【自戦記】相居飛車力戦(矢倉模様 vs 左美濃)、作戦勝ちから左美濃を攻め潰す

相居飛車の矢倉模様 vs 左美濃の自戦記です。将棋倶楽部24で、先手のじゅげむがレーティング約2000、後手の対戦相手がレーティング約2100の対局です。

最近は矢倉をテーマにしています。本局は相居飛車の力戦調で後手が左美濃だったのですが、居角左美濃の流行で左美濃自体が多くなっているのでしょうか?

序盤:ノーマル四間飛車模様からの左美濃

初手からの指し手:▲7六歩△3四歩▲2六歩△4四歩▲2五歩△3三角▲4八銀△3二銀▲6八玉△5二金右(下図)

序盤は後手がノーマル四間飛車模様の出だしだと思っていたのですが、△5二金右なので居飛車のようです。

相居飛車力戦(矢倉模様vs左美濃)-10

上図以下の指し手:▲7八玉△6二銀▲5六歩△8四歩▲6八銀△6四歩▲7七銀△6三銀▲7九角(下図)

ただ、先手の飛車先を△3三角で受ける形は、▲7九角の引き角から2筋の歩交換(角交換)を狙う筋があるので、序盤に神経を使います。正直、後手を持ってあんまり指したくない感じです。▲5六歩としたのは、引き角を見据えてのことです。

相居飛車力戦(矢倉模様vs左美濃)-19

そして、▲7九角の引き角が実現します。

後手の陣形は今流行の居角左美濃△6三銀型に似ているのですが、△3三角型で角道を止めているので、急戦を狙いにくくなっています。どちらかというと、△5一角~△7三角(△8四角)の三手角で使ってきそうな布陣です。

さらに、先手が▲6六歩を突いていないので、6筋が争点になりにくいです。▲6六歩を突かないのは先手の作戦で、矢倉囲いを優先させるよりも、右辺で早めに仕掛けようという狙いがあります。

上図以下の指し手:△4二玉▲2四歩△同歩▲同角△2三歩(下図)

序盤のポイント:角交換をするべきかどうか

2筋の歩交換が一つのポイントです。

相居飛車力戦(矢倉模様vs左美濃)-24

後手は△2三歩で角交換の選択肢を先手にゆだねましたが、角交換するのも有力だったと思います。△同角▲同飛△2三歩に▲3四飛と横歩を取るのは、△2八角の筋が残って少しやりづらいです。▲2二角の筋が残るので、しっかり読めば成立しているかもしれないですが、30秒の早指しだと▲3四飛は決断しづらいです。

上図以下の指し手:▲6八角△5四銀▲5七銀△6五歩(下図)

実戦では先手が▲6八角と引いて角交換を拒否する流れになります。先手が5筋を突いていて、後手が6筋を突いている形なので、先手の方が角の打ち込みに対して弱そうという判断です。(将来的な△3九角の筋など)

矢倉模様から急戦を狙い、作戦勝ちから先手優勢に

相居飛車力戦(矢倉模様vs左美濃)-28

後手は△6五歩と位を取ってきました。先手がゆっくりして、△7四歩~△5一角~△7三角まで許してしまうと、角のにらみが強烈で先手が悪くなりそうです。

上図以下の指し手:▲3六歩△3一玉▲3五歩△同歩▲4六銀△5一角▲3五銀△4三金▲3四歩(下図)

というわけで、▲3五歩で早くも仕掛けます。ここでは作戦勝ちだと思っていました。仕掛けのイメージとしては、参考記事『居角左美濃の最新形(叡王戦:羽生善治 vs 屋敷伸之戦)』のような感じです。先攻して▲3五同銀のところでは先手十分です。

▲3四歩では▲2四歩も有力だったか

相居飛車力戦(矢倉模様vs左美濃)-37

▲3四歩と拠点を作って好調そうですが、▲2四歩と攻めた方が良かった可能性もあります。実は、▲2四歩△同歩▲同銀△2五歩▲同飛△3四金のような手を気にしていたのですが、普通に▲2八飛と引いておいて、後手が困っていたかもしれないです。

▲3四歩の拠点も大きい手なので悪くなさそうですが、後手が拠点を奪還しにいく手段があるので簡単には良くならないです。

△4五銀の見落としが致命的にならなかった

上図以下の指し手:△2二玉▲1六歩△4五銀(下図)

ここで、▲1六歩は甘かったか。というよりも、△4五銀の見落としです。

相居飛車力戦(矢倉模様vs左美濃)-40

△4五銀と出られて、3四と5六の両方の歩を狙われて焦ります。

上図以下の指し手:▲1五歩△5六銀▲5八金右△4五銀▲3八飛△7四歩▲4六歩△5四銀▲1七桂△7三角▲2五桂(下図)

▲1六歩の顔を立てて▲1五歩。後手は△5六銀ですが、拠点の歩を払って△3四銀の方が嫌でした。本譜は後手が1歩を取るために忙しい中盤で2手かけています。しかし、この1歩得を生かせるようなゆっくりした展開にはならないです。

以下、▲3八飛と▲3四歩の拠点を守ったところでは、少しほっとしました。

△7四歩で次に△7三角が見えますが、▲4六歩が間に合います。△7三桂▲2五桂(下図)の局面は先手良しだと思います。

攻め駒の働きが良いので1歩損でも先手良し

相居飛車力戦(矢倉模様vs左美濃)-51

1歩損ですが、飛銀桂の働きが最高です。▲1九香も攻めに働きそうです。▲3四歩の拠点もこうなると大きい。持ち歩も1枚あるので、「飛銀桂香の4枚+α」ぐらいの攻め駒を確保できています。「四枚の攻めは切れない」という格言もありますし、攻めは何とかなりそうな雰囲気です。ただし、▲6八角の使い方は考えておく必要があります。

一方、後手は攻め合いにならないのがつらいところです。△8五歩と突いてないので、飛車の働きがイマイチですし、桂馬も使えていません。△5四銀の腰掛け銀は攻防の位置になることが多いのですが、1~3筋を狙われていて、6筋に争点がない現状では、△5四銀がやや中途半端な駒になっています。

後手の良さは角の働きなので、角のにらみで先手の攻めを牽制したいところです。先手が歩損ということもあるので、受けに回って先手の攻めを切らしたいところでしょう。

先手が攻めて後手が受ける展開

上図からの指し手:△4二金上▲1四歩△同歩▲1三歩△同桂▲3三歩成△同銀▲同桂成△同金上▲3四銀打(下図)

ここからは、先手の攻めと後手の受けという構図がはっきりします。

相居飛車力戦(矢倉模様vs左美濃)-61

▲3四銀打は、歩があったら歩を打ちたいところですが、逆に△3四歩と打たれると困るので「敵の打ちたい所へ打て」です。

上図以下の指し手:△3二歩▲1四香△1二歩▲3三銀成△同歩▲3四歩△同歩▲同銀△同金▲同飛△3三歩▲3九飛(下図)

攻めが一段落した局面での形勢判断は?

相居飛車力戦(矢倉模様vs左美濃)-73

▲3九飛で先手の攻め駒がさばけて一段落。持ち歩の数が少ないことが気になりますが、金2枚と銀桂の交換なので先手優勢でしょう。

駒の損得としては、金6点、銀5点、桂4点、歩1点とすると、先手が3歩損しているので互角という考え方もあります(参考記事『将棋の駒の価値の理論化:谷川理論からのスタート』)。しかし、玉の堅さが大差なので、やはり先手優勢です。

しかし、後手陣はけっこうさっぱりした形で、先手は攻めの拠点が残ってないので、攻めの継続には苦労しそうです。何が有効な攻めなのかすぐに見えづらいですし、無理攻めをしてしまいそうな局面です。

中盤から終盤へ、玉の堅さの差が歴然

上図以下の指し手:△3二銀▲1九飛△4五歩▲1六飛△4六歩▲同角(下図)

▲1九飛も迷った末の着手なのですが、実は△4五歩を誘っています。先手は攻めに困っているので、相手から動いてもらおうということです。狙いは▲6八角を働かせることです。以下、狙い通りに▲4六同角で、はっきり優勢になったと思いました。

相居飛車力戦(矢倉模様vs左美濃)-79

後手が△4二飛のカウンターで飛車をさばくが・・・

上図以下の指し手:△4二飛▲4四歩△同飛▲3五角△4九飛成▲5三角成(下図)

△4二飛のカウンターに強く対応して、▲5三角成まで進むと、玉の堅さの差が歴然としています。後手は攻めようとしても▲3一銀の筋があるので、銀を渡せないです。

相居飛車力戦(矢倉模様vs左美濃)-85

上図以下の指し手:△4二桂▲4八金打△6九龍▲同玉△4一歩▲4四歩△5二歩▲5四馬△同桂▲4三銀△3一銀▲1三香成△同歩▲2五桂△4五香▲3四歩△同歩▲同銀不成△3三歩(下図)

後手玉に詰みがある

以下、指し手が進んで△3三歩と後手が受けた局面。ここで後手玉に詰みがあります。

相居飛車力戦(矢倉模様vs左美濃)-104

上図以下の指し手:▲1三桂成△同香▲同飛成△同玉▲1四香△同玉▲1二飛まで111手で先手のじゅげむの勝ち。

▲1二飛以下、△2四玉でも△1三合駒でも▲2五金までの詰みです。

本局の感想と棋譜(flash盤)

居角左美濃が流行っていますが、左美濃自体は上部からの攻めにあまり強くないので、攻められる展開になると厳しそうです。特に△3三角型は角頭を狙われます。

本局は急戦を狙って作戦勝ちになったと思います。

しかし、中盤が甘くて▲3四歩の拠点を消されたら大変でした。

▲3九飛の辺りでは、後手は▲6八角を働かせないように粘りたかった気がします。

△4二飛の辺りの大駒のさばき合いですが、玉の堅さに金銀2枚の差があると、攻め合いはやはり厳しいです。

最後は上手く決めることができました。

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