ゴキゲン中飛車で▲5八金右超急戦を返り討ちにする

ゴキゲン中飛車vs▲5八金右超急戦の自戦記です。
将棋倶楽部24でのレーティング約2000同士の対局で、
後手のゴキゲン中飛車側がじゅげむです。

超急戦定跡の基礎知識、ポイントとなる課題局面についても書いています。
実戦でよく現れる局面なので、ゴキゲン中飛車を指す人にとっても、
ゴキゲン中飛車対策としても役立つと思います。

このページの目次

ゴキゲン中飛車 vs ▲5八金右超急戦の定跡基礎知識

初手からの指し手:▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲5八金右(図1)

図1.▲5八金右超急戦の出だし

図1の局面がゴキゲン中飛車 vs ▲5八金右超急戦の定跡の出だしです。図1から超急戦を避けて△6二玉とするのも有力ですが、前回は超急戦でボコボコに潰されたので、今回は借りを返したいところです(対戦相手は別の人ですが。)

図1以下の指し手:△5五歩▲2四歩△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△3三角▲2一飛成△8八角成(図2)

図2.▲5八金右超急戦の定跡

この辺りは有名な定跡手順です。銀桂交換で、先手は飛車を成り込み、後手は角を成り込みます。互いに居玉のままで非常に激しい順ですが、バランスは取れているようです。プロ棋士の間でも、先手がやれると思われていた時期もあるし、逆に後手が良いと思われていた時期もあり、図2の優劣の判断は揺れ動いています。

図2以下の指し手:▲5五桂△6二玉▲1一龍(図3)

図3.▲5八金右超急戦の課題局面

図2からの数手も定跡化されています。▲5五桂は、後手の狙いである△2二馬や△3二銀を防ぎながら、次に▲4三桂不成、▲6三桂不成、▲3三角などを狙っている好手です。

定跡手順の▲5五桂に△5四銀は悪手

手順中の▲5五桂にうっかり△5四銀(変化図1)と「桂先の銀」で受けるとひどいことになります。

変化図1.△5四銀は悪手

変化図1から▲3三角と打たれて後手が困っています。▲3三角に対してどんな受け方をしても、8八の馬を素抜かれてしまいます。一例として、▲3三角△6二玉▲6三桂成△同銀▲8八角成(変化図2)で馬を取った先手の必勝形になります。

変化図2.馬を取った先手の必勝形

▲5五桂に対しては△6二玉が正解です。

定跡手順の▲1一龍の代わりに▲7五角は後手有望

また▲1一龍の代わりに▲7五角(変化図3)は、結論としては後手有望のようです。しかし、一時期プロでも有力視されていた手なので、アマチュア的には簡単ではないと思います。

変化図3.▲7五角は後手有望

変化図3からは△3二銀▲1一龍△5一金右(変化図4)と進みます。△3二銀は▲3一角成るに対する受け、△5一金右は▲3三香に対する受けです。変化図4で①▲2四歩、②▲2二歩という2通りの手段があります。

変化図4.ここで2通りの手段

▲2四歩は、以下△9九馬▲1三龍△7四歩▲8六角△5七歩▲同金△8九馬(変化図5)で後手有望のようです。

変化図5.▲2四歩以下の変化

▲2二歩は、以下△7四歩▲8六角△5七歩▲同金△8七馬▲6八角△7八銀(変化図6)でやはり後手有望のようです。

変化図6.▲2二歩以下の変化

このように、▲1一龍の代わりに▲7五角は後手有望です。ただし、ゴキゲン中飛車側としては、▲7五角の変化にも対応できる必要があります。

ゴキゲン中飛車 vs ▲5八金右超急戦の課題局面

図3.▲5八金右超急戦の課題局面
さて、図3で①△9九馬、②△5四銀、③△5四歩などの選択肢があると前回の記事「ゴキゲン中飛車で初遭遇の▲5八金右超急戦に潰される」で書きました。図3はプロの公式戦でもさまざまな手が試されているゴキゲン中飛車の課題局面です。

▲1一龍に△5四銀は有力

図3以下の指し手:△5四銀(図4)

図4.課題局面で△5四銀

今回も前回と同じ②△5四銀を選択し、その後の手順を修正しました。△5四銀は有力で、最近のプロ公式戦でも指されています。

△5四銀▲6六香に△9九馬は危険

図4以下の指し手:▲6六香(図5)

図5.▲6六香まで前回と同じ

以下、▲6六香までが前回と同じです。ここで前回は△9九馬としたのですが、以下▲1三龍△4二銀▲4四角(変化図7)の歩頭の角の強手をくらいました。以下、△同歩は▲6三桂成から飛車が取られますし、△7二玉は▲6三桂成△同銀▲同香成△同玉▲9九角で馬を抜かれます。

変化図7.歩頭の角の強手

このように、△9九馬は素抜きの筋があるので危険です。

△5四銀▲6六香に△8九馬は有力

図5以下の指し手:△8九馬(図6)

図6.前回の修正で△8九馬

今回は図5から△8九馬と修正します。△8九馬なら馬が素抜かれる筋がありません。以下、前回と同様に▲1三龍△4二銀となった局面で▲4四角は△7二玉で受かります。そこで、▲2三角△5一金左▲3四角成と進みます。ここで、うっかり△9九馬と香を取ると▲4四馬があります。そこで△7二玉(図7)の早逃げです。

図6以下の指し手:▲1三龍△4二銀▲2三角△5一金左▲3四角成△7二玉(図7)

図7.△7二玉の早逃げ

この順で、図7では後手が少し指せるのではないかと思っています。

ゴキゲン中飛車で超急戦を撃破

図7以下の指し手:▲4三桂成△同銀引▲同馬△同銀▲同龍△6二銀▲5四銀△5三歩▲6三香成△同銀▲同銀成△同玉▲5四銀△7二玉▲5三銀成△6二香▲6三銀△同香▲同成銀△8二玉▲5三香△4二飛▲同龍△同金▲5一香成(図8)

図8.先手の猛攻

▲4三桂成から先手の凄まじい猛攻です。後手玉は相当危ないのですが、先手は駒損の攻めで歩も利かないので、攻めがやや細い印象です。

長い手順なので、詳しくはページの一番下にあるflash盤の棋譜を参考にしてください。

最後の▲5一香成に△同金と取ると、▲7二飛で後手玉が詰んでしまいます。

攻防手△2七角

図8以下の指し手:△2七角(図9)

図9.攻防手△2七角

ここで、詰めろ逃れの詰めろを決め手にする狙いで△2七角と打ちました。△2七角は攻防手で、次の△4九飛の攻めを狙いながら、△6三角成で成銀を外す手も狙っています。

ゴキゲン中飛車では△2七角が攻防手になることが多いので、手筋として覚えておいて損はないです。

詰めろ逃れの詰めろが決め手

図9以下の指し手:▲6一成香△4九飛▲6八玉△6九飛成▲同玉△7八銀▲5九玉△4九金▲6八玉△7九馬▲7七玉△8五桂▲8六玉△6三角成(図10)

図10.詰めろ逃れの詰めろ

先手は開き直って▲6一成香と取ってきましたが、△4九飛から飛車を切って攻めます。飛車を渡して危ないようですが、王手の連続で先手玉を追っていって、最後の△6三角成が詰めろ逃れの詰めろになるように組み立てました。

図10以下の指し手:▲6二飛△同馬▲同成香(図11)

図11.先手玉に詰みがある

先手は適当な受けがないので、攻防手を探すしかありませんが、▲6二飛が怖い手です。要の馬を外す狙いで、△同馬▲同成香となった局面では、後手玉に詰めろがかかっています。

しかし、図11では先手玉に詰みがありました。

図11以下の指し手:△8七銀成▲7五玉△7四飛▲6六玉△7七銀▲5五玉△4四銀(投了図)までで後手のじゅげむの勝ちとなりました。

投了図

以下、▲6五玉△5三桂までで先手玉は詰みです。

本局では、前回超急戦で潰された反省を生かして、逆に返り討ちにすることができました。

ポイントは図4~図7の辺りだったと思います。
居飛車側としては、もし図7で振り飛車が少し指せているとすると、図4での▲6六香辺りで他の選択肢を考えたいです。

終盤はうまく決め切ることができました。

棋譜(flash盤)