代表的な矢倉、美濃、穴熊以外でも、実戦でよく現れる有名な囲いはたくさんあります。
このページでは、
「3つの代表的な囲いのバリエーションの一覧(矢倉編、美濃編、穴熊編)」
では紹介できなかった実戦で使える色々な種類の囲いを紹介しています。
将棋の基礎知識として押さえておくと役立ちます。
このページの目次
・カニ囲い
・雁木
・右玉
・箱入り娘
・三手囲い
・金美濃
・風車
全戦型対応!絶対に覚えたい 将棋・囲いの守り方110(及川拓馬、2016年)
カニ囲い
矢倉や雁木を組み上げる途中の形ですが、上部からの攻めには強く、このままでも戦えます。
名前の由来は、2枚の金をカニのはさみに見立てる説と、玉が5九→6九と横に動くからカニ囲いという2つの説があるようです。
全戦型対応!囲いの破り方(及川拓馬、マイナビ将棋文庫、2014年)
雁木
雁木(がんぎ)はカニ囲いから発展した囲いで、玉頭の上部に手厚い構えです。
矢倉系の囲いとの大きな違いは、7七銀型ではなく6七銀型であることです。
矢倉と比べて8筋の守りは手薄ですが、盤面中央の厚みを重視しています。
玉の横が空いていて、飛車打ちに弱いので注意が必要です。
右玉
居飛車の将棋で、飛車がある右辺に玉を囲うのが右玉(みぎぎょく)です。
玉飛接近の悪形なので注意が必要です。
角換わりでよく現れる囲いで、棒銀や早繰り銀などの攻めから玉が遠ざかっています。
右玉Aは、最もよく現れる金銀2枚の右玉です。
いかにも薄そうな形ですが、バランスは良く、2筋を飛車の利きがカバーしています。
右玉Bは、右玉Aより一路深く3筋に玉を囲い、さらに銀1枚を加えた金銀3枚の右玉です。
右玉Aから手待ちをしながら玉を固める展開でよく現れる形です。
右玉Cは、3八金型の右玉でプロ棋士では糸谷哲郎さんが得意としています。
入城していない木村美濃とも言えて、玉の堅さよりも広さを重視した構えです。
玉が露出しており、流れ弾に当たりやすいので、指しこなすには力が必要です。
中住まい
中住まい(なかずまい)は5八に玉がある玉形で、横歩取りや相掛かりでよく現れます。
右側の金銀の形によって色々なバリエーションがあります。
図で左銀は初形の7九にありますが、(角交換や角の移動の後などで)8八、6八、7七などに移動する場合も多いです。
中住まいAは3八金型で、7八金と3八金の2枚が左右に開いた形なので金開き(きんびらき)と呼ばれます。
右銀は4八銀のまま囲いを構成することもありますし、▲3六歩→▲3七銀などから前線で攻め駒として働くこともあります。
中住まいBは4八銀―5九金型で、松尾流(まつおりゅう)と呼ばれます。
ここから1手で後述の中原囲いに組み換えることもできます。
中住まいCは3八銀型で、右側の金銀の形は片美濃と同じです。
玉を右辺に移動させて片美濃(坊主美濃)に囲い、ひねり飛車のように戦うこともできます。
中原囲い(中原玉)
中原囲い(なかはらがこい)は、横歩取りや相掛かりでよく現れる囲いです。
2筋や3筋は手薄ですが、中住まいの金開きよりも玉が堅いのが利点です。
中原誠十六世名人が愛用した形として知られています。
箱入り娘
船囲いの5八の金を一つ寄った形で、対振り飛車で使われる囲いです。
玉が守備駒で作られた箱に入っているように見えます。
横からの攻めにはそれなりに堅いのですが、手がつくと早いことから箱入り娘と呼ばれます。
ミレニアム
振り飛車の角筋を避けるために考案された囲いで、2000年に流行したことからミレニアムと呼ばれます。「トーチカ」や「カマクラ」と呼ばれることもあります。
左桂を▲7七桂と跳ねて、空いた8九の空間に玉が収まります。
金銀の形は穴熊に似ていますが、玉の位置が角筋を避けているのが最大の特徴です。
ミレニアムAは金銀4枚の形が松尾流穴熊と同じで、非常に堅いミレニアムの理想型です。
ミレニアムBは金銀が低い形のバリエーションですが、8九玉の形は共通しています。
三手囲い
名前が表すように、たったの三手で作れる囲いです。
片美濃よりも1手早く完成するので早囲い(はやがこい)とも呼ばれます。
三手囲いAは、片美濃と比べると、5七の地点に銀の利きがあるのが長所です。
ただし、手薄な2筋から攻められた時に、左辺が壁になっているのは短所です。
あと2手かけると後述の金美濃に発展させることができます。
三手囲いBは、4八に銀ではなく金を上がった早囲いです。
2筋方面から攻められた時に、左辺が壁になっていないので逃げ出しやすいです。
金無双の金銀2枚の簡略版と考えることもできます。
金美濃
金美濃(きんみの)は通常の美濃囲いとは違って、3八の駒が銀ではなく金です。
同じ金銀2枚の片美濃と比べて、上部がやや手厚い囲いです。
名前が「金美濃」で、振り飛車でよく使われることもあり、美濃系の囲いとして分類されやすいです。しかし、①3八に金がいること、②▲3六歩→▲3七銀で矢倉に発展すること、から矢倉系の囲いと考えることもできます。
▲4六歩→▲4七銀で、木村美濃に発展させることもできます。
金無双(二枚金)
金無双(きんむそう)は、相振り飛車では代表的な囲いです。
陣形が低いので、浮き飛車の横利きを生かしやすいです。
ただし、同じ金銀3枚でも囲いの柔軟性は金矢倉や美濃囲いの方が優れており、急所を突かれると粘りづらいです。
風車
木村美濃を左右に作ると、自陣全体が囲いのようになります。
風車Aは飛車以外の駒がすべて左右対称で、いわゆる「風車(かざぐるま)」です。
風車Bのように、玉が2八にいても違和感がないのが面白いところです。
玉は2八~5八~8八など、戦況に応じて色々な位置に移動できます。
風車Cは風車Aや風車Bが出来上がる前の途中の形です。
角道を止めたノーマル型の中飛車ですが、この形を風車と呼ぶこともあります。
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全戦型対応!絶対に覚えたい 将棋・囲いの守り方110(及川拓馬、2016年)