【四間飛車 vs 急戦】鷺宮定跡の基本手順と将棋ソフト「技巧」による解析結果(12)~定跡の結論を覆す可能性~

鷺宮定跡(対四間飛車急戦)

四間飛車の急戦定跡を将棋ソフトを用いて研究しています。

現在は鷺宮定跡の研究をしているのですが、従来の定跡の結論とは異なる変化がいくつも現れています。今回も将棋ソフトで調べてみると、新しい変化が発見されました。

今回研究している形は、鷺宮定跡の△1二香・△6四歩型です。定跡では無理とされている仕掛けですが、互角に戦える手順をソフトは示しています。

激指定跡道場4
マイナビ 激指 定跡道場4

四間飛車:鷺宮定跡(△1二香・△6四歩型)の基本手順

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲4八銀△4二飛▲6八玉△9四歩▲9六歩△7二銀▲7八玉△3二銀▲5八金右△6二玉▲5六歩△7一玉▲6八銀△5二金左▲2五歩△3三角▲3六歩△8二玉▲5七銀左△1二香(図1)が対四間飛車(△1二香型)の急戦の基本図です。

△1二香型の基本図

図1から▲3八飛△6四歩▲3五歩(図2)が、△1二香・△6四歩型の四間飛車に対する鷺宮定跡の仕掛けです。

鷺宮定跡の仕掛け

図2から△3五同歩▲4六銀△4五歩▲3三角成△同銀▲3五銀△4六歩(図3)が鷺宮定跡の定跡手順です。

図3の△4六歩が急所の一手で、▲同歩でも▲同銀でも△2七角の筋で後手良しになります。

急所の一手

図3から▲3四歩△4七歩成▲3三歩成△5八と▲4二と△6九と▲5二と△7九金▲8八玉△6八角(図4)という一直線の攻め合いが定跡手順です。図4の△6八角が詰めろで、後手の四間飛車が勝ちとなります。

上記の手順では、先に手を戻した方が不利となります。そこで、互いに受けを手抜いて攻める展開になりますが、図4の結果図まで進むと後手の勝ちがはっきりします。

鷺宮定跡の結果図

上記の鷺宮定跡の基本手順は「四間飛車の急所2(藤井猛著)」を参考にしています。定跡手順の解説や変化手順が非常に詳しく書かれています。


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)

将棋ソフト「技巧」による鷺宮定跡の解析

四間飛車(鷺宮定跡16)のソフト解析結果

図2の仕掛け(4手目▲3五歩)から、しばらくはほぼ互角の評価値で進みます。

しかし、14手目▲3三歩成の悪手で一気に後手の四間飛車が優勢となり、その後の18手目▲5二との悪手で四間飛車が勝勢となります。

定跡手順と将棋ソフト「技巧」の推奨手が、図2の仕掛け以降で異なるのは、

①6手目▲4六銀(技巧の推奨手は▲7七角。以下括弧内が技巧の読み筋)
②12手目▲3四歩(▲2四歩)
③14手目▲3三歩成(▲4七同銀)・・・悪手
④18手目▲5二と(▲6九同玉)・・・悪手

の4手となります。

後手の四間飛車は、将棋ソフト「技巧」の推奨手と完全に一致します。

ずっと技巧の推奨手を指しているわけですから、定跡手順をそのまま進めて、後手の四間飛車が勝ちになるのも納得です。

先手の居飛車はどのように対応するべきだったのでしょうか?

①6手目▲7七角の変化(定跡では▲4六銀)

鷺宮定跡の変化図1

①6手目▲7七角(変化図1)以下、△4五歩▲3五飛△7七角成▲同桂△3三銀▲3八飛△4三角▲6八金上△7六角▲3四歩△2二銀(変化図2)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図2の評価値は133で、ほぼ互角~先手がやや指しやすいぐらいの形勢です。

▲3五歩と仕掛けてから、いったん▲7七角と一呼吸置くのが面白い指し方です。△4五歩の反発があるので、最初から▲4六銀と出ない方針のようです。

変化図2のように、後手の四間飛車が角を手放してくれて、▲3四歩と押さえることもできれば、先手の居飛車も十分に戦えそうです。

鷺宮定跡の変化図2

②12手目▲2四歩の変化(定跡では▲3四歩)

鷺宮定跡の変化図3

②12手目▲2四歩(変化図3)以下、△同歩▲2八飛△4七歩成▲同銀△3九角▲2六飛△8四角成(変化図4)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図4の評価値は-4で、形勢はほぼ互角です。

変化図4はやや手が広く、▲4六歩、▲3四歩、▲8八角などが有力です。

鷺宮定跡の変化図4

③14手目▲4七同銀の変化(定跡では▲3三歩成)

鷺宮定跡の変化図5

③14手目▲4七同銀(変化図5)以下、△4四銀▲同銀△同飛▲5五角△4五飛▲3三歩成△2五飛▲4二と△同金▲3一飛成△4一歩(変化図6)が、将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図6の評価値は-90で、形勢はほぼ互角です。

四間飛車の美濃囲いの方が堅いのですが、先に飛車を成り込めますし、角の位置が良いので意外と微差のようです。

鷺宮定跡の変化図6

④18手目▲6九同玉の変化(定跡では▲5二と)

鷺宮定跡の変化図7

④18手目▲6九同玉(変化図7)以下、△4二金▲2二飛△4一歩▲5八玉(変化図8)が将棋ソフト「技巧」の推奨手順です。変化図8の評価値は-1487で、後手勝勢です。

もともとの評価値が-1000ぐらいだったので、▲5二とでも▲6九同玉でも、どちらを選んでも先手の居飛車は敗勢となります。

どちらの方が逆転の可能性が高いかの判断は難しいですが、一直線の変化ではすぐに負けになるので、変化図8の方がマシかもしれないです。

鷺宮定跡の変化図8

まとめると、①6手目▲7七角、②12手目▲2四歩、③14手目▲4七同銀は先手の居飛車の変化として有力で、互角に近い形勢となります。

これらの変化は、従来の鷺宮定跡の結論を覆す可能性があります。

③14手目▲4七同銀のところで、代わりに定跡手順の▲3三歩成の悪手を指してしまうと挽回は難しくなります。ただし、その場合に④18手目▲6九同玉を選んだ方が、定跡手順の▲5二とよりも粘れるかもしれないです。

鷺宮定跡(△1二香・△6四歩型)のまとめ

鷺宮定跡の△1二香・△6四歩型は、図4の結果図で後手の四間飛車の勝ちとなるので、図2の仕掛けは成立しないと考えられていました。

ところが、先手の居飛車には、①6手目▲7七角、②12手目▲2四歩、③14手目▲4七同銀という有力な変化手順があり、互角に近い形勢となります。

従来の定跡の結論とは異なり、先手の居飛車も十分に戦える可能性があります。

激指定跡道場4
マイナビ 激指 定跡道場4


四間飛車の急所2 急戦大全(上)(藤井猛著)