将棋倶楽部24でのじゅげむの実戦データ調査です。(全33局)
先手番では先手中飛車、後手番ではゴキゲン中飛車を目指して、
どのくらい狙いの戦法に誘導できるかを調べました。
また、それぞれの戦法に対する相手の対策をまとめました。
将棋倶楽部24での調査中の対戦成績は15勝18敗です。レーティング2037からスタートして、終了時は1989なので、ほぼキープしていた感じです。
対戦相手のレーティングは2000ぐらいが中心です。
今回は【前編】で、先手中飛車を中心とする先手番の調査です。
次回は【後編】で、ゴキゲン中飛車を中心とする後手番の調査です。
このページの目次
将棋倶楽部24での先手中飛車の誘導成功率
先手番の中飛車の場合です。
将棋倶楽部24での全33局中、先手番20局の調査結果です。
全33局中、先手番20局のすべてで初手▲5六歩と指しました。
狙いはもちろん、先手中飛車に誘導するためです。
初手▲5六歩と指せば、先手中飛車vs後手居飛車の対抗型になるか、後手も飛車を振って相振り飛車になるかの2択です。その割合は・・・
じゅげむ(寿限無)の先手番の初手▲5六歩に対して(全20局)
先手中飛車(vs 後手居飛車):12局
相振り飛車:8局
全20局中、先手中飛車が12局なので、先手中飛車の誘導成功率は60%です。
すなわち、先手の中飛車に対して、後手が居飛車で対抗する割合が60%です。
残りの40%は相振り飛車になりました。
前回の調査「将棋の戦法の人気調査:じゅげむの実戦50局」では、居飛車党と振り飛車党の割合がおおよそ半分ずつぐらいという結果でした。将棋倶楽部24の居飛車党勢力と振り飛車党勢力は拮抗しているようです。
今回の調査もそれを裏付ける結果となっています。ただし、「中飛車に対しては相振り飛車を指さない」という方針の振り飛車党の方もいると思います。
また、前々回の調査「ノーマル四間飛車の誘導成功率:将棋倶楽部24で30局を終えて」では、ノーマル四間飛車の誘導成功率がおおよそ50%ぐらいという結果が出ています。50%でもなかなか高い数字ですが、先手中飛車の60%はそれよりも高い数字です。
先手中飛車に対する後手の対策
先手中飛車vs後手居飛車の対抗型の後手の対策についてまとめます。
先手中飛車vs居飛車での序盤のポイントは次の5つです。
参考:将棋戦法大事典(振り飛車編、対振り飛車編)
①先手に5筋の位を取らせるか取らせないか。
②5筋の位を取らせない場合に、5筋の歩交換を拒否するか。
③後手が銀を使う場所とタイミング。
④後手が飛車先を保留するか。(あるいは不突き)
⑤後手が角道を保留するか。(あるいは不突き)
これらの5つの選択権は、後手の居飛車側が持っている場合が多いです。
従って、先手中飛車に対する後手の対策の人気調査ということになります。
以下は結果です。
先手中飛車に対する後手の対策(全12局)
5筋位取り型 vs 船囲い△6三銀型 1局
5筋位取り型 vs 二枚銀 1局
5筋位取り型 vs 角道不突き超速△7三銀 → 二枚銀 1局
5筋位取り型 vs 角道不突き△7三銀 2局
5筋位取り型 vs 飛車先不突き超速△7三銀 1局
(5筋位取り拒否型)佐藤康流 1局
(5筋位取り拒否型)5筋交換型 vs 引き角戦法 1局
(5筋位取り拒否型)△6四金戦法 1局
(5筋位取り拒否型)飛車先保留、角道保留で△5三銀~△6四銀 1局
(5筋位取り拒否型)ノーマル中飛車へ移行 1局
(5筋位取り保留型)相穴熊 1局
後手の対策がかなりバラつく結果となりました。
先手中飛車の全12局中で、5筋位取り型になったのが6局、後手が5筋位取りを拒否したのが5局、その他(5筋位取り保留型)が1局です。
飛車先不突き(保留)、角道不突き(保留)など後手の工夫が多く、先手番を持って苦労しました。
ただし、「先手番のじゅげむがあまり先手中飛車を指し慣れていない」ということがあります。もしかすると、先手の指し方が甘かったために、後手のさまざまな対策を誘発してしまったかもしれません。
5筋位取り型
まずは、先手の5筋位取りを後手が許した6局での、後手の先手中飛車対策です。
△6三銀型(上図)は1局のみでした。他の5局はすべて△7三銀から銀を使う作戦です。
二枚の銀を前線に進出させる、いわゆる「二枚銀」が2局です。上図の後手の形が普通の二枚銀で、先手は▲5六銀型の好形に組めています。もう1局は後手の工夫がありました。
二枚銀のもう1局は、角道不突きで超速△7三銀からの二枚銀です。(上図)
先手は▲5七銀~▲6六銀の銀対抗にしたので、銀対抗vs二枚銀となりました。
超速は、ゴキゲン中飛車対策でよく現れる戦法ですが、先手中飛車対策としても使えます。
先手中飛車に対しては角道不突きのバリエーションがあります。
上図は(超速ではありませんが)、角道不突きでの△7三銀型急戦の1局目です。
角道を空けないことで、角交換のさばきを防ぎながら、先手の角頭を狙う構想です。
形がやや違いますが、角道不突きでの△7三銀型がもう1局です。(上図)
後手は△1三角の端角から角を使い、△7三桂~△6五桂と攻める構想でした。
飛車先不突きでの超速△7三銀が1局です。
以下、△6四銀から5筋の位を狙う構想で、後手は飛車を8筋ではなく△5二飛から5筋で使いました。ここまでの先手の駒組みがやや疑問だったかもしれません。
このように、5筋位取り型だけでも、後手の対策がかなり幅広いです。
初手▲5六歩で早くも作戦を明示しているために、飛車先不突きや角道不突きなどの対策を誘発している面があります。
5筋位取り拒否型
後手が△5四歩と受けて5筋位取りを拒否したのが5局です。
この場合に、後手が5筋の歩交換を許すかどうかもポイントです。
上図のタイミングでの△5三銀が定跡の一手で、先手は5筋の歩(と角)を交換することができません。
▲5五歩△同歩▲同角△同角▲同飛とすると、以下△4四角▲5九飛△9九角成で、香を取られて先手が失敗です。4二玉型だと▲5五同飛のときに、5三の銀にヒモがついているのがポイントです。
△4二玉型での△5三銀は、平成12年王位戦(▲近藤正和vs△佐藤康光)で、佐藤康光さんがひねり出したアイディアです。(参考資料:『ゴキゲン中飛車で行こう(p. 70)』、近藤正和著、2013年)
先手の5筋の歩交換を許すパターン(5筋交換型)もあります。
じゅげむの実戦では、後手は引き角から角を使う構想でした。
ノーマル中飛車に対する▲4六金戦法を応用した△6四金戦法が1局です。
▲4六金戦法の定跡形と比較して、後手は角道を空けていないのがポイントです。
一方、先手も▲6六歩型ではないので、普通の▲4六金戦法の定跡とは全く異なる展開になります。
飛車先と角道を保留して△5三銀~△6四銀を急ぐ指し方が1局です。
「歩越し銀には歩で対抗」で▲6六歩としたので、ノーマル中飛車に変化しました。
▲6六歩と角道を止めて、ノーマル中飛車に変化したパターンがもう1局です。
上図の1手前に△1四歩と端歩を受けたので、後手が居飛車穴熊にしづらいと判断してのノーマル中飛車です。このように、状況によって先手中飛車(角道オープン型)からノーマル中飛車に変化させるのも有力です。
以上が、5筋位取り拒否型の5局です。
注意点として、いくつかの対局で、じゅげむが5筋の歩交換のタイミングを逃している可能性があります。
5筋の歩交換は先手中飛車の得です。
5筋の歩交換のタイミングを逃すと、(5筋歩交換型では選びづらい)さまざまな後手の対策を誘発します。
5筋位取り保留型
5筋位取り保留型は、先手が工夫したパターンです。
後手の飛車先不突きを警戒して、▲5五歩の位取りを保留しました。
先後ともに玉の囲いを優先する展開となり、相穴熊になりました。(上図)
相振り飛車(先手は中飛車)で、後手が飛車をどこに振るか?
相振り飛車(先手は中飛車)の内訳(全8局)
相中飛車:3局
中飛車vs三間飛車:4局
中飛車vs向かい飛車:1局
相振り飛車(先手は中飛車)で、後手が飛車を振る場所として、中飛車(3局)と三間飛車(4局)が人気です。向かい飛車(1局)もありました。今回の調査では四間飛車(0局)は全くありませんでした。
相中飛車の3局の図面です。美濃囲い同型、角交換型、5筋不突き型など、相中飛車でも色々なパターンがあります。
中飛車vs三間飛車の4局の図面です。
三間飛車側が、角道オープン型(△4三歩型:2局)と角道クローズ型(△4四歩~△4三銀型:2局)に分かれます。角道クローズ型の2局は、後手が穴熊を目指しました。
また、後手が角道オープン型の時に、油断して先手の8八角を浮き駒にしてしまうと、△5四歩と逆に突かれる危険性があります。
中飛車vs向かい飛車の相振り飛車は1局だけでしたが、戦法としては有力だと思います。
先手中飛車のまとめ
将棋倶楽部24での調査です。
先手番で先手中飛車の誘導成功率は60%。
すなわち、先手の中飛車に対して、後手が居飛車で対抗する割合が60%です。
残りの40%は相振り飛車になりました。
先手中飛車に対する後手の対策はかなりバラつきます。
①5筋位取り型、5筋位取り拒否型、5筋交換型
②△7三銀型、超速△7三銀型、△6三銀型、佐藤康流△5三銀型、△6四金戦法
③飛車先保留(不突き)、角道保留(不突き)、引き角(△3一角)、端角(△1三角)
などのバリエーションの組み合わせです。
相振り飛車(先手は中飛車)で、後手が飛車を振る場所は、中飛車と三間飛車が人気です。
すなわち、相中飛車、中飛車vs三間飛車がよく指されます。
次回は、【後編】のゴキゲン中飛車の誘導成功率と、ゴキゲン中飛車対策の調査です。