7. ゆるゆる研究シリーズ | じゅげむの将棋ブログ https://shogijugem.com 将棋の戦法や定跡のまとめ、囲い、格言、自戦記、ゆるゆる研究シリーズなど。 Sun, 02 Jul 2017 21:34:05 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.5.3 111067373 片美濃囲いをマスター! 片美濃囲いの手順と23種類の崩し方(攻め方) https://shogijugem.com/katamino-4687 Mon, 27 Mar 2017 07:08:28 +0000 https://shogijugem.com/?p=4687 片美濃囲いの「特徴」「手順」「崩し方(攻め方)」をまとめています。 将棋の初心者の方にとっては、まずは片美濃囲いの基本的な組み方の手順が大事です。 片美濃囲いを組めるようになったら、次のステップは相手の片美濃囲いを攻略す...

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片美濃囲い:崩し方(攻め方)の4つのパターン片美濃囲い

片美濃囲いの「特徴」「手順」「崩し方(攻め方)」をまとめています。

将棋の初心者の方にとっては、まずは片美濃囲いの基本的な組み方の手順が大事です。

片美濃囲いを組めるようになったら、次のステップは相手の片美濃囲いを攻略することです。片美濃崩しは美濃崩しの基本で、美濃囲いの崩し方や高美濃囲いの崩し方にも応用できます。

この記事では、片美濃囲いの崩し方(攻め方)の手筋を全23問の問題形式で解説しています。問題部分は、級位者から三段~四段ぐらいの有段者の方まで参考になると思います。

 

このページの目次

 

片美濃囲いとは?(特徴、長所、短所)

片美濃囲い

美濃囲いから5八の金が1枚少なくなった、金銀2枚の囲いです。

美濃系の囲いは、振り飛車の実戦でよく使われます。
その中でも片美濃囲いは、特に中飛車や角交換系の振り飛車の実戦でよく現れます。

中飛車では5八に飛車がいるので、自然に片美濃囲いになります。

また、角交換系の振り飛車で、自陣への角の打ち込みを消すために、左側の金を5八ではなく▲7八金と上がると片美濃囲いになります。

片美濃囲いから、銀冠(片銀冠)、木村美濃などの囲いに発展させることができます。

<片美濃囲いの長所>
金銀2枚の囲いの中では、最もバランスが良い。
囲いを組むのにあまり手数がかからず、組むときの手順も簡単。
玉の移動を含めてたった4~5手で囲いが完成する。

<片美濃囲いの短所>
金銀2枚の囲いであること。金銀3枚の美濃囲いと比べて、堅さでは劣る。
玉のあるマス目に味方の駒の利きがないので、王手に弱い。
角と桂馬のコンビネーションでのコビン攻めに弱い。

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片美濃囲いの手順

片美濃囲いの組み方の手順(その1)

片美濃囲いの手順は(飛車を左に移動させてから)、

▲4八玉→▲3八玉→▲2八玉→▲3八銀(→▲1六歩)

となります。この手順が最も普通で、プロの公式戦でもよく現れる組み方です。

最初に、▲4八玉→▲3八玉→▲2八玉(途中図)と玉を2八まで移動させます。

片美濃囲いの手順1(途中図)

途中図から▲3八銀と銀をまっすぐ上がると片美濃囲いの完成です。さらに、端歩の▲1六歩を突くと、玉の逃げ道が広くなります。

下図が片美濃囲いの完成図で、端歩を突くと5手、端歩なしだと4手で完成します。

片美濃囲い

ちなみに、途中図の局面から、片美濃囲いではなく穴熊囲い金美濃など別の囲いを選ぶこともできます。

<「手順その1」のまとめ>
片美濃囲いの普通の組み方の手順で、初心者の方にもオススメです。
プロの公式戦でもよく見られる手順です。
▲2八玉の局面から穴熊囲いや金美濃など別の囲いも選べます。

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片美濃囲いの組み方の手順(その2)

片美濃囲いを作るもう一つの手順は(飛車を左に移動させてから)、

▲4八玉→▲3八銀→▲3九玉→▲2八玉(→▲1六歩)

となります。

最初の▲4八玉までは「手順その1」と同じです。次に、▲3八玉ではなく▲3八銀(途中図)と上がります。

片美濃囲いの手順2(途中図)

「手順その2」では、片美濃囲いの金銀の骨格を先に作って、その後で玉が入城します。

途中図から、▲3九玉→▲2八玉とジグザグに玉を移動させて、2八の地点に入城させれば片美濃囲いの完成です。さらに、▲1六歩と端歩を突くと、玉の逃げ道が広くなります。

先に▲3八銀として片美濃囲いの金銀の形を決めてしまうので、後から穴熊囲いなどには変更できません。ただし、この組み方の場合は、玉を2八まで入城せずに▲3九玉型で戦うこともできます。

途中図では、角交換をすると△2八角と打ち込まれるスキがあります。角道オープン型の振り飛車では注意が必要です。

<「手順その2」のまとめ>
やや上級者向けの組み方です。
玉を2八まで入城せずに、▲3九玉型のままでも戦えます。
途中で△2八角の打ち込みのスキができるので、角交換には要注意です。

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片美濃囲いの崩し方(攻め方)のポイント

片美濃囲い:崩し方(攻め方)の4つのパターン

片美濃囲いの崩し方(攻め方)には、大きなポイントが2つあります。

一つ目は、片美濃囲いの崩し方には、次のような4つのパターンがあるということです。

・横からの攻め(上図の水色のエリア)
・コビン攻め(
・端攻め(オレンジ
・玉頭攻め(黄緑

この大枠をつかんでおくと、攻めのパターンを理解しやすくなります。

片美濃囲いは王手に弱い

二つ目のポイントは、片美濃囲いは王手に弱いということです。

玉のある8二のマス目に守備駒の利きがないので、王手をかけて玉が逃げた場合、8二の地点に駒を打ってさらに王手をかけることができます。このように、連続して王手がかかる形になりやすく、そのまま一気に攻め切れることも多いです。

片美濃囲いを攻める時のコツは、王手をかけられる形にすることです。

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横からの攻め

片美濃囲いの急所(横からの攻め)

片美濃囲いを横から攻める時は、7一の地点が急所となります(上図の水色のマス目)。▲7一銀あるいは▲7一角が王手になるからです。

ただし、7一の地点は△6一金が守っているので、①7一の地点に攻め駒の利きを集中させるか、あるいは②△6一金を無力化する必要があります。

上図は①のパターンで、▲2一飛の間接的な利きと▲4四角の利きが7一の地点に集中しています。上図では▲7一銀△同金▲同角成△9二玉▲8二金までの即詰みがあります。

片美濃囲いでは、玉のある8二の地点に守備駒の利きがありません。7一の地点を制して王手をかけて、玉が逃げる形になると、8二の地点も制することができます。上図の例題では、△9二玉と逃げたときに▲8二金の王手ができるので即詰みとなります。

②のパターンは問題編でご紹介します。

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コビン攻め

コビン攻めも急所

コビン攻め(斜めからの攻め)も、片美濃囲いへの効果的な攻め方です。

「コビン」とは、玉の斜め上のマス目のことを言います。片美濃囲いの場合は、7三の地点が玉のコビンです。そして、コビンの一つ下の7四のマス目も、攻める時のポイントになります。すなわち、上図の赤マスの7三と7四の地点が、コビン攻めの急所になります。

たとえば、上図のように▲3七角のにらみがある場合、▲7四歩と突かれるだけで後手は受けづらいです。角のにらみで△同歩とは取れないですし、放置すると▲7三歩成△同銀(または△同桂)▲7四歩(下図)の攻めが非常に厳しいです。

角のラインは受けづらい

上図から△7二歩と耐えても、▲7三歩成△同歩▲7四歩(下図)のおかわりがあります。

何度も▲7四歩がある

このように、角のにらみは強烈で、歩だけでどんどん守備駒を取られてしまいます。

片美濃囲いのコビン(7三の地点)は、玉・銀・桂馬の3枚で守っています。しかし、コビン攻めが筋に入ると、守備駒の数に関係なく攻めが決まることがあります。

また角のラインを生かした有名な手筋として、角と桂馬のコンビネーションで、片美濃囲いの玉にいきなり王手をかける攻め方もあります。こちらは、この後の問題編で具体的な攻め筋をご紹介します。

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端攻め

端も片美濃囲いの弱点

端攻めも片美濃囲いに対する効果的な攻め方です。美濃囲い、高美濃囲いなどに対してもそのまま応用が効きます。

片美濃囲いの端は、桂馬と香車が守っています。しかし、桂香は後ろに戻れない駒なので、守備にはもろさがあります。端攻めの手筋を知っていると、少ない戦力でも攻略しやすいです。

端攻めの場合でも、王手をかけることが攻め方のコツです。たとえば、▲9四桂の王手が実現するように端攻めの手順を組み立てます。

上図の例題では、▲9五歩△同歩▲9二歩△同香▲9三歩△同香▲9四歩△同香▲8六桂(下図)が端攻めの手筋です。少々長い手順ですが、要するに守りの香車をつり上げて、▲8六桂→▲9四桂の王手を実現させることが狙いです。

▲9四桂の王手を狙う

上図の▲8六桂の筋があるので、端攻めで最も活躍しやすい駒は桂馬です。桂馬と歩が何枚かあれば、端攻めが成立する場合が多いです。

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玉頭攻め

玉頭の8三の地点も急所

片美濃囲いの玉頭(8三の地点で、上図の黄緑のマス目)を守っているのは、玉と銀の2枚のみです。△6一金などの他の守備駒が、玉頭の守りに使いづらいのが片美濃囲いの弱点です。

片美濃囲いへの玉頭攻めは、単純な数の攻めでも有効な場合が多いです。また、囲い崩しの手筋を使ったさまざまな攻め筋もあります。

上図の例題では、飛車・銀・香車の3枚の攻め駒で、玉頭の8筋に狙いを定めています。一方で、8三の地点を守っているのは玉と銀の2枚だけなので、単純な数の攻めが成立します。

具体的には、上図から▲8四歩△同歩▲同銀(下図)となると、既に8三の地点が受からなくなっています。下図から△8三歩と受けようとしても守備駒の数が足りていないので、▲同銀成△同銀▲同香成で8筋を突破できます。

8三の地点が受からない

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片美濃囲いの崩し方(攻め方)のまとめ

以上のように、片美濃囲いに対する攻め方は、①横からの攻め、②コビン攻め、③端攻め、④玉頭攻めの4種類があります。いずれの場合でも、王手をかけられる形にするのが、片美濃囲いの攻め方のコツです。

具体的な攻め方には、さまざまなバリエーションがあります。多くの問題を解いて覚えることが棋力向上への近道です。

以下では、片美濃崩しの手筋を問題形式でご紹介しています。

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片美濃崩しの手筋(全23問)

片美濃崩しの手筋を、全23問の問題形式で解説しています。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、問題だけをまとめた場所がありますので、そちらからご覧ください。

 

横からの攻め①

<問題1>
片美濃囲いの崩し方①

<ヒント>
片美濃囲いを横から攻めるときの急所は7一の地点です。

 

<答え>

正解:▲7一銀(正解図)

片美濃囲いの崩し方①(正解図)

▲7一銀の王手が正解です。これに対して、①△9二玉なら▲8二金で詰みですし、②△同金▲同角成△9二玉▲8二金(詰め上がり図)でも即詰みです。

片美濃囲いの崩し方①(詰め上がり図)

最初の問題は、7一の地点に攻め駒の利きを集中させるパターンでした。

問題図では、一段飛車(▲2一飛)と▲4四角が、片美濃囲いの急所の7一の地点をにらんでいます。飛車と角は△6一金の守備範囲外から7一の地点に利かすことができるので、片美濃囲いを横から攻める時にとても役立ちます。

先手の攻め駒は、▲2一飛の間接的な利きと▲4四角の斜めのラインで、合計2枚の駒が7一の地点に利いています。一方、後手は△8二玉と△6一金の2枚の駒が7一の地点に利いています。攻め駒の数と守り駒の数が2対2なので、さらに▲7一銀と打ち込めば3対2の「数の攻め」で7一の地点を制することができます。

このように、片美濃囲いを横から攻めるときは、7一の地点に攻め駒の利きを集中させるのが基本です。7一の地点を攻めると△7二銀が受けにあまり働かないので、効果的な攻めになる場合が多いです。

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横からの攻め②

<問題2>
片美濃囲いの崩し方②

<ヒント>
守りの要である△6一金を無力化します。

 

<答え>

正解手順:▲6二銀△同金▲7一角△9二玉▲6二角成(成功図)

片美濃囲いの崩し方②(成功図)

片美濃囲いの守りの要である△6一金を無力化させるパターンです。

前問とは違って今度は▲4四角がいなくて、盤上には一段飛車(▲2一飛)のみです。この場合でも非常に厳しい攻め筋があります。

片美濃囲いの崩し方②(途中図)

問題図で▲6二銀(途中図)の捨て駒が正解です。△同金と取らせると、金がうわずって7一の地点への利きがなくなります。すると急所の▲7一角を打つことができます。

▲7一角が両取りになるように、6二の地点に守りの金をおびき出すのが基本です。▲6二角成と金を取った成功図では、後手に適当な受けがありません。

この攻め筋は、持ち駒が①角銀だけではなく、②銀銀、③金銀、④角金などでも成立します。「7一に打つための斜め後ろに利く駒(角か銀)」が1枚と、「6二に打つための金駒(金か銀)」が1枚の組み合わせです。

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横からの攻め③

<問題3>
片美濃囲いの崩し方③

<ヒント>
後手の持ち駒に歩があるので、受けられたときの攻め方を考えてください。
有段者の方は、大駒を渡さないで攻め切ってください。

 

<答え>

正解手順:▲6二金△5一歩▲同飛成(正解図1)
その他の正解手順:▲6二金△5一歩▲6一金△同銀▲5一飛成(正解図2)

片美濃囲いの崩し方③(正解図1)

初手の▲6二金に対して△同金なら前問と同じ筋で、以下▲7一角△9二玉▲6二角成で攻めが成功します。

▲6二金に△5一歩と底歩を打たれた場合は、正解図1のように▲同飛成と取ってしまうのが明快です。以下、△同金▲7一角△9二玉▲7二金(成功図)で後手玉に必死がかかります。まずは、この攻め方を覚えておけば十分です。

片美濃囲いの崩し方③(成功図)

ただし、上図の攻め方だと後手に飛車を渡します。飛車を渡せない場合は、△5一歩に対して▲6一金△同銀▲5一飛成(正解図2)と攻める順が有力です。こちらの手順でも寄せ切ることができますが、正解図1の手順と比べると変化が多くなります。

片美濃囲いの崩し方③(正解図2)

正解図2からは△6二金や△7一金などの受けが考えられます。

△6二金なら▲5二金(変化図1)の攻めが有力です。▲5二金に対して、①△同銀なら▲6二龍以下の詰み、②△同金なら▲6一龍が詰めろで以下△7二金と受けても▲5二龍と金を取った手がまた詰めろ、③△7二玉なら▲6二金△同銀▲6一角でよく、④手抜きなら次に▲6一金でも▲6二金でも詰めろになります。

片美濃囲いの崩し方③(変化図1)

正解図2から△7一金(変化図2)の場合は、角を渡しても大丈夫なら▲5三角が分かりやすいです。次に▲7一角成△同玉▲6二金△8二玉▲6一龍の詰めろが狙いです。

片美濃囲いの崩し方③(変化図2)

変化図2で角を渡せない場合は▲4二龍が有力です。▲4二龍に対して、①△5二歩なら▲5三歩が意外と速い攻め、②△7二銀なら▲5三角△6一金▲6二金、③△6二銀なら▲5二金、④△9三玉なら▲5三角などがあります。

このように、問題図から飛車も角も渡さずに攻めようとすると変化がやや複雑になりますが、調べてみるとどうやら攻め切ることができそうです。

逆に後手の立場としては、飛車も角も渡せないような状況にしておくと、やや難解な局面を渡すことができます。

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横からの攻め④

<問題4>
片美濃囲いの崩し方④

<ヒント>
後手陣の△6四歩型に注目します。

 

<答え>

正解:▲6三香(正解図)

片美濃囲いの崩し方④(正解図)

正解図の▲6三香で後手は受けに困っています。△同銀なら▲6一飛成が厳しいですし、△7一金(途中図)なら有力な攻め筋がいくつかあります。

片美濃囲いの崩し方④(途中図)

途中図から、①▲6二香成△同金▲7一銀△9二玉▲6二銀成(変化図1)の攻め方は有力です。駒得をしながらの自然な攻めで、相手に渡す駒も香車のみです。ただし、変化図1の局面は詰めろではないので、そこだけは注意が必要です。

ちなみに、もし問題図で▲2一飛の代わりに▲4一龍だったとすると、(▲4一龍型の)変化図1で▲8二金△同玉▲7二成銀△同玉▲5二竜以下の詰み筋があります。

片美濃囲いの崩し方④(変化図1)

途中図から、②▲6二銀(変化図2)の攻めも有力です。以下△同金▲同香成で受けが難しい形になります。この攻め方だと、相手に銀の持ち駒を渡してしまいますが、詰めろの連続で寄せられるのがメリットです。

片美濃囲いの崩し方④(変化図2)

途中図では、③▲同飛成△同玉▲6二金△8二玉▲7一銀△9二玉▲7二金(変化図3)と、いきなり飛車を切ってしまう攻め筋もあります。銀は渡せないけれど、飛車なら大丈夫という場合なら有力です。

片美濃囲いの崩し方④(変化図3)

途中図では、有力な攻め方がいくつもあってどれでも良さそうですが、自玉の安全度や渡せる駒を考えて攻め方を選ぶことが大事です。

問題図に戻って、△6四歩型の片美濃囲いは▲6三香の筋があるので、横からの攻めに対してやや弱体化しています。また持ち駒によっては、▲6三桂と打って7一の地点を狙う攻め筋もあります。片美濃囲いの6三の空間には、桂香を打つと効果的な場合が多いので覚えておくと役立ちます。

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横からの攻め⑤

<問題5>
片美濃囲いの崩し方⑤

<ヒント>
前問との違いは飛車の位置です。二段飛車でも厳しい攻めがあります。

 

<答え>

正解:▲6三香(正解図)

片美濃囲いの崩し方⑤(正解図)

以下、△7一金なら▲6二銀が詰めろ、△5一金なら▲6二香成が詰めろで攻めが続きます。二段飛車のにらみで、正解図の▲6三香を△同銀と取れないのがポイントです。

持ち駒が「銀香」の場合は、前問の一段飛車でも、本問の二段飛車でも厳しい攻めがあります。ただし、やはり6三に香車を打つ空間がないと攻めが成立しません。同じ片美濃囲いでも、わずかな歩の形の違いが大きな差を生むという例です。

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横からの攻め⑥

<問題6>
片美濃囲いの崩し方⑥

<ヒント>
三手目に気付きにくい好手があります。

 

<答え>

正解手順:▲6二香△7一金▲5三角(正解図)

片美濃囲いの崩し方⑥(正解図)

初手は▲6二香で、以下△同金なら▲7一角△9二玉▲6二角成があるので、▲6二香に対しては△7一金とかわします。

三手目に、香車のかげに▲5三角(正解図)と打つ手が気付きにくい好手で、片美濃崩しの手筋として非常に有名な攻め方です。

正解図で実は後手玉が詰めろとなっており、次に▲7一龍△同玉▲6一香成(途中図)△8二玉▲7一角成△9二玉▲8二金△9三玉▲7二金△8四玉▲7五銀(詰め上がり図)までの詰みがあります。

片美濃囲いの崩し方⑥(途中図)

途中図での▲6一香成の両王手がポイントで、△同玉と取れば▲6二金の頭金で詰んでしまうという仕組みです。

片美濃囲いの崩し方⑥(詰め上がり図)

正解手順の攻めは非常に受けづらいです。正解図から後手が受けるなら△6二金▲同角成△6一香という頑張りはありますが、以下▲同馬△同銀▲同龍の詰めろで受けが困難です。

なお、もしも先手の龍が▲4一龍ではなく▲2一龍などの場合は、初手の▲6二香に対して△7一金ではなく△5二金(参考図)とかわした方が粘りがあります。しかし、①▲7一角△9二玉を決めてから▲4一龍で金を狙う手や、②▲6一香成として次に▲7一角や▲6二成香を狙う筋、などがあるので先手の攻めが続く形です。

片美濃囲いの崩し方⑥(参考図)

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コビン攻め①

<問題7>
片美濃囲いの崩し方⑦

<ヒント>
3手詰めです。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△7一玉▲8二金(詰め上がり図)までの即詰みです。

片美濃囲いの崩し方⑦(詰め上がり図)

桂馬を活用した3手詰です。初手の▲7四桂は、8二の玉に王手をするのと同時に、6二の逃げ道をふさいでいます。片美濃囲い(美濃囲い)に対する▲7四桂は急所中の急所の筋です。

片美濃囲いは△7三桂と跳ねると囲いが弱体化します。△7四歩の守りがある場合は、▲8六桂(参考図)と控えて打って、次の▲7四桂を狙うのも実戦でよく現れる手筋です。

片美濃囲いの崩し方⑦(参考図)

ただし、7三の地点に歩がある普通の片美濃囲いに対しては、▲7四桂を△同歩と取られてしまいます。したがって、本問のような筋を実現するためには工夫が必要です。

その工夫については次問以降で現れます。

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コビン攻め②

<問題8>
片美濃囲いの崩し方⑧

<ヒント>
角と桂馬のコンビネーションの手筋で、後手玉に詰みがあります。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△9二玉▲8二金(詰め上がり図)までの3手詰みです。

片美濃囲いの崩し方⑧(詰め上がり図)

片美濃崩し(美濃崩し)の最も代表的な攻め方の一つです。

初手▲7四桂の王手が正解です。7三の歩で取られてしまいそうですが、5五角のにらみで▲7四桂を△同歩と取れないのがポイントです(△同歩とすると角で玉を取られてしまいます。)

▲7四桂に対して、△9二玉でも△7一玉でも▲8二金までの即詰みです。△7一玉の場合は、▲4四角でも詰みとなります。

このように、角と桂馬のコンビネーションは片美濃崩しの強烈な手筋です。片美濃囲いの金銀には触らずに、桂馬で王手をかけて一気に寄せることができます。

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コビン攻め③

<問題9>
片美濃囲いの崩し方⑨

<ヒント>
後手玉に必死をかけることができます。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△9二玉▲8二金△同金▲7一角(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑨(成功図)

前問のような▲7四桂△9二玉▲8二金の筋を警戒して、後手が△7一金で8二の地点を強化してきた場合の攻め方です。

成功図の▲7一角で、後手玉には必死がかかっています。次の▲8二角成の詰みを防ぐ手段がありません。△7四歩と桂馬をはずしても、5五角の利きが8二まで通ってくるので▲8二角成までの詰みとなります。

このように、後手の△7一金の受けに対しても攻め切る順があります。ただし、金の持ち駒を渡せない場合は、正解手順の攻めができません。その場合に、問題図から▲7四桂△9二玉▲5三角(変化図)という攻めは有力です。

片美濃囲いの崩し方⑨(変化図)

変化図は詰めろではありませんが、次の▲7一角成の必死を狙っています。△7四歩と桂馬を取られても、5五角の利きが通るので▲7一角成でやはり必死となります。

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コビン攻め④

<問題10>
片美濃囲いの崩し方⑩

<ヒント>
王手飛車が狙い筋ですが、手順前後には要注意です。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△同歩▲5五角(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑩(成功図)

問題図では、いきなり▲7四桂と打つ手があります。△同歩と取らせて▲5五角(成功図)の王手飛車が実現します。▲7四桂に対して△同歩以外なら、▲8二金で即詰みです。

片美濃囲いに対して角と桂馬の持ち駒があるときは、▲7四桂から両取りの狙いがあります。この手筋は、盤面に角がなくてもいきなり成立するので要注意です。角のラインに浮き駒がないかどうか、常に気を配る必要があります。

 

ただし、先に▲5五角を打つのは手順前後で失敗します。▲5五角△2四飛(失敗図)で飛車の横利きを利用されて受けられて、▲7四桂には△同飛と取られてしまいます。

片美濃囲いの崩し方⑩(失敗図)

ちなみに、下の参考図(△3四歩に注目)のように飛車の横利きで受けられない場合は、先に▲5五角と打つ方が勝ります。なぜなら桂馬を渡さないで済むからです。▲7四桂△同歩▲5五角だと飛桂交換ですが、先に▲5五角と打てば飛車をタダ取りできます。

片美濃囲いの崩し方⑩(参考図)

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コビン攻め⑤

<問題11>
片美濃囲いの崩し方⑪

<ヒント>
長手数ですが即詰みがあります。最初の3手の発見が大事です。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂打△同歩▲同桂(正解図)

片美濃囲いの崩し方⑪(正解図)

▲7四桂打△同歩▲同桂(正解図)が継ぎ桂の手筋です。以下、即詰みがあります。

正解図から△9二玉▲9三銀△同玉▲8二角△9二玉▲9一角成△9三玉▲8二馬△8四玉▲7五金(詰め上がり図)までの詰みです。

片美濃囲いの崩し方⑪(詰め上がり図)

正解図で△7三玉から上部に脱出しようとしても、▲8二角△7四玉▲7五金までの即詰みです。▲8二角で6四からの脱出ルートをふさげるのがポイントです。

ちなみに、持ち駒は「角金桂香」などでも同じ手順で詰みがあります。

 

▲7四桂の王手の筋で片美濃囲いを攻めるテクニックは、次の3パターンにまとめることができます。

①角のにらみで▲7四桂を取れないようにする。(問題8問題9
②▲7四桂から両取りをかける。(問題10
③▲7四桂△同歩▲同桂の継ぎ桂の手筋。(本問)

これらの3種類のパターンで覚えておくと、片美濃囲い(美濃囲い)に対する▲7四桂の攻め筋を理解しやすくなります。

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端攻め①

<問題12>
片美濃囲いの崩し方⑫

<ヒント>
持ち駒をすべて使って端の香車を狙います。

 

<答え>

正解手順:▲9五歩△同歩▲9二歩△同香▲9三歩△同香▲9四歩△同香▲8六桂(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑫(成功図)

端攻めで一番効果的な駒は桂馬です。

9四の地点まで守りの香車をおびき寄せてからの▲8六桂が端攻めの基本手筋です。次の▲9四桂が、香車を取りながらの王手で非常に厳しい狙いとなります。分かっていても後手には適当な受けの手段がありません。

なお、6六の角が9三の地点に利いていないと、▲9二歩や▲9三歩に対して△同玉と頑張ることができます。後手は怖い形ですが、当面の駒損や囲いの崩壊は避けられます。

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端攻め②

<問題13>
片美濃囲いの崩し方⑬

<ヒント>
「桂先の銀」の受けの手筋に要注意です。

 

<答え>

正解手順:▲9五歩△同歩▲9三歩△同香▲8六桂△8五銀▲7七桂△8六銀▲同歩(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑬(成功図)

前問と盤面は全く同じですが、互いの持ち駒が違います。先手は歩の枚数が1枚少なく、後手は持ち駒の銀を守りに使えます。前問よりも攻めの条件が悪いので、先手の攻め方に工夫が求められます。

端歩を突き捨てた後、▲9二歩と叩くと歩の枚数が足りなくなるので、▲9三歩と垂らして歩を節約するのが最初のポイントです。

次に、▲9四歩と叩く前に、▲8六桂(途中図1)を先に打つのが急所です。

片美濃囲いの崩し方⑬(途中図1)

後手は△8五銀の「桂先の銀」で受けますが、▲7七桂(途中図2)と自陣の桂馬を攻めに活用するのが狙いの一手です。

片美濃囲いの崩し方⑬(途中図2)

銀が逃げると▲9四歩が厳しいので、△8六銀と桂馬を食いちぎるのが最善の受けです。

成功図では、銀桂交換の駒得が一つの成果です。さらに、次の▲8五桂が厳しい狙いとして残っています。

手順中の▲8六桂の前に▲9四歩の叩きを入れていると、成功図まで進んだときに▲8五桂が香車に当たらないので攻めが甘くなります。

本問のように、桂馬1枚と歩2枚があれば、片美濃囲い(美濃囲い、高美濃囲い)への端攻めは成立する場合が多いです。

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端攻め③

<問題14>
片美濃囲いの崩し方⑭

<ヒント>
7一からの逃走ルートがふさがれていると、逆側からの攻めが非常に速くなります。

 

<答え>

正解手順:▲9五歩△同歩▲9三歩(正解図)

片美濃囲いの崩し方⑭(正解図)

端攻めの基本的な手筋としては前問と同じで、端歩を突き捨ててから▲9三歩と垂らします。注目して欲しいのは、正解図の▲9三歩が詰めろになっていることです。

後手が放置すると、▲9四桂△9三玉▲8二銀△9四玉▲9五香△同玉▲8六角成△8四玉▲8五金(詰め上がり図)までの詰みがあります。

片美濃囲いの崩し方⑭(詰め上がり図)

正解図の▲9三歩に対して、△同香▲9四歩△同香▲8六桂(成功図)と進んだ局面も、次に▲9四桂からの詰めろになっています。こうなると端攻めが成功しています。

片美濃囲いの崩し方⑭(成功図)

このように、片美濃囲い(美濃囲い、高美濃囲い)に対する端攻めは、非常にスピード感があります。特に、玉が7一に逃げられない場合は、いきなり詰めろがかかることがあります。

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端攻め④

<問題15>
片美濃囲いの崩し方⑮

<ヒント>
持ち駒に桂馬はありませんが、自陣の桂馬を活用できます。

 

<答え>

正解手順:▲9四歩△同歩▲9三歩△同香▲8五桂(正解図)

片美濃囲いの崩し方⑮(正解図)

角と桂馬で9三の地点を狙います。正解図では、次に▲9三桂成△同桂▲9四香の攻めがあり、端攻めが成立しています。すぐに端が破れる形ではありませんが、一定の成果を上げています。

正解図から後手が端を放置した場合の一例として、▲9三桂成△同桂▲9四香△9二歩▲9九香△8一桂(変化図1)という展開が考えられます。変化図1では、いつでも桂馬を手に入れられますし、持ち駒が入れば▲9三香成△同歩▲同香成△同桂▲9四桂などの攻めが厳しくなります。

片美濃囲いの崩し方⑮(変化図1)

後手としては、正解図から△8四歩▲同角△8三銀▲6六角△8四歩▲9三桂成△同桂(変化図2)のような受けを選ぶことも考えられます。金銀の連結がなくなって陣形はかなり乱れますが、△8四歩→△8三銀が受けの手筋で、守りの銀を端の応援に行かせることができます。

片美濃囲いの崩し方⑮(変化図2)

これまでの問題では、持ち駒の桂馬が端攻めの鍵となっていました。しかし、持ち駒に桂馬がない場合でも、端歩を突き越していれば、自陣の桂馬を活用した端攻めが可能です。端歩を突き越していると、最後の▲8五桂に対して△9四香の受け方ができないのがポイントです。

ちなみに、先手の持ち駒に歩がない場合でも、問題図から単に▲8五桂と跳ねて、次に▲9三桂成を狙う攻め筋は有力です。特に、後手が歩切れの場合は受けづらい攻め方です。

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玉頭攻め①

<問題16>
片美濃囲いの崩し方⑯

<ヒント>
「敵の打ちたい所へ打て」の格言通りの攻め方です。

 

<答え>

正解手順:▲8四歩△同歩▲8三歩△同銀▲8四銀△同銀▲8三歩△同玉▲8四飛(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑯(成功図)

問題図で、単純に▲8四歩△同歩▲同銀と銀を進出させると、△8三歩(失敗図)と受けられて攻めが失敗します。

片美濃囲いの崩し方⑯(失敗図)

「敵の打ちたい所へ打て」で、▲8四歩△同歩に▲8三歩(途中図1)と叩くのが急所の一手です。以下、△同銀▲8四銀と進むと、叩きの歩の効果で銀交換できる形になります。

片美濃囲いの崩し方⑯(途中図1)

途中図1から△8三同銀▲8四銀△同銀(途中図2)の局面で、再度の▲8三歩の叩きが強烈です。以下、△同玉▲8四飛(成功図)で8筋が突破できる形で、先手の攻めは大成功です。

片美濃囲いの崩し方⑯(途中図2)

二度目の▲8三歩を打たずに、途中図2で単に▲同飛と銀を取りかえすと、以下△8三歩と受けられます。攻めの銀と守りの銀を交換しているので、一定の成果は上げていますが、8筋を突破できる正解手順と比べるとはっきりと劣ります。

ちなみに、この問題のポイントは「8四の地点で勝負する」ことです。問題図で、先手の攻め駒(飛車、角、銀)の利きが集まっているのが8四の地点です。二度の▲8三歩の叩きによって、相手の駒を8三までおびき寄せ、8四の地点の数の優位性を生かしています。

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玉頭攻め②

<問題17>
片美濃囲いの崩し方⑰

<ヒント>
持ち駒の角を使って単純な数の攻めを狙います。

 

<答え>

正解:▲5六角(正解図)

片美濃囲いの崩し方⑰(正解図)

▲5六角の狙いは、次の▲8四歩△同歩▲同銀(成功図)の玉頭攻めです。相振り飛車でよく現れる美濃崩しの理想型の一つです。

片美濃囲いの崩し方⑰(成功図)

8三の地点の守備駒は玉と銀の二枚だけなので、飛車・角・銀の三枚で攻めれば受けがなくなります。成功図以下、△8三歩と受けても▲同銀成△同銀▲同角成(同飛成)で突破されてしまうので、受けになっていません。

数の攻めは単純ですが、単純であるがゆえに受けづらいことも多いです。持ち駒に角があると、筋違い角で玉頭の8三に利かせられるのがポイントです。

前問では、8四の地点に攻め駒の利きが集まっていましたが、本問では8三の地点に攻め駒の利きを集めています。8三はまさに玉頭なので、より直接的で厳しい攻め方です。

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玉頭攻め③

<問題18>
片美濃囲いの崩し方⑱

<ヒント>
手筋を駆使して5五の銀に狙いをつけてください。

 

<答え>

正解手順:▲8四歩△同歩▲8五歩△同歩▲同飛(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑱(成功図)

十字飛車をにらんで、▲8四歩△同歩▲8五歩の継ぎ歩が正解です。成功図では、王手銀取りが決まっています。

後手としては、▲8四歩か▲8五歩に手抜きをしたいのですが、▲8四歩を手抜くと次に▲8三歩成△同銀▲8四歩△7二銀(変化図)で玉頭に大きな拠点を作られます。

片美濃囲いの崩し方⑱(変化図)

▲8五歩を手抜いても、次に▲8四歩と取り込まれると同じ形になります。ただし、一手の違いがあるので、後手は▲8四歩に手抜くよりも▲8五歩の瞬間に手抜いた方が得です。

しかし、いずれの展開でも先手は大きなポイントを上げることができ、継ぎ歩の攻めは成立しています。

ちなみに、四段目に後手の浮き駒がある場合(△5四銀など)でも▲8四歩と合わせて十字飛車を狙う筋があります。この場合は、持ち駒に歩が1枚あれば成立します。

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コンビネーションの攻め①

<問題19>
片美濃囲いの崩し方⑲

<ヒント>
横からの攻めとコビン攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△9二玉▲6一飛成(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑲(成功図)

コビン攻めの基本手筋の▲7四桂から入ります。△7一玉なら▲4四角でも▲6一飛成でも詰みなので、△9二玉と逃げる一手です。そこで▲6一飛成(成功図)と金を取れば、次に▲8二金と▲7二龍があるので後手玉は受けなしとなります。

この問題では、横からの攻めとコビン攻めを組み合わせて、片美濃囲いを攻略しています。

 

ちなみに、問題図で単に▲6一飛成(変化図)も有力です。△同銀と取れば▲7四桂と打って、どこへ逃げても▲8二金までの詰みです。

片美濃囲いの崩し方⑲(変化図)

ただし、▲6一飛成を先にする場合、もし▲7四桂からの詰み筋を受けられると、龍取りが残ってしまうので注意が必要です。たとえば、変化図では△8四歩と逃げ道を空けるような手が気になります。

▲7四桂を先にすれば、成功図で▲8二金と▲7二龍の両方が残るので、後手に適当な受けはありません。

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コンビネーションの攻め②

<問題20>
片美濃囲いの崩し方⑳

<ヒント>
横からの攻めと端攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲9五歩△同歩▲6二香△7一金▲9二歩△同香▲9一銀△同玉▲7一飛成(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑳(成功図)

横からの攻めと端攻めのコンビネーションで片美濃囲いを攻略します。

問題図では、▲6二香△同金▲7一銀という横からの攻め筋が見えます。しかし、▲6二香に△7一金(失敗図)とかわされた時に、攻めが息切れしてしまいます。

片美濃囲いの崩し方⑳(失敗図)

正解手順では、先に▲9五歩△同歩と突き捨てて、端に味を付けてから▲6二香を狙います。

同じように△7一金とかわされた時に、あらかじめ端歩を突き捨ててあると、▲9二歩△同香▲9一銀(途中図)の送りの手筋で攻め続けることができます。

片美濃囲いの崩し方⑳(途中図)

途中図から△同玉▲7一飛成(成功図)と金を取って攻めが成功します。以下、△8二銀と受けるしかありませんが、▲7二龍と銀を取りながら自然に攻めが続いて好調です。

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コンビネーションの攻め③

<問題21>
片美濃囲いの崩し方(21)

<ヒント>
前問と同じく、横からの攻めと端攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲6二香△7一金▲9四桂△同香▲9一銀△同玉▲7一飛成(成功図)

片美濃囲いの崩し方(21)(成功図)

前問と同じ発想の攻め筋ですが、本問の方がスピード感のある攻め方です。

▲6二香△7一金の時に、いきなり▲9四桂(途中図)と王手で跳ねる手が成立します。△同香と取りますが、9一の地点に空間ができるので、▲9一銀の送りの手筋が実現します。

片美濃囲いの崩し方(21)(途中図)

成功図では、次に▲8二金の詰めろと▲7二龍の銀取りの狙いがあります。

問題図の▲8六桂は、片美濃崩し(美濃崩し)で非常に効果的な桂馬です。もしも持ち駒に桂馬があれば▲7四桂打△同歩▲同桂の継ぎ桂の手筋がありますし、本問のような端攻めも狙っています。

通常は歩切れだと端攻めが成立しない場合が多いのですが、本問では横からの攻め(一段飛車の攻め)と組み合わせることによって、いきなりの▲9四桂の筋が実現しています。

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コンビネーションの攻め④

<問題22>
片美濃囲いの崩し方(22)

<ヒント>
コビン攻めと端攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲7四歩△同歩▲7三歩△同桂▲9三桂成△同香▲9四歩(成功図)

片美濃囲いの崩し方(22)(成功図)

コビン攻めと端攻めのコンビネーションで片美濃囲いを崩します。8五の桂馬がコビンと端の両方に利いているのがポイントです。

最初に▲7四歩△同歩▲7三歩(途中図)でコビンの方から攻めます。▲7四歩の突き捨てによって、6六角の利きが端まで通ることに注目です。

片美濃囲いの崩し方(22)(途中図)

途中図で△7三同桂と取れば、▲同桂成ではなく▲9三桂成で端の方に桂馬を成り込みます。桂馬の跳ね違いの手筋で、△7三同桂と跳ねて弱体化した端を狙います。以下、成功図まで進むと端が完全に破れていて、攻めが成功しています。

後手としては銀桂交換を甘んじて、途中図の▲7三歩に△同銀と取った方がいいかもしれません。駒損の上に陣形がかなり乱れますが、すぐに端を破られることはありません。

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コンビネーションの攻め⑤

<問題23>
片美濃囲いの崩し方(23)

<ヒント>
横からの攻めと玉頭攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解:▲8三香成(正解図)
その他の有力手:▲7五桂(変化図)

片美濃囲いの崩し方(23)(正解図)

横からの攻めと玉頭攻めのコンビネーションで片美濃囲いを崩します。▲2一飛が△6一金をにらんでいるので、△7二銀が動けないことがポイントです。

問題図でいきなり▲8三香成(正解図)が成立します。以下、△同玉に▲7五桂(途中図)が厳しい一手です。

片美濃囲いの崩し方(23)(途中図)

途中図で△7四玉なら▲8五銀で詰み、その他の逃げ方で△8二玉以外だと▲6一飛成が詰めろで受けがなくなります。したがって、途中図では△8二玉が最も粘りのある逃げ方です。

△8二玉以下は、▲8三銀△同銀▲同桂成△同玉▲6一飛成(成功図)の攻め方が有力です。成功図から△7二銀と受けても、▲8四銀や▲8四金の送りの手筋から攻め切れます。ただし、銀・桂馬・香車(あるいは、金・桂馬・香車)の3枚の駒を後手に渡すことになります。

片美濃囲いの崩し方(23)(成功図)

ちなみに、問題図で▲7五桂(変化図)と打っておくのも有力です。正解図の▲8三香成よりは一手遅い攻めですが、後手に渡す駒が少なくなるというメリットがあります。すなわち、持ち駒を渡しづらい場合に、▲8三香成よりもリスクが少ない攻め方です。

片美濃囲いの崩し方(23)(変化図)

変化図の▲7五桂に対して△5一歩の底歩なら、▲2二飛成とじっと引いておいて、次の▲8三香成を狙います。後手に歩以外の持ち駒がないと、受けが難しい形です。

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問題だけのまとめ(ヒント・解答・解説なし)

片美濃崩しの問題だけのまとめです。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、こちらをご覧ください。

 

片美濃囲いの崩し方①

 

片美濃囲いの崩し方②

 

片美濃囲いの崩し方③

 

片美濃囲いの崩し方④

 

片美濃囲いの崩し方⑤

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片美濃囲いの崩し方⑥

 

片美濃囲いの崩し方⑦

 

片美濃囲いの崩し方⑧

 

片美濃囲いの崩し方⑨

 

片美濃囲いの崩し方⑩

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片美濃囲いの崩し方⑪

 

片美濃囲いの崩し方⑫

 

片美濃囲いの崩し方⑬

 

片美濃囲いの崩し方⑭

 

片美濃囲いの崩し方⑮

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片美濃囲いの崩し方⑯

 

片美濃囲いの崩し方⑰

 

片美濃囲いの崩し方⑱

 

片美濃囲いの崩し方⑲

 

片美濃囲いの崩し方⑳

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片美濃囲いの崩し方(21)

 

片美濃囲いの崩し方(22)

 

片美濃囲いの崩し方(23)

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まとめ

美濃崩しの基礎となるのが、片美濃囲いの崩し方です。美濃囲いの崩し方や高美濃囲いの崩し方にも応用できます。

横、コビン、端、玉頭のそれぞれの攻め方にはパターンがあります。将棋が強くなるためには、攻め方のパターンをたくさん覚えることが大事です。

 

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美濃囲いをマスター! 美濃囲いの手順と25種類の崩し方(攻め方) https://shogijugem.com/minogakoi-4514 Sun, 19 Mar 2017 22:24:58 +0000 https://shogijugem.com/?p=4514 美濃囲いの「特徴」「手順」「崩し方(攻め方)」をまとめています。 将棋の初心者の方にとっては、まずは美濃囲いの基本的な組み方の手順が大事です。代表的な3種類の手順について解説しています。 美濃囲いを組めるようになったら、...

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美濃囲いの崩し方(4つのパターン)美濃囲い

美濃囲いの「特徴」「手順」「崩し方(攻め方)」をまとめています。

将棋の初心者の方にとっては、まずは美濃囲いの基本的な組み方の手順が大事です。代表的な3種類の手順について解説しています。

美濃囲いを組めるようになったら、次のステップは相手の美濃囲いを攻略することです。

この記事では、美濃囲いの崩し方(攻め方)の手筋を全25問の問題形式で解説しています。問題部分は、級位者から三段~四段ぐらいの有段者の方まで参考になると思います。

美濃囲いにかなり詳しくなれるので、ぜひ棋力アップに活用してください。

 

このページの目次

 

美濃囲いとは?(特徴、長所、短所)

美濃囲い

美濃囲いは、図のような金銀3枚の囲いです。

矢倉、穴熊と並んで、将棋で最も代表的な囲いです。
矢倉や穴熊よりも短い手数で簡単に作れる割にはしっかりした囲いです。

四間飛車、三間飛車など、振り飛車の戦法との相性が非常に良いです。
ただし、5八に飛車がある中飛車の場合は、5八の金が1枚少ない片美濃囲いになります。

相振り飛車でもよく使われる囲いです。
振り飛車党は、美濃囲いだけ覚えておけば十分に戦えます。

手数があまりかからないので、急戦に対応しやすいです。

また、発展性に優れた囲いで、持久戦にも強みがあります。
美濃囲いから、高美濃囲いや銀冠に発展させることができます。

このように、急戦にも強く、持久戦にも強いので、
振り飛車は美濃囲いだけでも十分に戦うことができます。

<美濃囲いの長所>
手数がかからない。(5~6手)
横からの攻めに強い。
飛車の攻めに強い。
振り飛車との相性が良い。

<美濃囲いの短所>
上部(玉頭、端、コビン)からの攻めに弱い。
角と桂馬の攻めに弱い。
王手がかかるとすぐに詰まされやすい。

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美濃囲いの手順

美濃囲いの組み方の手順は、だいたい3パターンあります。

1つ目の手順が最も基本的です。最初はこの手順だけ覚えておけば十分です。
2つ目の手順も実戦でよく現れます。
3つ目の手順はやや特殊で、藤井システムという戦法で使われます。

 

美濃囲いの組み方の手順(その1)

美濃囲いの最も基本的な手順です。次の4ステップで美濃囲いを組めます。

①飛車を左側に移動させる。
②玉を4八→3八→2八のルートで2八まで移動させる。
③銀を3八に真っ直ぐ上がる。
④左の金を5八に上がる。

②~④の手順を符号でまとめると、
▲4八玉→▲3八玉→▲2八玉→▲3八銀→▲5八金左(→▲1六歩)
の5手(6手)で完成することが分かります。

 

①~④の手順を一つずつ図で見ていくと、次のようになります。

 

①飛車を左側に移動させる。(四間飛車の場合は▲6八飛)

美濃囲いの手順(1-1)
上図は、初手から▲7六歩→▲6六歩で角道を止めているノーマル四間飛車の基本図です。
三間飛車の場合は▲7八飛とします。

 

②玉を4八→3八→2八のルートで2八まで移動させる。(▲4八玉→▲3八玉→▲2八玉)

美濃囲いの手順(1-2)

 

③銀を3八に真っ直ぐ上がる。(▲3八銀)

美濃囲いの手順(1-3)
上図で金銀2枚の片美濃囲いまでは完成です。

 

④左の金を5八に上がる。(▲5八金左)

美濃囲いの手順(1-4)
上図で美濃囲いは完成です。さらに、端歩(▲1六歩)を突くと玉が広くなります。

 

美濃囲い

<手順その1の利点>
▲2八玉の局面から穴熊囲いも選べる。
途中で角を自陣に打ち込まれるスキがない。

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美濃囲いの組み方の手順(その2)

2つ目の手順では、▲3八銀のタイミングが早くなります。
銀を上がってから、ジグザグに玉を移動させます。

①飛車を左側に移動させる。(四間飛車なら▲6八飛)
②玉を4八まで移動させる。(▲4八玉)
③銀を3八に真っ直ぐ上がって、先に片美濃囲いの骨格を作る。(▲3八銀)
④玉を3九→2八のジグザグのルートで入城させる。(▲3九玉→▲2八玉)
⑤左の金を5八に上がる。(▲5八金左)

②~⑤の手順を符号でまとめると、
▲4八玉→▲3八銀→▲3九玉→▲2八玉→▲5八金左(→▲1六歩)
となります。

 

①~⑤の手順を一つずつ図で見ていくと、次のようになります。

 

①飛車を左側に移動させる。(四間飛車の場合は▲6八飛)

美濃囲いの手順(2-1)
上図は、初手から▲7六歩→▲6六歩で角道を止めているノーマル四間飛車の基本図です。
三間飛車の場合は▲7八飛とします。

 

②玉を4八まで移動させる。(▲4八玉)

美濃囲いの手順(2-2)
ここまでは、「手順その1」と全く同じです。

 

③銀を3八に真っ直ぐ上がって、先に片美濃囲いの骨格を作る。(▲3八銀)

美濃囲いの手順(2-3)
ここが「手順その1」と違います。

 

④玉を3九→2八のジグザグのルートで入城させる。(▲3九玉→▲2八玉)

美濃囲いの手順(2-4)
上図で金銀2枚の片美濃囲いまでは完成です。
ここでは、「手順その1」と合流しています。

 

⑤左の金を5八に上がる。(▲5八金左)

美濃囲いの手順(2-5)
上図で美濃囲いは完成です。さらに、端歩(▲1六歩)を突くと玉が広くなります。

 

美濃囲い

<手順その2の利点>
▲3九玉型のままでも戦える。

<手順その2の欠点>
▲3八銀と上がった瞬間に、△2八角の打ち込みのスキができる。
▲3八銀を早めに上がるので、穴熊囲いを選べなくなる。

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美濃囲いの組み方の手順(その3)

3つ目の手順は、藤井システムという戦法で現れます。
しばらくは居玉のままで、最後に玉が美濃囲いに入城します。

①飛車を左側に移動させる。(四間飛車なら▲6八飛)
②居飛車穴熊を牽制して、早めに端歩を突く。(▲1六歩)
③居玉のままで、先に美濃囲いの金銀の形を作る。(▲3八銀→▲5八金)
④玉を4八→3九→2八のルートで入城させる。(▲4八玉→▲3九玉→▲2八玉)

②~④の手順を符号でまとめると、
▲1六歩→▲3八銀→▲5八金→▲4八玉→▲3九玉→▲2八玉
となります。

 

①~⑤の手順を一つずつ図で見ていくと、次のようになります。

 

①飛車を左側に移動させる。(四間飛車の場合は▲6八飛)

美濃囲いの手順(3-1)
上図は、初手から▲7六歩→▲6六歩で角道を止めているノーマル四間飛車の基本図です。
三間飛車の場合は▲7八飛とします。

 

②居飛車穴熊を牽制して、早めに端歩を突く。(▲1六歩)

美濃囲いの手順(3-2)
「手順その1」「その2」とは違って、端歩をかなり早く突きます。
端攻めを見せて居飛車穴熊を牽制するのが、藤井システムのポイントです。

 

③居玉のままで、先に美濃囲いの金銀の形を作る。(▲3八銀→▲5八金)

美濃囲いの手順(3-3)
この時点で、美濃囲いの金銀の形は完成しています。
相手が穴熊の場合は、居玉のままで戦うこともあります。

 

④玉を4八→3九→2八のルートで入城させる。(▲4八玉→▲3九玉→▲2八玉)

美濃囲いの手順(3-4)
上図で美濃囲いは完成です。

 

美濃囲い

<手順その3の利点>
玉の移動を後回しにできる。(藤井システムの場合)

<手順その3の欠点>
しばらくは居玉のままなので、急戦を仕掛けられると弱い。
▲3八銀を早めに上がるので、△2八角と打たれるスキができる。

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美濃囲いの崩し方(攻め方)のポイント

美濃囲いの崩し方(4つのパターン)

美濃囲いの崩し方は、攻めるエリアごとに、次のような4つのパターンがあります。

・横からの攻め(上図の水色のエリア)
・コビン攻め(
・端攻め(オレンジ
・玉頭攻め(黄緑

これらの4パターンで分類すると、美濃囲いの崩し方を手筋として覚えやすくなります。

また、いくつかのパターンを組み合わせた攻め方もあります。基本の4パターンをしっかり押さえておくと、コンビネーションの攻めを実戦で発見しやすくなります。

横からの攻め

 

美濃囲いの崩し方①(カラー)

美濃囲いは、横からの攻めに対して強い囲いです。

横からの攻めでは、7一の地点が急所で、▲7一銀や▲7一角の王手を狙います。(上図)

しかし、7一の地点は△6一金が守っていて、その△6一金をさらに△5二金が守っているので、美濃囲いの横の守りは非常に堅いです。

そこで、守りによく働いている2枚の金を、どうにかして無力化する必要があります。

コビン攻め

美濃囲いの崩し方⑩(カラー)

コビンとは、玉の斜め前のマス目のことです(上図では7三)。7三の地点を攻めたり、角の斜めのラインを利用して攻めることを「コビン攻め」と言います。

美濃囲いはコビン攻めに対して非常に弱いです。

特に、角と桂馬のコンビネーションで攻められると、手付かずの美濃囲いが一瞬で詰んでしまうこともあります。(上図)

端攻め

美濃囲いの崩し方⑲(カラー)

端攻めに対する弱さも、美濃囲いの大きな弱点です。

美濃囲いは、横は金銀3枚でしっかりと守っているのですが、端は桂香の2枚だけしか守っていません。

枚数だけではなく、桂馬と香車は後ろに後戻りできない駒なので、うまく弱点を突くと美濃囲いの端は簡単に破れます。(上図)

玉頭攻め

美濃囲いの崩し方(23)(カラー)

美濃囲いは玉頭攻めにも弱いです。

玉頭の8三の地点を守っているのは、△7二銀の1枚だけなので、横に比べると守りがかなり手薄になっています。

特に上図のように、一段飛車で△6一金をにらんでいる場合は、△7二銀が動くと金を取られてしまうので、玉頭攻めが非常に厳しくなります。玉頭攻めに横からの攻めを絡めたコンビネーションの攻めと言えます。

このように、「横」「コビン」「端」「玉頭」の4つのうちで、いくつかの攻めを組み合わせるコンビネーションも非常に効果的です。

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横からの攻めの手筋(全9問)

美濃囲い(横からの攻め)

美濃囲いを、横からの攻めの手筋で攻略する問題です。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、問題だけをまとめた場所がありますので、そちらからご覧ください。

 

 

横からの攻めの手筋①

<問題1>

美濃囲いの崩し方①

<ヒント>
片美濃崩しと同じような攻め方が有効です。
△5二金に触らないで攻めることができます。

 

<答え>

正解手順:▲7一銀△9二玉▲6一飛成(成功図)

美濃囲いの崩し方①(成功図)

成功図以下、△6一同銀は▲8二金までの詰みです。初手の▲7一銀に対して△同金は、以下▲同角成△9二玉▲8二金までの詰みとなります。

一段飛車(▲2一飛)と角のライン(▲4四角)で遠くから7一の地点を攻めるパターンです。この攻め筋に対しては、5二の金が守りに役に立っていません。5二の金がない片美濃囲いに対しても同じ攻め筋が使えます。

また、△9四歩と端歩を突いていない美濃囲いの玉の狭さがよく分かります。もし端歩を突いてあれば、△9三玉と逃げることができます。

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横からの攻めの手筋②

<問題2>

美濃囲いの崩し方②

<ヒント>
歩の使い方がポイントです。
△5二金を無力化できれば、片美濃崩しの手筋が使えます。

 

<答え>

正解手順:▲4三歩△同金▲6二銀(成功図)

美濃囲いの崩し方②(成功図)

初手は▲4三歩の「垂らしの歩」が正解です。次の▲4二歩成が厳しいので△同金と取りますが、成功図の▲6二銀が片美濃崩しの有名な手筋となります。

▲6二銀は一見タダですが、△同金と取ると、以下▲7一角△9二玉▲6二角成(成功図2)で後手陣は完全に崩壊します。

美濃囲いの崩し方②(成功図2)

この問題のポイントは、垂らしの歩(▲4三歩)による5二の金の無力化です。美濃囲いの外側の守りの金(△5二金)が1枚少なくなると片美濃囲いになり、片美濃崩しの手筋が使えるようになります。片美濃崩しの手筋が使えるように、△5二金を無力化するのが美濃崩しのセオリーです。

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横からの攻めの手筋③

<問題3>

美濃囲いの崩し方③

<ヒント>
4四の角取りになっていますが、角を逃げる手は甘いです。
ここでは思い切った寄せがあります。

 

<答え>

正解手順:▲5三角成△同金▲6二銀(正解図)

美濃囲いの崩し方③(正解図)

正解図以下、△6二同金なら▲7一銀△9二玉▲6二銀成(成功図)で攻めが成功です。

美濃囲いの崩し方③(成功図)

本問のポイントは、前問と同じく5二の金の無力化です。問題図から▲5三角成△同金(途中図)と角を切った局面で、5二の金が上ずって受けに働かなくなっています。こうなると片美濃崩しと同じで、▲6二銀から手筋の寄せが使えます。

美濃囲いの崩し方③(途中図)

ただし、正解手順の攻めは「角銀」の2枚を渡すので、実戦では自玉の安全度にも気をつける必要があります。

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横からの攻めの手筋④

<問題4>

美濃囲いの崩し方④

<ヒント>
後手の持ち駒に歩があります。歩を使った受けには要注意です。

 

<答え>

正解手順:▲5三歩△6二金寄▲5一銀△5三金▲6二銀不成(成功図)

美濃囲いの崩し方④(成功図)

初手▲5三歩が正解です。①△同金なら守りの金が上ずるので、▲6二銀△同金▲7一角の片美濃崩しの手筋が使えます。▲5三歩に対して、②△5一金引なら▲5二銀が厳しい攻めとなります。

▲5三歩に対して、正解手順の③△6二金寄と抵抗する受けがありますが、そこで▲5一銀(途中図)が好手です。次に▲6二銀不成が厳しいので△5三金と逃げますが、そこで▲6二銀不成(成功図)と追撃すれば、片美濃崩しの形になって攻めが成功します。

美濃囲いの崩し方④(途中図)

なお、途中図で△同金▲同龍△6一金の受けなら▲6二金が好手で、以下△5一金と龍を取ると▲7一角△9二玉▲7二金で必死がかかります。

ちなみに、初手▲4四角も急所のラインですが、この場合は△5三歩あるいは△5一歩(参考図)の底歩で受けられます。参考図からは▲5四歩と垂らすような手が考えられますが、正解手順と比べて攻めが遅れます。なお後手が歩切れなら、初手▲4四角として、次に▲7一銀を狙うのも有力です。

美濃囲いの崩し方④(参考図)

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横からの攻めの手筋⑤

<問題5>

美濃囲いの崩し方⑤

<ヒント>
金底の歩に対しては、ある駒を使って金を攻めるのが急所です。

 

<答え>

正解:▲5九香(正解図)

美濃囲いの崩し方⑤(正解図)

金底の歩(△5二金△5一歩の形)に対しては香車で攻めるのがセオリーです。

正解図の▲5九香を放置すると、次に▲5二香成△同歩(△同金でも)▲7一銀からの詰み筋があります。

▲5九香に対して△6二金寄と逃げても、▲5一香成で攻めが成功です。以下、△7一金と逃げると▲5二成香(変化図)が好手です。△5二同金と取れば▲7一角成からの詰みです。

美濃囲いの崩し方⑤(変化図)

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横からの攻めの手筋⑥

<問題6>

美濃囲いの崩し方⑥

<ヒント>
確実な攻めを目指します。後手の応手によっては一気の寄せもあります。

 

<答え>

正解手順:▲4三歩△同金▲6三香△7一金▲6二香成(成功図)

美濃囲いの崩し方⑥(成功図)

▲4三歩の「と金」作りが正解です。▲4三歩に対して、「と金」作りを受けるなら①△同金、②△5一金寄のどちらかです。あるいは、③手抜き、も考えられます。

 

①△同金なら5二の金が無力化するので、あとは片美濃崩しと同じです。▲6三香(途中図)からの手筋の攻めが使えます。

美濃囲いの崩し方⑥(途中図)

途中図の▲6三香を△同銀なら▲6一龍で金を取れるので、△7一金とかわしますが、成功図の▲6二香成が軽妙手です。

▲6二香成以下、△同金▲7一銀△9二玉▲6二銀成で一気の寄せが決まります。

なお▲6二香成のところで、▲6二銀の攻めも有力ですし、▲7一同龍△同玉▲6二金△8二玉▲7一銀△9二玉▲7二金の攻め筋も有力です。ただし、これらの攻めは銀や飛車を渡すので、駒を渡したときの自玉の安全度を考える必要があります。

 

②△5一金寄は「と金」作りを受けた手ですが、それでも▲4二歩成(変化図)とする手があります。△同金寄は▲5一龍なので△同金上ですが、▲7一銀△9二玉の王手を決めてから▲4二龍と金を取る手が詰めろになります。この手順でも後手陣は崩壊します。

美濃囲いの崩し方⑥(変化図)

③手抜きは一番有力ですが、次の▲4二歩成からの「と金」攻めが確実な攻めとなります。

先手の攻めに対して、①や②のように受けると逆に攻めが速くなってしまいます。「何も受けずに手抜きが最善」という局面は意外と多いです。

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横からの攻めの手筋⑦

<問題7>

美濃囲いの崩し方⑦

<ヒント>
一気の寄せがあります。駒損を気にしないでください。

 

<答え>

正解:▲5二角成(正解図)

美濃囲いの崩し方⑦(正解図)

正解図以下、△同金と取れば▲7一銀△9二玉▲8二金(詰め上がり図)で詰みです。

美濃囲いの崩し方⑦(詰め上がり図)

詰め上がり図を見ると分かるように、5二の金を取って△同金となった形は、守りの金が2枚とも無力化しています。

美濃囲いに対する▲3四角(馬)のラインは急所です。△5二金と△6一金の両方をにらんでいるからです。

△5三歩がない場合(あるいは打てない場合)は、▲3四角のラインだけではなく▲4四角のラインも急所になります。状況に応じて角のラインを使い分けることが大事です。

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横からの攻めの手筋⑧

<問題8>

美濃囲いの崩し方⑧

<ヒント>
香車の上手い使い方があります。

 

<答え>

正解:▲6三香(正解図)

美濃囲いの崩し方⑧(正解図)

初手▲6三香が正解です。7二の銀と5二の金の両方が利いている焦点の香車で、△6三同銀なら▲6一龍で金を取れますし、△6三同金なら▲6一角成△同銀▲同龍の2枚換えで攻めが成功します。

正解図の▲6三香に対して、△5一金寄と頑張る手はありますが、それでも以下▲5二角成△同金▲6二金(変化図)で美濃囲いは崩壊します。

美濃囲いの崩し方⑧(変化図)

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横からの攻めの手筋⑨

<問題9>

美濃囲いの崩し方⑨

<ヒント>
△5二金を攻めるのが美濃崩しのセオリーの一つです。

 

<答え>

正解手順:▲4四桂△6二金寄▲5二歩(正解図)
その他の候補手:▲4三歩

美濃囲いの崩し方⑨(正解図)

前問のように、5二の金を攻めるのが美濃崩しの急所の一つです。5二の金を取れると、△同金としたときに6一の金まで上ずるので、囲いをかなり弱体化させることができます。

桂馬は▲4四桂の筋で5二の金を攻めやすい駒です。△6二金寄と逃げても、▲5二歩(正解図)と垂らして「と金」攻めを狙う手があります。次に▲5一歩成から守りの金を取れれば、攻めが成功します。

本問のように、桂馬は横からの攻めにも使えます。ただし、桂馬はコビン攻めや端攻めに使うと非常に強力な駒なので、状況に応じて最も効果的な使い方を考えたいです。

 

(その他の候補手)

問題図で▲4三歩の垂れ歩も有力です。△同金なら▲5五桂△5四金▲6三桂成(または▲6三桂不成)(参考図)という攻め筋があります。参考図で△6三同銀なら▲6一龍なので攻めは成功しています。

美濃囲いの崩し方⑨(参考図)

ただし、▲4三歩に手抜きをされた時に、▲4四桂よりも攻めが一手遅れるので、▲4四桂の方を正解手としています。

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コビン攻めの手筋(全9問)

美濃囲い(コビン攻め)

美濃囲いを、コビン攻めの手筋で攻略する問題です。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、問題だけをまとめた場所がありますので、そちらからご覧ください。

 

コビン攻めの手筋①

<問題10>

美濃囲いの崩し方⑩

<ヒント>
3手詰です。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△9二玉▲8二金(詰め上がり図)

美濃囲いの崩し方⑩(詰め上がり図)

角と桂馬のコンビネーションの手筋で、即詰みがあります。

問題図から▲7四桂(途中図)がコビン攻めの有名な手筋です。角の間接的な利きが玉をにらんでいるので、△7四同歩とは取れません(玉を角で取られてしまいます)。

美濃囲いの崩し方⑩(途中図)

途中図の▲7四桂は王手をかけながら、6二の逃げ道をふさいでいます。△9二玉と逃げても△7一玉と逃げても、以下▲8二金(詰め上がり図)までの詰みとなります。

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コビン攻めの手筋②

<問題11>

美濃囲いの崩し方⑪

<ヒント>
手順前後に注意してください。

 

<答え>

正解手順:▲6一龍△同銀▲7四桂(成功図)

美濃囲いの崩し方⑪(成功図)

前問と異なり持ち駒に金がありませんが、6一の金が龍で取れる質駒になっています。

正解は問題図ですぐに▲6一龍と金を取る手で、△同銀なら▲7四桂(成功図)と桂馬を打って詰みます。以下、玉をどこへ逃げても▲8二金(詰め上がり図)までの即詰みです。

美濃囲いの崩し方⑪(詰め上がり図)

問題図で先に▲7四桂を打ってしまうと、△9二玉なら▲6一龍で良いのですが、△7一玉と逃げられると、以下▲6一龍△同玉(失敗図)で後手玉に詰みがなく失敗です。

美濃囲いの崩し方⑪(失敗図)

失敗図では、美濃囲いの5二金が受けによく働いています。片美濃囲いとの大きな違いです。

本問のように、先に▲7四桂か▲6一龍かの手順前後で、結果が大きく変わることがあるのが将棋の面白いところです。

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コビン攻めの手筋③

<問題12>

美濃囲いの崩し方⑫

<ヒント>
後手の持ち駒がないことに着目します。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△7一玉▲4四角(正解図)

美濃囲いの崩し方⑫(正解図)

まずは、角と桂馬のコンビネーションで▲7四桂と王手をします。先手の持ち駒が飛車なので△7一玉と逃げますが、以下▲4四角(正解図)と角を再活用する手で即詰みがあります。

正解図の▲4四角に対して、後手は持ち駒がないので△6二金寄か△6二金上と受けるしかありません。どちらでも、以下▲同角成△同金▲5一飛△6一金▲8二金(詰め上がり図)までの詰みとなります。

美濃囲いの崩し方⑫(詰め上がり図)

ただし、後手が歩を持っていると、正解図の▲4四角に対して△5三歩の合駒で受かるので注意が必要です。

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コビン攻めの手筋④

<問題13>

美濃囲いの崩し方⑬

<ヒント>
即詰みがあります。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△9二玉▲8二金△9三玉▲6六角△8四歩▲8五桂(詰め上がり図)

美濃囲いの崩し方⑬(詰め上がり図)

問題図では、端に玉の逃げ道がありますが、この形は後手玉に即詰みがあります。

初手は▲7四桂の王手です。後手の応手として、①△7一玉、②△9三玉、③△9二玉の3通りの逃げ方があります。

①△7一玉なら、以下▲8二金までの3手詰です。

②△9三玉なら▲8五桂(変化図)と跳ねる手があり、以下△8四玉なら▲7五金、△9二玉なら▲8二金までの5手詰です。

美濃囲いの崩し方⑬(変化図)

③△9二玉が正解手順で、最長の詰め手数となります。以下、▲8二金△9三玉(途中図)のときに、再び角と桂馬のコンビネーションの手筋があります。すなわち、途中図から▲6六角△8四歩▲8五桂(詰め上がり図)までの7手詰です。

美濃囲いの崩し方⑬(途中図)

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コビン攻めの手筋⑤

<問題14>

美濃囲いの崩し方⑭

<ヒント>
難問。横からの攻めとコビン攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲6四角△6三金▲6二歩△7一金▲7四桂△同金▲5三角成(正解図)

美濃囲いの崩し方⑭(正解図)

初手▲6四角で、次の▲7四桂△9二玉▲6一龍を狙います。▲6四角に対して△6三金と上がるのが手筋の受けですが、そこで▲6二歩(途中図)が急所の一手です。

美濃囲いの崩し方⑭(途中図)

途中図の▲6二歩に対して、①△同金引なら▲7四桂△9二玉▲6一龍、②△同金上なら▲7一銀があります。そこで③△7一金とかわしますが、以下▲7四桂△同金▲5三角成(正解図)が上手い手順で攻めが成功しています。

正解図の▲5三角成は、次に▲7一龍△同玉▲6一歩成(変化図)からの詰みを狙っています。変化図以下、△6一同玉なら▲6二金までの詰み、△8二玉なら▲7一馬△9二玉▲8二金までの詰みです。

美濃囲いの崩し方⑭(変化図)

正解図は非常に受けづらく、片美濃崩しの有名な形となっています。横からの攻めとコビン攻めを組み合わせることで、片美濃崩しの形にすることが狙いの問題でした。

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コビン攻めの手筋⑥

<問題15>

美濃囲いの崩し方⑮

<ヒント>
長手数の即詰みがあります。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂打△同歩▲同桂(正解図)

美濃囲いの崩し方⑮(正解図)

▲7四桂打△同歩▲同桂の「継ぎ桂」の手筋が正解です。

正解図から、①△7一玉なら▲8二金で詰み、②△7三玉なら▲8二角△7四玉▲7五金で詰み、③△9三玉なら▲8二角△9二玉▲9三香△同桂▲9一角成△同玉▲8二金で詰み、④△9二玉と逃げるのが最長手数の詰みになります。

正解図以下、△9二玉▲9三香△同玉▲8二角△9二玉▲9一角成△9三玉▲8二馬△8四玉▲7五金(詰め上がり図)で、問題図から数えると13手詰になります。

美濃囲いの崩し方⑮(詰め上がり図)

▲7四桂打△同歩▲同桂の継ぎ桂は、美濃崩しの代表的な手筋の一つです。

美濃囲いは玉にヒモがついていない(玉のある8二のマス目に味方の駒の利きがない)ので、一度王手をかけられると8二の地点を制圧されて、連続して王手をかけられやすくなります。そのまま即詰みになる場合もあり、美濃囲いは王手に弱い囲いと言えます。

「継ぎ桂」「角と桂馬のコンビネーション」のコビン攻めの手筋は、王手に弱い美濃囲いの弱点を突いた攻め方です。

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コビン攻めの手筋⑦

<問題16>

美濃囲いの崩し方⑯

<ヒント>
前問の応用です。たった一手で後手玉に詰めろがかかります。

 

<答え>

正解:▲8六桂(正解図)(または▲6六桂)

美濃囲いの崩し方⑯(正解図)

盤面に何の手がかりもありませんが、▲8六桂がいきなり詰めろになります。▲6六桂でも同じく詰めろになります。

手順は前問とほぼ同じで、正解図から▲7四桂打△同歩▲同桂△9二玉▲9三銀打△同玉▲8二角△9二玉▲9一角成△9三玉▲8二馬△8四玉▲7五金(詰め上がり図)までです。

美濃囲いの崩し方⑯(詰め上がり図)

手順中の▲7四桂打が継ぎ桂と呼ばれる手筋で、△同歩▲同桂となってみると、後手玉が非常に狭いことが分かります。▲同桂に対して△7三玉と上部に逃げても、以下▲8二角△7四玉▲7五金で捕まってしまいます。

他の変化手順については、前問の解説を参考にしてください。持ち駒が香車から銀に変わっているだけで、詰み手順はほぼ同じです。

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コビン攻めの手筋⑧

<問題17>

美濃囲いの崩し方⑰

<ヒント>
横からの攻めや端攻めなども有力ですが、コビン攻めを考えてみてください。

 

<答え>

正解手順:▲7四歩△同歩▲7三歩△同桂▲8六桂(成功図)
その他の候補手:▲4四桂、▲9五歩

美濃囲いの崩し方⑰(成功図)

▲7四歩△同歩▲7三歩(途中図)のコビン攻めがあります。途中図の▲7三歩は「焦点の歩」の手筋で、①△同銀は▲6一龍があるので、②△同桂③△同玉のどちらかになります。

美濃囲いの崩し方⑰(途中図)

途中図で②△同桂の場合は、▲8六桂(成功図)の「控えの桂」が厳しく、次の▲7四桂の王手を防ぐ手段がありません。

途中図で③△同玉の場合は、▲8五桂(変化図)が厳しい一手です。

美濃囲いの崩し方⑰(変化図)

変化図から、(A)△8二玉なら▲8六桂や▲7三歩が厳しく、(B)△8四玉と上に逃げると▲6一龍が次の▲7五銀△同歩▲7四金△同玉▲7二龍以下の詰めろで、△6一同銀なら▲8六銀で必死となります。(C)△6二玉なら▲6六桂で次の▲7四桂が受かりません。

結局、途中図から△7三同玉の変化は▲8五桂で攻め切れます。

 

美濃囲いに対するコビン攻めのパターンとしては、前問までで紹介した「角と桂馬のコンビネーション」「桂馬2枚を使った継ぎ桂」の2種類が最も代表的です。

しかし、本問のように7筋に歩が利く場合は、7三の地点を攻めるのも有力です。途中図の「焦点の歩(▲7三歩)」を、どの駒でも取りづらいのが美濃囲いの泣き所です。

 

(その他の候補手)

問題図では、▲4四桂△6二金寄▲5二歩と横から攻めるのも有力です。また▲9五歩△同歩▲9三歩△同香▲9四歩△同香▲8六桂などの端攻めも厳しいです。

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コビン攻めの手筋⑨

<問題18>

美濃囲いの崩し方⑱

<ヒント>
△7四歩型の美濃囲いの弱点を突きます。

 

<答え>

正解手順:▲8六桂△6三金▲4一角(正解図)

美濃囲いの崩し方⑱(正解図)

初手▲8六桂で、次の▲7四桂を狙います。△6三金は自然な受けですが、正解図の▲4一角が厳しい一手となります。

▲4一角は、次の▲7四桂と▲6三角成△同銀▲6一龍の2つの筋を狙っていて、ぴったりした受けがありません。両方の筋を受けるために△7三玉と頑張っても、今度は▲7五歩△同歩▲7四香(変化図)の攻めがあります。

美濃囲いの崩し方⑱(変化図)

本問のように、△7四歩を突いた美濃囲いに対しては、▲8六桂(控えの桂)から▲7四桂を狙うのが急所になります。ただし、7三に玉の逃げ道があり、普通の美濃囲いと比べて玉が広いので要注意です。

たとえば、問題図から▲8六桂△6三金▲7四桂△同金▲6二香△同金▲7一角△7三玉(失敗図)のような攻め方だと、7三の地点に玉が逃げられるので失敗します。

美濃囲いの崩し方⑱(失敗図)

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端攻めの手筋(全4問)

美濃囲い(端攻め)

美濃囲いを、端攻めの手筋で攻略する問題です。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、問題だけをまとめた場所がありますので、そちらからご覧ください。

 

端攻めの手筋①

<問題19>

美濃囲いの崩し方⑲

<ヒント>
持ち駒の桂馬で王手を狙った端攻めです。

 

<答え>

正解:▲9五歩△同歩▲9二歩△同香▲9三歩△同香▲9四歩△同香▲8六桂(正解図)

美濃囲いの崩し方⑲(正解図)

桂馬と歩3枚を使った端攻めの基本手筋です。正解図の▲8六桂は、次に▲9四桂で香車を取りながら王手をするのが狙いです。

▲9四桂の王手が実現したときに、△9二玉や△9一玉と端に逃げるのは非常に危険な形です。△7一玉(成功図)の方がまだ安全ですが、美濃囲いの定位置である8二から玉を追い出すことができたので、端攻めとしては成功しています。

美濃囲いの崩し方⑲(成功図)

美濃囲いは端が弱点で、端攻めに一番適した駒は桂馬です。美濃囲いは王手に弱い囲いなので、▲8六桂→▲9四桂の王手の筋が非常に厳しくなるからです。

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端攻めの手筋②

<問題20>

美濃囲いの崩し方⑳

<ヒント>
横からの攻めと端攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲4三歩△同金▲9五歩△同歩▲6二香△7一金▲9二歩△同香▲9一角△同玉▲7一龍(成功図)

美濃囲いの崩し方⑳(成功図)

初手▲4三歩で「と金」攻めを狙います。次の▲4二歩成を嫌がり△4三同金(途中図)と取れば、守りの金1枚が受けに働かなくなります。こうなると、後手の囲いは片美濃囲いになるので、片美濃崩しの手筋を使うことができます。

美濃囲いの崩し方⑳(途中図)

途中図で、▲9五歩△同歩の突き捨てを入れてからの▲6二香が片美濃崩しの手筋です。△6二同金なら▲7一角があるので△7一金ですが、以下▲9二歩△同歩▲9一角(途中図2)が端攻めを絡めた送りの手筋です。以下△9一同玉▲7一龍(成功図)となれば、美濃崩しが成功します。

美濃囲いの崩し方⑳(途中図2)

本問では、横からの攻めに、端攻めを絡めて美濃囲いを攻略しています。▲9一角の送りの手筋を使うために、9一の地点にスペースを作ることが端攻めの狙いでした。

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端攻めの手筋③

<問題21>

美濃囲いの崩し方(21)

<ヒント>
銀を使った端攻めです。後手の応手によっては、一気の寄せもあります。

 

<答え>

正解手順:▲9五歩△同歩▲9三歩△同香▲9四歩△同香▲8五銀(正解図)

美濃囲いの崩し方(21)(正解図)

7筋の位を取って▲7六銀と支える形は玉頭位取り戦法で現れます。この形では、7六の銀を使った端攻めの手筋があります。

問題図から端歩を突き捨てて▲9三歩(途中図)と垂らします。この▲9三歩に対して①△同香、②△同桂、③△同玉、④手抜き、の4通りの応手が考えられます。

このうち、②△同桂だと▲9四歩と打って桂馬を取れますし、④手抜きなら次の▲9五香が厳しい一手となります。いずれも端攻めが成立しています。

美濃囲いの崩し方(21)(途中図)

途中図で①△同香は正解手順です。以下▲9四歩△同歩▲8五銀(正解図)で、銀を使った端攻めが成立します。正解図で無理に香車を守るなら△9三玉しかありませんが、以下▲6一飛成△同銀▲7一角(変化図)が鋭い攻め方です。

変化図では△8二飛と合駒するしかありませんが、以下▲9四銀△同玉▲8二角成(あるいは、▲9四銀△9二玉▲9五香など)で後手玉は寄っています。

したがって、正解図で△9三玉は危険なので、香車を守ることはできません。

美濃囲いの崩し方(21)(変化図)

途中図で③△同玉だと、先ほども出てきた▲6一飛成△同銀▲7一角(変化図2)の筋があります。変化図2でも△8二飛と合駒するしかなく、以下▲9五香△9四歩▲同香△同玉▲8二角成の送りの手筋で飛車を取れれば大成功です。

このように、端攻めに対して△9三同玉と取る形は非常に危険です。

ただし、もし横からの攻め(▲6一飛成△同銀▲7一角の筋など)がなく、端攻めだけの場合は、▲9三歩に対して△同玉と頑張って駒損を避ける指し方も考えられます。

美濃囲いの崩し方(21)(変化図2)

前問や本問のように、横からの攻めと端攻めのコンビネーションは、非常に効果的なことが多いです。挟み撃ちの形になりますし、送りの手筋が使いやすくなります。

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端攻めの手筋④

<問題22>

美濃囲いの崩し方(22)

<ヒント>
コビン攻めと端攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲8六桂△6三金▲9四桂△同香▲9五歩△同香▲同香(成功図)

美濃囲いの崩し方(22)(成功図)

問題図では歩切れですが、それでも端攻めがあります。

初手は▲8六桂が正解です。この桂馬は▲7四桂のコビン攻めを狙っているので、△6三金と受けるのが自然です。この時に、いきなり▲9四桂と逆側に跳ねて、端に桂馬をタダ捨てする手があります。普通に△同香と取りますが、以下▲9五歩△同香▲同香(成功図)で端が破れています。

成功図で△9三歩と受けても、▲同香成△同桂▲9四桂(変化図)が厳しい一手となります。変化図で△7一玉や△7三玉なら▲9三角成、△9二玉なら▲6一飛成△同銀▲8二金までの詰み筋があります。

美濃囲いの崩し方(22)(変化図)

本問の一つ目のポイントは、歩切れでも端攻めが成立する場合があるということです。特に、いきなり▲9四桂と捨てる筋は見落としやすいので要注意です。

二つ目のポイントは、▲8六桂がコビン攻めと端攻めの両方をにらんだ好位置ということです。二つの狙いがある手は受けづらく、▲7四桂のコビン攻めを受けられても、▲9四桂の端攻めが残っているという仕組みです。

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玉頭攻めの手筋(全3問)

美濃囲い(玉頭攻め)

美濃囲いを、玉頭攻めの手筋で攻略する問題です。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、問題だけをまとめた場所がありますので、そちらからご覧ください。

 

玉頭攻めの手筋①

<問題23>

美濃囲いの崩し方(23)

<ヒント>
歩の手筋を上手く使って玉頭を攻めます。

 

<答え>

正解手順:▲8四歩△同歩▲8五歩△同歩▲8四歩(正解図)

美濃囲いの崩し方(23)(正解図)

8筋の位を取った形は、玉頭位取り戦法でよく現れます。玉頭位取り戦法では、美濃囲いの弱点である玉頭を攻めることができます。

問題図から、「継ぎ歩と垂れ歩の手筋」で玉頭攻めが成立します。手順は▲8四歩△同歩▲8五歩△同歩▲8四歩(正解図)です。

正解図では、次の▲8三銀の打ち込みが非常に厳しい狙いです。たとえば、▲8三銀△同銀▲同歩成△同玉▲6一飛成(変化図)のような筋が実現すると、後手玉に受けがなくなります。一段飛車が利いているので、7二の銀が動くと6一の金を取られてしまうのが後手陣の泣きどころです。

美濃囲いの崩し方(23)(変化図)

正解図で△6二金寄のような受けなら、▲8五銀で歩を補充しながら拠点を支えて好調です。

歩が3枚ある場合(本問では盤上の8五歩と持ち歩2枚)、常に継ぎ歩から垂れ歩の手筋があります。この手筋は応用範囲が広いので、覚えておくと役立ちます。

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玉頭攻めの手筋②

<問題24>

美濃囲いの崩し方(24)

<ヒント>
攻め駒が少ないので、すぐに後手陣を攻略することはできません。
しかし、香車と歩だけでも、後手陣の形を乱せる効果的な攻めがあります。

 

<答え>

正解手順:▲8四歩△同歩▲8五歩△同歩▲8四香(正解図)

美濃囲いの崩し方(24)(正解図)

問題図では、持ち駒に歩が1枚しかないので、前問のような「継ぎ歩から垂れ歩の手筋」は使えません。しかし、香車と歩1枚だけでも、相手からすると嫌味な攻め方があります。

正解は▲8四歩△同歩▲8五歩(途中図)の継ぎ歩で、以下△同歩なら▲8四香(正解図)と空いた空間に香車を打ちます。以下△8三歩の合駒は2歩で打てないので玉を逃げますが、▲8一香成と桂馬を取れば少し駒得ですし、後手陣を乱すことができます。

このような香車の使い方は、「歩の裏側に香車を打つ手筋」として知られています。歩の合駒ができないので、香車の攻めが厳しくなります。

美濃囲いの崩し方(24)(途中図)

なお、問題図で持ち駒の歩が2枚あれば、前問のように▲8四歩△同歩▲8五歩△同歩▲8四歩(参考図)として、玉頭に攻めの拠点を作っておく順も有力です。参考図では、次に▲8三香と打ち込む狙いがあります。

美濃囲いの崩し方(24)(参考図)

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玉頭攻めの手筋③

<問題25>

美濃囲いの崩し方(25)

<ヒント>
気付きにくい玉頭攻めがあります。

 

<答え>

正解手順:▲8四桂△同歩▲8三香△同玉▲6一龍△同銀▲7一角成(正解図)

美濃囲いの崩し方(25)(正解図)

問題図では、いきなり▲8四桂と歩頭の桂馬を打ち込む攻め筋があります。以下、△同歩▲8三香△同玉▲6一龍△同銀▲7一角成(正解図)が正解手順で、桂香飛の3枚を捨てる豪快な攻め方です。

正解図まで進むと、次の▲8二金△9三玉▲7二金△8三玉▲8二馬までの詰み筋や、▲6一馬と銀を取る手からの詰み筋などがあります。正解図で△6二飛(変化図)と自陣飛車を打って、▲8二金と▲6一馬の両方を受ける手がありそうですが、変化図から▲8四歩△同玉▲6二馬が飛車を取りながらの詰めろとなってしまいます。

美濃囲いの崩し方(25)(変化図)

問題図に戻って、▲8四歩△同歩▲8三香△同玉▲6一龍△同銀▲7一角成という正解手順によく似た攻め方も考えられます。こちらの手順の方が、桂馬を節約できるので一見良さそうですが、△6二飛(参考図)と頑張られると大変です。

美濃囲いの崩し方(25)(参考図)

ちなみに、問題図では▲5三香と横から攻める手や、▲7四歩△同歩▲8六桂とコビン攻めをする手もあります。

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問題だけのまとめ(ヒント・解答・解説なし)

美濃崩しの問題だけのまとめです。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、こちらをご覧ください。

 

美濃囲いの崩し方①

 

美濃囲いの崩し方②

 

美濃囲いの崩し方③

 

美濃囲いの崩し方④

 

美濃囲いの崩し方⑤

 

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美濃囲いの崩し方⑥

 

美濃囲いの崩し方⑦

 

美濃囲いの崩し方⑧

 

美濃囲いの崩し方⑨

 

美濃囲いの崩し方⑩

 

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美濃囲いの崩し方⑪

 

美濃囲いの崩し方⑫

 

美濃囲いの崩し方⑬

 

美濃囲いの崩し方⑭

 

美濃囲いの崩し方⑮

 

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美濃囲いの崩し方⑯

 

美濃囲いの崩し方⑰

 

美濃囲いの崩し方⑱

 

美濃囲いの崩し方⑲

 

美濃囲いの崩し方⑳

 

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美濃囲いの崩し方(21)

 

美濃囲いの崩し方(22)

 

美濃囲いの崩し方(23)

 

美濃囲いの崩し方(24)

 

美濃囲いの崩し方(25)

 

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まとめ

美濃囲いの手順や崩し方にはパターンがあります。
パターンを覚えて、実戦で使ってみることを繰り返すのが上達の近道です。

 

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将棋の形勢判断のコツ(形勢判断シリーズ10回分のまとめ) https://shogijugem.com/keisei-handan-matome-3964 Sat, 03 Sep 2016 08:19:00 +0000 https://shogijugem.com/?p=3964 将棋の形勢判断シリーズ10回分のまとめ記事です。 これまでに、私の実戦から10局の具体的な将棋を取り上げて形勢判断の分析をしました。10局を一つの区切りとして、今までの形勢判断を振り返ってみたいと思います。 ・駒の損得の...

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フクロウ

将棋の形勢判断シリーズ10回分のまとめ記事です。

これまでに、私の実戦から10局の具体的な将棋を取り上げて形勢判断の分析をしました。10局を一つの区切りとして、今までの形勢判断を振り返ってみたいと思います。

・駒の損得の判断が難しい場合のコツは?
・「玉の堅さ」と「玉の安全度」の違いとは?
・駒の働きをどのように考えたらよいか?
・どのような局面で形勢判断をしたらよいか?

など、1局だけではなかなか見えてこなくて、10局を比較分析することで、はじめて見えてくる形勢判断のコツ」を紹介しています。また、形勢判断の精度を上げるための課題も述べています。

 

このページの目次

 

形勢判断シリーズのブログ記事のリスト(10局分)

本記事は10局分のまとめ記事です。
1局ごとの個別の形勢判断についての詳しい内容は、以下のリンクから見られます。

実例1:形勢判断の4要素
実例2:玉の囲いの堅さの定量的な評価
実例3:①~④の4要素で優劣の評価が割れた場合
実例4:優勢か劣勢かがわかりやすい場合
実例5:4つの要素で判断する枠組みの問題点
実例6:傷のある銀矢倉と穴熊、手番の価値
実例7:飯島流引き角 vs 四間飛車
実例8:居飛車穴熊 vs 中飛車銀冠、局面全体のバランスを考える
実例9:中飛車左穴熊 vs 向かい飛車、棋力と形勢判断
実例10:四間飛車 vs 居飛車急戦、大駒の働きと形勢への影響

 

形勢判断の4要素

形勢判断の方法としては、①駒の損得、②玉の堅さ、③駒の働き、④手番、の4要素から分析しています。

一つ一つの要素を個別に意識することによって、形勢判断の精度が高まります。

①から④までの個別の要素については、次のようにまとめました。

 

形勢判断の要素その1:「駒の損得(駒割り)」

まずは、「①駒の損得」について。

駒の損得(駒割り)は形勢判断の基本です。序盤では①~④の中で一番大事な要素と言ってよく、中盤以降も重視されます。

「終盤は駒の損得よりスピード」という格言がありますが、実は終盤でも駒の損得(駒割り)は非常に大きな要素です。

 

駒の損得の判断が難しい場合のコツ

駒の損得(駒割り)の判断は、簡単な場合と難しい場合があります。

「角銀交換」「銀桂交換」など、1対1の駒交換の場合は簡単です。駒の価値の順番は、

飛 > 角 > 金 > 銀 > 桂 > 香 > 歩

なので、駒得か駒損かはパッと分かります。

一方で、「金金歩3 vs 飛桂」実例1:左下図)「銀銀 vs 飛桂」実例5:右下図)「角香歩 vs 飛」実例7)など、組み合わせが複雑な場合の駒の損得(駒割り)の判断はもっと難しくなります。

形勢判断の実例1(駒の損得)形勢判断の実例5(駒の損得)

このような場合は、駒の点数を使って計算するのがコツです。駒の損得(駒割り)を、飛10点、角8点、金6点、銀5点、桂4点、香3点、歩1点と点数で数えることによって(通常は点数をさらに2倍にする)、複雑な駒交換についても有利か不利かを大まかに判断できるようになりました。(参考:駒の点数の谷川理論3人のプロ棋士の駒の点数の比較

 

歩の損得が絡んだ場合はケースバイケース

駒の損得についての課題の一つは、歩の扱いです。

実例4(下図)では、「金 vs 桂歩2」の交換を、同じ合計12点でほぼ互角と判断しました。(駒の点数の合計をそれぞれ2倍しています。)

形勢判断の実例4(駒の損得)

しかし、一般的には「金桂交換」の駒得とされることが多いので、駒の損得がほぼ互角という判断には違和感もあります。駒得かほぼ互角かの違いは、歩の扱いの差によって現れます。実例4では「金 vs 桂歩2」の交換であると同時に、歩を損している側の先手は歩切れでした。

もし、先手が持ち駒に歩を何枚か持っていたと仮定すると、先手の2歩損の意味合いが薄れます。この場合は、「金 vs 桂歩2」の3枚換えでほぼ互角というよりも、「金桂交換」で駒得と判断した方がぴったりします。

しかし、実際の実例4では2歩損した先手が歩切れなので、歩の価値がクローズアップされ、「金 vs 桂歩2」(合計12点ずつ)でほぼ互角という判断にも一理あります。

 

歩の損得が絡んだ駒の損得については、

A. 歩を損した側が歩切れになっている場合。(実例1実例3実例4
B. 歩を損しても歩切れになっていない場合。(実例7実例9実例10
C. 歩の損得の枚数が多い場合。(たとえば、歩5枚の得は、銀得と同じ+10点分もあるとは判断しづらい。)

などケースバイケースで、単純な合計点数による評価から微調整する必要があると考えられます。特に、上記のA~Cの3パターンの違いを意識することがコツです。

 

形勢判断の要素その2:「玉の堅さ(玉の安全度)」

次に、「②玉の堅さ」について。

現代将棋では玉の堅さが非常に重視されます。玉の堅さは勝ちやすさに直結するからです。

玉の堅さに差があり、攻めだけを考えればよい展開だと、実戦的には非常に勝ちやすくなります。逆に、玉が薄い場合は、わずかなミスが致命傷になりやすいです。

 

玉の堅さが大差と言えるのは?

玉の堅さについては、自玉と相手玉の「相対的な」堅さの差で考えることがコツです。

薄い玉だと苦労しやすいものですが、特に相手玉との堅さの差が大きい場合に、玉の薄さの不利が顕著に表れます。相手の攻めに対して手抜きをしづらくなり、一方的に攻められる展開になりやすくなります。具体的には、玉の堅さに金銀2枚以上の差がある場合は、「玉の堅さは大差」と言って構わないと思います。(実例1:下図)

形勢判断の実例1(玉の堅さ)

 

「玉の堅さ」と「玉の安全度」の違い

玉の堅さについての課題の一つは、相手の攻め駒の配置によって玉の堅さが変わることです。この場合は、「玉の堅さ」というよりも「玉の安全度」と表現した方がぴったりします。

実例10(下図)では、「美濃囲い vs 船囲い」で先手玉の方が堅い囲いですが、後手の飛車角の攻め駒が急所に利いているので、玉の安全度としては後手玉の方が上です。

形勢判断の実例10(玉の堅さ)

ただし、「玉が堅くない」と「相手の攻め駒によって玉が安全ではない」の2つは似ているようで異なります。前者の場合は、自陣に手を入れて玉が堅くなることもありますが、ぴったりした補強方法がないこともあります。後者の場合は、相手の攻め駒を排除できれば玉の安全度が上がります。たとえば、実例10では、後手の大駒の利きをさえぎることができれば、先手玉の安全度は一気に向上します。前者と後者の違いを理解することも、玉の堅さを判断するためのコツと言えるでしょう。

 

「形が崩れた囲い」の堅さの評価

玉の堅さに関する課題のもう一つは、「形が崩れた囲い」の堅さの評価です。

具体的には、実例2(左下図)の先手の金無双と後手のカニ囲い、実例3の後手の美濃囲い、実例4の後手の穴熊、実例6(右下図)の先手の銀矢倉と後手の穴熊、実例9の後手の穴熊、などです。

形勢判断の実例2(玉の堅さ)形勢判断の実例6(玉の堅さ)

攻められすぎて、囲いの原形をとどめていない場合はともかくとして、元の囲いから少し形が崩れたぐらいなら、元の囲いとの比較で「形が崩れた囲い」の堅さを評価できると思います。

実例2実例6では、「元の囲いから金銀何枚分弱くなったか」というモノサシで定量的な比較を試みましたが、このような方法が適切かどうかは疑問も残ります。しかしながら、元の囲いを基準にして考えるという発想自体は、それなりに有効だと思われます。

 

形勢判断の要素その3:「駒の働き(駒の効率)」

次に、「③駒の働き」について。

駒の働き(駒の効率)に意識を向けることで、盤上の一つ一つの駒を個別に細かく見れるようになります。

 

遊び駒の形勢へのマイナスの影響

駒の働きについて、一番分かりやすいのが遊び駒で、遊び駒の形勢へのマイナスの影響は評価しやすいです。

駒の働きの評価は、「①駒の損得」や「②玉の堅さ」よりも難しいことが多いので、評価しやすい遊び駒から考えるのがコツです。

特に、実例3(左下図)の先手の左辺の桂香や、実例8(右下図)の盤面右側の互いの桂香のように、玉の囲いと反対側の桂香は取り残されて遊び駒になりやすいです。遊んでいるだけならまだしも、相手にタダで取られることも多々あります。

形勢判断の実例3(遊び駒)形勢判断の実例8(遊び駒)

実例1~10では、金銀が明らかな遊び駒となっているケースはありませんでしたが、駒の価値が高い金銀の遊び駒は、桂香の遊び駒よりも大きなマイナスになるのは当然です。また金銀ではありませんが、実例9の8二の「と金」は、成り駒が遊んでいるケースです。

 

中途半端な位置にある小駒の評価

玉の近くにある駒は守り駒として働きます。
逆に、玉から遠く離れている小駒は、終盤以降は遊び駒になっている可能性が高いです。

一方で、中途半端な位置にある小駒をどう評価したらよいかは難問です。

実例8(左下図)の▲6六金、実例9(右下図)の△5三銀は、比較的玉に近いので守りに働いていますが、玉の囲いからは少し離れていますし、離れ駒の弱点になっている可能性もあります。このような駒は展開によって、守り駒として立派に働く場合も考えられますし、逆に弱点として攻められる場合も考えられます。駒の働きの評価は簡単ではなく、形勢判断における読みの比重が高くなるかもしれません。

形勢判断の実例8(駒の働き)形勢判断の実例9(駒の働き)

また、実例8の△3二金も評価が簡単ではありません。玉の囲いからは離れていますが、自陣の守りに働いているので全くの遊び駒ではありません。△3二金の評価は展開によって左右されそうです。

 

大駒の働きには大きな幅があるので評価が難しくなる

大駒は強力な駒なので、駒の働きを考える上でとても重要です。

利きが多い強力な駒であるが故に、完全に遊び駒になっている場合と、抜群に働いている場合で、大駒の働きには非常に大きな幅があります。駒の働きに大きな幅があるということは、評価の難しさに繋がるので、慎重な取り扱いが必要です。今回の形勢判断では、大駒の働きについて曖昧な評価が多く、今後の課題です。

 

「①駒の損得」や「②玉の堅さ」との関連性

「①駒の損得」と「③駒の働き」の関連で言うと、完全な遊び駒については、駒の損得の評価と比較しやすいです。

実例3(左下図)では、先手陣で遊んでいる桂香のマイナスと、先手の香得のプラスを比較しました。実例10(右下図)でも、駒の損得と遊び駒の評価を関連付けて考えています。

形勢判断の実例3(駒の働き)形勢判断の実例10(駒の働き)

 

「②玉の堅さ」と「③駒の働き」の関連で言うと、囲いを構成している駒(あるいはそれに準ずる駒)について、②と③で重複してしまう問題があります。

たとえば、玉の近くの守りの金は、玉の堅さに貢献していますし、同時に駒の働きが良いとも言えます。

玉の囲いを構成している完全な守備駒と考えるなら、「②玉の堅さ」の項目内で形勢への影響をカウントして、「③駒の働き」の項目では除外するというやり方も一つの手です。ただし、中途半端な位置に駒がある場合や、攻防に利く位置に駒がある場合など、②と③を完全に分離するのが難しいケースもあり得ます。

特に大駒は攻防に働くことが多いので、「②玉の堅さ」と「③駒の働き」の項目を重複して過大評価しないように注意が必要です。たとえば、実例1(下図)の△6九龍や、実例10の△6六角です。

形勢判断の実例1(駒の働き)

 

形勢判断の要素その4:「手番」

最後に、「④手番」について。

形勢判断シリーズでは、実例7(下図)のように、中盤の後半から終盤の入り口あたりの局面をメインとして取り上げました。さらに、さばき合いから大きな駒交換があった直後の局面が多くなりました。いずれも、手番の価値がある程度高くなっている(しかし、高すぎない)局面での形勢判断です。

形勢判断の実例7(手番)

 

どのような局面で形勢判断をしたらよいか?

形勢判断の精度はもちろん重要ですが、「どのような局面で形勢判断をするかの見極め」も大事です。

今回、形勢判断のテーマ図を選ぶプロセスにおいて、「どのような局面で形勢判断がしやすいか」についての経験値が上がったように思います。

さばき合いの最中(直後ではない)や最終盤など、手番の価値が高すぎる瞬間での形勢判断はなかなか難しいです。手番以外の①~③の項目が一手で大きく揺れ動くような激しい流れの中では、形勢判断よりも読みの比重が高くなるからです。いったん局面が落ち着いて、手番の価値もある程度落ち着いた瞬間での形勢判断が良さそうです。ある局面における手番の価値の高さを見極めることは今後の課題です。

 

総合的な形勢判断

①~④の個別の項目(①駒の損得、②玉の堅さ、③駒の働き、④手番)については、一通りのまとめをしたので、最後に「局面全体としての形勢判断」について述べます。

①~④の項目別の評価を総合して、全体の形勢を精度よく判断することは大きな課題です。

 

実例4(左下図)のように、①~④の優劣が割れていない場合の形勢判断は簡単です。実例1実例2(右下図)、実例10のように、項目の優劣が偏っている場合も、形勢判断の結論を出しやすいです。

形勢判断の実例4(総合的な形勢判断)形勢判断の実例2(総合的な形勢判断)

しかし、実例3(左下図)、実例5実例6のように①~④の項目の優劣が2対2で割れている場合は、①~④の項目別の精度を上げないと難しいので、この点は今度の大きな課題です。また実例8(右下図)では、②と③を合わせて評価しましたが、このような手法も今後の形勢判断に応用したいです。

形勢判断の実例3(総合的な形勢判断)形勢判断の実例8(総合的な形勢判断)

 

今度の方針としては、まだまだ分析の数が少なすぎるので、少しずつ数を増やして形勢判断の経験値を上げるのが一つの方向性です。その際に、①~④の個別の項目については、今回の反省点を踏まえた上で分析し、精度を高めていきたいです。

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将棋の形勢判断:四間飛車 vs 居飛車急戦、大駒の働きと形勢への影響 https://shogijugem.com/keisei-handan-ogoma-3685 Sat, 30 Jul 2016 02:30:56 +0000 https://shogijugem.com/?p=3685 将棋の形勢判断シリーズの第10回です。戦型は四間飛車 vs 居飛車急戦です。大駒は強力な駒なので、形勢に大きな影響を与えます。特に、大駒が攻めと守りの両方に働くときに絶大な影響力があります。 しかし、大駒の力を過大評価し...

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将棋の形勢判断シリーズの第10回です。戦型は四間飛車 vs 居飛車急戦です。大駒は強力な駒なので、形勢に大きな影響を与えます。特に、大駒が攻めと守りの両方に働くときに絶大な影響力があります。

しかし、大駒の力を過大評価しすぎるのも考えものです。形勢判断の4要素で、大駒はいくつかの要素に同時に影響を与えやすいので、冷静かつ適切に評価することが大事です。

 

形勢判断シリーズ(No. 10)
前回:将棋の形勢判断:中飛車左穴熊 vs 向かい飛車、棋力と形勢判断
次回:

このページの目次

 

四間飛車 vs 居飛車急戦のテーマ図

形勢判断10:ノーマル四間飛車vs居飛車急戦のテーマ図

四間飛車 vs 居飛車急戦で、じゅげむの昔の実戦です。将棋倶楽部24で先後ともにレーティング1900ぐらいの対局です。

斜め棒銀の定跡形から後手が仕掛けてきて、先手の私は途中でまずい手を指してしまいました。不利を自覚していたので、ここから粘りを意識して指したのですが、この局面でどのくらい形勢が悪化していたのかを分析してみたいと思います。

互いに大駒をさばき合った直後で、中盤の終わりから終盤の入り口あたりの局面なので、形勢判断をするには丁度良いタイミングだと思います。

 

形勢判断の4要素

いつものように、①駒の損得、②玉の堅さ、③駒の働き、④手番、の4項目を考えます。オーソドックスな形勢判断の手法です。

 

駒の損得

形勢判断10:ノーマル四間飛車vs居飛車急戦のテーマ図

「①駒の損得」は、先手は桂損ですが歩が1枚多いです。すなわち、先手「歩(2点)」vs 後手「桂(8点)」の比較で、後手の駒得です。

後手は△8九飛成の成り込みと同時に桂を手に入れましたが、先手は▲8一龍と駒損を解消できないのが痛いです。9九の香も一方的に拾われそうです。

 

玉の堅さ

形勢判断10:ノーマル四間飛車vs居飛車急戦のテーマ図

「②玉の堅さ」については、互いに金銀3枚の囲いで、囲いの部分だけを考えると、先手の美濃囲いの方が後手の船囲いよりも堅いです。しかし、「②玉の堅さ」は「玉の安全度」として考えるべきで、相手の攻め駒の影響を無視できません。

図の局面では、△8九龍と△6六角が先手の美濃囲いの急所の3九の地点をにらんでいます。ものすごく危険な形で、放置すればすぐに△3九銀と打ち込まれて寄ってしまいます。△3九銀▲1八玉△4九龍が詰めろなので(△3九銀▲1七玉△2五桂~△4九龍でも詰めろ)、実は先手玉は二手スキです。

一方で、後手の船囲いはすぐに寄るような形ではありません。二段龍の▲7二龍に対して、△5二金と△6二銀の2枚が横利きをさえぎっている形で、なかなか抵抗力があります。さらに、△6六角が自陣の守りにもよく働いています。

したがって、「②玉の堅さ」についても、後手有利です。

 

駒の働き

形勢判断10:ノーマル四間飛車vs居飛車急戦のテーマ図

「③駒の働き」については、「玉と反対側の端の桂香」と「大駒の働き」について考えます。

端の桂香については、先手は▲9九香の1枚が遊んでいます。一方で、後手は△9一香と△8一桂の2枚が遊んでいます。よって、後手の方がやや損をしています。しかし、先手の▲8九桂は後手に取られた駒なので、「①駒の損得」の項目でその損はしっかりとカウントされています。すなわち、「端にある遊び桂が取られた」ということで、やや損が軽くなっているという程度です。

大駒の働きについては、相当な差があります。△8九龍は先手の美濃囲いの3九の地点をにらんでいる急所の一段龍です。△6六角も急所の3九の地点をにらんでおり、自陣の受けにも働いています。もし仮に、盤上の△6六角が駒台にあったとしても、6六に打ちたいぐらいの急所の位置です。したがって、角を持ち駒として温存しているよりも、6六にある方が働いています。というわけで、後手は龍と角の2枚の大駒がどちらも非常によく働いています。この点は、「②玉の堅さ」の項目にも大きな影響を与えています。

一方で、先手は▲7二龍と持ち角です。▲7二龍は攻めを考えたときに、△8九龍と比べて働きがかなり弱いです。ただし、後手の龍より内側にあるので、▲7九歩の底歩を打てるという利点はあります。また、持ち角は悪くはないですが、ベストの位置にある△6六角と比べるとはっきりと見劣りします。

大駒の働きの差の方が、端の遊び桂1枚の差よりもずっと大きいので、「③駒の働き」は後手有利です。ただし、どのくらい有利かという点に関しては、「②玉の堅さ」の項目ですでにカウントされていて重複する部分もあります。

 

手番

「④手番」は先手です。

中盤の終わりから終盤の入り口あたりなので、手番の価値は序中盤に比べると大きいです。
もし、この局面で手番が後手なら、△3九銀ですぐに将棋が終わってしまうところです。

 

総合的な形勢判断

①~④をまとめると、

形勢判断10:ノーマル四間飛車vs居飛車急戦のテーマ図

①駒の損得:後手の駒得・・・先手「歩(2点)」vs 後手「桂(8点)」
②玉の堅さ:後手有利・・・後手の二枚の大駒が脅威
③駒の働き:後手有利・・・大駒の働きの差が大きい
④手番:先手

となって、手番以外の3項目はすべて後手有利です。先手の手番で、すべてをひっくり返すような手があるわけではないので、この局面は後手優勢といえます。

ただし、①~③の3項目が後手有利だからといって、総合的な形勢が大差かというと、それは冷静に考える必要があります。

 

「②玉の堅さ(玉の安全度)」は、この瞬間はものすごく危険ですが、もともとが美濃囲いの堅陣なので、守りの手が入ればけっこう堅くなります。▲7九歩の底歩や▲4八銀が入ると、それなりに粘りのある形になります。

「③駒の働き」の差は、ほぼ「大駒の働き」の差なので、大駒の利きを上手く止めることができれば、その差を小さくすることができます。実戦ではこの後、(必ずしも上手くいったかどうかはともかく)▲7九歩の底歩で龍の横利きを遮断したり、△9九角成と香を取られたときに▲8八歩と馬の利きを遮断したりしました。

そもそも、「②玉の堅さ」と「③駒の働き」は、両方とも後手の大駒の影響が大きく、重複する部分がありました。ということは、後手の大駒の働きを弱くする手を指せば、②と③の両方に効果があります。現状の放置は、②と③の両方の点で非常にまずいですが、先手の受けの手の価値が高い局面です。

ただし、後手は△8九龍も△6六角もよく働いていて、一手で両方を押さえることはできません。駒損でもありますし、形勢が後手優勢であることは変わりません。

 

形勢判断10:ノーマル四間飛車vs居飛車急戦のテーマ図

この辺りのニュアンスを含めてまとめ直したいと思います。

現局面では「②玉の堅さ(玉の安全度)」と「③駒の働き」が大差です。しかし、②と③の両方とも後手の大駒の利きを由来としているので、「④手番」を持った先手が大駒の利きをうまく遮断する手段があれば、後手勝勢とまでいえるような局面ではありません。その場合は、後手の駒得もそれほど大きくはないので、後手優勢というぐらいです。

 

実戦ではこの後、▲7九歩△7一歩▲7八龍△同龍▲同歩△8九飛(下図)となりました。▲7九歩の底歩で何とか△8九龍の横利きを遮断しようと試みましたが、△7一歩から龍の交換となって、再び△8九飛の一段飛車を打たれました。

形勢判断10:ノーマル四間飛車vs居飛車急戦(62手目△8九飛まで)

今度は底歩も効かないので、▲6九歩△同飛成▲4八銀△9九角成▲8八歩(下図)と、大駒の利きを遮断できる展開を狙って紛れを求めました。

形勢判断10:ノーマル四間飛車vs居飛車急戦(67手目▲8八歩まで)

一気に寄せられる展開は避けられましたが、駒損は大きくなっており、先手が苦しい形勢に変わりはありません。この後、形勢が接近したと思われる瞬間もありましたが、結局苦しいまま先手の私が敗北しました。

 

形勢判断シリーズ(No. 10)
前回:将棋の形勢判断:中飛車左穴熊 vs 向かい飛車、棋力と形勢判断
次回:

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将棋の形勢判断:中飛車左穴熊 vs 向かい飛車、棋力と形勢判断 https://shogijugem.com/keisei-handan-hidarianaguma-3429 Sat, 16 Jul 2016 07:16:10 +0000 https://shogijugem.com/?p=3429 将棋の形勢判断シリーズの第9回です。今回は向かい飛車 vs 中飛車左穴熊です。美濃囲い vs 穴熊の戦いでは、さばき合った直後の形勢判断が大事です。穴熊の金銀に離れ駒がある場合は、玉の堅さの評価が難しくなります。 &nb...

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将棋の形勢判断シリーズの第9回です。今回は向かい飛車 vs 中飛車左穴熊です。美濃囲い vs 穴熊の戦いでは、さばき合った直後の形勢判断が大事です。穴熊の金銀に離れ駒がある場合は、玉の堅さの評価が難しくなります。

 

形勢判断シリーズ(No.9)
前回:将棋の形勢判断:居飛車穴熊 vs 中飛車銀冠、局面全体のバランスを考える
次回:将棋の形勢判断:四間飛車 vs 居飛車急戦、大駒の働きと形勢への影響

このページの目次

 

向かい飛車 vs 中飛車左穴熊のテーマ図

形勢判断9:中飛車左穴熊vs向かい飛車のテーマ図

先手向かい飛車vs後手中飛車左穴熊で、じゅげむの昔の実戦です。将棋倶楽部24で、先手の私がレーティング 1800台、後手がレーティング 1700台の対局です。この対局では、中飛車左穴熊への対策が全くできていなくて、中盤の入り口あたりで早くも形勢不利になってしまいました。その後で何とか盛り返しましたが、図の78手目の局面は飛車を交換した直後で、終盤戦に入ろうかというタイミングです。

振り飛車vs居飛車の対抗型の中盤では、互いの攻め駒同士をさばき合う展開が多いです。この対局は、向かい飛車vs中飛車左穴熊ですが、双方の玉が盤面の同じ側(先手から見て右側)に囲われているという点では、振り飛車vs居飛車の対抗型に似ています。盤面の左側では攻撃陣が直接向かい合うことになるので、しばしばさばき合いの展開になります。このような将棋では、さばき合った直後にどちらが優勢なのかが問題となります。

一般的に穴熊は美濃囲いよりも堅いです。盤面の左側で互角のさばき合いをしても、玉の堅さの分だけ不利になることが十分あり得ます。その点には特に注意が必要です。ただし、今回の後手の穴熊は金銀がバラバラで、穴熊といえども十分な堅さとは言えません。

穴熊に対してさばき合いを挑むときに、「どのような局面なら美濃囲いでも優勢か」「さばき合いを挑むと不利になるのはどのような局面か」、その2つのパターンの境界を探ることが大事です。そのためには、さばき合った直後の形勢判断が重要です。

 

形勢判断の4要素

①駒の損得、②玉の堅さ、③駒の働き、④手番、という形勢判断の4項目について考えます。

 

駒の損得

形勢判断9:中飛車左穴熊vs向かい飛車のテーマ図

まず「①駒の損得」は、「先手の1歩損、8二のと金」が先手と後手の差です。

ただし、8二のと金は後手玉から遠すぎるので、仮に「①駒の損得」で考慮に入れたとしても、「③駒の働き」でマイナスになることは明白です。一応、桂香取りになっていますが、飛車でも拾える桂香なので、桂香取りという要素が大きなプラスになるとは思えません。それどころか、▲8二飛と攻防に飛車を打つための邪魔駒にすらなっています。というわけで、8二のと金は「①駒の損得」では無視することにします。

すると、先手の1歩損のみを考えればいいですが、互いに歩切れではなくて、1歩損の先手も持ち駒に歩を2枚持っているので、「①駒の損得」はほぼ互角と考えていいと思います。

 

玉の堅さ

形勢判断9:中飛車左穴熊vs向かい飛車のテーマ図

次に「②玉の堅さ」です。

先手は金銀3枚の美濃囲いが丸々残っています。▲5九歩の底歩も利きます。横からの攻めには、なかなか抵抗力がありそうです。4六歩を突いてある形なので、こびん攻めにもやや耐性があります。後手が穴熊なので端攻めの危険も少ないです。ただし、美濃囲いは穴熊ほど玉が深くはないので、△5六歩と5筋に歩が伸びてくる形がけっこう先手玉に近いので要注意です。

一方、後手の囲いはどうでしょうか。5三銀が少し遠くに離れているので、金銀3枚の囲いと言えるかは微妙なところで、さらに3二金も浮き駒となっています。3三角も受けに利いていますが、▲4五桂の筋で攻められる弱点にもなっています。穴熊なので玉が深いのは利点ですが、現局面での後手陣の形には不安が多いです。

ただし、3二金型は必ずしもマイナスではありません。▲6一飛と一段飛車を打たれた時に金が当たりにならないですし、▲8六角と飛び出したときの角のラインからも逃げています。3一金型と3二金型の優劣の比較は、攻め方や状況によって異なります。

実戦を指している時は、先手の美濃囲いの方が安全度が高そうだと感じていましたが、改めて眺めてみても先手玉の方が堅そうに見えます。しかしながら、対穴熊戦では、玉の深さの利点が見た目以上に効いてくる場合もあります。

「②玉の堅さ」は先手やや有利としておきますが、囲いに対する理解度によって評価が変わってきそうな項目です。

 

駒の働き

形勢判断9:中飛車左穴熊vs向かい飛車のテーマ図

「③駒の働き」については、先後とも玉と反対側の桂香は取られそうな駒です。玉側の金銀については「②玉の囲い」の項目で考えたので、この項目では除外します。注目すべきは、双方の角の働きと5五の歩です。

現局面での先手の角は、攻めにも受けにもあまり働いていません。もちろん1手で▲8六角と銀取りに飛び出すことはできます。しかし、今の6八のポジションでは受けにもあまり働いていないという認識が必要です。それどころか、△6七歩と叩かれたりして、攻めの格好の目標になり得ます。実際に、実戦では角を6八という中途半端な位置に置いたままにしておいたせいで、その角を攻められてひどい目にあいました。すなわち、先手の角は比較的簡単に働かせることはできますが、放置していては駄目な駒です。

一方で、後手の角は現状でも受けにある程度働いていますが、△5六歩と角筋を通したときに働きがかなり良くなります。△6六角と出る手は美濃囲いの急所の3九の地点をにらんでいますし、△9九角成と香を取ってから馬を自陣に引くような順もあります。△5六歩は攻めの拠点にもなりますし、同時に角筋を通すので、非常に味の良い手になっています。

そこで、「③駒の働き」を、「先手の6八角」と「後手の3三角と5五歩のセット」で比較すると、後手の方が少し良いかもしれません。すぐに△5六歩には▲7七角で角交換を迫る手もありますが、それでも△5六歩の拠点は残ります。もし、△8八飛~△8九飛成で桂を取られると、▲7七角ができなくなるという変化も考えられます。また、すぐに▲8六角と働かせる手に対しては、3二金があらかじめ角筋から逃げているのが、後手にとってのプラス要素です。

というわけで、「③駒の働き」は後手やや有利とします。(ただし、「②玉の堅さ」に関係する玉側の金銀を除いています。)

 

手番

最後に「④手番」は先手です。

手番の評価には、「読み」の要素がかなり含まれています。厳しい手があればその分だけ手番の価値が高くなりますし、逆に手詰まりに近い局面では手番の価値は低くなります。ただし、具体的な読みを入れなくても、「終盤の入り口で、しかも持ち駒がそれなりにあって手段が多い」という状況から、「手番の価値はまあまあ高い」という予想ができます。

 

総合的な形勢判断

以上、①~④の4項目をまとめると、

形勢判断9:中飛車左穴熊vs向かい飛車のテーマ図

①駒の損得:ほぼ互角
②玉の堅さ:先手やや有利
③駒の働き:後手やや有利
④手番:先手

です。②~④の項目は先後で割れていますが、「③駒の働き」にそれほど差があるわけではないので、「②玉の堅さ」で勝っていて「④手番」も握っている先手が有利としたいです。

 

ところが、実戦では先手の私が負けました。この後の局面で、何度も疑問手を指してしまったからです。

対局後に形勢判断をすると、どうしても勝敗の結果が先入観になってしまうという問題点があります。これは棋譜並べをしている時にも言えることで、特にプロの棋譜を並べていると、形勢自体が微差であることが多いので、形勢判断が勝敗の結果に左右されてしまうことが多いです。そこまで微差の局面ではなくても、どうしても勝敗の結果に形勢判断が引きずられる部分があります。あるいは、実戦で現れた特定の手順が過大評価されて、形勢判断に影響してしまう傾向もあります。

例えば、今回の対局では先手の美濃囲いが攻め潰されてしまったので、「②玉の堅さ」の評価が多少後手びいきになっている可能性をぬぐえません。また、後手の穴熊はバラバラなので、実戦よりも上手い攻めの手順があった可能性があります。そうすると、「②玉の堅さ」の評価は「先手やや有利」どころではなく、「はっきり先手有利」だった可能性もあります。

また、「③駒の働き」についても、ほぼ互角であってもおかしくありません。先手が最善を尽くした場合に、△5六歩の一手がなかなか入らない可能性もありますし、▲8六角から角を上手く捌いて、後手の3三角の働きを上回ることも考えられます。

 

これらのことは、形勢判断自体が棋力によって左右されることも示しています。

棋力が上がれば形勢判断の精度は当然上がりますが、この場合の「棋力によって左右される」とはそういう意味ではありません。

プロ同士で対局すれば先手が9割勝つような局面でも、アマチュア初段ぐらいの棋力なら後手を持った方が勝ちやすいという局面もあると思います。純粋な形勢の善し悪しだけではなく「指し手の分かりやすさ」も大きな要素です。そう考えると、私の形勢判断はあくまでも「私ぐらいの棋力の目線での形勢判断」ということになります。形勢判断の記事の最初にレーティングを明示しているのはそのためです。

 

形勢判断シリーズ(No.9)
前回:将棋の形勢判断:居飛車穴熊 vs 中飛車銀冠、局面全体のバランスを考える
次回:将棋の形勢判断:四間飛車 vs 居飛車急戦、大駒の働きと形勢への影響

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将棋の形勢判断:居飛車穴熊 vs 中飛車銀冠、局面全体のバランスを考える https://shogijugem.com/keisei-handan-balance-2850 Fri, 08 Jul 2016 04:05:09 +0000 https://shogijugem.com/?p=2850 将棋の形勢判断シリーズの第8回です。今回は居飛車穴熊vs中飛車銀冠です。形勢判断の4要素は便利ですが、各要素をバラバラに考えてしまう問題点があります。特に穴熊はバランスを取りづらい戦法なので、「玉の堅さ」や「駒の働き」を...

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将棋の形勢判断シリーズの第8回です。今回は居飛車穴熊vs中飛車銀冠です。形勢判断の4要素は便利ですが、各要素をバラバラに考えてしまう問題点があります。特に穴熊はバランスを取りづらい戦法なので、「玉の堅さ」や「駒の働き」を慎重に見極める必要があります。

 

形勢判断シリーズ(No.8)
前回:将棋の形勢判断:飯島流引き角 vs 四間飛車
次回:将棋の形勢判断:中飛車左穴熊 vs 向かい飛車、棋力と形勢判断

このページの目次

 

居飛車穴熊 vs 中飛車銀冠のテーマ図

形勢判断8:居飛車穴熊vs中飛車銀冠

居飛車穴熊vs中飛車銀冠の昔の実戦です。将棋倶楽部24で先後とも約レーティング 1900の対局です。

じゅげむが先手番です。当時の私は、居飛車vs振り飛車の対抗型で、居飛車側を持つことが滅多にありませんでした。居飛車穴熊の経験も少ないので、指すのに不慣れで苦労しました。

テーマ図は72手目の局面で、角交換と銀交換をした直後に、後手がじっと△6二歩と自陣の傷を消したところです。

この局面を題材にしたのは、予想していたよりも先手の形勢がイマイチで、このあと実戦で苦労したからです。ネット対局の早指しで、実戦中はじっくりと考える余裕がなかったので、疑問を持ったこの局面について落ち着いて考えてみたいと思いました。大きな駒交換があった直後なので、形勢判断には適したタイミングです。

 

形勢判断の4要素(駒の損得は互角)

オーソドックスな形勢判断の手法を用いて、①駒の損得、②玉の堅さ、③駒の働き、④手番、の各項目を考えます。

「①駒の損得」は歩の枚数も含めて互角なので、他の3項目について考えます。

 

玉の堅さ:2枚穴熊と2枚銀冠の比較

形勢判断8:居飛車穴熊vs中飛車銀冠

「②玉の堅さ」は、先手の金銀2枚の穴熊に対して、後手は金銀2枚の銀冠です。果たして、どちらが堅いでしょうか?

単純に考えると、金銀の枚数は2枚で同じなので、玉が深い穴熊の方が銀冠よりも堅いと言えそうです。しかし、この一見堅そうな穴熊側を持ってかなり苦労しました。

 

まず、8五に歩が伸びている形なので、いつでも△8六歩▲同歩△8七歩の筋があります。
6六の金が浮いているので、△8七歩以下、▲同銀△5七角の両取りの筋が気になります。

この筋がまともに決まると、いくら穴熊といえども崩壊します。
注目すべきは、6六金のために、△8六歩~△8七歩の筋が受けづらくなっていることです。
玉の堅さの項目に、囲いの金銀桂香以外の駒が影響を与えています。

8五に歩が伸びている形は、8四に空間が空いているので、後手にとっても気持ち悪いです。
しかし、△8六歩と突く権利は後手にあるので、8筋の歩を使った攻防の主導権は後手が握っています。

したがって、8筋の歩の関係は、穴熊側のデメリットになります。

 

後手の銀冠は6筋に△6二歩と打って謝った形ですが、低い陣形でスキが少ないと評価することもできます。

△6二歩は玉から2マス以内のエリアにあり、同じく玉から2マス以内の6三の地点に利いています。以下は、この点についての参考記事です。

将棋の守り方のコツ:玉の囲いと2マス以内のエリア
将棋の格言の拡張「玉の守りは金銀三枚+桂香」の続編です。 この記事では、玉の囲いを構成する金銀などの守備駒の位置について考えます。 玉の...

 

▲6四歩が攻めに利いているので、△6二歩の守備力と相殺するという考え方もあります。

しかし、▲6四歩は6三の1マスしか利きがないのに対して、△6二歩は6三の地点を「利き」で守るだけでなく、歩の「存在」によって6二の地点をカバーしています。すると、△6二歩は2マス分働いていることになります。

この点を積極的に評価すると、6筋の歩の関係は、銀冠側のメリットになります。

 

このように、穴熊側のデメリットと、銀冠側のメリットの両方があります。
これらを考慮する必要があるので、単純に穴熊の方が堅いとは言えないです。

 

駒の働き:飛車と金の比較

形勢判断8:居飛車穴熊vs中飛車銀冠

「③駒の働き」はどうでしょうか?

玉の囲いを構成している玉側の金銀桂香「以外」の駒について考えます。
盤面の右側の桂香は、先後ともに遊び駒になっているので互角です。

問題は盤面の飛車と金の働きです。

 

まずは、▲6六金と△3二金を比較します。

「玉に近い金の方が働きが良い」という論理から、先手の方が良いという判断もあり得ます。

しかし、▲6六金は玉から斜めに3マス離れています。
穴熊の玉から2マス以内のエリアに、6六金の利きはありません。
現局面での▲6六金は、中途半端な位置だと言えるでしょう。

将棋の守り方のコツ:玉の囲いと2マス以内のエリア
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また、▲6六金は浮き駒で、△5七角のスキがあります。
さらに、現局面で▲6六金は△5六飛のさばきを受けているので、自由に動ける駒ではありません。▲6六金の中途半端な位置取りを解消しづらいです。

振り飛車で△3二金型は好形の一つとされています。
特に中飛車では、△3二金型は頻繁に現れます。陣形のバランスを重視した中飛車と△3二金型の相性が良いからです。
実際にテーマ図の局面でも、先手の角の打ち込みを消していますし、▲3四飛と走ったときの守りにも役立ちます。

したがって、「金が玉に近い」のは、たしかにプラス要素ですが、▲6六金と△3二金の駒の働きの優劣は難しいです。

 

▲3八飛と△5一飛を比較するとどうでしょうか。

両方ともすぐに敵陣に成り込める状況ではありませんが、縦横に広いスペースに利いていて、攻めにも受けにも働いています。飛車の働きはほぼ互角です。

 

まとめると、▲6六金と△3二金の働きは優劣不明で、その他の駒の働きはほぼ互角です。

 

玉の堅さと駒の働きの総合評価:全体のバランスを考える

形勢判断8:居飛車穴熊vs中飛車銀冠

今のところ「②玉の堅さ」も「③駒の働き」も優劣不明です。それなら、②も③もほぼ互角か優劣不明という判断でいいのでしょうか? もう一歩踏み込んだ形勢判断をしたいです。

そこで、盤上と持ち駒を含めた全体のバランスについて考えてみます。

今までは、「金銀2枚の穴熊と銀冠」「▲6六金と△3二金」「▲3八飛と△5一飛」のようにバラバラに比較してきたものを、組み合わせの相性として考えたり、もっと総合的に局面全体のバランスとして考えたりしたいです。

 

たとえば、後手の△5一飛と△3二金という組み合わせは、自陣にスキが少なくて相性が良いです。先手が角を手駒にしている現局面では、この相性の良さが強調されています。

△5一飛のポジションは銀冠との相性も悪くないです。
銀冠の弱点である6一の地点を、△5一飛がカバーしています。
逆に、△5一飛の斜めの弱点である6二の地点を、銀冠の△7二金がカバーしています。

 

一方で、▲3八飛と▲6六金の組み合わせには、特に相性の良さがあるようには思えません。
互いにサポートするには、縦にも横にも離れすぎています。

先手の陣形は、玉は穴熊で端に寄っていて、▲6六金は上ずっています。
全体的にスカスカしていて、角の打ち込みには弱そうです。
穴熊は玉が深いですが、そのためにバランスを保つのが難しくなります。

 

以上から、「②玉の堅さ」と「③駒の働き」を全体的なバランスの観点から総合すると、後手の方がやや有利と判断できます。

 

手番:中盤から終盤

最後に、「④手番」は先手です。

中盤も後半に差し掛かっており、もう少しで終盤に入りそうな局面です。手番の価値はなかなか高くなっています。

仮に、現局面で後手の手番だったら、後手やや有利と判断していいと思います。

 

総合的な形勢判断:分析と総合

①~④の各項目をまとめると、

形勢判断8:居飛車穴熊vs中飛車銀冠

①駒の損得:互角(歩の数、持ち駒の枚数を含めて完全に互角)
②玉の堅さ、③駒の働き:総合して、後手やや有利
④手番:先手

となります。②と③を総合して後手やや有利ですが、手番は先手が握っているので、全体としてはほぼ互角か優劣不明です。少なくとも、大差の局面ではなく、どちらを持っても戦えそうな将棋です。

 

形勢を分析するときに、「分析」とは文字通り「分ける」ことです。

①~④の4項目に「分ける」、あるいは各駒の働きに「分ける」ことによって、局面を細かく見ることができます。

しかし、「分ける」だけでなく、一度バラバラにしたものを「組み合わせる」「まとめる」「総合する」ことも大事です。「分析」と「総合」のどちらか一方のみでは、形勢判断の精度は上がらないでしょう。

 

形勢判断シリーズ(No.8)
前回:将棋の形勢判断:飯島流引き角 vs 四間飛車
次回:将棋の形勢判断:中飛車左穴熊 vs 向かい飛車、棋力と形勢判断

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将棋の形勢判断:飯島流引き角 vs 四間飛車 https://shogijugem.com/keisei-handan-iijimaryu-2472 Thu, 30 Jun 2016 04:50:44 +0000 https://shogijugem.com/?p=2472 将棋の形勢判断シリーズの第7回です。 今回は飯島流引き角 vs 四間飛車の中終盤です。飯島流引き角戦法は、居飛車が振り飛車と同じ美濃囲いに囲えるので有力です。玉の堅さに差がある通常の対抗型の急戦とはやや感覚が異なるので、...

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将棋の形勢判断シリーズの第7回です。

今回は飯島流引き角 vs 四間飛車の中終盤です。飯島流引き角戦法は、居飛車が振り飛車と同じ美濃囲いに囲えるので有力です。玉の堅さに差がある通常の対抗型の急戦とはやや感覚が異なるので、駒をさばいた後の形勢判断を慎重に行う必要があります。

 

形勢判断シリーズ(No.7)
前回:将棋の形勢判断:傷のある銀矢倉と穴熊、手番の価値
次回:将棋の形勢判断:居飛車穴熊 vs 中飛車銀冠、局面全体のバランスを考える

このページの目次

 

飯島流引き角戦法 vs 四間飛車のテーマ図

形勢判断7:飯島流引き角戦法vs四間飛車のテーマ図

飯島流引き角戦法 vs 四間飛車のじゅげむの昔の実戦です。将棋倶楽部24で先後ともレーティング約 1800の対局で、後手の四間飛車側が私です。

▲7六歩不突きが特徴の飯島流引き角戦法への対策が手探りで、本局では一手損ですが序盤に向かい飛車に振り直して、左銀を繰り出して角頭を狙いました。それに対して、先手は飛車角交換で駒をさばく激しい手順を選びました。

通常の対抗型の急戦では、先手が船囲いで玉が薄いので、成立しそうにない展開です。しかし、飯島流引き角戦法では先手の囲いが振り飛車と同じ美濃囲いなのがポイントです。

ちなみに、図の53手目の局面では後手の飛車が再び4筋に戻って来ています。

局面は中盤の後半(あるいは、いわゆる「中終盤」)といったところでしょうか。まだ互いの美濃囲いには手が付いていませんが、先手は持ち駒が豊富で、後手は敵陣に龍がいます。ここでの形勢判断をしたいのですが、気になる点はやはり、先手が急戦でよくある船囲いではなく、振り飛車側と同じ美濃囲いであるところです。先手の囲いの違いが、全体の形勢判断にどのように影響するでしょうか。

 

形勢判断の4要素

いつものように、①駒の損得、②玉の堅さ、③駒の働き、④手番、の4項目の分析で形勢判断をします。

 

駒の損得

形勢判断7:飯島流引き角戦法vs四間飛車のテーマ図

「①駒の損得」は、飛車角交換と先手の香得です。さらに先手は歩が1枚多いです。

飛10点、角8点、香3点、歩1点とすると、先手は「角香歩」の12点を2倍して合計24点、後手は「飛」のみを2倍して合計20点。先手がやや駒得です。しかし、歩の総数では先手が1枚多いですが、持ち駒としては1歩ずつなので、素直に1歩得といえるのかは怪しいです。とはいえ、ほぼ互角からやや先手駒得といっていいでしょう。

 

以下は、駒の点数についての参考記事です。

3人のプロ棋士が教える将棋の駒の価値の比較(続)
前回の続きです。谷川浩司さん、渡辺明さん、青野照市さんの3人のプロ棋士の駒の価値を比較します。将棋の上達に役立つ駒の価値についての理解を深め...

 

玉の堅さ

形勢判断7:飯島流引き角戦法vs四間飛車のテーマ図

「②玉の堅さ」は、同じ美濃囲いでほぼ互角です。▲5七銀と△6四銀の位置の違いや、▲1一馬の自陣への利きの影響で、厳密に同じ形ではありませんが、基本は同じ美濃囲いなのでほぼ互角といっていいと思います。

通常の居飛車 vs 振り飛車の対抗型の急戦では、居飛車が船囲いのことが多いです。美濃囲い vs 船囲いだと、美濃囲いの方が堅いので、通常の急戦では居飛車側が神経を使う必要があります。互角のさばき合いでは、居飛車が玉の堅さの分だけ不利になってしまいます。

しかし、飯島流引き角戦法では居飛車が振り飛車と同じ美濃囲いなので、居飛車側としては強く戦うことができます。玉の堅さが互角なら、自分が優勢な場合の形勢判断もしやすくなります。もし玉の堅さで劣っていると、「別のところでポイントを稼いでも、優勢になっているとは限らない」ということが起こります。

 

駒の働き

形勢判断7:飯島流引き角戦法vs四間飛車のテーマ図

「③駒の働き」についてです。

まず、先手のマイナスポイントとして、▲1九香は取られるだけの駒、▲1一馬は盤面の隅にいるので現局面では働きがやや弱いです。また、両者の「と金」を比較すると、3八にいる後手の「と金」の方が良い位置にあります。

後手は、△2九龍は敵陣でよく働いているのですが、自陣の△4二飛が問題です。

駒の働きは、少なくとも大差ではなさそうですが、厳密な比較は難しいです。

 

後手としては、気になるのが△4二飛だけなので、この駒が上手くさばければ駒の働きには文句がありません。しかし、一番強い駒である飛車なので、さばけなかった時のマイナスは大きいです。

先手としては、2一の「と金」の働きが悪かったり、▲1九香が取られるだけの駒だったり、▲1一馬が盤面の隅にいたりで、気になる点は多いです。しかし、▲1一馬は自陣に引きつけられそうですし、△4二飛がさばけなかった時のマイナスに比べると、先手の他の要素のマイナスはそれほど大きくない気もします。

 

手番

「④手番」は後手です。

手番の価値がどれほど高いかの判断ですが、まだ本格的な終盤戦の手前であるので、手番の価値がものすごく高い局面ではありません。

しかし、先手は持ち駒が豊富ですし、後手は△1九龍と持ち駒を補充する手が残っています。手番の価値はまあまあ高いといえます。

 

総合的な形勢判断

①~④をまとめると、

形勢判断7:飯島流引き角戦法vs四間飛車のテーマ図

①駒の損得:ほぼ互角か先手がやや駒得。
(先手「角香歩(24点)」vs 後手「飛(20点)」)
②玉の堅さ:ほぼ互角。
③駒の働き:比較が難しい。少なくとも大差ではない。
④手番:後手。

というわけで、ほぼ互角の項目が多く、どちらが優勢であるかを断定するのは難しいです。
①は先手やや良し、④は後手なので、4要素の優劣が割れています。

 

例えば、手番を握った後手は△1九龍で香を補充できるので、後手が△1九龍を選べば、駒の損得はほぼ飛車角交換で後手が逆に良くなります。先手がもし船囲いだったら、玉の堅さと飛車角交換の差で、あっさり後手有利と判断できるような状況です。しかし、先手の囲いが横からの攻めに強い美濃囲いなので、飛車に対しても抵抗力があります。ましてや、後手の飛車の1枚は自陣で眠っているので、敵陣の龍1枚だけではすぐに速い攻めはなさそうです。

他には、3八の「と金」を生かして、△4八歩△3七とも考えられます。しかし、△4八歩の攻めは手数がかかりますし、4筋に香を打たれて4二の飛車をいじめられる筋も気になります。△3七とは有力そうで、次に△4七とが実現すれば厳しいです。4二の飛車がさばける形になれば後手優勢になりそうです。他の手として、すぐに飛車をさばこうとして△4五飛なら▲1八角の龍飛車両取りがあります。

 

一方で、後手にとっての懸念材料もあります。

次に▲6六馬と引かれると、盤面の左側(玉側)は、先手の勢力の方が強くなりそうです。馬の力は強大ですし、持ち駒の数が先手の方が多いので、勢力争いでは有利になりやすいです。特に問題なのは、互いの美濃囲いの急所の端です。▲6六馬と馬を引きつければ、端の攻防では先手が有利になるかもしれません。

ただし、後手には△2九龍がいるので、端や玉頭での攻防になったときに、「端や玉頭の攻め」と「龍による横からの攻め」を組み合わせることができます。したがって、先手もその点は慎重にならざるを得ないので簡単ではありません。

 

結論としては優劣不明。形勢は少なくとも大差ではない。

結論がはっきりしなくて申し訳ないですが、「(自分の棋力の範囲で)大差ではない」という判断自体は有益です。悲観する必要は全くないし、十分にチャンスはある将棋です。逆転を狙った無理な指し手も回避できます。

 

実戦ではこの後、端や玉頭方面で激しい攻防が展開されました。後手は受けに回ったのですが、先手に激しく攻められて、危険な局面が何度もありました。先手の攻めミスがあり、後手の受けミスもあり、形勢は混沌としていましたが、攻めている先手の方にチャンスが多い展開だったと思います。しかし、最後に先手が大きなミスをして、攻めが切れてしまいました。

 

形勢判断シリーズ(No.7)
前回:将棋の形勢判断:傷のある銀矢倉と穴熊、手番の価値
次回:将棋の形勢判断:居飛車穴熊 vs 中飛車銀冠、局面全体のバランスを考える

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将棋の形勢判断:傷のある銀矢倉と穴熊、手番の価値 https://shogijugem.com/keisei-handan-teban-2071 Sat, 18 Jun 2016 15:37:35 +0000 https://shogijugem.com/?p=2071 将棋の形勢判断シリーズの第6回です。 今回は特に、「②玉の堅さ」と「④手番の価値」についての考察が多くなっています。 玉の堅さについては、傷のある銀矢倉と穴熊の比較です。手番の価値については、形勢判断の他の要素(駒の価値...

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将棋の形勢判断シリーズの第6回です。

今回は特に、「②玉の堅さ」「④手番の価値」についての考察が多くなっています。

玉の堅さについては、傷のある銀矢倉と穴熊の比較です。手番の価値については、形勢判断の他の要素(駒の価値、玉の堅さなど)が、手番とどのように関係するかを具体的な読みの中で考えています。

 

形勢判断シリーズ(No.6)
前回:将棋の形勢判断:4つの要素で判断する枠組みの問題点
次回:将棋の形勢判断:飯島流引き角 vs 四間飛車

このページの目次

 

向かい飛車 vs 三間飛車の相振り飛車のテーマ図

形勢判断6:向かい飛車vs三間飛車のテーマ図

テーマ図は相振り飛車の実戦で、将棋倶楽部24で先後ともにレーティング約 1800の対局です。先手向かい飛車 vs 後手三間飛車の戦型で、私が後手を持っています。けっこう昔の対局ですが、当時の私は先手の向かい飛車側を持つことが多く、三間飛車側は不慣れでした。しかし、先後逆では多く指している戦型なので、その時の経験が本局では役に立ちました。

現局面は中盤から終盤への入り口あたりで、ちょうど金銀交換があったところです。中盤から終盤への入り口というタイミングの点でも、駒の交換があったという点でも、形勢判断をしたい局面です。そして、形勢判断の結果次第で今後の方針を考えたいところです。

 

形勢判断の4要素

そこで、①駒の損得、②玉の堅さ、③駒の働き、④手番、のオーソドックスな形勢判断の4要素から優劣を分析します。

 

駒の損得と手番

形勢判断6:向かい飛車vs三間飛車のテーマ図

「①駒の損得」と「④手番」の2項目はわかりやすいです。

「①駒の損得」については、金銀交換のみです。その他は、持ち駒の歩も盤面の歩も先後で同じ枚数です。すなわち、先手の銀1枚(5点)と後手の金1枚(6点)を比較すればいいので、金と銀の差の分だけ、わずかに後手が駒得です。

以下は、駒の点数についての参考記事です。

3人のプロ棋士が教える将棋の駒の価値の比較(続)
前回の続きです。谷川浩司さん、渡辺明さん、青野照市さんの3人のプロ棋士の駒の価値を比較します。将棋の上達に役立つ駒の価値についての理解を深め...

 

「④手番」は後手。

 

玉の堅さ

形勢判断6:向かい飛車vs三間飛車のテーマ図

問題は「②玉の堅さ」と「③駒の働き」の2項目です。

まず、「②玉の堅さ」については、先手が銀矢倉で後手が穴熊です。しかし、先手の銀矢倉は3筋と4筋の歩のカバーがありません。一方で、後手の穴熊は急所の8筋の歩のカバーがないですし、守りの金を5一の角で狙われています。

これらの要素を考慮して、先手玉と後手玉の堅さをどのように評価すればよいでしょうか?

先手の銀矢倉は金銀3枚の形がそのまま残っています。その意味では好形で、まだ堅いと言えます。しかし、3筋と4筋の歩がないので、いつでも△3六歩や△4六歩の「叩きの歩」や「連打の歩」の手筋で形を乱されます。将来的に、△3五桂の筋などもあります。これらの分だけ、傷のない銀矢倉と比べて弱体化しています。しかし、金矢倉と比べて銀矢倉の長所もあって、△3六歩の叩きには▲同銀左と形良く取れます。△3六歩▲同銀左△3五歩の連打の歩には、▲4七銀と元の位置に戻れます。一方で、銀矢倉は3七の地点が弱いです。今は3五に先手の飛車がいるので無理ですが、△2五桂か△4五桂で後手の飛車と桂が一度に3七の地点を狙う形になると脅威です。

ともあれ、先手玉の堅さの評価としては、銀矢倉がやや弱体化した程度です。

後手の穴熊も金銀3枚の形はそのまま残っています。ただし、急所の8筋に歩がないのは、穴熊にとってかなり怖い形です。例えば、すぐに▲8三歩と打たれても対応に困ります。△同銀でも△同金でも▲8四歩と連打されます。金銀が上ずって、金銀1枚分ぐらいの守備力はすぐになくなってしまう形です。先手の7筋と9筋の歩が伸びているので、なおさら対応しづらいです。かといって、▲8三歩に△7一銀と引くのは、▲8二銀から文字通り金銀1枚をはがされて、もう一度▲8三歩と叩かれます。

いくら穴熊とはいえ、急所を突かれればもろいです。後手玉の堅さの評価としては、もともとの金銀3枚の守備力から、少なくとも金銀1枚分は差し引いて考えた方がいいでしょう。さらに、5一の角に狙われていることを考慮に入れると、もっと堅さの評価は下がります。

 

先手の銀矢倉と後手の穴熊のそれぞれの傷を、金銀の枚数をモノサシにして定量的に評価することを試みます。

以下は、囲いの堅さの定量的な評価についての参考記事です。

将棋の形勢判断:玉の囲いの堅さの定量的な評価
将棋の形勢判断シリーズの第2回です。 今回は、形勢判断の4要素の一つである「②玉の堅さ」を深掘りします。 相手に攻められて「基本...

 

穴熊の8筋の傷は金銀1枚分とします。銀矢倉の3筋と4筋の傷は穴熊ほどひどくはないので、金銀0.5枚分と評価しておきます。穴熊が5一の角に狙われている点については、角を切れば守りの金が1枚減るので金銀1枚分ですが、駒損の攻めですし角を切るとは限らないので、とりあえず金銀0.5枚分と評価します。

すると、先手の銀矢倉は(金銀3枚-金銀0.5枚=)金銀2.5枚の評価、後手の穴熊は(金銀3枚-金銀1枚-金銀0.5枚=)金銀1.5枚の評価となります。すなわち、「金銀2.5枚の銀矢倉」と「金銀1.5枚の穴熊」のどちらが堅いか、という比較になります。傷がないもともとの囲いとしては、金銀の枚数が同じでも銀矢倉より穴熊の方が堅いですが、流石に金銀1枚分違うとなると銀矢倉の方に軍配を上げたくなります。

というわけで、「②玉の堅さ」は先手やや有利。

 

駒の働き

形勢判断6:向かい飛車vs三間飛車のテーマ図

最後に、「③駒の働き」はどうでしょうか。

大駒の働きは先手が良さそうです。5一の角は穴熊の急所の6二の金と、同時に3三の桂を狙っています。後手の持ち駒の角よりも働いていそうです。飛車の働きを比較すると、互いの飛車が3三の桂をはさんで向かい合っている形ですが、このように駒をはさんだ形は後手の飛車にとって負担です。3二の飛が横に移動すると▲3三飛成で桂を取られてしまいますし、3三の桂が△2五桂か△4五桂で跳ねると今度は▲3二飛成で飛車を取られてしまいます。

玉と逆側の小駒については、先手は9九の香と8九の桂が遊んでいます。一方、後手は1一の香が遊んでいます。3三の桂をどう評価するかですが、上手く△2五桂や△4五桂が成立して3七の銀を狙う形になれば、先手の8九の桂と比べて圧倒的に働くことになります。しかし、現状では狙われている駒でもあるので、何とも言えないところです。

総合的に見ると、「③駒の働き」は、大駒の働きに勝る先手がやや有利としたいです。

 

総合的な形勢判断

形勢判断6:向かい飛車vs三間飛車のテーマ図

①~④の4項目がすべて出そろいましたが、

①駒の損得:金銀交換で後手がわずかに駒得
②玉の堅さ:先手やや有利
③駒の働き:先手やや有利
手番:後手

ということで、先手が②と③、後手が①と④で評価が割れています。大差となっている項目もないので、どちらが優勢なのか判断するのが難しいケースです。少なくとも、私の棋力ではどちらが優勢かを断定できません。

例えば、手番を握った後手が△8三歩と穴熊の傷を消したらどうでしょうか。この一手で「②玉の堅さ」は逆転しますが、「④手番」は先手に回ります。手番を握った先手が▲3三角成と桂を取れば、「①駒の損得」は逆転します(変化図1)

変化図1

他の手として、△4四角▲3四飛△9九角成と香を取る順も考えられます。一瞬、「①駒の損得」がかなり後手有利に振れますが、「④手番」を握った先手が▲8三歩と穴熊の急所に手を付けます。仮に▲8三歩△同銀▲8四歩△同銀▲同飛となれば、穴熊の銀を1枚はがせて「②玉の堅さ」の差は広がり、さらに「①駒の損得」も逆転しています(変化図2)

変化図2

△8三歩の変化でも△4四角の変化でも、中盤から終盤なので「④手番」の価値が高くなっているのがポイントです。手番を握れば①や②の要素を、一手でひっくり返せるわけです。

本譜は△8三歩でも△4四角でもなく、△2四角▲3四飛△6一金という手順で後手は受けに回りました(変化図3)

変化図3

5一の角を取る手に期待しましたが、以下▲8三歩から激しく攻められる展開となりました。最終的には、受けでしのいで反撃した後手の勝ちとなりましたが、途中で危ない変化もあり、形勢判断の局面でどちらが優勢だったのかは不明です。

 

形勢判断シリーズ(No.6)
前回:将棋の形勢判断:4つの要素で判断する枠組みの問題点
次回:将棋の形勢判断:飯島流引き角 vs 四間飛車

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将棋の形勢判断:4つの要素で判断する枠組みの問題点 https://shogijugem.com/keisei-handan-yoso-1957 Mon, 23 May 2016 07:45:43 +0000 https://shogijugem.com/?p=1957 将棋の形勢判断シリーズの第5回です。 今回は前回とは異なり、優劣の見極めが難しいケースです。オーソドックスな形勢判断の4要素は、非常にわかりやすい枠組みですが、各要素の評価は必ずしも簡単ではありません。   形...

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将棋の形勢判断シリーズの第5回です。

今回は前回とは異なり、優劣の見極めが難しいケースです。オーソドックスな形勢判断の4要素は、非常にわかりやすい枠組みですが、各要素の評価は必ずしも簡単ではありません。

 

形勢判断シリーズ(No. 5)
前回:将棋の形勢判断:優勢か劣勢かがわかりやすい場合
次回:将棋の形勢判断:傷のある銀矢倉と穴熊、手番の価値

このページの目次

 

三間飛車 vs 居飛車急戦のテーマ図

形勢判断5:三間飛車vs居飛車急戦のテーマ図

三間飛車 vs 居飛車急戦の実戦です。後手のじゅげむがレーティング約 2000で、先手は約 2200の格上です。普段、振り飛車を指すことの多い私が居飛車側を持ったのですが、仕掛けにも苦慮し、玉の薄さにも苦しんだ一局でした。

図は66手目の局面で、中盤から終盤に突入する辺りです。少し前の中盤の攻防で、激しく駒を取り合う展開になりました。

後手は龍を敵陣に成り込んでいますが、玉形はかなり乱れています。一方で、先手は4六銀付きの高美濃囲いが丸々残っています。中盤から終盤への入り口は形勢判断のタイミングとして一つのポイントです。なぜなら、終盤が煮詰まってくるにつれて、スピード勝負になってきて、特に、詰む詰まないの最終盤では駒の損得などは関係なくなることが多いからです。そうなる前の段階で形勢判断をしておこうというわけです。

 

形勢判断の4要素

そこで、図の局面での形勢判断をしてみたいです。オーソドックスな形勢判断の方法として、①駒の損得、②玉の堅さ、③駒の働き、④手番、の4つのポイントから分析します。

 

駒の損得

形勢判断5:三間飛車vs居飛車急戦のテーマ図

①駒の損得は、先手の「銀2枚」と後手の「飛桂」の比較です。

飛10点、銀5点、桂4点とすると、先手「銀2枚(20点)」、後手「飛桂(28点)」となって、後手の駒得です。(駒を1枚得すると、相手の駒が1枚減り、2枚分の戦力差となるので駒の点数を2倍しています)

さらに、後手の龍と「と金」が成り駒になっている点も考慮すべきかもしれませんが、いずれにしても、後手の駒得です。

 

駒の点数については、こちらの記事を参考にしてください。

3人のプロ棋士が教える将棋の駒の価値の比較(続)
前回の続きです。谷川浩司さん、渡辺明さん、青野照市さんの3人のプロ棋士の駒の価値を比較します。将棋の上達に役立つ駒の価値についての理解を深め...

 

玉の堅さ

形勢判断5:三間飛車vs居飛車急戦のテーマ図

②玉の堅さは、一見して先手の方が堅そうです。

先手は、4六銀付きの高美濃囲いが手付かずで残っています。しかし、高美濃囲いは横からの攻めに対して、それほど強いわけではありません。とりわけ、飛車や龍で横から攻められる展開には弱いです。▲5九歩の底歩も打てないです。既に△8九龍ににらまれていて、さらに後手は持ち駒に2枚目の飛車がありますので、先手は玉の堅さについて楽観はできません。

後手は金2枚に角が付いた玉形ですが、いかにも薄いです。△5三金は上ずっていますし、△4二金は角が移動したら離れ駒になってしまいます。△3三角は囲いの一部というよりは、むしろ攻めの目標になりそうです。▲4五歩の拠点も気になります。ただし、先手が最強の攻め駒である飛車を持っていないのは大きいです。

先手も後手も気になる点はありますが、やはり高美濃囲いが手付かずで残っているのは大きいです。金銀の枚数から見ても、金銀の連結の良さから見ても、②玉の堅さは先手有利です。

 

駒の働き

形勢判断5:三間飛車vs居飛車急戦のテーマ図

次は、③駒の働き。

遊び駒の観点からは少し後手が悪そうです。というのは、先手の遊び駒が▲9九香のみであるのに対して、後手は△9一香が遊び駒であるのみならず、△7三桂も残ってしまっています。

大駒の働きを比較すると、△8九龍がいるので後手が良さそうです。後手の盤上の△8九龍は高美濃囲いの急所をにらんでいて、攻めに非常によく働いています。後手のもう1枚の飛車は持ち駒です。△3三角をどう評価するかは難しいですが、現局面では急所に利いているとは言えません。しかし、△6六角と急所に飛び出したり、馬を作って自陣に引きつける展開になったりすれば、非常によく働きます。一方、先手は持ち角が1枚のみです。

△8九龍の力が強大なので、③駒の働きは総合的に見て後手有利としたいです。(盤上の金銀の働きについては、②玉の堅さの項目で評価しています)

 

手番

④手番は先手です。

終盤に入っているので、手番を握っているのは大きいです。▲2五桂や▲4四銀などで攻めることもできますし、▲7三歩成で駒を補充する手もあります。▲5五歩もあるかもしれないです。実際にどう指すのかはともかく、終盤で持ち駒も豊富なので、手番を生かす指し手は色々と考えられます。

 

総合的な形勢判断

①~④までをまとめると、

形勢判断5:三間飛車vs居飛車急戦のテーマ図

①駒の損得:後手の駒得
②玉の堅さ:先手有利
③駒の働き:後手有利
④手番:先手

ということで、②と④は先手で、①と③は後手で、主張できるポイントが真っ二つに分かれています。

このような場合は、項目間の比較をする必要があります。例えば、「①駒の損得」と「②玉の堅さ」のどちらが大きいか、といった判断です。しかし、これらの比較をするにあたって、大きな問題があります。「①駒の損得」は一応具体的な数値でわかりますが、「②玉の堅さ」は簡単に数値化することができません。「③駒の働き」も数値化が難しいです。①から④までの4要素の分析で形勢判断をするという理論の枠組みの問題点ですが、これは今後の課題です。

「②玉の堅さ」の数値化、「③駒の働き」の数値化については、少しずつ研究して記事にしたいと思っています。

正直言って、私の棋力でこの局面の優劣を正確に判断するのは難しいです。しかし、互角ということはなく、局面の優劣はついているはずです。私ぐらいの棋力では「少なくとも大差ではない」「勝負形である」というのを結論としたいです。実戦ではこの後、先手と後手のどちらにもチャンスの局面があったと思いますが、最後に後手の私が、自玉の詰み筋を見えていなくて敗北となりました。

 

形勢判断シリーズ(No. 5)
前回:将棋の形勢判断:優勢か劣勢かがわかりやすい場合
次回:将棋の形勢判断:傷のある銀矢倉と穴熊、手番の価値

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将棋の守り方のコツ:玉の囲いと2マス以内のエリア https://shogijugem.com/kakoi-area-1617 Tue, 17 May 2016 07:34:49 +0000 https://shogijugem.com/?p=1617 将棋の格言の拡張「玉の守りは金銀三枚+桂香」の続編です。 この記事では、玉の囲いを構成する金銀などの守備駒の位置について考えます。 玉の囲いと守り方のコツがテーマとなります。   このページの目次 ・「玉の守り...

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将棋の格言の拡張「玉の守りは金銀三枚+桂香」の続編です。
この記事では、玉の囲いを構成する金銀などの守備駒の位置について考えます。
玉の囲いと守り方のコツがテーマとなります。

 

このページの目次

「玉の守りは金銀三枚+桂香」と王の位置

玉を中心に守備駒の位置を考える

  ・矢倉、美濃、穴熊の3つの代表的な囲いの場合

  ・美濃囲いの3九玉型と2八玉型の比較

  ・実戦でよく現れるその他の囲いの場合

  ・玉を中心に相手の攻め駒の位置を考える

玉の囲いと守り方のコツのまとめ

 

「玉の守りは金銀三枚+桂香」と玉の位置

前回の記事「玉の守りは金銀三枚+桂香」の要旨をおさらいすると、

①矢倉、美濃、穴熊では、金銀だけでなく端の桂香も囲いを作る。
②端の桂香を玉の囲いとして使えるかどうかは重要。
③端の桂香を囲いの駒として十分に働かせるためには、玉が7~9筋(1~3筋)にある必要がある。

ということでした。

今回の記事との関係では、③の玉の位置がポイントです。

 

玉を中心に守備駒の位置を考える

上記の参考記事では、「桂香の守り駒としての働き」を主題としていたので、守備駒ではなく玉の位置の方を動かしました。なぜなら香車は端から他の筋に動けないですし、守りの桂馬も動きが制限されているからです。

しかし、本来囲いとは玉を守るものなので、玉の位置を中心に考えるべきです。

7~9筋(1~3筋)に玉がある場合を考えると、端の桂香は玉から2マス以内のエリアに収まります。6筋に玉がある場合は、端の香車は玉から横に3マスの遠さで、この場合に端香が玉の囲いの一部かどうかが不確かになります。

すなわち、玉を中心として、玉から2マス以内が特に重要なエリアと考えられます。

 

矢倉、美濃、穴熊の3つの代表的な囲いの場合

まずは、代表的な囲いを例に考えてみましょう。

矢倉(金矢倉)美濃(本美濃)穴熊(基本形)ではどうでしょうか?

矢倉(金矢倉)と玉から2マス以内のエリア穴熊(基本形)と玉から2マス以内のエリア

上図では、玉から2マス以内のエリアをで色付けしています。

矢倉(金矢倉)と穴熊(基本形)では、金銀が玉から2マス以内のエリアに収まっています。もちろん、これらの金銀は囲いの一部として玉の守りに十分に働いている駒です。

美濃囲い(本美濃)と玉から2マス以内のエリア

上図の美濃囲い(本美濃)の場合、3八の銀4九の銀は玉から2マス以内にありますが、5八の金は玉から3マスの遠さにあります。

香車の場合と異なるのは、5八の金は横に利きがあるので、玉の2マス以内のエリアを「利き」でカバーしているということです。5八の金の場合は、4七と4八の2つの「利き」が玉の2マス以内のエリアに利いています。「守備駒が玉から3マスの距離でも、利きが玉の2マス以内のエリアにあれば守備駒として有効に働く」という考え方もできます。

 

以前の記事で、駒の「利き」と「存在」という2つの視点について考察しています。

将棋の格言「桂先の銀、定跡なり」の分析:3つの関係性
「桂先の銀、定跡なり」という格言があります。「桂先の銀」とは図1のように、相手の桂の頭に銀がある形のことです。盤上の銀が桂頭に移動す...

 

この考え方は、自陣の飛車の守りについても応用できます。

矢倉と自陣の飛車

上図は矢倉と自陣の飛車の関係を示しています。2八の飛車の「存在」は自玉から遠く離れていますが、飛車の「利き」は玉から2マス以内のエリアまで届いています(青色のマス目)。相矢倉における飛車は、攻めの軸であると同時に、遠くから自玉の守りにも働いています。玉飛接近は悪形なので、遠くから利かすのが、飛車を使った自玉の守り方のコツです。

 

ところで、美濃囲い(本美濃)は横からの攻めに対して強い囲いの代表格です(下図)。

美濃囲い(本美濃)と玉から2マス以内のエリア

少し横に出っ張った5八の金は、横からの攻めへの耐久力を増しています。一般化すると、

「玉から3マス以上の遠い場所に配置された駒(美濃囲いの場合の5八の金)でも、その方向からの攻め(美濃囲いの場合は横からの攻め)に対してなら有効に働く」

となります。

 

美濃囲いの2八玉型と3九玉型の比較

「攻めの方向」についてもう少し考えてみましょう。同じ美濃囲いでも、振り飛車vs居飛車の対抗型と、相振り飛車の美濃囲いでは少し違った使われ方をします。

2八玉型の美濃囲い3九玉型の美濃囲い

通常、美濃囲いは2八玉型(左図)が基本形と考えられていて、3九玉型(右図)は2八玉型よりも囲い方が浅いと考えられがちです。これは昔からある振り飛車vs居飛車急戦のイメージが強いためです。

しかし、3九玉型にもメリットがあり、実戦では一概にどちらの方が堅いとは言えません(形勢判断の参考記事)。3九玉を中心に考えると、美濃囲いの金銀3枚のすべてを玉から2マス以内のエリアに収めることができます。この点で、3九玉型の方が金銀の守備力を生かし切れている可能性もあるわけです。

一方で、2八玉型で横以外から攻められた場合に、5八の金が守備駒として有効に働かない場合があります。

美濃囲いへのこびん攻め美濃囲いの受けの手筋

例えば、左図では先手玉に△3六桂▲1八玉△2八金までの詰めろがかかっています。角と桂のコンビネーションを利用した美濃崩しの代表的な形です。このこびん攻めに対する有名な受けの手筋として、左図から▲4六歩△同角▲4七金(右図)があります。5八金の位置だとこびん攻めに対する守備駒としては働かないので、4七の位置へ金を移動させるのがポイントです。この受けの手筋は、「玉から3マスの距離から2マス以内のエリアに守りの金を移動させている」と解釈することもできます。戦いの中で金銀を玉の近くに引きつけるのが玉の守り方のコツです。

玉から3マスの距離にある金銀については、次のように考えられます。

「玉から3マスの距離にある金銀は、その方向からの攻めに対しては守備駒として有効に働く。しかし、別の方向から攻められた場合に、受けに働かない場合もある」

 

実戦でよく現れるその他の囲いの場合

実戦でよく現れる矢倉、美濃、穴熊以外の囲いも見てみましょう。

船囲いと玉から2マス以内のエリア雁木と玉から2マス以内のエリア中原囲い(中原玉)と玉から2マス以内のエリアミレニアムと玉から2マス以内のエリア

玉を守備駒で囲うわけですから、守備駒が玉の近くにあるというのは当たり前といえば当たり前なのですが、船囲い雁木中原囲いミレニアムでは、玉から2マス以内のエリアに金銀が収まっています。

このことから、「玉から2マス以内のエリアにある金銀は、基本的に守備駒として考えていい」という指針が生まれます。実戦で見慣れない玉形になった時に、玉の堅さを計るための指標の一つとして役立ちます。逆に、玉から3マス以上離れた金銀は守備駒としての働きが弱い可能性があるので、玉の近くに引きつけたり、攻め駒として働かせたりすることが有効になります。

 

玉を中心に相手の攻め駒の位置を考える

逆に考えると、玉から2マス以内のエリアに相手の攻め駒がある場合は、玉の危険度が上がります。あるいは、このエリアに相手の攻め駒の「利き」がある場合も、玉の危険度が上がっています。

雁木と飛車先の歩

例えば、上図のように飛車先の歩を突かれた場合に、手抜きができないことは非常に多いです。図面の濃い赤で示した8七のマス目に、後手の8六の歩の利き(と8二の飛車の間接的な利き)が侵入しています。このマス目は、6九の玉から2マス以内のエリアにあります。次に、8七歩成と成られると、7八との王手で守りの金を取られる手が、非常に厳しい狙いとして残ります。

穴熊と端歩

また、上図のように穴熊で端歩を詰められている場合に、端歩を突かれると手抜きができないことも非常に多いです。

これらの場合は、歩の利きが玉から2マス以内のエリアに侵入しています。あと2手で王手がかかる可能性がある、あるいは、あと1手で詰めろや必死がかかる可能性がある、というスピード感の攻めなので、手抜きをすると玉がかなり危険な状態になります。

 

玉の囲いと守り方のコツのまとめ

①玉から2マス以内のエリアは、玉の守りに非常に重要です。
将棋の実戦でよく現れる優れた囲いは、このエリアに金銀を集めています。
③このエリアに相手の攻め駒や利きが侵入してきた時は要注意です。
④戦いながら玉の近くに守備駒を引きつけるのが玉の守り方のコツです。

 

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