ゴキゲン中飛車で初遭遇の▲5八金右超急戦に潰される

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ゴキゲン中飛車

▲5八金右超急戦 vs ゴキゲン中飛車

将棋の敗因の分析

敗因その1:定跡の知識不足

敗因その2:自玉が寄り筋になる手順の見落とし

ゴキゲン中飛車

最近、ゴキゲン中飛車を指しています。

ゴキゲン中飛車はプロ棋士の近藤正和さんが創始者の戦法です。近藤さんが四段になってプロデビューした1996年から既に20年近くが経とうとしています。すなわち、戦法としてはもう20年ぐらい指されていますが、現在でも主流戦法の一つとして数えられています。ゴキゲン中飛車が流行して升田幸三賞を受賞したのが2001年なので、プロ将棋界で集中的に研究されるようになってからでも15年ぐらいの年月が流れています。それだけ奥が深く、有力な戦法ということです。

私個人としては、ゴキゲン中飛車が流行していた時期は、ちょうど将棋に触れていなかった時期と重なります。流行期から指していた人と比べると知識も経験もかなりの差があります。実際勝率もあまり良くないですし、正直言ってトップクラスに苦手な戦法です。

居飛車側で指していて、ゴキゲン中飛車があまりにもやっかいなので、ゴキゲン対策を練ろうと思いました。しかし、対戦相手がみんなゴキゲン中飛車を指してくれるわけではないので、どうしても全対局数に占めるゴキゲン中飛車の割合が少なくなります。というわけで、自分から戦型誘導できる振り飛車側でも指してみようと思ったわけです。両方の側から指してみるのが、戦法の経験値を早めに上げるコツです。

ゴキゲン中飛車対策としては、超速▲3七銀、丸山ワクチンが有名で、実戦でも指されることが多かったのですが、ついに恐れていたあの戦法に初めて遭遇しました。

それは、▲5八金右超急戦です。

そして、一瞬で潰されました(泣)

▲5八金右超急戦 vs ゴキゲン中飛車

図1が超急戦の▲5八金右超急戦の基本図です。

▲5八金右超急戦vsゴキゲン中飛車のじゅげむの実戦1

図1から超急戦を避けて△6二玉とする将棋もプロの実戦で指されていますが、超急戦を受けて立つとすると図1から△5五歩です。(図2)

▲5八金右超急戦vsゴキゲン中飛車のじゅげむの実戦2

図2から▲2四歩△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△3三角▲2一飛成△8八角成(図3)が定跡手順です。非常に激しい手順ですが、タイトル戦でも何度も現れています。

▲5八金右超急戦vsゴキゲン中飛車のじゅげむの実戦3

図3から▲5五桂△6二玉▲1一龍(図4)もほぼ必然で定跡化された手順です。

▲5八金右超急戦vsゴキゲン中飛車のじゅげむの実戦4

図4は後手にとって色々と選択肢がある局面で、①△9九馬、②△5四銀、③△5四歩などの選択肢があります。

①△9九馬
2010年の第59期王将戦七番勝負第6局▲羽生善治vs久保利明戦では、△9九馬以下、▲3三角△4四銀▲同角成△同歩▲6六香△7二銀▲8二銀△2七角(参考図1)と進行して、後手の久保利明さんが勝っています。ただし、最近では△9九馬に▲3三香が有力とされているようです。

▲5八金右超急戦vsゴキゲン中飛車(参考図1)

②△5四銀
2015年3月の第73期A級順位戦プレーオフ▲広瀬章人vs△久保利明戦では、△5四銀以下、▲7五角△2一歩▲同龍△3二銀▲1二龍△8九馬▲2三歩△9九馬▲2二歩成△7七馬▲6八金上△7六馬(参考図2)と進み後手の久保利明さんが勝っています。

▲5八金右超急戦vsゴキゲン中飛車(参考図2)

③△5四歩
けっこう昔のタイトル戦になりますが、2007年の第78期棋聖戦五番勝負第4局▲渡辺明vs△佐藤康光戦では、△5四歩以下、▲6三桂成△同玉▲6六香△7二玉▲7五角△5一飛▲2三歩△6二銀打(参考図3)と進み、後手の佐藤康光さんが勝っています。

▲5八金右超急戦vsゴキゲン中飛車(参考図3)

というわけで、どれも有力そうなのですが、どうやら最近指されているらしい②△5四銀(図5)採用しました。その結果が、37手の短手数でのじゅげむ投了です(泣)(もちろん△5四銀が悪いわけではないです。)

▲5八金右超急戦vsゴキゲン中飛車のじゅげむの実戦5

△5四銀以下、▲6六香△9九馬▲1三龍△4二銀▲4四角(図6)と進みます。

▲5八金右超急戦vsゴキゲン中飛車のじゅげむの実戦6

▲4四角??

対局後の感想戦で、定跡の一手だと教えてもらったのですが、初見で30秒将棋でこんな手を指されると焦ります。

図6以下の有力な順として、

①△4四同歩と角を取ってしまう。飛車は取られるが、先に角得しているので駒損ではない。
図6以下、△同歩▲6三桂成△5一玉▲5二成桂△同金左(変化図1)

▲5八金右超急戦vsゴキゲン中飛車のじゅげむの実戦(変化図1)

②△7二玉から9九の馬を抜かせてしまう。その代わりに、桂香の持ち駒が手に入るし、先手の角が一瞬遊ぶ。
図6以下、△7二玉▲6三桂成△同銀▲同香成△同玉▲9九角(変化図2)

▲5八金右超急戦vsゴキゲン中飛車のじゅげむの実戦(変化図2)

があると教えてもらいました。

ところが実戦の手順は、

③4四の角は取らない。9九の馬は抜かせない。しかし、飛車も玉も取られる(泣)
△7二玉▲6三桂成△8二玉▲5二成桂△同金右▲7一角成△同玉▲6一飛△7二玉▲4一飛成(投了図)まで37手で先手勝ちとなりました。

▲5八金右超急戦vsゴキゲン中飛車のじゅげむの実戦7

こちらの記事は次戦の自戦記です。

ゴキゲン中飛車で▲5八金右超急戦を返り討ちにする
ゴキゲン中飛車vs▲5八金右超急戦の自戦記です。 将棋倶楽部24でのレーティング約2000同士の対局で、 後手のゴキゲン中飛車側がじゅげ...

将棋の敗因の分析

せっかく、清々しいまでの負けっぷりを披露したので、敗因の項目として加えておきましょう。

敗因その1:定跡の知識不足

本局の敗因を一言で言えば定跡の知識不足」です。

「▲4四角みたいな手を指されても、その場で考えて適切に対応すればいい」という考え方もありますが、それには「読み」や「大局観」などの将棋の地力が必要です。

例えば、変化図1のように飛車を取られても駒損ではなく、さらに▲6一香成と金を取られてもまだ駒損ではなく、以下△同玉▲6四飛のように5四の銀を狙われても大丈夫。とすぐに判断できるなら・・・。

あるいは、変化図2で9九の馬を素抜かれて角香交換の駒損でも、以下△5七歩のように手番を握って攻めれば難しい。とすぐに判断できればいいのですが・・・。

もちろん、定跡の知識なしで上手く切り抜けることができる可能性もありますが、「棋力に応じてどのくらい切り抜けられる確率がありそうか」というハードルを越えることになります。

ここで重要なのは、対戦相手と定跡の知識に差がある場合に、自分だけが大きなリスクを持っている可能性があることです。互いにリスクを持っているなら五分ですし、むしろ勝負としては面白いでしょう。しかし、自分だけが綱渡りというのは嫌なものです。特に本局のように、有名な急戦定跡の知識は頭に入れておいた方が無難です。

敗因その2:自玉が寄り筋になる手順の見落とし

将棋の勝率を上げるために「決め手を与えない」という考え方は大事です。

本局のように、一気に自玉が寄せられて将棋が終わってしまう手順は、何としてでも回避する必要があります。たとえ、その他の変化で形勢が思わしくなかったとしても、最悪の変化に飛び込む理由にはならないです。その意味で、「自玉が寄り筋になる手順の見落とし」は致命的です。

将棋は逆転のゲームなので、決め手を与えずに粘っているうちに、相手がミスをして逆転するというケースは非常に多いです。形勢が悪くなっても上手く粘って、虎視眈々と逆転のチャンスを狙いましょう。

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