矢倉、美濃、穴熊の3つは将棋で最も基本的な囲いです。
相居飛車の将棋で最もよく現れるのが矢倉です。
基本形からのバリエーションは豊富で、ちょっとした形の違いで、横からの攻めに強くなったり、上部からの攻めに強くなったり、囲いの特徴や守備力の強さが変わってきます。
実戦で非常に役立つ知識なので覚えておきましょう。
このページの目次
・銀矢倉
・平矢倉
・菊水矢倉
・矢倉穴熊
・2枚矢倉
・総矢倉
・菱矢倉
矢倉囲いを極める77の手筋(マイナビ将棋BOOKS、2016年)
金矢倉(基本形)
矢倉の基本形は金矢倉です。
「玉の囲いは金銀3枚」という格言があり、金2枚と銀1枚の計3枚が囲いの基本です。
金矢倉は相矢倉戦で最も頻繁に出現する囲いで、上部からの攻めに強いのが特徴です。
一方で、横からの攻めにはやや弱く、急所の駒である7八の金を狙われると脆さもあります。
銀矢倉
金矢倉の6七の金が銀に代わった囲いです。
金矢倉と比べて囲いを組むのに2手余分にかかるので、実戦での頻度は少なめです。
金矢倉と比べて、どちらが堅いかは状況によります。
6七の銀が7八の金に利いているので、金矢倉よりもやや堅いこともあります。
ただし、5七の地点に利きがないのが弱点となっています。
上部からの攻めに対しては、金矢倉に比べて7七の地点の利きが少ないことには要注意です。
桂馬で7七の地点を狙われた時に、金矢倉よりも手抜きがしづらいです。
平矢倉
金矢倉の6七の金が一マス下がった囲いです。
相居飛車の角換わりの将棋でよく現れる囲いで、△6九角と打たれる筋を消しています。
(左右逆ですが)相振り飛車でもたびたび現れます。
2枚の金の連結がよく、横からの攻めに対しては金矢倉よりも強いです。
7六や6六の地点が薄く、上部からの攻めに対しては、金矢倉よりも弱いことが多いです。
ただし、6筋からの攻めに対しては、あらかじめ金が当たりを避けている意味もあります。
片矢倉(天野矢倉)
金矢倉の二段目(八段目)の玉と金がそれぞれ1マスずつ右にずれた囲いです。
矢倉の早囲いの出だしから、金矢倉よりも1手早く組むことができます。
平矢倉と同じく、6九の地点をカバーしているので、角交換に強い形になっています。
ただし、7八金型の通常の矢倉に比べて、7八玉型は8筋がかなり弱くなっています。
また、7九の地点も大きな弱点で、一段飛車を打たれた時には特に注意が必要です。
総合的にみて、金矢倉よりもやや薄い囲いと言えます。
銀立ち矢倉
金矢倉から銀が一マス上がった囲いです。
7筋の位を取っているのが最大の特徴で、対振り飛車戦では玉頭位取り戦法と呼ばれます。
銀が上ずっているので、金矢倉と比べて、横からの攻めには少し弱くなっています。
金矢倉自体が横からの攻めには弱めの囲いで、銀立ち矢倉はさらに弱体化しています。
ただし、▲7七玉~▲8六玉の脱出ルートがあり、上部が広くて、やや手厚くなっています。
最大のメリットとして、振り飛車の美濃囲いに対する▲7四歩からのコビン攻めや、
8筋の歩を伸ばしての玉頭攻め、7六の銀を使った端攻めなどが挙げられます。
菊水矢倉
金矢倉の7七の銀を8八に引いて、空いた7七の地点に桂を跳ねた形です。
桂を跳ねると8九にスペースができるので、玉がもぐることができます。
端攻めや8筋の銀交換を避けて、金矢倉から▲8八銀と引いて受ける形はよくあるのですが、
壁銀になって逃げ道がふさがれてしまいます。
その壁銀を解消するための方法の一つとして、菊水矢倉への組み替えがあります。
玉が一段目(九段目)にあるので、上部からの攻めに対して遠くなっています。
ただし、横が空いているので、一段飛車の王手には注意が必要です。
桂頭も弱点となっているので、総合的にみると金矢倉よりもやや薄い囲いと言えるでしょう。
矢倉穴熊
矢倉から手数をかけて穴熊にもぐった囲いです。
「金矢倉から2手」かけた矢倉穴熊A、
「金矢倉から4手」かけた矢倉穴熊B、
「金矢倉から5手」「平矢倉からなら4手」かけた矢倉穴熊Cなどの種類があります。
どの矢倉穴熊でも、玉が戦場から遠くなり、王手がかかりにくくなるのが大きな利点です。
しかし、矢倉穴熊Aは、端攻めに弱い、7八の金が浮き駒になる、などの欠点があります。
玉と金銀がやや離れていて、穴熊にしては脆さがあります。
矢倉穴熊Bまで組めると、端は銀でカバーされていますし、7八金の浮き駒もなくなります。
ただし、7七の金が桂馬で狙われたときに形が大きく乱れます。
矢倉穴熊Cは一番手数がかかりますが、一番しっかりした矢倉穴熊です。
浮き駒がないですし、△8五桂に対しては▲8六銀と形良く受けることができます。
2枚矢倉
金矢倉と比べると、金が1枚少ない囲いです。
金銀1枚ずつで計2枚の囲いなので、金銀3枚の他の矢倉系の囲いよりも当然弱いです。
とはいえ、金銀1枚ずつの囲いとしては好形で、それなりの耐久力があります。
相居飛車の角換わりの将棋で頻繁に現れます。
総矢倉
金矢倉に5七の銀を1枚加えた金銀4枚の囲いです。
金銀3枚の金矢倉よりも、銀1枚分だけ守備力が上がっています。
相矢倉戦で専守防衛策や四手角の作戦を取るときによく現れます。
ここから5七の銀が、4六や6六に進出するパターンも多いです。
菱矢倉
総矢倉から右銀を6六に上がった金銀4枚の囲いです。
相矢倉戦で6筋の位を取った時に現れる形です。
矢倉の上部や盤面中央付近が手厚い構えです。
6六の銀は守りだけでなく、攻め駒として活用することも多くなります。
その他の4枚矢倉
金矢倉+6八銀、銀矢倉+6八金、銀立ち矢倉+6六銀、銀立ち矢倉+7七銀、など。
4枚矢倉Aは金矢倉+6八銀の4枚矢倉です。
総矢倉の5七の銀を6八に引いて固めた形で、金銀4枚が密集しています。
6八の銀が7七銀や6七金と連結しているので、その分耐久力があります。
7七の銀がはがされても▲同銀で、まだ金矢倉がまるまる残っています。
6七の金がはがされても▲同銀で、今度は銀矢倉の堅陣が残ります。
ただし、7八の金には玉しか利いていないので注意が必要です。
要の7八の金を取られて▲同玉となった形は、8筋が薄く、横からの攻めも怖い形です。
4枚矢倉Bは銀矢倉+6八金、あるいは、平矢倉+6七銀の4枚矢倉です。
もともと金銀の連結が優れている銀矢倉と平矢倉を構成要素としているので、
金銀4枚の連結が非常に優れています。
4枚矢倉の中でも最も堅い囲いの一つで、横からの攻めに対しては鉄壁です。
穴熊のビッグ4を思わせる囲いですが、矢倉の場合は端が弱点になります。
4枚矢倉Cは銀立ち矢倉+6六銀の4枚矢倉です。
6筋と7筋の2つの位を取っているのが特徴です。
両方の位に2枚の銀が利いているので上部が非常に手厚い形です。
▲7七桂の応援もできる形なので、6筋の守りがしっかりしています。
4枚矢倉Dは銀立ち矢倉+7七銀、あるいは金矢倉+7六銀の4枚矢倉です。
7筋に金銀3枚が並び、8筋からの攻めに対しては、非常に手厚い構えになっています。
また、7六銀と6七金の連結が良いことも特徴です。
6七の金を取られた時でも、▲同銀と取り返せば銀矢倉の形が残ります。
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矢倉囲いを極める77の手筋(マイナビ将棋BOOKS、2016年)