【四間飛車 vs 急戦】山田定跡の基本手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果

山田定跡(対四間飛車急戦)

四間飛車の定跡を将棋ソフトを使って研究してみたいと思います。

久しぶりのブログ更新になりますが、これから更新頻度を高くしようと思っているので、よろしくお願いします。

四間飛車の急戦定跡については、かなり幅広く研究する予定です。

本記事では、対四間飛車の急戦定跡である山田定跡を取り上げています。定跡書の基本手順、将棋ソフト「技巧」による解析結果をまとめています。

対四間飛車の急戦は体系化されており膨大な定跡があります。その中でも、山田定跡は最も古い時期に研究された定跡の一つで、古典定跡としては代表的なものです。

四間飛車:山田定跡の基本手順

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲6八玉△9四歩▲9六歩△7二銀▲7八玉△3二銀▲5八金右△6二玉▲5六歩△7一玉▲6八銀△5二金左▲2五歩△3三角▲3六歩△8二玉▲5七銀左△5四歩(図1)が対四間飛車の急戦の基本図です。

四間飛車急戦の基本図

基本図から▲3五歩(図2)と仕掛けるのが山田定跡の仕掛けです。この局面での将棋ソフト「技巧」の評価値は-116で、ほぼ互角か後手やや指しやすいです。

山田定跡の仕掛け

以下、△3五同歩▲4六銀△3六歩▲3五銀△4五歩▲3三角成△同銀▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛△3三角▲2一飛成△2二飛▲同龍△同角▲6六角△同角▲同歩△2八飛(図3)までが山田定跡の定跡手順です。この局面での評価値は-376で後手優勢です。

山田定跡の結果図

上記の山田定跡の基本手順は「四間飛車の急所2(藤井猛著)」を参考にしています。図3での形勢判断は定跡書でも後手優勢であり、将棋ソフト「技巧」の形勢判断と一致します。

しかし、ソフトが示す最善手は、山田定跡の基本手順と一致しない部分が現れます。


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

将棋ソフト「技巧」による山田定跡の解析

四間飛車(山田定跡)のソフト解析結果

将棋ソフト「技巧」との読み筋が違うのは、

①31手目▲3三角成(技巧では▲6六歩。以下括弧内が技巧の読み筋)
②34手目△2四同歩(△6四角)
③36手目△2四同銀(△4四銀)
④43手目▲6六角(▲6六桂)
⑤46手目△2八飛(△2四飛)

の計5手です。

①31手目▲6六歩以下は、△4三銀▲2四歩△同歩▲2六飛△3二飛▲3六飛△3四歩▲同銀△同銀▲同飛(変化図1)が技巧の推奨手順の一例です。変化図1の評価値93で、形勢判断はほぼ互角です。

山田定跡の変化図1

②34手目△6四角以下は、▲2六飛△2四歩▲同銀△2五歩▲3三銀成△2六歩▲4二成銀△同角(変化図2)が技巧の推奨手順で、評価値-185で後手やや優勢です。

山田定跡の変化図2

③36手目△4四銀以下は、▲2六飛△2八歩▲3六飛△3五歩▲同銀△3二飛▲2六飛△3五飛▲3七桂(変化図3)が技巧の推奨手順の一例です。変化図3では先手の銀損ですが、評価値101でほぼ互角です。先手だけ飛車が成り込めそうなのと、後手の歩切れが大きいのだと思います。

山田定跡の変化図3

④43手目▲6六桂以下は、△2八飛▲3二飛△2九飛成▲1六角△4一銀▲3六飛成△1九龍(変化図4)が技巧の推奨手順の一例です。評価値は-278で後手優勢です。後手が駒得で玉も堅いので優勢ということでしょう。

山田定跡の変化図4

⑤46手目△2四飛以下は、▲3一飛△2九飛成▲4四角△6二角▲1一角成△5三角▲3六飛成△8八銀(変化図5)が技巧の推奨手順の一例です。変化図5の評価値は-572ではっきり後手優勢です。

山田定跡の変化図4

本手順である図3の△2八飛以下は、▲9五歩△同歩▲4四角△2九飛成▲3一飛△6二角▲同角成△同金寄▲3五角(変化図6)が一例です。変化図6の評価値は-519で、後手がはっきり優勢です。

山田定跡の変化図5

まとめると、①31手目▲6六歩、④43手目▲6六桂は先手の変化として有力です。山田定跡の定跡手順よりも先手が得をしている可能性があります。

②34手目△6四角、⑤46手目△2四飛は後手の変化として有力です。特に、⑤46手目△2四飛は先手の▲4四角を消すので、定跡手順の△2八飛よりも勝っている可能性があります。

③36手目△4四銀は疑問手のようです。

山田定跡のまとめ

図3の結果図で後手優勢になるので、図2における山田定跡の仕掛けは不成立というのが定跡です。将棋ソフト「技巧」での解析結果も、おおむねその結論を支持します。

しかし、31手目▲6六歩の変化のみは簡単に後手優勢とはならないようです。ただし、急戦を仕掛けてから角道を止める曲線的な手順なので、形勢はともかく、先手があえてこの手順を選ぶかどうかは難しいところだと思います。


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)