将棋の戦法の人気調査:じゅげむの実戦50局

じゅげむの実戦からです。
得意戦法のノーマル四間飛車を使わずに指してみました。
将棋倶楽部24で50局指して20勝29敗(中断1)です。
結果、レーティングが1935まで落ちました。
前回2095だったので、160も落ちたことになります。
じゅげむの場合は、得意戦法と不得意戦法でこのくらいの差があるようです。

今回はほぼ居飛車で、さらに対戦相手が戦法を選びやすい序盤を意識しました(一部、じゅげむが積極的に戦型誘導している部分もありますが)。

今回の50局の目的の一つは戦法の人気調査です。戦法の選択権を対戦相手に委ねるような序盤を多くしたので、どの戦法がどのくらいの人気があるのかを大まかに把握することができたと思います。

このページの目次

相掛かりの調査(全50局)

  ・初手▲2六歩に対する二手目△8四歩の割合

  ・初手▲2六歩を選ぶ人の割合

▲2六歩△3四歩▲7六歩の進行の調査(全23局)

  ・居飛車(11局)

  ・振り飛車(12局)

▲7六歩△8四歩の進行の調査(全20局)

  ・居飛車(8局)

  ・振り飛車(12局)


相掛かりの調査(全50局)


初手▲2六歩に対する二手目△8四歩の割合

全50局中、先手番の24局のすべてで初手▲2六歩としました。初手▲2六歩の狙いは、後手番での相掛かり党がどのくらいいるかの調査です。後手番で相掛かりを受けて立つ対戦相手なら二手目△8四歩と指してくるはずです。その割合は・・・

じゅげむ(寿限無)の先手番の初手▲2六歩に対して(全24局)
△3四歩→23局
△8四歩→1局

24局中たった1局ですか・・・。相掛かりが不人気な戦法とはいえ、まさかここまで二手目△3四歩に偏るとは思いませんでした。先手相掛かりの誘導成功率はたったの4%です。(ただし、サンプル数が少ないので、その分誤差は大きくなります。)

24局中でたった1局の△8四飛


初手▲2六歩を選ぶ人の割合

逆に先手番での初手▲2六歩の勢力はどのくらいなのでしょうか?

じゅげむ(寿限無)の後手番(全26局)
▲7六歩→20局
▲2六歩→5局
▲5六歩→1局

初手▲2六歩はやはり少ないのですが、5局ありました。後手のじゅげむはすべて二手目△8四歩と指して、▲2六歩△8四歩▲2五歩から相掛かりに進行したのが4局、▲2六歩△8四歩▲7六歩から角換わりに進行したのが1局です。後手相掛かりの誘導成功率は15%になります。

26局中で4局の後手相掛かり

先手番と比べて後手番の相掛かりの誘導成功率の方が高くなっています。サンプル数が少ないので誤差の範囲でしょうが、「後手番では相掛かりを指さないけれど、先手番なら相掛かりを指してもいい」という層が一定数いるのかもしれません。

相掛かりという戦法は、先手と後手の同意がないと成立しないので、「先手番だけで相掛かりを指す」あるいは「後手番だけで相掛かりを指す」ということが可能です。相掛かりは序盤早々から超急戦や大乱戦になる変化も少なくないので、準備なしではやや指しづらい戦法かもしれません。さらに後手番の相掛かりとなると、▲2六飛型(浮き飛車型)と▲2八飛型(引き飛車型)の両方に対応する必要があります。

ネット将棋で不特定多数と指す場合は、どうしても不人気な戦法の対局数が少なくなります。一度相掛かりをひたすら指してみたいのですが、ネット将棋がメインだと相掛かりの経験値を上げるのはなかなか大変のようです。


▲2六歩△3四歩▲7六歩の進行の調査(全23局)

初手▲2六歩に対して二手目△3四歩の割合がほとんどだったわけですが、それに対してすべて▲7六歩と指しました。この進行は後手番にとって戦法の選択肢がけっこう幅広いです。戦法の人気調査のために、対戦相手が戦法を選びやすい序盤にしています。(ちなみに▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角の方が後手の選択肢を狭めることができます。)

▲2六歩△3四歩▲7六歩の進行

じゅげむ(寿限無)の先手番で▲2六歩△3四歩▲7六歩に対して(全23局)
△8四歩(8局)→ 横歩取り(6局)、一手損角換わり(2局)
△4四歩(6局)→ 四間飛車(2局)、三間飛車(2局)、向かい飛車(1局)、雁木(1局)
△5四歩(3局)→ ゴキゲン中飛車(3局)
△8八角成(3局)→ 角交換四間飛車(2局)、一手損角換わり(1局)
△3五歩(2局)→ 石田流(2局)
△3三角(1局)→ 角換わり(1局)

居飛車11局、振り飛車12局でした。ニコニコ動画の将棋中継のアンケートでも居飛車党と振り飛車党が半々ぐらいだったと思うのですが、同じような結果となりました。


居飛車(11局)

▲2六歩△3四歩▲7六歩の進行だと矢倉や(一手損でない)角換わりにはなりづらいので、横歩取りや一手損角換わりがメインとなります。横歩取りにするか一手損角換わりにするかは、後手に選択権があります。横歩取り6局、一手損角換わり3局なので、横歩取りの方が人気が高いようです。

他には、一手損ではない角換わりが1局だけあったのですが、これは後手の四手目△3三角の出だしから、序盤の駆け引きの末に角換わりになった流れです。雁木も1局だけありました。

というわけで、横歩取りが一番人気だったわけですが、実はこの人気調査中、じゅげむは一局も横歩取りを指していません。横歩を取るか取らないかは先手に選択権があり、横歩を取らずに相掛かりに誘導することも可能です。いわゆる「横歩拒否型相掛かり」と呼ばれる戦型です(下図)。ただし、現在のプロ棋戦の主流は横歩取りで、横歩拒否型相掛かりは少数勢力になります。

横歩拒否型相掛かりの一例


振り飛車(12局)

角道を止めないタイプの振り飛車(ゴキゲン中飛車、角交換四間飛車、石田流)が7局、角道を止めるノーマル型の振り飛車(四間飛車、三間飛車、向かい飛車)が5局でした。どちらもよく指されているようです。

飛車を振る場所についても、中飛車3局、四間飛車4局、三間飛車4局、向かい飛車1局などさまざまです。

▲2六歩△3四歩▲7六歩の進行は、後手番に戦法の選択権をある程度委ねることになるので、その意味では堂々とした進行と言えます。とはいえ、実際にさまざまな戦法を相手が指してきますし、上記のように戦法の割合がかなりばらつくので、対策を練るのがけっこう大変です。比較的レアな進行を含めるかどうかにもよりますが、相居飛車と対振り飛車を合わせて、今回の実戦23局中に現れただけでも8~10種類ぐらいの戦法に対応する必要があります。

居飛車党の方が、対策を練る必要がある戦法のバリエーションが多いという意味では大変かもしれないです。昔と比べて、角道を止めないタイプの振り飛車も色々とあるので、対策が必要な戦法はますます増えています。


▲7六歩△8四歩の進行の調査(全20局)

先手番の対戦相手の指し手として▲7六歩が一番多かったわけですが、それに対してすべて二手目△8四歩と指しました。この進行も先手の戦法の選択肢はけっこう広いです。(ただし、先手石田流など二手目△8四歩に対して指せない戦法もあります。)

▲7六歩△8四歩の進行

じゅげむ(寿限無)の後手番で▲7六歩△8四歩に対して(全20局)
▲6八銀△3四歩▲6六歩(6局)→ 矢倉(4局)、向かい飛車(1局)、雁木(1局)
▲7八銀△3四歩▲7七銀(1局)→ 矢倉(1局)
▲1六歩(1局)→ 矢倉(1局)
(後手が端歩を受けたため)
▲2六歩△8五歩(1局)→ 角換わり(1局)
▲6八銀△3四歩▲2二角成(3局)→ ダイレクト向かい飛車(2局)、角交換四間飛車(1局)
▲5六歩(3局)→ 先手中飛車(3局)
▲6八飛(3局)→ 四間飛車(3局)
▲7八飛(1局)→ 三間飛車(1局)
▲6六歩(1局)→ ノーマル中飛車(1局)
(後手が飯島流引き角戦法を目指したため)

居飛車8局、振り飛車12局でした。リストの上の方が居飛車メイン、下の方が振り飛車メインで並べています。

ただし、初手▲2六歩からの居飛車が5局、初手▲5六歩からの中飛車が1局あるので、全体としては居飛車13局、振り飛車13局のイーブンです。


居飛車(8局)

先手が居飛車指向なら、矢倉か角換わりのどちらを選ぶのかは先手に選択権があります。▲7六歩△8四歩のときに三手目▲6八銀とすれば矢倉になり、三手目▲2六歩とすれば角換わり指向になります。ただし、三手目▲2六歩の場合は、後手は△3四歩として横歩取りに誘導することもできます。

角換わりの進行の少なさには驚きです。サンプル数が少ないので何とも言えないですが、矢倉の方が人気のようです。初手▲2六歩(5局)の進行と合わせると、全体では矢倉6局、相掛かり4局、角換わり2局、雁木1局となりました。

最初の方で相掛かりが不人気と言いましたが、この結果を見ると、先手番の居飛車全体としてはそれほど不人気ではなさそうです。むしろ、角換わりの方が不人気という結果です。

とはいえ、相居飛車の主流戦法を大別すると、矢倉、角換わり(一手損を含む)、横歩取り、相掛かりの4種類しかないので、多少不人気だとしてもそれなりに指されるはずです。

今回の人気調査で票を集めなかった、先手番の角換わり、後手番の相掛かりが本当に不人気かどうかは保留にしておきます。全体のサンプル数が少なかったので、たまたま少なかった可能性も大いにあります。


振り飛車(12局)

初手▲5六歩(1局)の進行と合わせると、中飛車5局、四間飛車4局、三間飛車1局、向かい飛車3局でした。

三間飛車が少ないのは、おそらく二手目△8四歩のためで、もし二手目△3四歩なら、▲7六歩△3四歩▲7五歩からの先手石田流があったと思います。

角道を止めない振り飛車か、角道を止めるノーマル型の振り飛車かの選択については、先手番と後手番でやや状況が異なります。というのは、▲7六歩△8四歩の時点で、後手がまだ角道を空けていないからです。▲7六歩△3四歩▲7五歩からの先手石田流がないというのも一つですが、他にも色々と影響があります。

例えば、▲7六歩△8四歩▲6八飛の進行だと、四手目△3四歩の場合は角交換四間飛車を選べますが、四手目△8五歩の場合は角交換四間飛車にしづらくなります(下図)。△8五歩に対して▲7七角と上がる一手が必要なので、そこから角交換をすると一手損になるからです。この進行だとノーマル四間飛車になりやすいです。

▲7七角の一手が必要

おそらく、上記のような理由で▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲2二角成からの角交換四間飛車が指されているのだと思います。早めに形を決めてしまいますが、どうしても角交換四間飛車を指したい場合には有力だと思います。

先手中飛車に対しても、△3四歩を保留する形は有力です。

また▲7六歩△8四歩▲6六歩の進行なら、飯島流引き角戦法も考えてみたいところです。これも居飛車が二手目に角道を空けていないために生ずる変化です。

このように、対振り飛車については▲7六歩△8四歩の進行にいくつかのメリットがあります。△3四歩を突くタイミングの問題で、振り飛車側の戦法を少し限定することができますし、△3四歩不突きの戦法など居飛車側の選択肢は逆に増えます。

しかし、人気調査としては、対戦相手の戦法を限定してしまうデメリットがあります。先手番の振り飛車の人気調査には、▲7六歩△3四歩の進行も調査した方がよさそうです。