将棋の囲いをソフトの評価値で点数化するとどうなるか?
将棋ソフト「技巧」の評価値を使って、囲いの堅さを数値化します。
どのように数値化するかというと、本研究では四間飛車の定跡を活用します。
金銀3枚の囲いに限定して、11種類の囲いを徹底比較します。
特に、横からの攻めに対する囲いの強さがよく分かります。
数値化して点数を比較した結果をランキング形式で発表します!!
・囲いの評価値の測定方法(四間飛車の山田定跡の例)
・囲いの評価値ランキング(11位~8位)
・囲いの評価値ランキング(7位~4位)
・囲いの評価値ランキング(3位~1位)
・囲いの評価値ランキングのまとめ
まずは今回、将棋ソフト「技巧」で研究した11種類の囲いを紹介します。
美濃系の囲いでは、美濃囲い、高美濃囲い、銀冠、
矢倉系の囲いでは、金矢倉、片矢倉(天野矢倉)、平矢倉、
穴熊系の囲いからは、居飛車穴熊、
その他の囲いとして、金無双、カニ囲い、船囲い(▲7九銀型と▲4八銀型)、
のエントリーです。
これら11種類の囲いの堅さを、評価値の順番でランキング形式で発表します!!
以下は、最強の囲いを決める前回のランキング記事です。
囲いの評価値の測定方法(四間飛車の山田定跡の例)
上図は対四間飛車の急戦定跡である山田定跡の有名な局面です。
囲いに注目すると、先手の居飛車は▲4八銀型の船囲い、後手の四間飛車は美濃囲いです。
後手が△2八飛と先着していますが、先手は先に桂得しているので、もし玉の堅さが同じなら結構バランスが取れています。
実際に、先手の居飛車の囲いも美濃囲いにしてみると(上図)、将棋ソフト「技巧」の評価値は148で互角に近くなります。(評価値が-200~200の範囲内ならほぼ互角)
このように、先手玉の囲いだけ変えて、ソフトの評価値の変化を調べることができます。
ソフトの評価値が高い囲い=堅くて優れた囲い
というシンプルな図式が成り立ちます。
今回は△2八飛と攻められている局面で比較するので、横からの攻めに対する囲いの強さがよく分かります。囲いの強さを比較するために、美濃囲いを基準にして評価値の差も調べます。
囲いの評価値ランキング(横からの攻め、金銀3枚)
それでは、囲いの堅さランキングを発表します!!
前回は最強の囲いランキングでしたが、今回のランキングは、
・金銀3枚の囲いに限定
・横からの攻めに対する守備力
となります。居飛車 vs 振り飛車の対抗型で役に立つランキングです!!
第11位 カニ囲い
カニ囲いがランキング最下位の11位です。
カニ囲いは上部からの攻めに対しては抵抗力がありますが、
横からの攻めには非常に弱いのが弱点です。
飛車交換になりやすい居飛車 vs 振り飛車の対抗型には不向きです。
実際に、対振り飛車で使われることはほとんどありません。
△2九飛成が王手になるのが痛すぎます。
玉が6筋で相手の攻め駒に近いこともマイナス要素です。
将棋ソフト「技巧」の評価値:-987
美濃囲いとの評価値の差:-1135
横からの攻めに対する守備力:××
第10位 船囲い(▲4八銀型)
もともとの山田定跡で現れる▲4八銀型の船囲いが第10位です。
居飛車の船囲いは、振り飛車の美濃囲いよりも薄いとよく言われます。
それなら、いったいどのくらい薄いのか?
将棋ソフトの評価値にすると500点分も薄いことが判明しました。
山田定跡のこの形は、玉が薄いために失敗することがよく分かります。
もし玉の堅さが同じだったら、逆に居飛車有利になるところです。
将棋ソフト「技巧」の評価値:-381
美濃囲いとの評価値の差:-529
横からの攻めに対する守備力:×
第9位 金無双(二枚金)
相振り飛車でよく使われる金無双(二枚金)が第9位です。
上部と端からの攻めには強いですが、横からの攻めには弱い囲いです。
このような特徴は、カニ囲いに似ています。
しかし、△2九飛成が王手にならないですし、
▲7九銀と引けば8筋からの玉の逃げ道を空けることができます。
最下位のカニ囲いよりはずいぶんマシと言えるでしょう。
将棋ソフト「技巧」の評価値:-345
美濃囲いとの評価値の差:-493
横からの攻めに対する守備力:×
第8位 船囲い(▲7九銀型)
▲7九銀型の船囲いが第8位です。
第10位の▲4八銀型と比べると、守りの銀が玉に近い分だけ堅いです。
しかし、美濃囲いと比べるとまだまだ弱いです。
あと▲8八玉→▲7八銀のたった2手で美濃囲いに発展できますが、
船囲いのままだと美濃囲いよりも400点ぐらい評価値で損をします。
将棋ソフト「技巧」の評価値:-251
美濃囲いとの評価値の差:-399
横からの攻めに対する守備力:×
囲いの評価値ランキング(7位~4位)
将棋の実戦でよく現れる代表的な囲いが並びます。
相居飛車のエース、振り飛車のエース、およびこれらの変化形です。
第7位 片矢倉(天野矢倉)
片矢倉(天野矢倉)が第5位です。
ソフトの評価値は-77で、上図の局面はほぼ互角なので、
横からの攻めに対しても、ある程度は守れることが分かります。
金銀の連結が良いので、△5九銀などの攻めにも抵抗力があります。
△2九飛成の後に、7九の地点に何かを打たれる手は気になります。
しかし、後手の持ち駒に金がないので、すぐに潰れることはなさそうです。
将棋ソフト「技巧」の評価値:-77
美濃囲いとの評価値の差:-225
横からの攻めに対する守備力:△
第6位 金矢倉
矢倉系の囲いの基本形である金矢倉が第6位です。
金矢倉は上部からの攻めには強く、横からの攻めには弱いと言われます。
△6九銀や△6九角などの攻めが急所になりやすいからです。
しかし、意外にも美濃囲いとは微差の評価値です。
上部、斜め、端からの攻めには美濃囲いよりも強いので、
バランスの良さや総合力の強さで微差なのかもしれないです。
将棋ソフト「技巧」の評価値:+69
美濃囲いとの評価値の差:-79
横からの攻めに対する守備力:△
第5位 美濃囲い
振り飛車のエース、美濃囲いが第5位です。
後手の四間飛車も美濃囲いなので、上図は先後で同じ囲いです。
先後が同じで比較しやすいので、本研究では囲いの堅さの基準にしています。
ちなみに、上図では先手が先に桂得をしており、手番も握っているので、
玉の囲いが全く同じでも先手がやや有利の評価値になっています。
美濃囲いは金矢倉よりも横からの攻めに強いことが評価値で確認できます。
将棋ソフト「技巧」の評価値:+148
美濃囲いとの評価値の差:0(基準)
横からの攻めに対する守備力:○
第4位 高美濃囲い
美濃囲いを発展させた高美濃囲いが第4位です。
美濃囲いよりも横からの攻めに対して弱いイメージがありますが、
ソフトの評価値は美濃囲いを200点ぐらい上回っています。
実は、横からの攻めに対してそれほど弱くないかもしれないです。
あるいは、横からの攻めにはやや弱くなっても、
上部や斜めが手厚くなって、総合的に堅いのかもしれないです。
将棋ソフト「技巧」の評価値:+358
美濃囲いとの評価値の差:+210
横からの攻めに対する守備力:○
囲いの評価値ランキング(3位~1位)
最後にナンバー3の発表です!!
ランクインして当然の囲いもありますが、意外な囲いも3位以内に入っています。
第3位 銀冠
プロが好む囲いとして有名な銀冠が堂々の第3位です。
美濃系の囲い(美濃囲い、高美濃囲い、銀冠)の3種類中でトップです。
囲いを組むのに一番手数をかけているだけのことはあります。
横からの攻めに弱くないのはもちろん、端や玉頭の守りなど総合力が高く、
全体的なバランスを評価されての評価値の高さだと思います。
将棋ソフト「技巧」の評価値:+385
美濃囲いとの評価値の差:+237
横からの攻めに対する守備力:○
第2位 平矢倉
矢倉系の囲いである平矢倉が、意外にも第2位にランクインです。
基本形の金矢倉は横からの攻めにやや弱いのですが、
▲6八金引とたった一手入れるだけで平矢倉になります。
平矢倉になると横からの攻めに対してかなり強固になります。
特に、△6九銀や△6九角の筋がないのが大きな利点です。
この評価値なら、振り飛車 vs 居飛車の対抗型でも十分に使えます。
将棋ソフト「技巧」の評価値:+522
美濃囲いとの評価値の差:+374
横からの攻めに対する守備力:○
第1位 居飛車穴熊
振り飛車の天敵、居飛車穴熊が貫禄の第1位です。
ソフトの評価値は驚愕の+876で、他の囲いを圧倒します。
「金銀3枚の囲いの中で最も堅い」という事実が数値でも証明されました。
囲いの堅さ、玉の戦場からの遠さ、王手のかからなさ。
すべての要素で隙がない穴熊が最強の囲いです。
将棋ソフト「技巧」の評価値:+876
美濃囲いとの評価値の差:+728
横からの攻めに対する守備力:◎
囲いの評価値ランキングのまとめ
「技巧」の評価値:四間飛車の山田定跡で、囲いを変えた時の将棋ソフト「技巧」の評価値。
美濃囲いとの差:美濃囲いを基準の0とした時の評価値の差。
横の堅さ:横からの攻めに対する囲いの堅さの評価。