「将棋で最強の囲いは何か? 囲いランキング(11種類を徹底比較)」の続編です。
ランキングで「最強」の理由と「最弱」の理由を分析します。
今回の記事では「金銀の連結ポイント」という新たな考え方を導入します。
このページの目次
・最強の囲いランキングの結果
・囲いの堅さの原則から「最強」の理由を読み解く
・囲いの堅さの原則1「金銀の枚数」
・囲いの堅さの原則2「金銀が玉に近い」
・囲いの堅さの原則4「駒の連結」
・金銀の連結ポイントランキング
・金銀1枚あたりの連結ポイントランキング
・囲いの堅さの原則3と5「玉の位置」
・囲いの堅さランキングの分析表
最強の囲いランキングの結果
前回の記事「将棋で最強の囲いは何か? 囲いランキング(11種類を徹底比較)」の結果を再掲します。
今回の記事では、「最強」の囲いはなぜ「最強」なのか? 逆に、「最弱」の囲いはなぜ「最弱」なのか? の理由を深掘りします。
この表で言うと、右側の3項目「枚数(金銀の枚数)」「連結(駒の連結)」「遠さ(玉の戦場からの遠さ)」などの分析がテーマです。
囲いの堅さの原則から「最強」の理由を読み解く
以前の記事で、囲いの堅さの原則1~5について述べました。
これらの原則から、なぜ「最強」あるいは「最弱」なのかを考えます。
以下は、囲いの堅さの原則についての参考記事です。
囲いの堅さの原則1「金銀の枚数」
[金銀4枚]
ビッグ4(1位)、松尾流穴熊(2位)、ダイヤモンド美濃(3位)、最強囲い(11位)
[金銀3枚]
穴熊(3位)、銀冠(5位)、本美濃(6位)、金矢倉(6位)、片矢倉(8位)、金無双(9位)、船囲い(10位)
(※かっこ内は最強の囲いランキングの順位)
囲いの堅さを決める上で最重要なのが、何と言っても金銀の物量です。
金銀の枚数が多ければ多いほど囲いは堅くなります。
ビッグ4(1位)、松尾流穴熊(2位)、ダイヤモンド美濃(3位)の上位陣は4枚です。
余程の悪形(例:11位の最強囲い)でなければ、金銀の枚数がモノを言うのが囲いです。
例1:松尾流穴熊(2位)>穴熊(3位)
例2:ダイヤモンド美濃(3位)>本美濃(6位)
この辺りの順位の差は、金銀の枚数の効果と言っていいでしょう。
囲いの堅さの原則2「金銀が玉に近い」
実は「最強の囲いランキング」にエントリーした11種類の囲いは、
どれも金銀の位置が玉に近く、原則2を満たしています。
松尾流穴熊、ダイヤモンド美濃、本美濃の3種類以外は、
すべて玉から2マス以内のエリアに金銀が収まっています。
上の3種類の囲いについても、金が1枚だけ3マスの距離にはみ出しているだけです。
以下は、玉と金銀の位置関係についての参考記事です。
囲いの堅さの原則4「駒の連結」
囲いの堅さの原則3より先に、原則4「駒の連結」を取り上げます。
なぜなら、原則3は原則5と一緒に考えた方がわかりやすいからです。
駒の連結で特に重要なのが金銀の連結です。
そこで、金銀の連結を数値化してみましょう。
やり方としては、ある金銀への別の金銀からの利きを1点と数えます。
その点数を合計して、「金銀の連結ポイント」とします。
さらに、金銀の枚数で割ると、「金銀1枚あたりの連結ポイント」が算出されます。
例えば、上図の穴熊では、
8八銀には、7八金と7九金の両方が利いているので2点
7八金には、7九金が利いているので1点
7九金には、8八銀と7八金が利いているので2点
のトータル5点(2点+1点+2点)が穴熊の「金銀の連結ポイント」です。
金銀の枚数は3枚なので、5点を3枚で割ると、
約1.67ポイント(点/枚)が穴熊の「金銀1枚あたりの連結ポイント」になります。
金銀の連結ポイントランキング
8点 → ビッグ4(1位)
7点 → ダイヤモンド美濃(3位)
6点 → 松尾流穴熊(2位)
5点 → 穴熊(3位)、片矢倉(8位)
3点 → 銀冠(5位)、本美濃(6位)、金矢倉(6位)
2点 → 金無双(9位)、船囲い(10位)、最強囲い(11位)
(※かっこ内は最強の囲いランキングの順位)
ビッグ4が8点で、金銀の連結ポイントもトップです。
ランキング3位以内の上位陣は、すべて5点以上となっています。
金銀の枚数が多いほど、金銀の連結も良くなる傾向です。
しかし、「最強囲い」は金銀が4枚もあるのに、
金銀の連結ポイントはたった2点で最弱クラスです。
金銀の物量を全く生かせていません。
この辺りに「最強囲い」の「最弱」の理由の一つがあります。
ビッグ4(1位)>松尾流穴熊(2位)
片矢倉(8位)>金無双(9位)
この辺りの順位の差は、金銀の連結の影響が大きいです。
金銀1枚あたりの連結ポイントランキング
2ポイント(8点/4枚)→ ビッグ4(1位)
1.75ポイント(7点/4枚)→ ダイヤモンド美濃(3位)
1.67ポイント(5点/3枚)→ 穴熊(3位)、片矢倉(8位)
1.5ポイント(6点/4枚)→ 松尾流穴熊(2位)
1ポイント(3点/3枚)→ 銀冠(5位)、本美濃(6位)、金矢倉(6位)
0.67ポイント(2点/3枚)→ 金無双(9位)、船囲い(10位)、
0.5ポイント(2点/4枚)→ 最強囲い(11位)
(※かっこ内は最強の囲いランキングの順位)
金銀1枚あたりの連結ポイントは、
金銀をどのくらい効率良く使えているかの目安です。
逆に、金銀1枚あたりの連結ポイントが少ないと、
弱点となる金銀が多いことになります。
金銀1枚あたりの連結ポイントで見ても、ビッグ4はトップです。
金銀の枚数が多いだけでなく、金銀の効率も良いのが「最強」の理由です。
ランキング最下位の「最強囲い」は、金銀の効率も最も悪いことがわかります。
囲いの堅さの原則3と5「玉の位置」
原則3「玉の戦場からの遠さ」と、原則5「桂香の働き」は、
別々に考えるよりは、「玉の位置」として一緒に考えてしまった方がわかりやすいです。
横からの攻めに対しては、玉が端に行くほど戦場から遠くなります。(原則3)
同時に、端の桂香が玉の守り駒として働くようになります。(原則5)
1筋(9筋)→ ビッグ4(1位)、松尾流穴熊(2位)、居飛車穴熊(3位)
2筋(8筋)→ ダイヤモンド美濃(3位)、銀冠(5位)、本美濃(6位)、金矢倉(6位)
3筋(7筋)→ 片矢倉(8位)、金無双(9位)、船囲い(10位)
5筋 → 最強囲い(11位)
(※かっこ内は最強の囲いランキングの順位)
原則3と原則5「玉の位置」の項目は、囲いの堅さにとって非常に重要です。
なぜなら、ランキング順位がまさに玉の位置の順番で綺麗に分かれているからです。
なぜなのか、その理由を考えてみましょう。
実は、玉が端に近づくほど、金銀の連結(原則4)も良くなる傾向があります。
玉が1~2筋(9~8筋)の場合は、金銀分裂形にはならないです。
玉が中央に近づくほど、金銀分裂の傾向が強くなります。
玉が3筋(7筋)あたりから、金無双のような金銀が分裂した囲いが現れます。
玉が5筋の「最強囲い」では、4枚の金銀が完全に左右2枚ずつに分かれています。
すなわち、原則3、原則4、原則5は連動しています。
従って、玉を堅くするための最もシンプルかつ確実な方法は、
玉をなるべく端に近い場所で囲うことです。
穴熊(3位)>銀冠(4位)
金矢倉(6位)>片矢倉(8位)
この辺りの順位は、玉の位置の差が大きな影響を与えています。
囲いの堅さランキングの分析表
前回のランキング表の右側の3項目に「金銀の連結ポイント」「金銀1枚あたりの連結ポイント」「玉の位置」の3項目を追加して、次の表にまとめました。
注意点として、「駒の連結」の評価と、「金銀の連結ポイント」「金銀1枚あたりの連結ポイント」の評価にやや差があります。これは、「駒の連結」では、金銀以外の駒の連結や、金銀の中でも特に重要な要の駒への連結を重視しているためです。
前回の表の「遠さ(玉の戦場からの遠さ)」は、「玉の位置」とほぼ同じ意味です。
将棋で囲いの堅さは非常に重要です。囲いの堅さの原則を覚えると実戦で役立ちます。
最強の囲いランキングの結果と一緒に覚えておきましょう。
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