今回は△1二香型を将棋ソフト「技巧」で研究します。

<山田定跡の記事>
山田定跡の△5四歩型△6四歩型(1)△6四歩型(2)△6四歩型(3)

四間飛車:山田定跡(△1二香型)の基本手順

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲6八玉△9四歩▲9六歩△7二銀▲7八玉△3二銀▲5八金右△6二玉▲5六歩△7一玉▲6八銀△5二金左▲2五歩△3三角▲3六歩△8二玉▲5七銀左△1二香(図1)が対四間飛車(△1二香型)の急戦の基本図です。

対四間飛車急戦(△1二香型)の基本図

基本図から▲3五歩(図2)と仕掛けるのが山田定跡の仕掛けです。図2での将棋ソフト「技巧」の評価値は74で、形勢判断はほぼ互角です。

山田定跡の仕掛け

図2から△3五同歩▲4六銀△3六歩▲3五銀△4五歩▲3三角成△同銀▲2四歩△同歩▲同銀(図3)が山田定跡の基本手順です。図3は山田定跡の分岐点で、①△3四銀、②△4四銀、③△2四同銀などの変化がありますが、定跡の本手順は①△3四銀です。

山田定跡の分岐点

図3から△3四銀▲3五歩△4三銀▲2三銀不成△4四角▲5五角△同角▲同歩△4四角▲7七角△3五角▲3八飛△4六歩▲3六飛△3四歩(図4)までが山田定跡の定跡手順です。図4の技巧の評価値は224で、先手やや優勢となります。

山田定跡の結果図

上記の山田定跡の基本手順は「四間飛車の急所2(藤井猛著)」を参考にしています。図4は形勢不明ながら、先手の居飛車が不満というのがプロ棋士の評価です。


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

将棋ソフト「技巧」による山田定跡の解析

四間飛車(山田定跡)のソフト解析結果

山田定跡と将棋ソフト「技巧」の読み筋が、図2の仕掛け以降で異なるのは、

①7手目▲3三角成(技巧の推奨手は▲5五歩。以下括弧内が技巧の読み筋)
②9手目▲2四歩(▲2六飛)
③12手目△3四銀(△同銀)
④16手目△4四角(△6四角)
⑤22手目△3五角(△1四歩)
⑥24手目△4六歩(△2八歩)

の計6手です。

変化手順が多いので、本記事では前半の①~③の変化について研究します。

①7手目▲5五歩の変化

山田定跡の変化図1

①7手目▲5五歩(変化図1)以下、△5四歩▲2四歩△同歩▲同銀△4四角▲2二歩△5五歩▲2一歩成△5六歩▲2五飛△2八歩▲3一と△8八角成▲同玉△2九歩成(変化図2)が将棋ソフト「技巧」の推奨手順の一例です。

変化図2の評価値は140で、ほぼ互角~先手がやや指しやすいです。先手は銀得になりそうですが、玉の堅さの差と歩切れがマイナス要素です。

山田定跡の変化図2

②9手目▲2六飛の変化

山田定跡の変化図3

②9手目▲2六飛(変化図3)で、将棋ソフト「技巧」は(A)△4三金と(B)△6四角を有力手として示します。変化は幅広いですが、どちらもほぼ互角となります。

(A)△4三金以下は、▲5七銀△5四歩▲6六銀△3七歩成▲同桂△7一角▲4五桂△3五角▲3三桂成△2六角▲3三桂成△2六角▲4二成桂△同銀▲2二飛(変化図4)が技巧の推奨手順の一例です。変化図4の技巧の評価値は-53で、形勢判断はほぼ互角です。

山田定跡の変化図4

(B)△6四角以下は、▲2四歩△同歩▲同銀△3四銀▲1六角△4四飛▲3六飛△2五歩▲3七桂△5四歩(変化図5)が技巧の推奨手順の一例です。変化図5の評価値は-88で、形勢判断はほぼ互角です。

山田定跡の変化図5

③12手目△同銀の変化

山田定跡の変化図6

③12手目△同銀(変化図6)以下、▲同飛△3三角▲2一飛成(変化図7)と進みます。変化図7では、(A)△9九角成と(B)△2二飛が有力です。

山田定跡の変化図7

(A)△9九角成は将棋ソフト「技巧」の推奨手で、以下▲8八銀△9八馬▲5五角△8四香▲3三角成△9九銀▲同銀△8七馬▲7九玉△7六馬▲2四龍△3二飛(変化図8)が将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。

変化図8から▲2三馬△4二飛▲3三馬△3二飛以下の千日手の順があります。先手の居飛車が打開するなら変化図8で▲1一馬ですが、技巧の評価値は-17でほぼ互角です。

山田定跡の変化図8

(B)△2二飛は、以下▲同龍△同角▲6六桂△2四飛▲2一飛△2九飛成▲7四桂△同歩▲2二飛成△同龍▲5五角(変化図9)の王手飛車があります。同様の手順は定跡書「四間飛車の急所2(藤井猛著)」でも解説されており、先手良しとなります。

変化図9での技巧の評価値は210で、形勢判断は先手やや優勢です。王手飛車がかかっても、駒の損得は角桂交換なので、意外と微差のようです。

山田定跡の変化図9

まとめると、①7手目▲5五歩は先手の居飛車の変化として有力で、ほぼ互角~先手やや指しやすくなります。

②9手目▲2六飛も居飛車の変化として有力です。これに対して、後手は△4三金や△6四角としますが、いずれもほぼ互角となります。

③12手目△同銀は後手の振り飛車の変化として有力で、変化図7で△9九角成を選べばほぼ互角の形勢となります。定跡書「四間飛車の急所2(藤井猛著)」では、先手良しとされているので、部分的に定跡の結論を覆す可能性があります。ただし、①と②の変化で回避できますし、④~⑥の結論次第で変わってきます。

まとめ

四間飛車の△1二香型に対する山田定跡の仕掛けでは、定跡手順と将棋ソフト「技巧」の推奨手が異なることが多いです。

①7手目▲5五歩、②9手目▲2六飛、③12手目△同銀はいずれも有力です。このように、ほぼ互角となる変化手順が多くなります。

ただし、最終的な結論を出すためには、後半の④~⑥も調べる必要があります。これらの変化は、次回の記事で研究する予定です。


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)