1-2. 囲いの研究 | じゅげむの将棋ブログ https://shogijugem.com 将棋の戦法や定跡のまとめ、囲い、格言、自戦記、ゆるゆる研究シリーズなど。 Sun, 02 Jul 2017 21:34:05 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=5.5.3 111067373 将棋の囲いをソフトの評価値で点数化してみた結果(11種類の囲いを徹底比較) https://shogijugem.com/kakoi-soft-5418 Sat, 10 Jun 2017 03:17:33 +0000 https://shogijugem.com/?p=5418   将棋の囲いをソフトの評価値で点数化するとどうなるか? 将棋ソフト「技巧」の評価値を使って、囲いの堅さを数値化します。 どのように数値化するかというと、本研究では四間飛車の定跡を活用します。 金銀3枚の囲いに...

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将棋の囲いをソフトの評価値で点数化するとどうなるか?

将棋ソフト「技巧」の評価値を使って、囲いの堅さを数値化します。
どのように数値化するかというと、本研究では四間飛車の定跡を活用します。

金銀3枚の囲いに限定して、11種類の囲いを徹底比較します。
特に、横からの攻めに対する囲いの強さがよく分かります。

数値化して点数を比較した結果をランキング形式で発表します!!

 

囲いの評価値の測定方法(四間飛車の山田定跡の例)
囲いの評価値ランキング(11位~8位)
囲いの評価値ランキング(7位~4位)
囲いの評価値ランキング(3位~1位)
囲いの評価値ランキングのまとめ

 


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まずは今回、将棋ソフト「技巧」で研究した11種類の囲いを紹介します。

美濃系の囲いでは、美濃囲い高美濃囲い銀冠

美濃囲い高美濃囲い銀冠

矢倉系の囲いでは、金矢倉片矢倉(天野矢倉)平矢倉

矢倉(金矢倉)片矢倉(天野矢倉)平矢倉

穴熊系の囲いからは、居飛車穴熊

居飛車穴熊

その他の囲いとして、金無双カニ囲い船囲い(▲7九銀型と▲4八銀型)

金無双(二枚金)カニ囲い

船囲い(▲7九銀型)船囲い(▲4八銀型)

のエントリーです。

これら11種類の囲いの堅さを、評価値の順番でランキング形式で発表します!!

 

以下は、最強の囲いを決める前回のランキング記事です。

将棋で最強の囲いは何か? 囲いの堅さランキング(11種類を徹底比較)
将棋で最強の囲いは何か? 実戦でよく現れる有名な囲いを中心に11種類の囲いを徹底比較します。 囲いの長所、短所、総合評価をラ...

 

囲いの評価値の測定方法(四間飛車の山田定跡の例)

四間飛車の山田定跡

上図は対四間飛車の急戦定跡である山田定跡の有名な局面です。

【四間飛車 vs 急戦】山田定跡のまとめ ~基本的な攻め方の手順と重要な4つのパターン~
四間飛車は人気の戦法で、将棋倶楽部24や将棋ウォーズでもよく現れます。 じゅげむ自身も四間飛車は得意戦法で、定跡書を10冊以上...

囲いに注目すると、先手の居飛車は▲4八銀型の船囲い、後手の四間飛車は美濃囲いです。

後手が△2八飛と先着していますが、先手は先に桂得しているので、もし玉の堅さが同じなら結構バランスが取れています。

美濃囲い(評価値148)

実際に、先手の居飛車の囲いも美濃囲いにしてみると(上図)、将棋ソフト「技巧」の評価値は148で互角に近くなります。(評価値が-200~200の範囲内ならほぼ互角)

このように、先手玉の囲いだけ変えて、ソフトの評価値の変化を調べることができます。

ソフトの評価値が高い囲い=堅くて優れた囲い

というシンプルな図式が成り立ちます。

今回は△2八飛と攻められている局面で比較するので、横からの攻めに対する囲いの強さがよく分かります。囲いの強さを比較するために、美濃囲いを基準にして評価値の差も調べます。

 

囲いの評価値ランキング(横からの攻め、金銀3枚)

それでは、囲いの堅さランキングを発表します!!

前回は最強の囲いランキングでしたが、今回のランキングは、

・金銀3枚の囲いに限定
・横からの攻めに対する守備力

となります。居飛車 vs 振り飛車の対抗型で役に立つランキングです!!

第11位 カニ囲い

カニ囲い(評価値-987)

カニ囲いがランキング最下位の11位です。

カニ囲いは上部からの攻めに対しては抵抗力がありますが、
横からの攻めには非常に弱いのが弱点です。

飛車交換になりやすい居飛車 vs 振り飛車の対抗型には不向きです。
実際に、対振り飛車で使われることはほとんどありません。

△2九飛成が王手になるのが痛すぎます。
玉が6筋で相手の攻め駒に近いこともマイナス要素です。

将棋ソフト「技巧」の評価値:-987
美濃囲いとの評価値の差:-1135
横からの攻めに対する守備力:××

第10位 船囲い(▲4八銀型)

船囲い(評価値-381)

もともとの山田定跡で現れる▲4八銀型の船囲いが第10位です。

居飛車の船囲いは、振り飛車の美濃囲いよりも薄いとよく言われます。
それなら、いったいどのくらい薄いのか?

将棋ソフトの評価値にすると500点分も薄いことが判明しました。

山田定跡のこの形は、玉が薄いために失敗することがよく分かります。
もし玉の堅さが同じだったら、逆に居飛車有利になるところです。

将棋ソフト「技巧」の評価値:-381
美濃囲いとの評価値の差:-529
横からの攻めに対する守備力:×

第9位 金無双(二枚金)

金無双(評価値-345)

相振り飛車でよく使われる金無双(二枚金)が第9位です。

上部と端からの攻めには強いですが、横からの攻めには弱い囲いです。
このような特徴は、カニ囲いに似ています。

しかし、△2九飛成が王手にならないですし、
▲7九銀と引けば8筋からの玉の逃げ道を空けることができます。
最下位のカニ囲いよりはずいぶんマシと言えるでしょう。

将棋ソフト「技巧」の評価値:-345
美濃囲いとの評価値の差:-493
横からの攻めに対する守備力:×

第8位 船囲い(▲7九銀型)

船囲い(評価値-251)

▲7九銀型の船囲いが第8位です。
第10位の▲4八銀型と比べると、守りの銀が玉に近い分だけ堅いです。

しかし、美濃囲いと比べるとまだまだ弱いです。
あと▲8八玉→▲7八銀のたった2手で美濃囲いに発展できますが、
船囲いのままだと美濃囲いよりも400点ぐらい評価値で損をします。

将棋ソフト「技巧」の評価値:-251
美濃囲いとの評価値の差:-399
横からの攻めに対する守備力:×

 

囲いの評価値ランキング(7位~4位)

将棋の実戦でよく現れる代表的な囲いが並びます。
相居飛車のエース、振り飛車のエース、およびこれらの変化形です。

第7位 片矢倉(天野矢倉)

片矢倉(評価値-77)

片矢倉(天野矢倉)が第5位です。

ソフトの評価値は-77で、上図の局面はほぼ互角なので、
横からの攻めに対しても、ある程度は守れることが分かります。

金銀の連結が良いので、△5九銀などの攻めにも抵抗力があります。

△2九飛成の後に、7九の地点に何かを打たれる手は気になります。
しかし、後手の持ち駒に金がないので、すぐに潰れることはなさそうです。

将棋ソフト「技巧」の評価値:-77
美濃囲いとの評価値の差:-225
横からの攻めに対する守備力:

第6位 金矢倉

金矢倉(評価値69)

矢倉系の囲いの基本形である金矢倉が第6位です。

金矢倉は上部からの攻めには強く、横からの攻めには弱いと言われます。
△6九銀や△6九角などの攻めが急所になりやすいからです。

しかし、意外にも美濃囲いとは微差の評価値です。

上部、斜め、端からの攻めには美濃囲いよりも強いので、
バランスの良さや総合力の強さで微差なのかもしれないです。

将棋ソフト「技巧」の評価値:+69
美濃囲いとの評価値の差:-79
横からの攻めに対する守備力:

第5位 美濃囲い

美濃囲い(評価値148)

振り飛車のエース、美濃囲いが第5位です。

後手の四間飛車も美濃囲いなので、上図は先後で同じ囲いです。
先後が同じで比較しやすいので、本研究では囲いの堅さの基準にしています。

ちなみに、上図では先手が先に桂得をしており、手番も握っているので、
玉の囲いが全く同じでも先手がやや有利の評価値になっています。

美濃囲いは金矢倉よりも横からの攻めに強いことが評価値で確認できます。

将棋ソフト「技巧」の評価値:+148
美濃囲いとの評価値の差:0(基準)
横からの攻めに対する守備力:

第4位 高美濃囲い

高美濃囲い(評価値358)

美濃囲いを発展させた高美濃囲いが第4位です。

美濃囲いよりも横からの攻めに対して弱いイメージがありますが、
ソフトの評価値は美濃囲いを200点ぐらい上回っています。

実は、横からの攻めに対してそれほど弱くないかもしれないです。

あるいは、横からの攻めにはやや弱くなっても、
上部や斜めが手厚くなって、総合的に堅いのかもしれないです。

将棋ソフト「技巧」の評価値:+358
美濃囲いとの評価値の差:+210
横からの攻めに対する守備力:

 

囲いの評価値ランキング(3位~1位)

最後にナンバー3の発表です!!
ランクインして当然の囲いもありますが、意外な囲いも3位以内に入っています。

第3位 銀冠

銀冠(評価値385)

プロが好む囲いとして有名な銀冠が堂々の第3位です。

美濃系の囲い(美濃囲い、高美濃囲い、銀冠)の3種類中でトップです。
囲いを組むのに一番手数をかけているだけのことはあります。

横からの攻めに弱くないのはもちろん、端や玉頭の守りなど総合力が高く、
全体的なバランスを評価されての評価値の高さだと思います。

将棋ソフト「技巧」の評価値:+385
美濃囲いとの評価値の差:+237
横からの攻めに対する守備力:

第2位 平矢倉

平矢倉(評価値522)

矢倉系の囲いである平矢倉が、意外にも第2位にランクインです。

基本形の金矢倉は横からの攻めにやや弱いのですが、
▲6八金引とたった一手入れるだけで平矢倉になります。

平矢倉になると横からの攻めに対してかなり強固になります。
特に、△6九銀や△6九角の筋がないのが大きな利点です。

この評価値なら、振り飛車 vs 居飛車の対抗型でも十分に使えます。

将棋ソフト「技巧」の評価値:+522
美濃囲いとの評価値の差:+374
横からの攻めに対する守備力:

第1位 居飛車穴熊

居飛車穴熊(評価値876)

振り飛車の天敵、居飛車穴熊が貫禄の第1位です。

ソフトの評価値は驚愕の+876で、他の囲いを圧倒します。
「金銀3枚の囲いの中で最も堅い」という事実が数値でも証明されました。

囲いの堅さ、玉の戦場からの遠さ、王手のかからなさ。
すべての要素で隙がない穴熊が最強の囲いです。

将棋ソフト「技巧」の評価値:+876
美濃囲いとの評価値の差:+728
横からの攻めに対する守備力:

 

囲いの評価値ランキングのまとめ

囲いの評価値ランキング(四間飛車の山田定跡の例)
「技巧」の評価値:四間飛車の山田定跡で、囲いを変えた時の将棋ソフト「技巧」の評価値。
美濃囲いとの差:美濃囲いを基準の0とした時の評価値の差。
横の堅さ:横からの攻めに対する囲いの堅さの評価。

 


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片美濃囲いをマスター! 片美濃囲いの手順と23種類の崩し方(攻め方) https://shogijugem.com/katamino-4687 Mon, 27 Mar 2017 07:08:28 +0000 https://shogijugem.com/?p=4687 片美濃囲いの「特徴」「手順」「崩し方(攻め方)」をまとめています。 将棋の初心者の方にとっては、まずは片美濃囲いの基本的な組み方の手順が大事です。 片美濃囲いを組めるようになったら、次のステップは相手の片美濃囲いを攻略す...

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片美濃囲い:崩し方(攻め方)の4つのパターン片美濃囲い

片美濃囲いの「特徴」「手順」「崩し方(攻め方)」をまとめています。

将棋の初心者の方にとっては、まずは片美濃囲いの基本的な組み方の手順が大事です。

片美濃囲いを組めるようになったら、次のステップは相手の片美濃囲いを攻略することです。片美濃崩しは美濃崩しの基本で、美濃囲いの崩し方や高美濃囲いの崩し方にも応用できます。

この記事では、片美濃囲いの崩し方(攻め方)の手筋を全23問の問題形式で解説しています。問題部分は、級位者から三段~四段ぐらいの有段者の方まで参考になると思います。

 

このページの目次

 

片美濃囲いとは?(特徴、長所、短所)

片美濃囲い

美濃囲いから5八の金が1枚少なくなった、金銀2枚の囲いです。

美濃系の囲いは、振り飛車の実戦でよく使われます。
その中でも片美濃囲いは、特に中飛車や角交換系の振り飛車の実戦でよく現れます。

中飛車では5八に飛車がいるので、自然に片美濃囲いになります。

また、角交換系の振り飛車で、自陣への角の打ち込みを消すために、左側の金を5八ではなく▲7八金と上がると片美濃囲いになります。

片美濃囲いから、銀冠(片銀冠)、木村美濃などの囲いに発展させることができます。

<片美濃囲いの長所>
金銀2枚の囲いの中では、最もバランスが良い。
囲いを組むのにあまり手数がかからず、組むときの手順も簡単。
玉の移動を含めてたった4~5手で囲いが完成する。

<片美濃囲いの短所>
金銀2枚の囲いであること。金銀3枚の美濃囲いと比べて、堅さでは劣る。
玉のあるマス目に味方の駒の利きがないので、王手に弱い。
角と桂馬のコンビネーションでのコビン攻めに弱い。

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片美濃囲いの手順

片美濃囲いの組み方の手順(その1)

片美濃囲いの手順は(飛車を左に移動させてから)、

▲4八玉→▲3八玉→▲2八玉→▲3八銀(→▲1六歩)

となります。この手順が最も普通で、プロの公式戦でもよく現れる組み方です。

最初に、▲4八玉→▲3八玉→▲2八玉(途中図)と玉を2八まで移動させます。

片美濃囲いの手順1(途中図)

途中図から▲3八銀と銀をまっすぐ上がると片美濃囲いの完成です。さらに、端歩の▲1六歩を突くと、玉の逃げ道が広くなります。

下図が片美濃囲いの完成図で、端歩を突くと5手、端歩なしだと4手で完成します。

片美濃囲い

ちなみに、途中図の局面から、片美濃囲いではなく穴熊囲い金美濃など別の囲いを選ぶこともできます。

<「手順その1」のまとめ>
片美濃囲いの普通の組み方の手順で、初心者の方にもオススメです。
プロの公式戦でもよく見られる手順です。
▲2八玉の局面から穴熊囲いや金美濃など別の囲いも選べます。

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片美濃囲いの組み方の手順(その2)

片美濃囲いを作るもう一つの手順は(飛車を左に移動させてから)、

▲4八玉→▲3八銀→▲3九玉→▲2八玉(→▲1六歩)

となります。

最初の▲4八玉までは「手順その1」と同じです。次に、▲3八玉ではなく▲3八銀(途中図)と上がります。

片美濃囲いの手順2(途中図)

「手順その2」では、片美濃囲いの金銀の骨格を先に作って、その後で玉が入城します。

途中図から、▲3九玉→▲2八玉とジグザグに玉を移動させて、2八の地点に入城させれば片美濃囲いの完成です。さらに、▲1六歩と端歩を突くと、玉の逃げ道が広くなります。

先に▲3八銀として片美濃囲いの金銀の形を決めてしまうので、後から穴熊囲いなどには変更できません。ただし、この組み方の場合は、玉を2八まで入城せずに▲3九玉型で戦うこともできます。

途中図では、角交換をすると△2八角と打ち込まれるスキがあります。角道オープン型の振り飛車では注意が必要です。

<「手順その2」のまとめ>
やや上級者向けの組み方です。
玉を2八まで入城せずに、▲3九玉型のままでも戦えます。
途中で△2八角の打ち込みのスキができるので、角交換には要注意です。

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片美濃囲いの崩し方(攻め方)のポイント

片美濃囲い:崩し方(攻め方)の4つのパターン

片美濃囲いの崩し方(攻め方)には、大きなポイントが2つあります。

一つ目は、片美濃囲いの崩し方には、次のような4つのパターンがあるということです。

・横からの攻め(上図の水色のエリア)
・コビン攻め(
・端攻め(オレンジ
・玉頭攻め(黄緑

この大枠をつかんでおくと、攻めのパターンを理解しやすくなります。

片美濃囲いは王手に弱い

二つ目のポイントは、片美濃囲いは王手に弱いということです。

玉のある8二のマス目に守備駒の利きがないので、王手をかけて玉が逃げた場合、8二の地点に駒を打ってさらに王手をかけることができます。このように、連続して王手がかかる形になりやすく、そのまま一気に攻め切れることも多いです。

片美濃囲いを攻める時のコツは、王手をかけられる形にすることです。

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横からの攻め

片美濃囲いの急所(横からの攻め)

片美濃囲いを横から攻める時は、7一の地点が急所となります(上図の水色のマス目)。▲7一銀あるいは▲7一角が王手になるからです。

ただし、7一の地点は△6一金が守っているので、①7一の地点に攻め駒の利きを集中させるか、あるいは②△6一金を無力化する必要があります。

上図は①のパターンで、▲2一飛の間接的な利きと▲4四角の利きが7一の地点に集中しています。上図では▲7一銀△同金▲同角成△9二玉▲8二金までの即詰みがあります。

片美濃囲いでは、玉のある8二の地点に守備駒の利きがありません。7一の地点を制して王手をかけて、玉が逃げる形になると、8二の地点も制することができます。上図の例題では、△9二玉と逃げたときに▲8二金の王手ができるので即詰みとなります。

②のパターンは問題編でご紹介します。

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コビン攻め

コビン攻めも急所

コビン攻め(斜めからの攻め)も、片美濃囲いへの効果的な攻め方です。

「コビン」とは、玉の斜め上のマス目のことを言います。片美濃囲いの場合は、7三の地点が玉のコビンです。そして、コビンの一つ下の7四のマス目も、攻める時のポイントになります。すなわち、上図の赤マスの7三と7四の地点が、コビン攻めの急所になります。

たとえば、上図のように▲3七角のにらみがある場合、▲7四歩と突かれるだけで後手は受けづらいです。角のにらみで△同歩とは取れないですし、放置すると▲7三歩成△同銀(または△同桂)▲7四歩(下図)の攻めが非常に厳しいです。

角のラインは受けづらい

上図から△7二歩と耐えても、▲7三歩成△同歩▲7四歩(下図)のおかわりがあります。

何度も▲7四歩がある

このように、角のにらみは強烈で、歩だけでどんどん守備駒を取られてしまいます。

片美濃囲いのコビン(7三の地点)は、玉・銀・桂馬の3枚で守っています。しかし、コビン攻めが筋に入ると、守備駒の数に関係なく攻めが決まることがあります。

また角のラインを生かした有名な手筋として、角と桂馬のコンビネーションで、片美濃囲いの玉にいきなり王手をかける攻め方もあります。こちらは、この後の問題編で具体的な攻め筋をご紹介します。

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端攻め

端も片美濃囲いの弱点

端攻めも片美濃囲いに対する効果的な攻め方です。美濃囲い、高美濃囲いなどに対してもそのまま応用が効きます。

片美濃囲いの端は、桂馬と香車が守っています。しかし、桂香は後ろに戻れない駒なので、守備にはもろさがあります。端攻めの手筋を知っていると、少ない戦力でも攻略しやすいです。

端攻めの場合でも、王手をかけることが攻め方のコツです。たとえば、▲9四桂の王手が実現するように端攻めの手順を組み立てます。

上図の例題では、▲9五歩△同歩▲9二歩△同香▲9三歩△同香▲9四歩△同香▲8六桂(下図)が端攻めの手筋です。少々長い手順ですが、要するに守りの香車をつり上げて、▲8六桂→▲9四桂の王手を実現させることが狙いです。

▲9四桂の王手を狙う

上図の▲8六桂の筋があるので、端攻めで最も活躍しやすい駒は桂馬です。桂馬と歩が何枚かあれば、端攻めが成立する場合が多いです。

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玉頭攻め

玉頭の8三の地点も急所

片美濃囲いの玉頭(8三の地点で、上図の黄緑のマス目)を守っているのは、玉と銀の2枚のみです。△6一金などの他の守備駒が、玉頭の守りに使いづらいのが片美濃囲いの弱点です。

片美濃囲いへの玉頭攻めは、単純な数の攻めでも有効な場合が多いです。また、囲い崩しの手筋を使ったさまざまな攻め筋もあります。

上図の例題では、飛車・銀・香車の3枚の攻め駒で、玉頭の8筋に狙いを定めています。一方で、8三の地点を守っているのは玉と銀の2枚だけなので、単純な数の攻めが成立します。

具体的には、上図から▲8四歩△同歩▲同銀(下図)となると、既に8三の地点が受からなくなっています。下図から△8三歩と受けようとしても守備駒の数が足りていないので、▲同銀成△同銀▲同香成で8筋を突破できます。

8三の地点が受からない

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片美濃囲いの崩し方(攻め方)のまとめ

以上のように、片美濃囲いに対する攻め方は、①横からの攻め、②コビン攻め、③端攻め、④玉頭攻めの4種類があります。いずれの場合でも、王手をかけられる形にするのが、片美濃囲いの攻め方のコツです。

具体的な攻め方には、さまざまなバリエーションがあります。多くの問題を解いて覚えることが棋力向上への近道です。

以下では、片美濃崩しの手筋を問題形式でご紹介しています。

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片美濃崩しの手筋(全23問)

片美濃崩しの手筋を、全23問の問題形式で解説しています。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、問題だけをまとめた場所がありますので、そちらからご覧ください。

 

横からの攻め①

<問題1>
片美濃囲いの崩し方①

<ヒント>
片美濃囲いを横から攻めるときの急所は7一の地点です。

 

<答え>

正解:▲7一銀(正解図)

片美濃囲いの崩し方①(正解図)

▲7一銀の王手が正解です。これに対して、①△9二玉なら▲8二金で詰みですし、②△同金▲同角成△9二玉▲8二金(詰め上がり図)でも即詰みです。

片美濃囲いの崩し方①(詰め上がり図)

最初の問題は、7一の地点に攻め駒の利きを集中させるパターンでした。

問題図では、一段飛車(▲2一飛)と▲4四角が、片美濃囲いの急所の7一の地点をにらんでいます。飛車と角は△6一金の守備範囲外から7一の地点に利かすことができるので、片美濃囲いを横から攻める時にとても役立ちます。

先手の攻め駒は、▲2一飛の間接的な利きと▲4四角の斜めのラインで、合計2枚の駒が7一の地点に利いています。一方、後手は△8二玉と△6一金の2枚の駒が7一の地点に利いています。攻め駒の数と守り駒の数が2対2なので、さらに▲7一銀と打ち込めば3対2の「数の攻め」で7一の地点を制することができます。

このように、片美濃囲いを横から攻めるときは、7一の地点に攻め駒の利きを集中させるのが基本です。7一の地点を攻めると△7二銀が受けにあまり働かないので、効果的な攻めになる場合が多いです。

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横からの攻め②

<問題2>
片美濃囲いの崩し方②

<ヒント>
守りの要である△6一金を無力化します。

 

<答え>

正解手順:▲6二銀△同金▲7一角△9二玉▲6二角成(成功図)

片美濃囲いの崩し方②(成功図)

片美濃囲いの守りの要である△6一金を無力化させるパターンです。

前問とは違って今度は▲4四角がいなくて、盤上には一段飛車(▲2一飛)のみです。この場合でも非常に厳しい攻め筋があります。

片美濃囲いの崩し方②(途中図)

問題図で▲6二銀(途中図)の捨て駒が正解です。△同金と取らせると、金がうわずって7一の地点への利きがなくなります。すると急所の▲7一角を打つことができます。

▲7一角が両取りになるように、6二の地点に守りの金をおびき出すのが基本です。▲6二角成と金を取った成功図では、後手に適当な受けがありません。

この攻め筋は、持ち駒が①角銀だけではなく、②銀銀、③金銀、④角金などでも成立します。「7一に打つための斜め後ろに利く駒(角か銀)」が1枚と、「6二に打つための金駒(金か銀)」が1枚の組み合わせです。

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横からの攻め③

<問題3>
片美濃囲いの崩し方③

<ヒント>
後手の持ち駒に歩があるので、受けられたときの攻め方を考えてください。
有段者の方は、大駒を渡さないで攻め切ってください。

 

<答え>

正解手順:▲6二金△5一歩▲同飛成(正解図1)
その他の正解手順:▲6二金△5一歩▲6一金△同銀▲5一飛成(正解図2)

片美濃囲いの崩し方③(正解図1)

初手の▲6二金に対して△同金なら前問と同じ筋で、以下▲7一角△9二玉▲6二角成で攻めが成功します。

▲6二金に△5一歩と底歩を打たれた場合は、正解図1のように▲同飛成と取ってしまうのが明快です。以下、△同金▲7一角△9二玉▲7二金(成功図)で後手玉に必死がかかります。まずは、この攻め方を覚えておけば十分です。

片美濃囲いの崩し方③(成功図)

ただし、上図の攻め方だと後手に飛車を渡します。飛車を渡せない場合は、△5一歩に対して▲6一金△同銀▲5一飛成(正解図2)と攻める順が有力です。こちらの手順でも寄せ切ることができますが、正解図1の手順と比べると変化が多くなります。

片美濃囲いの崩し方③(正解図2)

正解図2からは△6二金や△7一金などの受けが考えられます。

△6二金なら▲5二金(変化図1)の攻めが有力です。▲5二金に対して、①△同銀なら▲6二龍以下の詰み、②△同金なら▲6一龍が詰めろで以下△7二金と受けても▲5二龍と金を取った手がまた詰めろ、③△7二玉なら▲6二金△同銀▲6一角でよく、④手抜きなら次に▲6一金でも▲6二金でも詰めろになります。

片美濃囲いの崩し方③(変化図1)

正解図2から△7一金(変化図2)の場合は、角を渡しても大丈夫なら▲5三角が分かりやすいです。次に▲7一角成△同玉▲6二金△8二玉▲6一龍の詰めろが狙いです。

片美濃囲いの崩し方③(変化図2)

変化図2で角を渡せない場合は▲4二龍が有力です。▲4二龍に対して、①△5二歩なら▲5三歩が意外と速い攻め、②△7二銀なら▲5三角△6一金▲6二金、③△6二銀なら▲5二金、④△9三玉なら▲5三角などがあります。

このように、問題図から飛車も角も渡さずに攻めようとすると変化がやや複雑になりますが、調べてみるとどうやら攻め切ることができそうです。

逆に後手の立場としては、飛車も角も渡せないような状況にしておくと、やや難解な局面を渡すことができます。

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横からの攻め④

<問題4>
片美濃囲いの崩し方④

<ヒント>
後手陣の△6四歩型に注目します。

 

<答え>

正解:▲6三香(正解図)

片美濃囲いの崩し方④(正解図)

正解図の▲6三香で後手は受けに困っています。△同銀なら▲6一飛成が厳しいですし、△7一金(途中図)なら有力な攻め筋がいくつかあります。

片美濃囲いの崩し方④(途中図)

途中図から、①▲6二香成△同金▲7一銀△9二玉▲6二銀成(変化図1)の攻め方は有力です。駒得をしながらの自然な攻めで、相手に渡す駒も香車のみです。ただし、変化図1の局面は詰めろではないので、そこだけは注意が必要です。

ちなみに、もし問題図で▲2一飛の代わりに▲4一龍だったとすると、(▲4一龍型の)変化図1で▲8二金△同玉▲7二成銀△同玉▲5二竜以下の詰み筋があります。

片美濃囲いの崩し方④(変化図1)

途中図から、②▲6二銀(変化図2)の攻めも有力です。以下△同金▲同香成で受けが難しい形になります。この攻め方だと、相手に銀の持ち駒を渡してしまいますが、詰めろの連続で寄せられるのがメリットです。

片美濃囲いの崩し方④(変化図2)

途中図では、③▲同飛成△同玉▲6二金△8二玉▲7一銀△9二玉▲7二金(変化図3)と、いきなり飛車を切ってしまう攻め筋もあります。銀は渡せないけれど、飛車なら大丈夫という場合なら有力です。

片美濃囲いの崩し方④(変化図3)

途中図では、有力な攻め方がいくつもあってどれでも良さそうですが、自玉の安全度や渡せる駒を考えて攻め方を選ぶことが大事です。

問題図に戻って、△6四歩型の片美濃囲いは▲6三香の筋があるので、横からの攻めに対してやや弱体化しています。また持ち駒によっては、▲6三桂と打って7一の地点を狙う攻め筋もあります。片美濃囲いの6三の空間には、桂香を打つと効果的な場合が多いので覚えておくと役立ちます。

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横からの攻め⑤

<問題5>
片美濃囲いの崩し方⑤

<ヒント>
前問との違いは飛車の位置です。二段飛車でも厳しい攻めがあります。

 

<答え>

正解:▲6三香(正解図)

片美濃囲いの崩し方⑤(正解図)

以下、△7一金なら▲6二銀が詰めろ、△5一金なら▲6二香成が詰めろで攻めが続きます。二段飛車のにらみで、正解図の▲6三香を△同銀と取れないのがポイントです。

持ち駒が「銀香」の場合は、前問の一段飛車でも、本問の二段飛車でも厳しい攻めがあります。ただし、やはり6三に香車を打つ空間がないと攻めが成立しません。同じ片美濃囲いでも、わずかな歩の形の違いが大きな差を生むという例です。

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横からの攻め⑥

<問題6>
片美濃囲いの崩し方⑥

<ヒント>
三手目に気付きにくい好手があります。

 

<答え>

正解手順:▲6二香△7一金▲5三角(正解図)

片美濃囲いの崩し方⑥(正解図)

初手は▲6二香で、以下△同金なら▲7一角△9二玉▲6二角成があるので、▲6二香に対しては△7一金とかわします。

三手目に、香車のかげに▲5三角(正解図)と打つ手が気付きにくい好手で、片美濃崩しの手筋として非常に有名な攻め方です。

正解図で実は後手玉が詰めろとなっており、次に▲7一龍△同玉▲6一香成(途中図)△8二玉▲7一角成△9二玉▲8二金△9三玉▲7二金△8四玉▲7五銀(詰め上がり図)までの詰みがあります。

片美濃囲いの崩し方⑥(途中図)

途中図での▲6一香成の両王手がポイントで、△同玉と取れば▲6二金の頭金で詰んでしまうという仕組みです。

片美濃囲いの崩し方⑥(詰め上がり図)

正解手順の攻めは非常に受けづらいです。正解図から後手が受けるなら△6二金▲同角成△6一香という頑張りはありますが、以下▲同馬△同銀▲同龍の詰めろで受けが困難です。

なお、もしも先手の龍が▲4一龍ではなく▲2一龍などの場合は、初手の▲6二香に対して△7一金ではなく△5二金(参考図)とかわした方が粘りがあります。しかし、①▲7一角△9二玉を決めてから▲4一龍で金を狙う手や、②▲6一香成として次に▲7一角や▲6二成香を狙う筋、などがあるので先手の攻めが続く形です。

片美濃囲いの崩し方⑥(参考図)

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コビン攻め①

<問題7>
片美濃囲いの崩し方⑦

<ヒント>
3手詰めです。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△7一玉▲8二金(詰め上がり図)までの即詰みです。

片美濃囲いの崩し方⑦(詰め上がり図)

桂馬を活用した3手詰です。初手の▲7四桂は、8二の玉に王手をするのと同時に、6二の逃げ道をふさいでいます。片美濃囲い(美濃囲い)に対する▲7四桂は急所中の急所の筋です。

片美濃囲いは△7三桂と跳ねると囲いが弱体化します。△7四歩の守りがある場合は、▲8六桂(参考図)と控えて打って、次の▲7四桂を狙うのも実戦でよく現れる手筋です。

片美濃囲いの崩し方⑦(参考図)

ただし、7三の地点に歩がある普通の片美濃囲いに対しては、▲7四桂を△同歩と取られてしまいます。したがって、本問のような筋を実現するためには工夫が必要です。

その工夫については次問以降で現れます。

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コビン攻め②

<問題8>
片美濃囲いの崩し方⑧

<ヒント>
角と桂馬のコンビネーションの手筋で、後手玉に詰みがあります。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△9二玉▲8二金(詰め上がり図)までの3手詰みです。

片美濃囲いの崩し方⑧(詰め上がり図)

片美濃崩し(美濃崩し)の最も代表的な攻め方の一つです。

初手▲7四桂の王手が正解です。7三の歩で取られてしまいそうですが、5五角のにらみで▲7四桂を△同歩と取れないのがポイントです(△同歩とすると角で玉を取られてしまいます。)

▲7四桂に対して、△9二玉でも△7一玉でも▲8二金までの即詰みです。△7一玉の場合は、▲4四角でも詰みとなります。

このように、角と桂馬のコンビネーションは片美濃崩しの強烈な手筋です。片美濃囲いの金銀には触らずに、桂馬で王手をかけて一気に寄せることができます。

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コビン攻め③

<問題9>
片美濃囲いの崩し方⑨

<ヒント>
後手玉に必死をかけることができます。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△9二玉▲8二金△同金▲7一角(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑨(成功図)

前問のような▲7四桂△9二玉▲8二金の筋を警戒して、後手が△7一金で8二の地点を強化してきた場合の攻め方です。

成功図の▲7一角で、後手玉には必死がかかっています。次の▲8二角成の詰みを防ぐ手段がありません。△7四歩と桂馬をはずしても、5五角の利きが8二まで通ってくるので▲8二角成までの詰みとなります。

このように、後手の△7一金の受けに対しても攻め切る順があります。ただし、金の持ち駒を渡せない場合は、正解手順の攻めができません。その場合に、問題図から▲7四桂△9二玉▲5三角(変化図)という攻めは有力です。

片美濃囲いの崩し方⑨(変化図)

変化図は詰めろではありませんが、次の▲7一角成の必死を狙っています。△7四歩と桂馬を取られても、5五角の利きが通るので▲7一角成でやはり必死となります。

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コビン攻め④

<問題10>
片美濃囲いの崩し方⑩

<ヒント>
王手飛車が狙い筋ですが、手順前後には要注意です。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△同歩▲5五角(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑩(成功図)

問題図では、いきなり▲7四桂と打つ手があります。△同歩と取らせて▲5五角(成功図)の王手飛車が実現します。▲7四桂に対して△同歩以外なら、▲8二金で即詰みです。

片美濃囲いに対して角と桂馬の持ち駒があるときは、▲7四桂から両取りの狙いがあります。この手筋は、盤面に角がなくてもいきなり成立するので要注意です。角のラインに浮き駒がないかどうか、常に気を配る必要があります。

 

ただし、先に▲5五角を打つのは手順前後で失敗します。▲5五角△2四飛(失敗図)で飛車の横利きを利用されて受けられて、▲7四桂には△同飛と取られてしまいます。

片美濃囲いの崩し方⑩(失敗図)

ちなみに、下の参考図(△3四歩に注目)のように飛車の横利きで受けられない場合は、先に▲5五角と打つ方が勝ります。なぜなら桂馬を渡さないで済むからです。▲7四桂△同歩▲5五角だと飛桂交換ですが、先に▲5五角と打てば飛車をタダ取りできます。

片美濃囲いの崩し方⑩(参考図)

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コビン攻め⑤

<問題11>
片美濃囲いの崩し方⑪

<ヒント>
長手数ですが即詰みがあります。最初の3手の発見が大事です。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂打△同歩▲同桂(正解図)

片美濃囲いの崩し方⑪(正解図)

▲7四桂打△同歩▲同桂(正解図)が継ぎ桂の手筋です。以下、即詰みがあります。

正解図から△9二玉▲9三銀△同玉▲8二角△9二玉▲9一角成△9三玉▲8二馬△8四玉▲7五金(詰め上がり図)までの詰みです。

片美濃囲いの崩し方⑪(詰め上がり図)

正解図で△7三玉から上部に脱出しようとしても、▲8二角△7四玉▲7五金までの即詰みです。▲8二角で6四からの脱出ルートをふさげるのがポイントです。

ちなみに、持ち駒は「角金桂香」などでも同じ手順で詰みがあります。

 

▲7四桂の王手の筋で片美濃囲いを攻めるテクニックは、次の3パターンにまとめることができます。

①角のにらみで▲7四桂を取れないようにする。(問題8問題9
②▲7四桂から両取りをかける。(問題10
③▲7四桂△同歩▲同桂の継ぎ桂の手筋。(本問)

これらの3種類のパターンで覚えておくと、片美濃囲い(美濃囲い)に対する▲7四桂の攻め筋を理解しやすくなります。

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端攻め①

<問題12>
片美濃囲いの崩し方⑫

<ヒント>
持ち駒をすべて使って端の香車を狙います。

 

<答え>

正解手順:▲9五歩△同歩▲9二歩△同香▲9三歩△同香▲9四歩△同香▲8六桂(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑫(成功図)

端攻めで一番効果的な駒は桂馬です。

9四の地点まで守りの香車をおびき寄せてからの▲8六桂が端攻めの基本手筋です。次の▲9四桂が、香車を取りながらの王手で非常に厳しい狙いとなります。分かっていても後手には適当な受けの手段がありません。

なお、6六の角が9三の地点に利いていないと、▲9二歩や▲9三歩に対して△同玉と頑張ることができます。後手は怖い形ですが、当面の駒損や囲いの崩壊は避けられます。

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端攻め②

<問題13>
片美濃囲いの崩し方⑬

<ヒント>
「桂先の銀」の受けの手筋に要注意です。

 

<答え>

正解手順:▲9五歩△同歩▲9三歩△同香▲8六桂△8五銀▲7七桂△8六銀▲同歩(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑬(成功図)

前問と盤面は全く同じですが、互いの持ち駒が違います。先手は歩の枚数が1枚少なく、後手は持ち駒の銀を守りに使えます。前問よりも攻めの条件が悪いので、先手の攻め方に工夫が求められます。

端歩を突き捨てた後、▲9二歩と叩くと歩の枚数が足りなくなるので、▲9三歩と垂らして歩を節約するのが最初のポイントです。

次に、▲9四歩と叩く前に、▲8六桂(途中図1)を先に打つのが急所です。

片美濃囲いの崩し方⑬(途中図1)

後手は△8五銀の「桂先の銀」で受けますが、▲7七桂(途中図2)と自陣の桂馬を攻めに活用するのが狙いの一手です。

片美濃囲いの崩し方⑬(途中図2)

銀が逃げると▲9四歩が厳しいので、△8六銀と桂馬を食いちぎるのが最善の受けです。

成功図では、銀桂交換の駒得が一つの成果です。さらに、次の▲8五桂が厳しい狙いとして残っています。

手順中の▲8六桂の前に▲9四歩の叩きを入れていると、成功図まで進んだときに▲8五桂が香車に当たらないので攻めが甘くなります。

本問のように、桂馬1枚と歩2枚があれば、片美濃囲い(美濃囲い、高美濃囲い)への端攻めは成立する場合が多いです。

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端攻め③

<問題14>
片美濃囲いの崩し方⑭

<ヒント>
7一からの逃走ルートがふさがれていると、逆側からの攻めが非常に速くなります。

 

<答え>

正解手順:▲9五歩△同歩▲9三歩(正解図)

片美濃囲いの崩し方⑭(正解図)

端攻めの基本的な手筋としては前問と同じで、端歩を突き捨ててから▲9三歩と垂らします。注目して欲しいのは、正解図の▲9三歩が詰めろになっていることです。

後手が放置すると、▲9四桂△9三玉▲8二銀△9四玉▲9五香△同玉▲8六角成△8四玉▲8五金(詰め上がり図)までの詰みがあります。

片美濃囲いの崩し方⑭(詰め上がり図)

正解図の▲9三歩に対して、△同香▲9四歩△同香▲8六桂(成功図)と進んだ局面も、次に▲9四桂からの詰めろになっています。こうなると端攻めが成功しています。

片美濃囲いの崩し方⑭(成功図)

このように、片美濃囲い(美濃囲い、高美濃囲い)に対する端攻めは、非常にスピード感があります。特に、玉が7一に逃げられない場合は、いきなり詰めろがかかることがあります。

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端攻め④

<問題15>
片美濃囲いの崩し方⑮

<ヒント>
持ち駒に桂馬はありませんが、自陣の桂馬を活用できます。

 

<答え>

正解手順:▲9四歩△同歩▲9三歩△同香▲8五桂(正解図)

片美濃囲いの崩し方⑮(正解図)

角と桂馬で9三の地点を狙います。正解図では、次に▲9三桂成△同桂▲9四香の攻めがあり、端攻めが成立しています。すぐに端が破れる形ではありませんが、一定の成果を上げています。

正解図から後手が端を放置した場合の一例として、▲9三桂成△同桂▲9四香△9二歩▲9九香△8一桂(変化図1)という展開が考えられます。変化図1では、いつでも桂馬を手に入れられますし、持ち駒が入れば▲9三香成△同歩▲同香成△同桂▲9四桂などの攻めが厳しくなります。

片美濃囲いの崩し方⑮(変化図1)

後手としては、正解図から△8四歩▲同角△8三銀▲6六角△8四歩▲9三桂成△同桂(変化図2)のような受けを選ぶことも考えられます。金銀の連結がなくなって陣形はかなり乱れますが、△8四歩→△8三銀が受けの手筋で、守りの銀を端の応援に行かせることができます。

片美濃囲いの崩し方⑮(変化図2)

これまでの問題では、持ち駒の桂馬が端攻めの鍵となっていました。しかし、持ち駒に桂馬がない場合でも、端歩を突き越していれば、自陣の桂馬を活用した端攻めが可能です。端歩を突き越していると、最後の▲8五桂に対して△9四香の受け方ができないのがポイントです。

ちなみに、先手の持ち駒に歩がない場合でも、問題図から単に▲8五桂と跳ねて、次に▲9三桂成を狙う攻め筋は有力です。特に、後手が歩切れの場合は受けづらい攻め方です。

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玉頭攻め①

<問題16>
片美濃囲いの崩し方⑯

<ヒント>
「敵の打ちたい所へ打て」の格言通りの攻め方です。

 

<答え>

正解手順:▲8四歩△同歩▲8三歩△同銀▲8四銀△同銀▲8三歩△同玉▲8四飛(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑯(成功図)

問題図で、単純に▲8四歩△同歩▲同銀と銀を進出させると、△8三歩(失敗図)と受けられて攻めが失敗します。

片美濃囲いの崩し方⑯(失敗図)

「敵の打ちたい所へ打て」で、▲8四歩△同歩に▲8三歩(途中図1)と叩くのが急所の一手です。以下、△同銀▲8四銀と進むと、叩きの歩の効果で銀交換できる形になります。

片美濃囲いの崩し方⑯(途中図1)

途中図1から△8三同銀▲8四銀△同銀(途中図2)の局面で、再度の▲8三歩の叩きが強烈です。以下、△同玉▲8四飛(成功図)で8筋が突破できる形で、先手の攻めは大成功です。

片美濃囲いの崩し方⑯(途中図2)

二度目の▲8三歩を打たずに、途中図2で単に▲同飛と銀を取りかえすと、以下△8三歩と受けられます。攻めの銀と守りの銀を交換しているので、一定の成果は上げていますが、8筋を突破できる正解手順と比べるとはっきりと劣ります。

ちなみに、この問題のポイントは「8四の地点で勝負する」ことです。問題図で、先手の攻め駒(飛車、角、銀)の利きが集まっているのが8四の地点です。二度の▲8三歩の叩きによって、相手の駒を8三までおびき寄せ、8四の地点の数の優位性を生かしています。

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玉頭攻め②

<問題17>
片美濃囲いの崩し方⑰

<ヒント>
持ち駒の角を使って単純な数の攻めを狙います。

 

<答え>

正解:▲5六角(正解図)

片美濃囲いの崩し方⑰(正解図)

▲5六角の狙いは、次の▲8四歩△同歩▲同銀(成功図)の玉頭攻めです。相振り飛車でよく現れる美濃崩しの理想型の一つです。

片美濃囲いの崩し方⑰(成功図)

8三の地点の守備駒は玉と銀の二枚だけなので、飛車・角・銀の三枚で攻めれば受けがなくなります。成功図以下、△8三歩と受けても▲同銀成△同銀▲同角成(同飛成)で突破されてしまうので、受けになっていません。

数の攻めは単純ですが、単純であるがゆえに受けづらいことも多いです。持ち駒に角があると、筋違い角で玉頭の8三に利かせられるのがポイントです。

前問では、8四の地点に攻め駒の利きが集まっていましたが、本問では8三の地点に攻め駒の利きを集めています。8三はまさに玉頭なので、より直接的で厳しい攻め方です。

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玉頭攻め③

<問題18>
片美濃囲いの崩し方⑱

<ヒント>
手筋を駆使して5五の銀に狙いをつけてください。

 

<答え>

正解手順:▲8四歩△同歩▲8五歩△同歩▲同飛(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑱(成功図)

十字飛車をにらんで、▲8四歩△同歩▲8五歩の継ぎ歩が正解です。成功図では、王手銀取りが決まっています。

後手としては、▲8四歩か▲8五歩に手抜きをしたいのですが、▲8四歩を手抜くと次に▲8三歩成△同銀▲8四歩△7二銀(変化図)で玉頭に大きな拠点を作られます。

片美濃囲いの崩し方⑱(変化図)

▲8五歩を手抜いても、次に▲8四歩と取り込まれると同じ形になります。ただし、一手の違いがあるので、後手は▲8四歩に手抜くよりも▲8五歩の瞬間に手抜いた方が得です。

しかし、いずれの展開でも先手は大きなポイントを上げることができ、継ぎ歩の攻めは成立しています。

ちなみに、四段目に後手の浮き駒がある場合(△5四銀など)でも▲8四歩と合わせて十字飛車を狙う筋があります。この場合は、持ち駒に歩が1枚あれば成立します。

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コンビネーションの攻め①

<問題19>
片美濃囲いの崩し方⑲

<ヒント>
横からの攻めとコビン攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△9二玉▲6一飛成(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑲(成功図)

コビン攻めの基本手筋の▲7四桂から入ります。△7一玉なら▲4四角でも▲6一飛成でも詰みなので、△9二玉と逃げる一手です。そこで▲6一飛成(成功図)と金を取れば、次に▲8二金と▲7二龍があるので後手玉は受けなしとなります。

この問題では、横からの攻めとコビン攻めを組み合わせて、片美濃囲いを攻略しています。

 

ちなみに、問題図で単に▲6一飛成(変化図)も有力です。△同銀と取れば▲7四桂と打って、どこへ逃げても▲8二金までの詰みです。

片美濃囲いの崩し方⑲(変化図)

ただし、▲6一飛成を先にする場合、もし▲7四桂からの詰み筋を受けられると、龍取りが残ってしまうので注意が必要です。たとえば、変化図では△8四歩と逃げ道を空けるような手が気になります。

▲7四桂を先にすれば、成功図で▲8二金と▲7二龍の両方が残るので、後手に適当な受けはありません。

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コンビネーションの攻め②

<問題20>
片美濃囲いの崩し方⑳

<ヒント>
横からの攻めと端攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲9五歩△同歩▲6二香△7一金▲9二歩△同香▲9一銀△同玉▲7一飛成(成功図)

片美濃囲いの崩し方⑳(成功図)

横からの攻めと端攻めのコンビネーションで片美濃囲いを攻略します。

問題図では、▲6二香△同金▲7一銀という横からの攻め筋が見えます。しかし、▲6二香に△7一金(失敗図)とかわされた時に、攻めが息切れしてしまいます。

片美濃囲いの崩し方⑳(失敗図)

正解手順では、先に▲9五歩△同歩と突き捨てて、端に味を付けてから▲6二香を狙います。

同じように△7一金とかわされた時に、あらかじめ端歩を突き捨ててあると、▲9二歩△同香▲9一銀(途中図)の送りの手筋で攻め続けることができます。

片美濃囲いの崩し方⑳(途中図)

途中図から△同玉▲7一飛成(成功図)と金を取って攻めが成功します。以下、△8二銀と受けるしかありませんが、▲7二龍と銀を取りながら自然に攻めが続いて好調です。

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コンビネーションの攻め③

<問題21>
片美濃囲いの崩し方(21)

<ヒント>
前問と同じく、横からの攻めと端攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲6二香△7一金▲9四桂△同香▲9一銀△同玉▲7一飛成(成功図)

片美濃囲いの崩し方(21)(成功図)

前問と同じ発想の攻め筋ですが、本問の方がスピード感のある攻め方です。

▲6二香△7一金の時に、いきなり▲9四桂(途中図)と王手で跳ねる手が成立します。△同香と取りますが、9一の地点に空間ができるので、▲9一銀の送りの手筋が実現します。

片美濃囲いの崩し方(21)(途中図)

成功図では、次に▲8二金の詰めろと▲7二龍の銀取りの狙いがあります。

問題図の▲8六桂は、片美濃崩し(美濃崩し)で非常に効果的な桂馬です。もしも持ち駒に桂馬があれば▲7四桂打△同歩▲同桂の継ぎ桂の手筋がありますし、本問のような端攻めも狙っています。

通常は歩切れだと端攻めが成立しない場合が多いのですが、本問では横からの攻め(一段飛車の攻め)と組み合わせることによって、いきなりの▲9四桂の筋が実現しています。

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コンビネーションの攻め④

<問題22>
片美濃囲いの崩し方(22)

<ヒント>
コビン攻めと端攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲7四歩△同歩▲7三歩△同桂▲9三桂成△同香▲9四歩(成功図)

片美濃囲いの崩し方(22)(成功図)

コビン攻めと端攻めのコンビネーションで片美濃囲いを崩します。8五の桂馬がコビンと端の両方に利いているのがポイントです。

最初に▲7四歩△同歩▲7三歩(途中図)でコビンの方から攻めます。▲7四歩の突き捨てによって、6六角の利きが端まで通ることに注目です。

片美濃囲いの崩し方(22)(途中図)

途中図で△7三同桂と取れば、▲同桂成ではなく▲9三桂成で端の方に桂馬を成り込みます。桂馬の跳ね違いの手筋で、△7三同桂と跳ねて弱体化した端を狙います。以下、成功図まで進むと端が完全に破れていて、攻めが成功しています。

後手としては銀桂交換を甘んじて、途中図の▲7三歩に△同銀と取った方がいいかもしれません。駒損の上に陣形がかなり乱れますが、すぐに端を破られることはありません。

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コンビネーションの攻め⑤

<問題23>
片美濃囲いの崩し方(23)

<ヒント>
横からの攻めと玉頭攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解:▲8三香成(正解図)
その他の有力手:▲7五桂(変化図)

片美濃囲いの崩し方(23)(正解図)

横からの攻めと玉頭攻めのコンビネーションで片美濃囲いを崩します。▲2一飛が△6一金をにらんでいるので、△7二銀が動けないことがポイントです。

問題図でいきなり▲8三香成(正解図)が成立します。以下、△同玉に▲7五桂(途中図)が厳しい一手です。

片美濃囲いの崩し方(23)(途中図)

途中図で△7四玉なら▲8五銀で詰み、その他の逃げ方で△8二玉以外だと▲6一飛成が詰めろで受けがなくなります。したがって、途中図では△8二玉が最も粘りのある逃げ方です。

△8二玉以下は、▲8三銀△同銀▲同桂成△同玉▲6一飛成(成功図)の攻め方が有力です。成功図から△7二銀と受けても、▲8四銀や▲8四金の送りの手筋から攻め切れます。ただし、銀・桂馬・香車(あるいは、金・桂馬・香車)の3枚の駒を後手に渡すことになります。

片美濃囲いの崩し方(23)(成功図)

ちなみに、問題図で▲7五桂(変化図)と打っておくのも有力です。正解図の▲8三香成よりは一手遅い攻めですが、後手に渡す駒が少なくなるというメリットがあります。すなわち、持ち駒を渡しづらい場合に、▲8三香成よりもリスクが少ない攻め方です。

片美濃囲いの崩し方(23)(変化図)

変化図の▲7五桂に対して△5一歩の底歩なら、▲2二飛成とじっと引いておいて、次の▲8三香成を狙います。後手に歩以外の持ち駒がないと、受けが難しい形です。

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問題だけのまとめ(ヒント・解答・解説なし)

片美濃崩しの問題だけのまとめです。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、こちらをご覧ください。

 

片美濃囲いの崩し方①

 

片美濃囲いの崩し方②

 

片美濃囲いの崩し方③

 

片美濃囲いの崩し方④

 

片美濃囲いの崩し方⑤

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片美濃囲いの崩し方⑥

 

片美濃囲いの崩し方⑦

 

片美濃囲いの崩し方⑧

 

片美濃囲いの崩し方⑨

 

片美濃囲いの崩し方⑩

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片美濃囲いの崩し方⑪

 

片美濃囲いの崩し方⑫

 

片美濃囲いの崩し方⑬

 

片美濃囲いの崩し方⑭

 

片美濃囲いの崩し方⑮

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片美濃囲いの崩し方⑯

 

片美濃囲いの崩し方⑰

 

片美濃囲いの崩し方⑱

 

片美濃囲いの崩し方⑲

 

片美濃囲いの崩し方⑳

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片美濃囲いの崩し方(21)

 

片美濃囲いの崩し方(22)

 

片美濃囲いの崩し方(23)

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まとめ

美濃崩しの基礎となるのが、片美濃囲いの崩し方です。美濃囲いの崩し方や高美濃囲いの崩し方にも応用できます。

横、コビン、端、玉頭のそれぞれの攻め方にはパターンがあります。将棋が強くなるためには、攻め方のパターンをたくさん覚えることが大事です。

 

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美濃囲いをマスター! 美濃囲いの手順と25種類の崩し方(攻め方) https://shogijugem.com/minogakoi-4514 Sun, 19 Mar 2017 22:24:58 +0000 https://shogijugem.com/?p=4514 美濃囲いの「特徴」「手順」「崩し方(攻め方)」をまとめています。 将棋の初心者の方にとっては、まずは美濃囲いの基本的な組み方の手順が大事です。代表的な3種類の手順について解説しています。 美濃囲いを組めるようになったら、...

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美濃囲いの崩し方(4つのパターン)美濃囲い

美濃囲いの「特徴」「手順」「崩し方(攻め方)」をまとめています。

将棋の初心者の方にとっては、まずは美濃囲いの基本的な組み方の手順が大事です。代表的な3種類の手順について解説しています。

美濃囲いを組めるようになったら、次のステップは相手の美濃囲いを攻略することです。

この記事では、美濃囲いの崩し方(攻め方)の手筋を全25問の問題形式で解説しています。問題部分は、級位者から三段~四段ぐらいの有段者の方まで参考になると思います。

美濃囲いにかなり詳しくなれるので、ぜひ棋力アップに活用してください。

 

このページの目次

 

美濃囲いとは?(特徴、長所、短所)

美濃囲い

美濃囲いは、図のような金銀3枚の囲いです。

矢倉、穴熊と並んで、将棋で最も代表的な囲いです。
矢倉や穴熊よりも短い手数で簡単に作れる割にはしっかりした囲いです。

四間飛車、三間飛車など、振り飛車の戦法との相性が非常に良いです。
ただし、5八に飛車がある中飛車の場合は、5八の金が1枚少ない片美濃囲いになります。

相振り飛車でもよく使われる囲いです。
振り飛車党は、美濃囲いだけ覚えておけば十分に戦えます。

手数があまりかからないので、急戦に対応しやすいです。

また、発展性に優れた囲いで、持久戦にも強みがあります。
美濃囲いから、高美濃囲いや銀冠に発展させることができます。

このように、急戦にも強く、持久戦にも強いので、
振り飛車は美濃囲いだけでも十分に戦うことができます。

<美濃囲いの長所>
手数がかからない。(5~6手)
横からの攻めに強い。
飛車の攻めに強い。
振り飛車との相性が良い。

<美濃囲いの短所>
上部(玉頭、端、コビン)からの攻めに弱い。
角と桂馬の攻めに弱い。
王手がかかるとすぐに詰まされやすい。

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美濃囲いの手順

美濃囲いの組み方の手順は、だいたい3パターンあります。

1つ目の手順が最も基本的です。最初はこの手順だけ覚えておけば十分です。
2つ目の手順も実戦でよく現れます。
3つ目の手順はやや特殊で、藤井システムという戦法で使われます。

 

美濃囲いの組み方の手順(その1)

美濃囲いの最も基本的な手順です。次の4ステップで美濃囲いを組めます。

①飛車を左側に移動させる。
②玉を4八→3八→2八のルートで2八まで移動させる。
③銀を3八に真っ直ぐ上がる。
④左の金を5八に上がる。

②~④の手順を符号でまとめると、
▲4八玉→▲3八玉→▲2八玉→▲3八銀→▲5八金左(→▲1六歩)
の5手(6手)で完成することが分かります。

 

①~④の手順を一つずつ図で見ていくと、次のようになります。

 

①飛車を左側に移動させる。(四間飛車の場合は▲6八飛)

美濃囲いの手順(1-1)
上図は、初手から▲7六歩→▲6六歩で角道を止めているノーマル四間飛車の基本図です。
三間飛車の場合は▲7八飛とします。

 

②玉を4八→3八→2八のルートで2八まで移動させる。(▲4八玉→▲3八玉→▲2八玉)

美濃囲いの手順(1-2)

 

③銀を3八に真っ直ぐ上がる。(▲3八銀)

美濃囲いの手順(1-3)
上図で金銀2枚の片美濃囲いまでは完成です。

 

④左の金を5八に上がる。(▲5八金左)

美濃囲いの手順(1-4)
上図で美濃囲いは完成です。さらに、端歩(▲1六歩)を突くと玉が広くなります。

 

美濃囲い

<手順その1の利点>
▲2八玉の局面から穴熊囲いも選べる。
途中で角を自陣に打ち込まれるスキがない。

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美濃囲いの組み方の手順(その2)

2つ目の手順では、▲3八銀のタイミングが早くなります。
銀を上がってから、ジグザグに玉を移動させます。

①飛車を左側に移動させる。(四間飛車なら▲6八飛)
②玉を4八まで移動させる。(▲4八玉)
③銀を3八に真っ直ぐ上がって、先に片美濃囲いの骨格を作る。(▲3八銀)
④玉を3九→2八のジグザグのルートで入城させる。(▲3九玉→▲2八玉)
⑤左の金を5八に上がる。(▲5八金左)

②~⑤の手順を符号でまとめると、
▲4八玉→▲3八銀→▲3九玉→▲2八玉→▲5八金左(→▲1六歩)
となります。

 

①~⑤の手順を一つずつ図で見ていくと、次のようになります。

 

①飛車を左側に移動させる。(四間飛車の場合は▲6八飛)

美濃囲いの手順(2-1)
上図は、初手から▲7六歩→▲6六歩で角道を止めているノーマル四間飛車の基本図です。
三間飛車の場合は▲7八飛とします。

 

②玉を4八まで移動させる。(▲4八玉)

美濃囲いの手順(2-2)
ここまでは、「手順その1」と全く同じです。

 

③銀を3八に真っ直ぐ上がって、先に片美濃囲いの骨格を作る。(▲3八銀)

美濃囲いの手順(2-3)
ここが「手順その1」と違います。

 

④玉を3九→2八のジグザグのルートで入城させる。(▲3九玉→▲2八玉)

美濃囲いの手順(2-4)
上図で金銀2枚の片美濃囲いまでは完成です。
ここでは、「手順その1」と合流しています。

 

⑤左の金を5八に上がる。(▲5八金左)

美濃囲いの手順(2-5)
上図で美濃囲いは完成です。さらに、端歩(▲1六歩)を突くと玉が広くなります。

 

美濃囲い

<手順その2の利点>
▲3九玉型のままでも戦える。

<手順その2の欠点>
▲3八銀と上がった瞬間に、△2八角の打ち込みのスキができる。
▲3八銀を早めに上がるので、穴熊囲いを選べなくなる。

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美濃囲いの組み方の手順(その3)

3つ目の手順は、藤井システムという戦法で現れます。
しばらくは居玉のままで、最後に玉が美濃囲いに入城します。

①飛車を左側に移動させる。(四間飛車なら▲6八飛)
②居飛車穴熊を牽制して、早めに端歩を突く。(▲1六歩)
③居玉のままで、先に美濃囲いの金銀の形を作る。(▲3八銀→▲5八金)
④玉を4八→3九→2八のルートで入城させる。(▲4八玉→▲3九玉→▲2八玉)

②~④の手順を符号でまとめると、
▲1六歩→▲3八銀→▲5八金→▲4八玉→▲3九玉→▲2八玉
となります。

 

①~⑤の手順を一つずつ図で見ていくと、次のようになります。

 

①飛車を左側に移動させる。(四間飛車の場合は▲6八飛)

美濃囲いの手順(3-1)
上図は、初手から▲7六歩→▲6六歩で角道を止めているノーマル四間飛車の基本図です。
三間飛車の場合は▲7八飛とします。

 

②居飛車穴熊を牽制して、早めに端歩を突く。(▲1六歩)

美濃囲いの手順(3-2)
「手順その1」「その2」とは違って、端歩をかなり早く突きます。
端攻めを見せて居飛車穴熊を牽制するのが、藤井システムのポイントです。

 

③居玉のままで、先に美濃囲いの金銀の形を作る。(▲3八銀→▲5八金)

美濃囲いの手順(3-3)
この時点で、美濃囲いの金銀の形は完成しています。
相手が穴熊の場合は、居玉のままで戦うこともあります。

 

④玉を4八→3九→2八のルートで入城させる。(▲4八玉→▲3九玉→▲2八玉)

美濃囲いの手順(3-4)
上図で美濃囲いは完成です。

 

美濃囲い

<手順その3の利点>
玉の移動を後回しにできる。(藤井システムの場合)

<手順その3の欠点>
しばらくは居玉のままなので、急戦を仕掛けられると弱い。
▲3八銀を早めに上がるので、△2八角と打たれるスキができる。

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美濃囲いの崩し方(攻め方)のポイント

美濃囲いの崩し方(4つのパターン)

美濃囲いの崩し方は、攻めるエリアごとに、次のような4つのパターンがあります。

・横からの攻め(上図の水色のエリア)
・コビン攻め(
・端攻め(オレンジ
・玉頭攻め(黄緑

これらの4パターンで分類すると、美濃囲いの崩し方を手筋として覚えやすくなります。

また、いくつかのパターンを組み合わせた攻め方もあります。基本の4パターンをしっかり押さえておくと、コンビネーションの攻めを実戦で発見しやすくなります。

横からの攻め

 

美濃囲いの崩し方①(カラー)

美濃囲いは、横からの攻めに対して強い囲いです。

横からの攻めでは、7一の地点が急所で、▲7一銀や▲7一角の王手を狙います。(上図)

しかし、7一の地点は△6一金が守っていて、その△6一金をさらに△5二金が守っているので、美濃囲いの横の守りは非常に堅いです。

そこで、守りによく働いている2枚の金を、どうにかして無力化する必要があります。

コビン攻め

美濃囲いの崩し方⑩(カラー)

コビンとは、玉の斜め前のマス目のことです(上図では7三)。7三の地点を攻めたり、角の斜めのラインを利用して攻めることを「コビン攻め」と言います。

美濃囲いはコビン攻めに対して非常に弱いです。

特に、角と桂馬のコンビネーションで攻められると、手付かずの美濃囲いが一瞬で詰んでしまうこともあります。(上図)

端攻め

美濃囲いの崩し方⑲(カラー)

端攻めに対する弱さも、美濃囲いの大きな弱点です。

美濃囲いは、横は金銀3枚でしっかりと守っているのですが、端は桂香の2枚だけしか守っていません。

枚数だけではなく、桂馬と香車は後ろに後戻りできない駒なので、うまく弱点を突くと美濃囲いの端は簡単に破れます。(上図)

玉頭攻め

美濃囲いの崩し方(23)(カラー)

美濃囲いは玉頭攻めにも弱いです。

玉頭の8三の地点を守っているのは、△7二銀の1枚だけなので、横に比べると守りがかなり手薄になっています。

特に上図のように、一段飛車で△6一金をにらんでいる場合は、△7二銀が動くと金を取られてしまうので、玉頭攻めが非常に厳しくなります。玉頭攻めに横からの攻めを絡めたコンビネーションの攻めと言えます。

このように、「横」「コビン」「端」「玉頭」の4つのうちで、いくつかの攻めを組み合わせるコンビネーションも非常に効果的です。

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横からの攻めの手筋(全9問)

美濃囲い(横からの攻め)

美濃囲いを、横からの攻めの手筋で攻略する問題です。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、問題だけをまとめた場所がありますので、そちらからご覧ください。

 

 

横からの攻めの手筋①

<問題1>

美濃囲いの崩し方①

<ヒント>
片美濃崩しと同じような攻め方が有効です。
△5二金に触らないで攻めることができます。

 

<答え>

正解手順:▲7一銀△9二玉▲6一飛成(成功図)

美濃囲いの崩し方①(成功図)

成功図以下、△6一同銀は▲8二金までの詰みです。初手の▲7一銀に対して△同金は、以下▲同角成△9二玉▲8二金までの詰みとなります。

一段飛車(▲2一飛)と角のライン(▲4四角)で遠くから7一の地点を攻めるパターンです。この攻め筋に対しては、5二の金が守りに役に立っていません。5二の金がない片美濃囲いに対しても同じ攻め筋が使えます。

また、△9四歩と端歩を突いていない美濃囲いの玉の狭さがよく分かります。もし端歩を突いてあれば、△9三玉と逃げることができます。

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横からの攻めの手筋②

<問題2>

美濃囲いの崩し方②

<ヒント>
歩の使い方がポイントです。
△5二金を無力化できれば、片美濃崩しの手筋が使えます。

 

<答え>

正解手順:▲4三歩△同金▲6二銀(成功図)

美濃囲いの崩し方②(成功図)

初手は▲4三歩の「垂らしの歩」が正解です。次の▲4二歩成が厳しいので△同金と取りますが、成功図の▲6二銀が片美濃崩しの有名な手筋となります。

▲6二銀は一見タダですが、△同金と取ると、以下▲7一角△9二玉▲6二角成(成功図2)で後手陣は完全に崩壊します。

美濃囲いの崩し方②(成功図2)

この問題のポイントは、垂らしの歩(▲4三歩)による5二の金の無力化です。美濃囲いの外側の守りの金(△5二金)が1枚少なくなると片美濃囲いになり、片美濃崩しの手筋が使えるようになります。片美濃崩しの手筋が使えるように、△5二金を無力化するのが美濃崩しのセオリーです。

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横からの攻めの手筋③

<問題3>

美濃囲いの崩し方③

<ヒント>
4四の角取りになっていますが、角を逃げる手は甘いです。
ここでは思い切った寄せがあります。

 

<答え>

正解手順:▲5三角成△同金▲6二銀(正解図)

美濃囲いの崩し方③(正解図)

正解図以下、△6二同金なら▲7一銀△9二玉▲6二銀成(成功図)で攻めが成功です。

美濃囲いの崩し方③(成功図)

本問のポイントは、前問と同じく5二の金の無力化です。問題図から▲5三角成△同金(途中図)と角を切った局面で、5二の金が上ずって受けに働かなくなっています。こうなると片美濃崩しと同じで、▲6二銀から手筋の寄せが使えます。

美濃囲いの崩し方③(途中図)

ただし、正解手順の攻めは「角銀」の2枚を渡すので、実戦では自玉の安全度にも気をつける必要があります。

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横からの攻めの手筋④

<問題4>

美濃囲いの崩し方④

<ヒント>
後手の持ち駒に歩があります。歩を使った受けには要注意です。

 

<答え>

正解手順:▲5三歩△6二金寄▲5一銀△5三金▲6二銀不成(成功図)

美濃囲いの崩し方④(成功図)

初手▲5三歩が正解です。①△同金なら守りの金が上ずるので、▲6二銀△同金▲7一角の片美濃崩しの手筋が使えます。▲5三歩に対して、②△5一金引なら▲5二銀が厳しい攻めとなります。

▲5三歩に対して、正解手順の③△6二金寄と抵抗する受けがありますが、そこで▲5一銀(途中図)が好手です。次に▲6二銀不成が厳しいので△5三金と逃げますが、そこで▲6二銀不成(成功図)と追撃すれば、片美濃崩しの形になって攻めが成功します。

美濃囲いの崩し方④(途中図)

なお、途中図で△同金▲同龍△6一金の受けなら▲6二金が好手で、以下△5一金と龍を取ると▲7一角△9二玉▲7二金で必死がかかります。

ちなみに、初手▲4四角も急所のラインですが、この場合は△5三歩あるいは△5一歩(参考図)の底歩で受けられます。参考図からは▲5四歩と垂らすような手が考えられますが、正解手順と比べて攻めが遅れます。なお後手が歩切れなら、初手▲4四角として、次に▲7一銀を狙うのも有力です。

美濃囲いの崩し方④(参考図)

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横からの攻めの手筋⑤

<問題5>

美濃囲いの崩し方⑤

<ヒント>
金底の歩に対しては、ある駒を使って金を攻めるのが急所です。

 

<答え>

正解:▲5九香(正解図)

美濃囲いの崩し方⑤(正解図)

金底の歩(△5二金△5一歩の形)に対しては香車で攻めるのがセオリーです。

正解図の▲5九香を放置すると、次に▲5二香成△同歩(△同金でも)▲7一銀からの詰み筋があります。

▲5九香に対して△6二金寄と逃げても、▲5一香成で攻めが成功です。以下、△7一金と逃げると▲5二成香(変化図)が好手です。△5二同金と取れば▲7一角成からの詰みです。

美濃囲いの崩し方⑤(変化図)

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横からの攻めの手筋⑥

<問題6>

美濃囲いの崩し方⑥

<ヒント>
確実な攻めを目指します。後手の応手によっては一気の寄せもあります。

 

<答え>

正解手順:▲4三歩△同金▲6三香△7一金▲6二香成(成功図)

美濃囲いの崩し方⑥(成功図)

▲4三歩の「と金」作りが正解です。▲4三歩に対して、「と金」作りを受けるなら①△同金、②△5一金寄のどちらかです。あるいは、③手抜き、も考えられます。

 

①△同金なら5二の金が無力化するので、あとは片美濃崩しと同じです。▲6三香(途中図)からの手筋の攻めが使えます。

美濃囲いの崩し方⑥(途中図)

途中図の▲6三香を△同銀なら▲6一龍で金を取れるので、△7一金とかわしますが、成功図の▲6二香成が軽妙手です。

▲6二香成以下、△同金▲7一銀△9二玉▲6二銀成で一気の寄せが決まります。

なお▲6二香成のところで、▲6二銀の攻めも有力ですし、▲7一同龍△同玉▲6二金△8二玉▲7一銀△9二玉▲7二金の攻め筋も有力です。ただし、これらの攻めは銀や飛車を渡すので、駒を渡したときの自玉の安全度を考える必要があります。

 

②△5一金寄は「と金」作りを受けた手ですが、それでも▲4二歩成(変化図)とする手があります。△同金寄は▲5一龍なので△同金上ですが、▲7一銀△9二玉の王手を決めてから▲4二龍と金を取る手が詰めろになります。この手順でも後手陣は崩壊します。

美濃囲いの崩し方⑥(変化図)

③手抜きは一番有力ですが、次の▲4二歩成からの「と金」攻めが確実な攻めとなります。

先手の攻めに対して、①や②のように受けると逆に攻めが速くなってしまいます。「何も受けずに手抜きが最善」という局面は意外と多いです。

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横からの攻めの手筋⑦

<問題7>

美濃囲いの崩し方⑦

<ヒント>
一気の寄せがあります。駒損を気にしないでください。

 

<答え>

正解:▲5二角成(正解図)

美濃囲いの崩し方⑦(正解図)

正解図以下、△同金と取れば▲7一銀△9二玉▲8二金(詰め上がり図)で詰みです。

美濃囲いの崩し方⑦(詰め上がり図)

詰め上がり図を見ると分かるように、5二の金を取って△同金となった形は、守りの金が2枚とも無力化しています。

美濃囲いに対する▲3四角(馬)のラインは急所です。△5二金と△6一金の両方をにらんでいるからです。

△5三歩がない場合(あるいは打てない場合)は、▲3四角のラインだけではなく▲4四角のラインも急所になります。状況に応じて角のラインを使い分けることが大事です。

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横からの攻めの手筋⑧

<問題8>

美濃囲いの崩し方⑧

<ヒント>
香車の上手い使い方があります。

 

<答え>

正解:▲6三香(正解図)

美濃囲いの崩し方⑧(正解図)

初手▲6三香が正解です。7二の銀と5二の金の両方が利いている焦点の香車で、△6三同銀なら▲6一龍で金を取れますし、△6三同金なら▲6一角成△同銀▲同龍の2枚換えで攻めが成功します。

正解図の▲6三香に対して、△5一金寄と頑張る手はありますが、それでも以下▲5二角成△同金▲6二金(変化図)で美濃囲いは崩壊します。

美濃囲いの崩し方⑧(変化図)

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横からの攻めの手筋⑨

<問題9>

美濃囲いの崩し方⑨

<ヒント>
△5二金を攻めるのが美濃崩しのセオリーの一つです。

 

<答え>

正解手順:▲4四桂△6二金寄▲5二歩(正解図)
その他の候補手:▲4三歩

美濃囲いの崩し方⑨(正解図)

前問のように、5二の金を攻めるのが美濃崩しの急所の一つです。5二の金を取れると、△同金としたときに6一の金まで上ずるので、囲いをかなり弱体化させることができます。

桂馬は▲4四桂の筋で5二の金を攻めやすい駒です。△6二金寄と逃げても、▲5二歩(正解図)と垂らして「と金」攻めを狙う手があります。次に▲5一歩成から守りの金を取れれば、攻めが成功します。

本問のように、桂馬は横からの攻めにも使えます。ただし、桂馬はコビン攻めや端攻めに使うと非常に強力な駒なので、状況に応じて最も効果的な使い方を考えたいです。

 

(その他の候補手)

問題図で▲4三歩の垂れ歩も有力です。△同金なら▲5五桂△5四金▲6三桂成(または▲6三桂不成)(参考図)という攻め筋があります。参考図で△6三同銀なら▲6一龍なので攻めは成功しています。

美濃囲いの崩し方⑨(参考図)

ただし、▲4三歩に手抜きをされた時に、▲4四桂よりも攻めが一手遅れるので、▲4四桂の方を正解手としています。

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コビン攻めの手筋(全9問)

美濃囲い(コビン攻め)

美濃囲いを、コビン攻めの手筋で攻略する問題です。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、問題だけをまとめた場所がありますので、そちらからご覧ください。

 

コビン攻めの手筋①

<問題10>

美濃囲いの崩し方⑩

<ヒント>
3手詰です。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△9二玉▲8二金(詰め上がり図)

美濃囲いの崩し方⑩(詰め上がり図)

角と桂馬のコンビネーションの手筋で、即詰みがあります。

問題図から▲7四桂(途中図)がコビン攻めの有名な手筋です。角の間接的な利きが玉をにらんでいるので、△7四同歩とは取れません(玉を角で取られてしまいます)。

美濃囲いの崩し方⑩(途中図)

途中図の▲7四桂は王手をかけながら、6二の逃げ道をふさいでいます。△9二玉と逃げても△7一玉と逃げても、以下▲8二金(詰め上がり図)までの詰みとなります。

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コビン攻めの手筋②

<問題11>

美濃囲いの崩し方⑪

<ヒント>
手順前後に注意してください。

 

<答え>

正解手順:▲6一龍△同銀▲7四桂(成功図)

美濃囲いの崩し方⑪(成功図)

前問と異なり持ち駒に金がありませんが、6一の金が龍で取れる質駒になっています。

正解は問題図ですぐに▲6一龍と金を取る手で、△同銀なら▲7四桂(成功図)と桂馬を打って詰みます。以下、玉をどこへ逃げても▲8二金(詰め上がり図)までの即詰みです。

美濃囲いの崩し方⑪(詰め上がり図)

問題図で先に▲7四桂を打ってしまうと、△9二玉なら▲6一龍で良いのですが、△7一玉と逃げられると、以下▲6一龍△同玉(失敗図)で後手玉に詰みがなく失敗です。

美濃囲いの崩し方⑪(失敗図)

失敗図では、美濃囲いの5二金が受けによく働いています。片美濃囲いとの大きな違いです。

本問のように、先に▲7四桂か▲6一龍かの手順前後で、結果が大きく変わることがあるのが将棋の面白いところです。

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コビン攻めの手筋③

<問題12>

美濃囲いの崩し方⑫

<ヒント>
後手の持ち駒がないことに着目します。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△7一玉▲4四角(正解図)

美濃囲いの崩し方⑫(正解図)

まずは、角と桂馬のコンビネーションで▲7四桂と王手をします。先手の持ち駒が飛車なので△7一玉と逃げますが、以下▲4四角(正解図)と角を再活用する手で即詰みがあります。

正解図の▲4四角に対して、後手は持ち駒がないので△6二金寄か△6二金上と受けるしかありません。どちらでも、以下▲同角成△同金▲5一飛△6一金▲8二金(詰め上がり図)までの詰みとなります。

美濃囲いの崩し方⑫(詰め上がり図)

ただし、後手が歩を持っていると、正解図の▲4四角に対して△5三歩の合駒で受かるので注意が必要です。

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コビン攻めの手筋④

<問題13>

美濃囲いの崩し方⑬

<ヒント>
即詰みがあります。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂△9二玉▲8二金△9三玉▲6六角△8四歩▲8五桂(詰め上がり図)

美濃囲いの崩し方⑬(詰め上がり図)

問題図では、端に玉の逃げ道がありますが、この形は後手玉に即詰みがあります。

初手は▲7四桂の王手です。後手の応手として、①△7一玉、②△9三玉、③△9二玉の3通りの逃げ方があります。

①△7一玉なら、以下▲8二金までの3手詰です。

②△9三玉なら▲8五桂(変化図)と跳ねる手があり、以下△8四玉なら▲7五金、△9二玉なら▲8二金までの5手詰です。

美濃囲いの崩し方⑬(変化図)

③△9二玉が正解手順で、最長の詰め手数となります。以下、▲8二金△9三玉(途中図)のときに、再び角と桂馬のコンビネーションの手筋があります。すなわち、途中図から▲6六角△8四歩▲8五桂(詰め上がり図)までの7手詰です。

美濃囲いの崩し方⑬(途中図)

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コビン攻めの手筋⑤

<問題14>

美濃囲いの崩し方⑭

<ヒント>
難問。横からの攻めとコビン攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲6四角△6三金▲6二歩△7一金▲7四桂△同金▲5三角成(正解図)

美濃囲いの崩し方⑭(正解図)

初手▲6四角で、次の▲7四桂△9二玉▲6一龍を狙います。▲6四角に対して△6三金と上がるのが手筋の受けですが、そこで▲6二歩(途中図)が急所の一手です。

美濃囲いの崩し方⑭(途中図)

途中図の▲6二歩に対して、①△同金引なら▲7四桂△9二玉▲6一龍、②△同金上なら▲7一銀があります。そこで③△7一金とかわしますが、以下▲7四桂△同金▲5三角成(正解図)が上手い手順で攻めが成功しています。

正解図の▲5三角成は、次に▲7一龍△同玉▲6一歩成(変化図)からの詰みを狙っています。変化図以下、△6一同玉なら▲6二金までの詰み、△8二玉なら▲7一馬△9二玉▲8二金までの詰みです。

美濃囲いの崩し方⑭(変化図)

正解図は非常に受けづらく、片美濃崩しの有名な形となっています。横からの攻めとコビン攻めを組み合わせることで、片美濃崩しの形にすることが狙いの問題でした。

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コビン攻めの手筋⑥

<問題15>

美濃囲いの崩し方⑮

<ヒント>
長手数の即詰みがあります。

 

<答え>

正解手順:▲7四桂打△同歩▲同桂(正解図)

美濃囲いの崩し方⑮(正解図)

▲7四桂打△同歩▲同桂の「継ぎ桂」の手筋が正解です。

正解図から、①△7一玉なら▲8二金で詰み、②△7三玉なら▲8二角△7四玉▲7五金で詰み、③△9三玉なら▲8二角△9二玉▲9三香△同桂▲9一角成△同玉▲8二金で詰み、④△9二玉と逃げるのが最長手数の詰みになります。

正解図以下、△9二玉▲9三香△同玉▲8二角△9二玉▲9一角成△9三玉▲8二馬△8四玉▲7五金(詰め上がり図)で、問題図から数えると13手詰になります。

美濃囲いの崩し方⑮(詰め上がり図)

▲7四桂打△同歩▲同桂の継ぎ桂は、美濃崩しの代表的な手筋の一つです。

美濃囲いは玉にヒモがついていない(玉のある8二のマス目に味方の駒の利きがない)ので、一度王手をかけられると8二の地点を制圧されて、連続して王手をかけられやすくなります。そのまま即詰みになる場合もあり、美濃囲いは王手に弱い囲いと言えます。

「継ぎ桂」「角と桂馬のコンビネーション」のコビン攻めの手筋は、王手に弱い美濃囲いの弱点を突いた攻め方です。

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コビン攻めの手筋⑦

<問題16>

美濃囲いの崩し方⑯

<ヒント>
前問の応用です。たった一手で後手玉に詰めろがかかります。

 

<答え>

正解:▲8六桂(正解図)(または▲6六桂)

美濃囲いの崩し方⑯(正解図)

盤面に何の手がかりもありませんが、▲8六桂がいきなり詰めろになります。▲6六桂でも同じく詰めろになります。

手順は前問とほぼ同じで、正解図から▲7四桂打△同歩▲同桂△9二玉▲9三銀打△同玉▲8二角△9二玉▲9一角成△9三玉▲8二馬△8四玉▲7五金(詰め上がり図)までです。

美濃囲いの崩し方⑯(詰め上がり図)

手順中の▲7四桂打が継ぎ桂と呼ばれる手筋で、△同歩▲同桂となってみると、後手玉が非常に狭いことが分かります。▲同桂に対して△7三玉と上部に逃げても、以下▲8二角△7四玉▲7五金で捕まってしまいます。

他の変化手順については、前問の解説を参考にしてください。持ち駒が香車から銀に変わっているだけで、詰み手順はほぼ同じです。

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コビン攻めの手筋⑧

<問題17>

美濃囲いの崩し方⑰

<ヒント>
横からの攻めや端攻めなども有力ですが、コビン攻めを考えてみてください。

 

<答え>

正解手順:▲7四歩△同歩▲7三歩△同桂▲8六桂(成功図)
その他の候補手:▲4四桂、▲9五歩

美濃囲いの崩し方⑰(成功図)

▲7四歩△同歩▲7三歩(途中図)のコビン攻めがあります。途中図の▲7三歩は「焦点の歩」の手筋で、①△同銀は▲6一龍があるので、②△同桂③△同玉のどちらかになります。

美濃囲いの崩し方⑰(途中図)

途中図で②△同桂の場合は、▲8六桂(成功図)の「控えの桂」が厳しく、次の▲7四桂の王手を防ぐ手段がありません。

途中図で③△同玉の場合は、▲8五桂(変化図)が厳しい一手です。

美濃囲いの崩し方⑰(変化図)

変化図から、(A)△8二玉なら▲8六桂や▲7三歩が厳しく、(B)△8四玉と上に逃げると▲6一龍が次の▲7五銀△同歩▲7四金△同玉▲7二龍以下の詰めろで、△6一同銀なら▲8六銀で必死となります。(C)△6二玉なら▲6六桂で次の▲7四桂が受かりません。

結局、途中図から△7三同玉の変化は▲8五桂で攻め切れます。

 

美濃囲いに対するコビン攻めのパターンとしては、前問までで紹介した「角と桂馬のコンビネーション」「桂馬2枚を使った継ぎ桂」の2種類が最も代表的です。

しかし、本問のように7筋に歩が利く場合は、7三の地点を攻めるのも有力です。途中図の「焦点の歩(▲7三歩)」を、どの駒でも取りづらいのが美濃囲いの泣き所です。

 

(その他の候補手)

問題図では、▲4四桂△6二金寄▲5二歩と横から攻めるのも有力です。また▲9五歩△同歩▲9三歩△同香▲9四歩△同香▲8六桂などの端攻めも厳しいです。

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コビン攻めの手筋⑨

<問題18>

美濃囲いの崩し方⑱

<ヒント>
△7四歩型の美濃囲いの弱点を突きます。

 

<答え>

正解手順:▲8六桂△6三金▲4一角(正解図)

美濃囲いの崩し方⑱(正解図)

初手▲8六桂で、次の▲7四桂を狙います。△6三金は自然な受けですが、正解図の▲4一角が厳しい一手となります。

▲4一角は、次の▲7四桂と▲6三角成△同銀▲6一龍の2つの筋を狙っていて、ぴったりした受けがありません。両方の筋を受けるために△7三玉と頑張っても、今度は▲7五歩△同歩▲7四香(変化図)の攻めがあります。

美濃囲いの崩し方⑱(変化図)

本問のように、△7四歩を突いた美濃囲いに対しては、▲8六桂(控えの桂)から▲7四桂を狙うのが急所になります。ただし、7三に玉の逃げ道があり、普通の美濃囲いと比べて玉が広いので要注意です。

たとえば、問題図から▲8六桂△6三金▲7四桂△同金▲6二香△同金▲7一角△7三玉(失敗図)のような攻め方だと、7三の地点に玉が逃げられるので失敗します。

美濃囲いの崩し方⑱(失敗図)

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端攻めの手筋(全4問)

美濃囲い(端攻め)

美濃囲いを、端攻めの手筋で攻略する問題です。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、問題だけをまとめた場所がありますので、そちらからご覧ください。

 

端攻めの手筋①

<問題19>

美濃囲いの崩し方⑲

<ヒント>
持ち駒の桂馬で王手を狙った端攻めです。

 

<答え>

正解:▲9五歩△同歩▲9二歩△同香▲9三歩△同香▲9四歩△同香▲8六桂(正解図)

美濃囲いの崩し方⑲(正解図)

桂馬と歩3枚を使った端攻めの基本手筋です。正解図の▲8六桂は、次に▲9四桂で香車を取りながら王手をするのが狙いです。

▲9四桂の王手が実現したときに、△9二玉や△9一玉と端に逃げるのは非常に危険な形です。△7一玉(成功図)の方がまだ安全ですが、美濃囲いの定位置である8二から玉を追い出すことができたので、端攻めとしては成功しています。

美濃囲いの崩し方⑲(成功図)

美濃囲いは端が弱点で、端攻めに一番適した駒は桂馬です。美濃囲いは王手に弱い囲いなので、▲8六桂→▲9四桂の王手の筋が非常に厳しくなるからです。

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端攻めの手筋②

<問題20>

美濃囲いの崩し方⑳

<ヒント>
横からの攻めと端攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲4三歩△同金▲9五歩△同歩▲6二香△7一金▲9二歩△同香▲9一角△同玉▲7一龍(成功図)

美濃囲いの崩し方⑳(成功図)

初手▲4三歩で「と金」攻めを狙います。次の▲4二歩成を嫌がり△4三同金(途中図)と取れば、守りの金1枚が受けに働かなくなります。こうなると、後手の囲いは片美濃囲いになるので、片美濃崩しの手筋を使うことができます。

美濃囲いの崩し方⑳(途中図)

途中図で、▲9五歩△同歩の突き捨てを入れてからの▲6二香が片美濃崩しの手筋です。△6二同金なら▲7一角があるので△7一金ですが、以下▲9二歩△同歩▲9一角(途中図2)が端攻めを絡めた送りの手筋です。以下△9一同玉▲7一龍(成功図)となれば、美濃崩しが成功します。

美濃囲いの崩し方⑳(途中図2)

本問では、横からの攻めに、端攻めを絡めて美濃囲いを攻略しています。▲9一角の送りの手筋を使うために、9一の地点にスペースを作ることが端攻めの狙いでした。

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端攻めの手筋③

<問題21>

美濃囲いの崩し方(21)

<ヒント>
銀を使った端攻めです。後手の応手によっては、一気の寄せもあります。

 

<答え>

正解手順:▲9五歩△同歩▲9三歩△同香▲9四歩△同香▲8五銀(正解図)

美濃囲いの崩し方(21)(正解図)

7筋の位を取って▲7六銀と支える形は玉頭位取り戦法で現れます。この形では、7六の銀を使った端攻めの手筋があります。

問題図から端歩を突き捨てて▲9三歩(途中図)と垂らします。この▲9三歩に対して①△同香、②△同桂、③△同玉、④手抜き、の4通りの応手が考えられます。

このうち、②△同桂だと▲9四歩と打って桂馬を取れますし、④手抜きなら次の▲9五香が厳しい一手となります。いずれも端攻めが成立しています。

美濃囲いの崩し方(21)(途中図)

途中図で①△同香は正解手順です。以下▲9四歩△同歩▲8五銀(正解図)で、銀を使った端攻めが成立します。正解図で無理に香車を守るなら△9三玉しかありませんが、以下▲6一飛成△同銀▲7一角(変化図)が鋭い攻め方です。

変化図では△8二飛と合駒するしかありませんが、以下▲9四銀△同玉▲8二角成(あるいは、▲9四銀△9二玉▲9五香など)で後手玉は寄っています。

したがって、正解図で△9三玉は危険なので、香車を守ることはできません。

美濃囲いの崩し方(21)(変化図)

途中図で③△同玉だと、先ほども出てきた▲6一飛成△同銀▲7一角(変化図2)の筋があります。変化図2でも△8二飛と合駒するしかなく、以下▲9五香△9四歩▲同香△同玉▲8二角成の送りの手筋で飛車を取れれば大成功です。

このように、端攻めに対して△9三同玉と取る形は非常に危険です。

ただし、もし横からの攻め(▲6一飛成△同銀▲7一角の筋など)がなく、端攻めだけの場合は、▲9三歩に対して△同玉と頑張って駒損を避ける指し方も考えられます。

美濃囲いの崩し方(21)(変化図2)

前問や本問のように、横からの攻めと端攻めのコンビネーションは、非常に効果的なことが多いです。挟み撃ちの形になりますし、送りの手筋が使いやすくなります。

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端攻めの手筋④

<問題22>

美濃囲いの崩し方(22)

<ヒント>
コビン攻めと端攻めのコンビネーションです。

 

<答え>

正解手順:▲8六桂△6三金▲9四桂△同香▲9五歩△同香▲同香(成功図)

美濃囲いの崩し方(22)(成功図)

問題図では歩切れですが、それでも端攻めがあります。

初手は▲8六桂が正解です。この桂馬は▲7四桂のコビン攻めを狙っているので、△6三金と受けるのが自然です。この時に、いきなり▲9四桂と逆側に跳ねて、端に桂馬をタダ捨てする手があります。普通に△同香と取りますが、以下▲9五歩△同香▲同香(成功図)で端が破れています。

成功図で△9三歩と受けても、▲同香成△同桂▲9四桂(変化図)が厳しい一手となります。変化図で△7一玉や△7三玉なら▲9三角成、△9二玉なら▲6一飛成△同銀▲8二金までの詰み筋があります。

美濃囲いの崩し方(22)(変化図)

本問の一つ目のポイントは、歩切れでも端攻めが成立する場合があるということです。特に、いきなり▲9四桂と捨てる筋は見落としやすいので要注意です。

二つ目のポイントは、▲8六桂がコビン攻めと端攻めの両方をにらんだ好位置ということです。二つの狙いがある手は受けづらく、▲7四桂のコビン攻めを受けられても、▲9四桂の端攻めが残っているという仕組みです。

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玉頭攻めの手筋(全3問)

美濃囲い(玉頭攻め)

美濃囲いを、玉頭攻めの手筋で攻略する問題です。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、問題だけをまとめた場所がありますので、そちらからご覧ください。

 

玉頭攻めの手筋①

<問題23>

美濃囲いの崩し方(23)

<ヒント>
歩の手筋を上手く使って玉頭を攻めます。

 

<答え>

正解手順:▲8四歩△同歩▲8五歩△同歩▲8四歩(正解図)

美濃囲いの崩し方(23)(正解図)

8筋の位を取った形は、玉頭位取り戦法でよく現れます。玉頭位取り戦法では、美濃囲いの弱点である玉頭を攻めることができます。

問題図から、「継ぎ歩と垂れ歩の手筋」で玉頭攻めが成立します。手順は▲8四歩△同歩▲8五歩△同歩▲8四歩(正解図)です。

正解図では、次の▲8三銀の打ち込みが非常に厳しい狙いです。たとえば、▲8三銀△同銀▲同歩成△同玉▲6一飛成(変化図)のような筋が実現すると、後手玉に受けがなくなります。一段飛車が利いているので、7二の銀が動くと6一の金を取られてしまうのが後手陣の泣きどころです。

美濃囲いの崩し方(23)(変化図)

正解図で△6二金寄のような受けなら、▲8五銀で歩を補充しながら拠点を支えて好調です。

歩が3枚ある場合(本問では盤上の8五歩と持ち歩2枚)、常に継ぎ歩から垂れ歩の手筋があります。この手筋は応用範囲が広いので、覚えておくと役立ちます。

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玉頭攻めの手筋②

<問題24>

美濃囲いの崩し方(24)

<ヒント>
攻め駒が少ないので、すぐに後手陣を攻略することはできません。
しかし、香車と歩だけでも、後手陣の形を乱せる効果的な攻めがあります。

 

<答え>

正解手順:▲8四歩△同歩▲8五歩△同歩▲8四香(正解図)

美濃囲いの崩し方(24)(正解図)

問題図では、持ち駒に歩が1枚しかないので、前問のような「継ぎ歩から垂れ歩の手筋」は使えません。しかし、香車と歩1枚だけでも、相手からすると嫌味な攻め方があります。

正解は▲8四歩△同歩▲8五歩(途中図)の継ぎ歩で、以下△同歩なら▲8四香(正解図)と空いた空間に香車を打ちます。以下△8三歩の合駒は2歩で打てないので玉を逃げますが、▲8一香成と桂馬を取れば少し駒得ですし、後手陣を乱すことができます。

このような香車の使い方は、「歩の裏側に香車を打つ手筋」として知られています。歩の合駒ができないので、香車の攻めが厳しくなります。

美濃囲いの崩し方(24)(途中図)

なお、問題図で持ち駒の歩が2枚あれば、前問のように▲8四歩△同歩▲8五歩△同歩▲8四歩(参考図)として、玉頭に攻めの拠点を作っておく順も有力です。参考図では、次に▲8三香と打ち込む狙いがあります。

美濃囲いの崩し方(24)(参考図)

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玉頭攻めの手筋③

<問題25>

美濃囲いの崩し方(25)

<ヒント>
気付きにくい玉頭攻めがあります。

 

<答え>

正解手順:▲8四桂△同歩▲8三香△同玉▲6一龍△同銀▲7一角成(正解図)

美濃囲いの崩し方(25)(正解図)

問題図では、いきなり▲8四桂と歩頭の桂馬を打ち込む攻め筋があります。以下、△同歩▲8三香△同玉▲6一龍△同銀▲7一角成(正解図)が正解手順で、桂香飛の3枚を捨てる豪快な攻め方です。

正解図まで進むと、次の▲8二金△9三玉▲7二金△8三玉▲8二馬までの詰み筋や、▲6一馬と銀を取る手からの詰み筋などがあります。正解図で△6二飛(変化図)と自陣飛車を打って、▲8二金と▲6一馬の両方を受ける手がありそうですが、変化図から▲8四歩△同玉▲6二馬が飛車を取りながらの詰めろとなってしまいます。

美濃囲いの崩し方(25)(変化図)

問題図に戻って、▲8四歩△同歩▲8三香△同玉▲6一龍△同銀▲7一角成という正解手順によく似た攻め方も考えられます。こちらの手順の方が、桂馬を節約できるので一見良さそうですが、△6二飛(参考図)と頑張られると大変です。

美濃囲いの崩し方(25)(参考図)

ちなみに、問題図では▲5三香と横から攻める手や、▲7四歩△同歩▲8六桂とコビン攻めをする手もあります。

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問題だけのまとめ(ヒント・解答・解説なし)

美濃崩しの問題だけのまとめです。

ヒント・解答・解説がすぐに見える位置にあると気になる方は、こちらをご覧ください。

 

美濃囲いの崩し方①

 

美濃囲いの崩し方②

 

美濃囲いの崩し方③

 

美濃囲いの崩し方④

 

美濃囲いの崩し方⑤

 

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美濃囲いの崩し方⑥

 

美濃囲いの崩し方⑦

 

美濃囲いの崩し方⑧

 

美濃囲いの崩し方⑨

 

美濃囲いの崩し方⑩

 

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美濃囲いの崩し方⑪

 

美濃囲いの崩し方⑫

 

美濃囲いの崩し方⑬

 

美濃囲いの崩し方⑭

 

美濃囲いの崩し方⑮

 

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美濃囲いの崩し方⑯

 

美濃囲いの崩し方⑰

 

美濃囲いの崩し方⑱

 

美濃囲いの崩し方⑲

 

美濃囲いの崩し方⑳

 

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美濃囲いの崩し方(21)

 

美濃囲いの崩し方(22)

 

美濃囲いの崩し方(23)

 

美濃囲いの崩し方(24)

 

美濃囲いの崩し方(25)

 

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まとめ

美濃囲いの手順や崩し方にはパターンがあります。
パターンを覚えて、実戦で使ってみることを繰り返すのが上達の近道です。

 

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新しい囲いを創ってみる(美濃囲いからオリジナル四枚銀冠へ) https://shogijugem.com/kakoi-original-2861 Sat, 09 Jul 2016 03:40:36 +0000 https://shogijugem.com/?p=2861 囲いの創作と発展性がテーマの記事です。 オリジナルな高美濃囲いや銀冠などを考えます。 今まで、矢倉、美濃、穴熊、その他に分けて、 実戦でよく現れる名前のある囲いを中心に紹介してきました。 これらの形を覚えると実戦で非常に...

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囲いの創作と発展性がテーマの記事です。
オリジナルな高美濃囲いや銀冠などを考えます。

今まで、矢倉美濃穴熊その他に分けて、
実戦でよく現れる名前のある囲いを中心に紹介してきました。

これらの形を覚えると実戦で非常に役に立ちますが、
オリジナルな形を自分で創作してみるのも面白いです。

このページの目次

 

美濃囲いの弱点を補強するためのアイディア

美濃囲い

発想の原点は美濃囲いです。(上図)

実戦で美濃囲いを使っていると、
たまに「2九に金を打てたらなぁ・・・」と思うことがあります。

①一段金の好形
②3八銀との相性は抜群
③美濃囲いの弱点「玉にヒモがついてない」を解消

と、美濃囲いの2九に金を打ちたい理由はたくさんあります。

 

もともとの美濃囲いでも4九の金が、
①一段金の好形、②3八銀との相性は抜群
の2つの条件を満たしていますが、

③美濃囲いの弱点「玉にヒモがついてない」は、4九金型では解消できないです。
玉にヒモがついていない形で、一度王手をかけられると、
次々と連続で王手をされて一気に寄ってしまう場合があります。

 

しかし、美濃囲いの2九の地点には桂が居座っているので、
2九に守りの金を置くためのスペースはありません。

どうやったら、2九金のアイディアを生かせるでしょうか?

 

美濃囲いを銀冠まで発展させる

美濃囲いの特長の一つは発展性が優れていることです。

美濃囲い → 高美濃囲い → 銀冠

のルートは実戦で非常によく現れます。

美濃囲い

上図は、発展させる前の美濃囲いです。

ここから▲4六歩~▲3六歩~▲4七金~▲3七桂の4手で、
高美濃囲いに発展させることができます。(下図)

高美濃囲いは▲3七桂を跳ねるかどうかを選べます。

高美濃囲い

上図の高美濃囲いには、まだ発展性が残っています。

ここから▲2六歩~▲2七銀~▲3八金の3手で、
銀冠に発展させることができます。(下図)

銀冠も▲3七桂を跳ねるかどうかを選べます。

銀冠

 

さて、2九金のアイディアの話に戻ります。

高美濃囲いと銀冠では▲3七桂が可能です。
▲3七桂と跳ねれば、2九金のスペースが生まれます。

ただし、3八銀を動かしてしまうと2九金との相性の問題があるので、
高美濃囲いからの発展を考えたいところです。

 

高美濃囲いからのオリジナルな発展

高美濃囲い

3七に桂を跳ねれば、2九に金を移動できます。
高美濃囲いから▲3九金~▲2九金の2手をかけると、
下図のような囲いになります。

オリジナル高美濃囲い

このようにして作った囲いが「オリジナル高美濃囲い」です。

パッと見で、そんなに悪くなさそうな囲いです。
高美濃囲いから組み替えるのに2手余分にかけていますが、
高美濃囲いとの比較では一長一短です。

オリジナル高美濃囲いの長所
①玉にヒモがついている
②金の位置が戦場から遠く、当たりを避けている
③珍しい形なので崩し方の手筋が見えづらい

オリジナル高美濃囲いの短所
①5八と5九の地点に利きがない
②▲5九歩の底歩が打てない
③▲3九玉と逃げた時に玉の横が空く

 

ダイヤモンド美濃と、5八銀付きの高美濃囲い

2九金型の利点をもっと生かせるような発想はないでしょうか?

高美濃囲い+5八銀の四枚美濃について考えます。(下図)

高美濃囲い+5八銀

この囲いは同じ金銀4枚のダイヤモンド美濃と比べると、
横からの攻めに対して弱体化しています。

というのは、横に飛び出ている5八の銀が狙われて、
かえってお荷物の駒になる場合が多いからです。(下図)

5八銀が負担になる場合

金銀を玉の近くに引きつけるのが守りのコツです。
参考記事「将棋の守り方のコツ:玉の囲いと2マス以内のエリア

5八の銀を、もっと玉の近くに引きつけたいのが本音ですが、
4七にも4九にも金がいるのですぐには無理です。

そこで、先ほどの2九金型の「オリジナル高美濃囲い」を念頭に、
4九の金を▲3九金~▲2九金と横に移動させます。

そうすると、4九にスペースができるので、
▲4九銀左と、懸案の左銀を引きつけることができました。
このように「オリジナル四枚美濃」の囲いができあがります。

オリジナル四枚美濃

 

オリジナル四枚銀冠の完成

ここまで来ると、銀冠まで囲いを発展させたくなります。

上図から▲2六歩~▲2七銀~▲3八銀上の3手をかけて、
とうとう「オリジナル四枚銀冠」が完成しました。

オリジナル四枚銀冠

さて、この囲いをもう一度よく眺めてみます。

銀冠に似た囲いでバランスは非常に良いです。
横、斜め、上部、端のどこから攻められても、けっこう耐久力がありそうです。

囲いの堅さの原則(1~34~5)から考えると、

原則1:金銀4枚で文句なし。
原則2:金銀の位置は玉から2マス以内。
原則3:玉が2筋なので戦場からは遠い。
原則4:金銀の連結は優れている。離れ駒はない。
原則5:玉が2筋なので桂香が守りに働いている。

このように、非常に優秀な囲いだと思います。
もともと優秀な美濃系の囲いをベースにしているので、
「オリジナル四枚銀冠」が同じように優秀なのも納得です。

もし、囲いの堅さランキングに入れるなら3位以内は確実です。

 

オリジナル四枚銀冠を実戦で組めるか?

問題は実戦で「オリジナル四枚銀冠」を組めるかどうかです。

高美濃囲い+5八銀の囲いは実戦でそこそこ現れるので、
そこから発展させることができるかどうかです。

途中、▲3九金の瞬間や、▲2七銀の瞬間は、
金銀の離れ駒ができるので特に危ないです。(下図)

▲3九金の瞬間は危険▲2七銀の瞬間も危険

しかし、通常の高美濃囲いから銀冠に発展させる手順でも
▲2七銀の瞬間は同じように危なくなります。

その意味では、「オリジナル四枚銀冠」への組み換えも同じです。

ただし、「オリジナル四枚銀冠」では、大きなスキが2度できるので、
完成させるまでの難易度が普通の銀冠よりも高くなります。

 

組み上げるまでのリスクを補える最大のメリットは、
5八の銀を自然に玉に近づけて、囲いに組み込めることです。

5八に銀がいる形では、通常の銀冠に組み換えるよりも
「オリジナル四枚銀冠」に組み換えた方がメリットが大きいと思います。

 

実戦でも使えそうな囲いだと思いませんか?

もし、じゅげむの実戦で現れたら報告しようと思います。

 

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将棋の形勢判断:傷のある銀矢倉と穴熊、手番の価値 https://shogijugem.com/keisei-handan-teban-2071 Sat, 18 Jun 2016 15:37:35 +0000 https://shogijugem.com/?p=2071 将棋の形勢判断シリーズの第6回です。 今回は特に、「②玉の堅さ」と「④手番の価値」についての考察が多くなっています。 玉の堅さについては、傷のある銀矢倉と穴熊の比較です。手番の価値については、形勢判断の他の要素(駒の価値...

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将棋の形勢判断シリーズの第6回です。

今回は特に、「②玉の堅さ」「④手番の価値」についての考察が多くなっています。

玉の堅さについては、傷のある銀矢倉と穴熊の比較です。手番の価値については、形勢判断の他の要素(駒の価値、玉の堅さなど)が、手番とどのように関係するかを具体的な読みの中で考えています。

 

形勢判断シリーズ(No.6)
前回:将棋の形勢判断:4つの要素で判断する枠組みの問題点
次回:将棋の形勢判断:飯島流引き角 vs 四間飛車

このページの目次

 

向かい飛車 vs 三間飛車の相振り飛車のテーマ図

形勢判断6:向かい飛車vs三間飛車のテーマ図

テーマ図は相振り飛車の実戦で、将棋倶楽部24で先後ともにレーティング約 1800の対局です。先手向かい飛車 vs 後手三間飛車の戦型で、私が後手を持っています。けっこう昔の対局ですが、当時の私は先手の向かい飛車側を持つことが多く、三間飛車側は不慣れでした。しかし、先後逆では多く指している戦型なので、その時の経験が本局では役に立ちました。

現局面は中盤から終盤への入り口あたりで、ちょうど金銀交換があったところです。中盤から終盤への入り口というタイミングの点でも、駒の交換があったという点でも、形勢判断をしたい局面です。そして、形勢判断の結果次第で今後の方針を考えたいところです。

 

形勢判断の4要素

そこで、①駒の損得、②玉の堅さ、③駒の働き、④手番、のオーソドックスな形勢判断の4要素から優劣を分析します。

 

駒の損得と手番

形勢判断6:向かい飛車vs三間飛車のテーマ図

「①駒の損得」と「④手番」の2項目はわかりやすいです。

「①駒の損得」については、金銀交換のみです。その他は、持ち駒の歩も盤面の歩も先後で同じ枚数です。すなわち、先手の銀1枚(5点)と後手の金1枚(6点)を比較すればいいので、金と銀の差の分だけ、わずかに後手が駒得です。

以下は、駒の点数についての参考記事です。

3人のプロ棋士が教える将棋の駒の価値の比較(続)
前回の続きです。谷川浩司さん、渡辺明さん、青野照市さんの3人のプロ棋士の駒の価値を比較します。将棋の上達に役立つ駒の価値についての理解を深め...

 

「④手番」は後手。

 

玉の堅さ

形勢判断6:向かい飛車vs三間飛車のテーマ図

問題は「②玉の堅さ」と「③駒の働き」の2項目です。

まず、「②玉の堅さ」については、先手が銀矢倉で後手が穴熊です。しかし、先手の銀矢倉は3筋と4筋の歩のカバーがありません。一方で、後手の穴熊は急所の8筋の歩のカバーがないですし、守りの金を5一の角で狙われています。

これらの要素を考慮して、先手玉と後手玉の堅さをどのように評価すればよいでしょうか?

先手の銀矢倉は金銀3枚の形がそのまま残っています。その意味では好形で、まだ堅いと言えます。しかし、3筋と4筋の歩がないので、いつでも△3六歩や△4六歩の「叩きの歩」や「連打の歩」の手筋で形を乱されます。将来的に、△3五桂の筋などもあります。これらの分だけ、傷のない銀矢倉と比べて弱体化しています。しかし、金矢倉と比べて銀矢倉の長所もあって、△3六歩の叩きには▲同銀左と形良く取れます。△3六歩▲同銀左△3五歩の連打の歩には、▲4七銀と元の位置に戻れます。一方で、銀矢倉は3七の地点が弱いです。今は3五に先手の飛車がいるので無理ですが、△2五桂か△4五桂で後手の飛車と桂が一度に3七の地点を狙う形になると脅威です。

ともあれ、先手玉の堅さの評価としては、銀矢倉がやや弱体化した程度です。

後手の穴熊も金銀3枚の形はそのまま残っています。ただし、急所の8筋に歩がないのは、穴熊にとってかなり怖い形です。例えば、すぐに▲8三歩と打たれても対応に困ります。△同銀でも△同金でも▲8四歩と連打されます。金銀が上ずって、金銀1枚分ぐらいの守備力はすぐになくなってしまう形です。先手の7筋と9筋の歩が伸びているので、なおさら対応しづらいです。かといって、▲8三歩に△7一銀と引くのは、▲8二銀から文字通り金銀1枚をはがされて、もう一度▲8三歩と叩かれます。

いくら穴熊とはいえ、急所を突かれればもろいです。後手玉の堅さの評価としては、もともとの金銀3枚の守備力から、少なくとも金銀1枚分は差し引いて考えた方がいいでしょう。さらに、5一の角に狙われていることを考慮に入れると、もっと堅さの評価は下がります。

 

先手の銀矢倉と後手の穴熊のそれぞれの傷を、金銀の枚数をモノサシにして定量的に評価することを試みます。

以下は、囲いの堅さの定量的な評価についての参考記事です。

将棋の形勢判断:玉の囲いの堅さの定量的な評価
将棋の形勢判断シリーズの第2回です。 今回は、形勢判断の4要素の一つである「②玉の堅さ」を深掘りします。 相手に攻められて「基本...

 

穴熊の8筋の傷は金銀1枚分とします。銀矢倉の3筋と4筋の傷は穴熊ほどひどくはないので、金銀0.5枚分と評価しておきます。穴熊が5一の角に狙われている点については、角を切れば守りの金が1枚減るので金銀1枚分ですが、駒損の攻めですし角を切るとは限らないので、とりあえず金銀0.5枚分と評価します。

すると、先手の銀矢倉は(金銀3枚-金銀0.5枚=)金銀2.5枚の評価、後手の穴熊は(金銀3枚-金銀1枚-金銀0.5枚=)金銀1.5枚の評価となります。すなわち、「金銀2.5枚の銀矢倉」と「金銀1.5枚の穴熊」のどちらが堅いか、という比較になります。傷がないもともとの囲いとしては、金銀の枚数が同じでも銀矢倉より穴熊の方が堅いですが、流石に金銀1枚分違うとなると銀矢倉の方に軍配を上げたくなります。

というわけで、「②玉の堅さ」は先手やや有利。

 

駒の働き

形勢判断6:向かい飛車vs三間飛車のテーマ図

最後に、「③駒の働き」はどうでしょうか。

大駒の働きは先手が良さそうです。5一の角は穴熊の急所の6二の金と、同時に3三の桂を狙っています。後手の持ち駒の角よりも働いていそうです。飛車の働きを比較すると、互いの飛車が3三の桂をはさんで向かい合っている形ですが、このように駒をはさんだ形は後手の飛車にとって負担です。3二の飛が横に移動すると▲3三飛成で桂を取られてしまいますし、3三の桂が△2五桂か△4五桂で跳ねると今度は▲3二飛成で飛車を取られてしまいます。

玉と逆側の小駒については、先手は9九の香と8九の桂が遊んでいます。一方、後手は1一の香が遊んでいます。3三の桂をどう評価するかですが、上手く△2五桂や△4五桂が成立して3七の銀を狙う形になれば、先手の8九の桂と比べて圧倒的に働くことになります。しかし、現状では狙われている駒でもあるので、何とも言えないところです。

総合的に見ると、「③駒の働き」は、大駒の働きに勝る先手がやや有利としたいです。

 

総合的な形勢判断

形勢判断6:向かい飛車vs三間飛車のテーマ図

①~④の4項目がすべて出そろいましたが、

①駒の損得:金銀交換で後手がわずかに駒得
②玉の堅さ:先手やや有利
③駒の働き:先手やや有利
手番:後手

ということで、先手が②と③、後手が①と④で評価が割れています。大差となっている項目もないので、どちらが優勢なのか判断するのが難しいケースです。少なくとも、私の棋力ではどちらが優勢かを断定できません。

例えば、手番を握った後手が△8三歩と穴熊の傷を消したらどうでしょうか。この一手で「②玉の堅さ」は逆転しますが、「④手番」は先手に回ります。手番を握った先手が▲3三角成と桂を取れば、「①駒の損得」は逆転します(変化図1)

変化図1

他の手として、△4四角▲3四飛△9九角成と香を取る順も考えられます。一瞬、「①駒の損得」がかなり後手有利に振れますが、「④手番」を握った先手が▲8三歩と穴熊の急所に手を付けます。仮に▲8三歩△同銀▲8四歩△同銀▲同飛となれば、穴熊の銀を1枚はがせて「②玉の堅さ」の差は広がり、さらに「①駒の損得」も逆転しています(変化図2)

変化図2

△8三歩の変化でも△4四角の変化でも、中盤から終盤なので「④手番」の価値が高くなっているのがポイントです。手番を握れば①や②の要素を、一手でひっくり返せるわけです。

本譜は△8三歩でも△4四角でもなく、△2四角▲3四飛△6一金という手順で後手は受けに回りました(変化図3)

変化図3

5一の角を取る手に期待しましたが、以下▲8三歩から激しく攻められる展開となりました。最終的には、受けでしのいで反撃した後手の勝ちとなりましたが、途中で危ない変化もあり、形勢判断の局面でどちらが優勢だったのかは不明です。

 

形勢判断シリーズ(No.6)
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最強の囲いランキング続編:囲いの堅さの原則から「最強」の理由を読み解く https://shogijugem.com/kakoi-saikyo-gensoku-1777 Sun, 22 May 2016 03:32:04 +0000 https://shogijugem.com/?p=1777 「将棋で最強の囲いは何か? 囲いランキング(11種類を徹底比較)」の続編です。 ランキングで「最強」の理由と「最弱」の理由を分析します。 今回の記事では「金銀の連結ポイント」という新たな考え方を導入します。  ...

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将棋で最強の囲いは何か? 囲いランキング(11種類を徹底比較)」の続編です。
ランキングで「最強」の理由と「最弱」の理由を分析します。
今回の記事では「金銀の連結ポイント」という新たな考え方を導入します。

 

このページの目次

最強の囲いランキングの結果
囲いの堅さの原則から「最強」の理由を読み解く
  ・囲いの堅さの原則1「金銀の枚数」
  ・囲いの堅さの原則2「金銀が玉に近い」
  ・囲いの堅さの原則4「駒の連結」
    ・金銀の連結ポイントランキング
    ・金銀1枚あたりの連結ポイントランキング
  ・囲いの堅さの原則3と5「玉の位置」
囲いの堅さランキングの分析表

 

最強の囲いランキングの結果

前回の記事「将棋で最強の囲いは何か? 囲いランキング(11種類を徹底比較)」の結果を再掲します。

囲いの堅さランキングのまとめ

今回の記事では、「最強」の囲いはなぜ「最強」なのか? 逆に、「最弱」の囲いはなぜ「最弱」なのか? の理由を深掘りします。

この表で言うと、右側の3項目「枚数(金銀の枚数)」「連結(駒の連結)」「遠さ(玉の戦場からの遠さ)」などの分析がテーマです。

 

囲いの堅さの原則から「最強」の理由を読み解く

以前の記事で、囲いの堅さの原則1~5について述べました。
これらの原則から、なぜ「最強」あるいは「最弱」なのかを考えます。

以下は、囲いの堅さの原則についての参考記事です。

将棋の初心者でも簡単にわかる囲いの堅さの原則1~3
囲いの堅さの原則がわかっていると、実戦で知らない形が現れても応用が効きやすいです。 非常にシンプルな原則なので、将棋の初心者でも簡単にわか...
囲いの堅さの原則4~5
囲いの堅さの原則のパート2です。 本記事では原則4と5を取り上げますが、これらは原則1~3と密接な関係があります。 囲いの堅さの原則1~...

 

囲いの堅さの原則1「金銀の枚数」

[金銀4枚]
ビッグ4(1位)、松尾流穴熊(2位)、ダイヤモンド美濃(3位)、最強囲い(11位)

[金銀3枚]
穴熊(3位)、銀冠(5位)、本美濃(6位)、金矢倉(6位)、片矢倉(8位)、金無双(9位)、船囲い(10位)

(※かっこ内は最強の囲いランキングの順位)

囲いの堅さを決める上で最重要なのが、何と言っても金銀の物量です。

金銀の枚数が多ければ多いほど囲いは堅くなります。
ビッグ4(1位)、松尾流穴熊(2位)、ダイヤモンド美濃(3位)の上位陣は4枚です。
余程の悪形(例:11位の最強囲い)でなければ、金銀の枚数がモノを言うのが囲いです。

松尾流穴熊穴熊

例1:松尾流穴熊(2位)>穴熊(3位)

ダイヤモンド美濃本美濃

例2:ダイヤモンド美濃(3位)>本美濃(6位)

この辺りの順位の差は、金銀の枚数の効果と言っていいでしょう。

 

囲いの堅さの原則2「金銀が玉に近い」

実は「最強の囲いランキング」にエントリーした11種類の囲いは、
どれも金銀の位置が玉に近く、原則2を満たしています。

松尾流穴熊、ダイヤモンド美濃、本美濃の3種類以外は、
すべて玉から2マス以内のエリアに金銀が収まっています。
上の3種類の囲いについても、金が1枚だけ3マスの距離にはみ出しているだけです。

以下は、玉と金銀の位置関係についての参考記事です。

将棋の守り方のコツ:玉の囲いと2マス以内のエリア
将棋の格言の拡張「玉の守りは金銀三枚+桂香」の続編です。 この記事では、玉の囲いを構成する金銀などの守備駒の位置について考えます。 玉の...

 

囲いの堅さの原則4「駒の連結」

囲いの堅さの原則3より先に、原則4「駒の連結」を取り上げます。
なぜなら、原則3は原則5と一緒に考えた方がわかりやすいからです。

駒の連結で特に重要なのが金銀の連結です。
そこで、金銀の連結を数値化してみましょう。

やり方としては、ある金銀への別の金銀からの利きを1点と数えます。
その点数を合計して、「金銀の連結ポイント」とします。
さらに、金銀の枚数で割ると、「金銀1枚あたりの連結ポイント」が算出されます。

穴熊

例えば、上図の穴熊では、

8八銀には、7八金と7九金の両方が利いているので2点
7八金には、7九金が利いているので1点
7九金には、8八銀と7八金が利いているので2点

トータル5点(2点+1点+2点)が穴熊の「金銀の連結ポイント」です。
金銀の枚数は3枚なので、5点を3枚で割ると、
約1.67ポイント(点/枚)が穴熊の「金銀1枚あたりの連結ポイント」になります。

 

金銀の連結ポイントランキング

8点 → ビッグ4(1位)
7点 → ダイヤモンド美濃(3位)
6点 → 松尾流穴熊(2位)
5点 → 穴熊(3位)、片矢倉(8位)
3点 → 銀冠(5位)、本美濃(6位)、金矢倉(6位)
2点 → 金無双(9位)、船囲い(10位)、最強囲い(11位)

(※かっこ内は最強の囲いランキングの順位)

ビッグ4

ビッグ4が8点で、金銀の連結ポイントもトップです。
ランキング3位以内の上位陣は、すべて5点以上となっています。

金銀の枚数が多いほど、金銀の連結も良くなる傾向です。

最強囲い

しかし、「最強囲い」は金銀が4枚もあるのに、
金銀の連結ポイントはたった2点で最弱クラスです。
金銀の物量を全く生かせていません。
この辺りに「最強囲い」の「最弱」の理由の一つがあります。

ビッグ4松尾流穴熊

ビッグ4(1位)>松尾流穴熊(2位)

片矢倉(天野矢倉)金無双(二枚金)

片矢倉(8位)>金無双(9位)

この辺りの順位の差は、金銀の連結の影響が大きいです。

 

金銀1枚あたりの連結ポイントランキング

2ポイント(8点/4枚)→ ビッグ4(1位)
1.75ポイント(7点/4枚)→ ダイヤモンド美濃(3位)
1.67ポイント(5点/3枚)→ 穴熊(3位)、片矢倉(8位)
1.5ポイント(6点/4枚)→ 松尾流穴熊(2位)
1ポイント(3点/3枚)→ 銀冠(5位)、本美濃(6位)、金矢倉(6位)
0.67ポイント(2点/3枚)→ 金無双(9位)、船囲い(10位)、
0.5ポイント(2点/4枚)→ 最強囲い(11位)

(※かっこ内は最強の囲いランキングの順位)

金銀1枚あたりの連結ポイントは、
金銀をどのくらい効率良く使えているかの目安です。

逆に、金銀1枚あたりの連結ポイントが少ないと、
弱点となる金銀が多いことになります。

金銀1枚あたりの連結ポイントで見ても、ビッグ4はトップです。
金銀の枚数が多いだけでなく、金銀の効率も良いのが「最強」の理由です。

ランキング最下位の「最強囲い」は、金銀の効率も最も悪いことがわかります。

 

囲いの堅さの原則3と5「玉の位置」

原則3「玉の戦場からの遠さ」と、原則5「桂香の働き」は、
別々に考えるよりは、「玉の位置」として一緒に考えてしまった方がわかりやすいです。

横からの攻めに対しては、玉が端に行くほど戦場から遠くなります。(原則3)
同時に、端の桂香が玉の守り駒として働くようになります。(原則5)

 

1筋(9筋)→ ビッグ4(1位)、松尾流穴熊(2位)、居飛車穴熊(3位)
2筋(8筋)→ ダイヤモンド美濃(3位)、銀冠(5位)、本美濃(6位)、金矢倉(6位)
3筋(7筋)→ 片矢倉(8位)、金無双(9位)、船囲い(10位)
5筋 → 最強囲い(11位)

(※かっこ内は最強の囲いランキングの順位)

 

原則3と原則5「玉の位置」の項目は、囲いの堅さにとって非常に重要です。
なぜなら、ランキング順位がまさに玉の位置の順番で綺麗に分かれているからです。

なぜなのか、その理由を考えてみましょう。

 

実は、玉が端に近づくほど、金銀の連結(原則4)も良くなる傾向があります。

玉が1~2筋(9~8筋)の場合は、金銀分裂形にはならないです。

玉が中央に近づくほど、金銀分裂の傾向が強くなります。
玉が3筋(7筋)あたりから、金無双のような金銀が分裂した囲いが現れます。

玉が5筋の「最強囲い」では、4枚の金銀が完全に左右2枚ずつに分かれています。

すなわち、原則3、原則4、原則5は連動しています。

従って、玉を堅くするための最もシンプルかつ確実な方法は、
玉をなるべく端に近い場所で囲うことです。

穴熊銀冠

穴熊(3位)>銀冠(4位)

金矢倉片矢倉(天野矢倉)

金矢倉(6位)>片矢倉(8位)

この辺りの順位は、玉の位置の差が大きな影響を与えています。

 

囲いの堅さランキングの分析表

前回のランキング表の右側の3項目に「金銀の連結ポイント」「金銀1枚あたりの連結ポイント」「玉の位置」の3項目を追加して、次の表にまとめました。

囲いの堅さランキングのまとめ(囲いの堅さの分析)

注意点として、「駒の連結」の評価と、「金銀の連結ポイント」「金銀1枚あたりの連結ポイント」の評価にやや差があります。これは、「駒の連結」では、金銀以外の駒の連結や、金銀の中でも特に重要な要の駒への連結を重視しているためです。

前回の表の「遠さ(玉の戦場からの遠さ)」は、「玉の位置」とほぼ同じ意味です。

将棋で囲いの堅さは非常に重要です。囲いの堅さの原則を覚えると実戦で役立ちます。
最強の囲いランキングの結果と一緒に覚えておきましょう。

 

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将棋で最強の囲いは何か? 囲いの堅さランキング(11種類を徹底比較) https://shogijugem.com/kakoi-saikyo-1744 Sat, 21 May 2016 03:31:08 +0000 https://shogijugem.com/?p=1744   将棋で最強の囲いは何か? 実戦でよく現れる有名な囲いを中心に11種類の囲いを徹底比較します。 囲いの長所、短所、総合評価をランキング形式でまとめました。 縦、横、斜め、端のそれぞれの攻めに対する守備力、 金...

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将棋で最強の囲いは何か?

実戦でよく現れる有名な囲いを中心に11種類の囲いを徹底比較します。
囲いの長所、短所、総合評価をランキング形式でまとめました。

縦、横、斜め、端のそれぞれの攻めに対する守備力、
金銀の枚数、金銀の連結、玉の戦場からの遠さを評価しています。

 

最強の囲いランキング(11位~8位)
最強の囲いランキング(7位~5位)
最強の囲いランキング(4位~1位)
囲いの堅さランキングのまとめ

 

以下の記事は、囲いランキングの続編です。
四間飛車の定跡局面をテーマとして、将棋ソフトの評価値で囲いをランク付けしています。

将棋の囲いをソフトの評価値で点数化してみた結果(11種類の囲いを徹底比較)
将棋の囲いをソフトの評価値で点数化するとどうなるか? 将棋ソフト「技巧」の評価値を使って、囲いの堅さを数値化します。 どのよ...

 

まずは、今回登場する11種類の囲いを紹介します。

美濃系の囲いでは、本美濃銀冠ダイヤモンド美濃

本美濃銀冠ダイヤモンド美濃

穴熊系の囲いでは、普通の金銀3枚の穴熊松尾流穴熊ビッグ4

穴熊松尾流穴熊ビッグ4

矢倉系の囲いでは、金矢倉片矢倉(天野矢倉)

金矢倉片矢倉(天野矢倉)

また、実戦でよく現れるその他の囲いとして、船囲い金無双(二枚金)

船囲い金無双(二枚金)

のエントリーです。

さらに、特別枠として、いわゆる「最強囲い」と呼ばれている囲いを付け加えました。
最強囲い

 

これらの11種類の中で、最強の囲いをランキング形式で決定します!!

 


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最強の囲いランキング(11位~8位)

第11位 最強囲い

最強囲い

最強という名前が付いていながら、実は11種類の中で最弱の囲いです。
縦(上部)からの攻めにはやや耐久力がありますが、
横から攻められても斜めから攻められても弱いです。

金銀4枚の物量を誇りながら、どうしてこうなってしまったのでしょうか?
居玉、金銀分裂形、壁形、桂香が守りに働かない、など色々な理由があります。

囲いの守備力:縦○横×、斜め△、端-
金銀の枚数4枚金銀の連結×、玉の戦場からの遠さ×

 


棋士とAIはどう戦ってきたか~人間vs.人工知能の激闘の歴史(新書y、松本博文)

 

第10位 船囲い

船囲い

対振り飛車の将棋でよく現れる基本的な囲いです。
穴熊や左美濃などへの発展性が売りの囲いで、このままだとあまり堅くないです。
特に、縦の攻め(上部からの攻め)に非常に弱いのが弱点です。

そんなにへなちょこな囲いではないのですが、今回のランキングでは第10位です。
それだけ他の囲いが猛者(もさ)ぞろいということです。

囲いの守備力:縦×、横△、斜め△、端○
金銀の枚数3枚、金銀の連結△、玉の戦場からの遠さ△

 

第9位 金無双(二枚金)

金無双(二枚金)

相振り飛車でよく使われる金無双(二枚金)が第9位です。
上部と端はなかなか強いのですが、斜めと横からの攻めには弱いです。
また金銀が左右に分裂していて、粘りづらいとの評判です。

船囲いよりも横からの攻めに対してやや弱くなっていますが、
上部がかなり強化されているので、トータルの堅さでは金無双がやや上です。

囲いの守備力:縦○横×、斜め△、端○
金銀の枚数3枚、金銀の連結△、玉の戦場からの遠さ△

 

第8位 片矢倉(天野矢倉)

片矢倉(天野矢倉)

藤井流早囲いで脚光を浴びている片矢倉(天野矢倉)が第8位です。
金無双のような左右分裂型が解消されて、金銀の連結が良くなりました。
けっこう堅いのですが、やはり本家の金矢倉には勝てないです。

縦、横、斜め、端のどの方向からの攻めにもそこそこ堅いので、
バランスが良いはずなのですが、逆に突出した強みもない囲いです。
8筋の弱さや一段飛車などの隙も気になります。
守っているエリアが広めで、どこもやや手薄になっています。

囲いの守備力:縦○、横△、斜め△、端○
金銀の枚数3枚、金銀の連結○、玉の戦場からの遠さ△

 

最強の囲いランキング(7位~5位)

最強には届かないですが、将棋の実戦でよく現れる優れた囲いが並びます。
それぞれ、相居飛車のエース、振り飛車のエース、「プロが好む囲い」です。
第6位を同位で2つとしたので、第6位からの登場です。

 

第6位 金矢倉

金矢倉

相居飛車のエース、金矢倉が本美濃と同位の第6位です。
縦の攻め(上部からの攻め)に対して非常に堅い囲いです。

端攻めと横からの攻めに弱いとよく言われますが、
▲8六銀で端を強化、▲6八金引で横を強化するなど、
単純な堅さだけではなく、柔軟性も持ち合わせています。

片矢倉よりも一路深く囲えており、
8筋や一段飛車の弱点も補強されているので第6位にランクインです。

囲いの守備力:縦◎、横△、斜め○、端△
金銀の枚数3枚、金銀の連結△、玉の戦場からの遠さ○

 

第6位 本美濃

本美濃

振り飛車のエース、本美濃囲いが金矢倉と同位の第6位です。

本美濃囲いは、長所と短所がはっきりしている囲いです。
横からの攻めには金矢倉よりもかなり強いですが、
縦や斜めの攻めには金矢倉よりもかなり弱いです。
強みが生きるような戦い方が求められます。

金矢倉の方がトータルバランスが良さそうですが、
本美濃にはもう一つ「広さ」というメリットがあります。
玉が2八から逃げ出して、3九、4八の位置でもそこそこ堅いです。
その点を考慮に入れて、金矢倉と本美濃を同じ第6位としました。

囲いの守備力:縦△、横◎斜め×、端△
金銀の枚数3枚、金銀の連結○、玉の戦場からの遠さ○

 

美濃囲いの崩し方(攻め方)については、以下の記事を参考にしてください。

美濃囲いをマスター! 美濃囲いの手順と25種類の崩し方(攻め方)
美濃囲いの「特徴」「手順」「崩し方(攻め方)」をまとめています。 将棋の初心者の方にとっては、まずは美濃囲いの基本的な組み方の...

 

第5位 銀冠

銀冠

「プロが好む銀冠」とよく枕詞が付く銀冠が第5位です。
居飛車でも振り飛車でも使えて、非常に汎用性が高い囲いです。

縦、横、斜め、端のどこから攻められても耐久力があります。
本美濃と比べると、縦、斜め、端が強くなっており、
金矢倉と比べると、横、端が強くなっています。
バランスを評価して、本美濃や金矢倉よりも上位の第5位にランクインです。
1八、1七、3七へ逃げてもけっこう堅く、玉の広さもあります。

純粋な堅さでは後述の穴熊勢に劣りますが、
これほどバランスに優れている囲いは他にはありません。

囲いの守備力:縦○、横○、斜め○、端○
金銀の枚数3枚、金銀の連結○、玉の戦場からの遠さ○

 

最強の囲いランキング(4位~1位)

第3位を同位で2つとしたので、ナンバー3からの登場です。
誰もが納得する非常に堅い囲いがずらりと並んでいます。

 

第3位 ダイヤモンド美濃

ダイヤモンド美濃

ダイヤモンド美濃が穴熊と同位の第3位にランクインです。
金銀が4枚で枚数が多く、金銀の連結も非常に優れています。

上部や端の弱さが弱点ですが、それを補う玉の広さがあり、
4八まで逃げても金銀4枚が近くにあるので安心感があります。

横からの攻めに対する圧倒的な強さと、金銀4枚の物量を評価して、
銀冠よりも上位の第3位にしました。

囲いの守備力:縦△、横◎、斜め○、端△
金銀の枚数4枚、金銀の連結◎、玉の戦場からの遠さ○

 

第3位 穴熊

穴熊

堅い囲いの代表格と言えば穴熊で、堂々の3位にランクインです。
玉の戦場からの遠さ、王手のかかりにくさが大きな強みです。
金銀3枚の囲いの中では銀冠、本美濃、金矢倉を抑えてのトップです。

端が唯一の弱点と言われますが、銀桂香の3枚で守っています。
ただし、端から逃げられないという玉の狭さは要注意です。

ダイヤモンド美濃と比べて、金銀の枚数と、玉の広さは劣りますが、
玉の戦場からの遠さ、王手のかかりにくさを評価して、
ダイヤモンド美濃と同じ第3位としました。

囲いの守備力:縦○、横◎、斜め○、端△
金銀の枚数3枚、金銀の連結◎、玉の戦場からの遠さ◎

 

第2位 松尾流穴熊

松尾流穴熊

金銀4枚の松尾流穴熊がおしくも第2位です。
それでもトップクラスに堅い囲いであることは間違いないです。
金銀3枚の穴熊でも十分堅いのに、さらに1枚加える贅沢な囲いです。

普通の穴熊と比べて、7九の銀が端の守りの応援に行けるので、
金が応援に行くよりも受けやすいことが多いです。

囲いの守備力:縦○、横◎、斜め◎、端○
金銀の枚数4枚、金銀の連結○、玉の戦場からの遠さ◎

 

第1位 ビッグ4

ビッグ4

プロも認める最強の囲いビッグ4が、文句なしのナンバーワンです。
金銀4枚の穴熊で、駒の密度と連結も最強です。
縦、横、斜め、端と全く隙がない鉄壁の囲いです。

囲いの守備力:縦◎、横◎、斜め◎、端◎
金銀の枚数4枚、金銀の連結◎、玉の戦場からの遠さ◎

 

囲いの堅さランキングのまとめ

囲いの堅さランキングを表でまとめました。

 

囲いの堅さランキングのまとめ

縦、横、斜め、端:それぞれの方向からの攻めに対する強さ
枚数:金銀の枚数
連結:金銀の連結の強さ
遠さ:玉の戦場からの遠さ

 

以下の記事は続編その1です。
囲いの堅さについて、原理的なところから考察しています。

最強の囲いランキング続編:囲いの堅さの原則から「最強」の理由を読み解く
「将棋で最強の囲いは何か? 囲いランキング(11種類を徹底比較)」の続編です。 ランキングで「最強」の理由と「最弱」の理由を分析します。 ...

以下の記事は続編その2です。
四間飛車の定跡局面をテーマとして、将棋ソフトの評価値で囲いをランク付けしています。

将棋の囲いをソフトの評価値で点数化してみた結果(11種類の囲いを徹底比較)
将棋の囲いをソフトの評価値で点数化するとどうなるか? 将棋ソフト「技巧」の評価値を使って、囲いの堅さを数値化します。 どのよ...

 

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将棋の守り方のコツ:玉の囲いと2マス以内のエリア https://shogijugem.com/kakoi-area-1617 Tue, 17 May 2016 07:34:49 +0000 https://shogijugem.com/?p=1617 将棋の格言の拡張「玉の守りは金銀三枚+桂香」の続編です。 この記事では、玉の囲いを構成する金銀などの守備駒の位置について考えます。 玉の囲いと守り方のコツがテーマとなります。   このページの目次 ・「玉の守り...

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将棋の格言の拡張「玉の守りは金銀三枚+桂香」の続編です。
この記事では、玉の囲いを構成する金銀などの守備駒の位置について考えます。
玉の囲いと守り方のコツがテーマとなります。

 

このページの目次

「玉の守りは金銀三枚+桂香」と王の位置

玉を中心に守備駒の位置を考える

  ・矢倉、美濃、穴熊の3つの代表的な囲いの場合

  ・美濃囲いの3九玉型と2八玉型の比較

  ・実戦でよく現れるその他の囲いの場合

  ・玉を中心に相手の攻め駒の位置を考える

玉の囲いと守り方のコツのまとめ

 

「玉の守りは金銀三枚+桂香」と玉の位置

前回の記事「玉の守りは金銀三枚+桂香」の要旨をおさらいすると、

①矢倉、美濃、穴熊では、金銀だけでなく端の桂香も囲いを作る。
②端の桂香を玉の囲いとして使えるかどうかは重要。
③端の桂香を囲いの駒として十分に働かせるためには、玉が7~9筋(1~3筋)にある必要がある。

ということでした。

今回の記事との関係では、③の玉の位置がポイントです。

 

玉を中心に守備駒の位置を考える

上記の参考記事では、「桂香の守り駒としての働き」を主題としていたので、守備駒ではなく玉の位置の方を動かしました。なぜなら香車は端から他の筋に動けないですし、守りの桂馬も動きが制限されているからです。

しかし、本来囲いとは玉を守るものなので、玉の位置を中心に考えるべきです。

7~9筋(1~3筋)に玉がある場合を考えると、端の桂香は玉から2マス以内のエリアに収まります。6筋に玉がある場合は、端の香車は玉から横に3マスの遠さで、この場合に端香が玉の囲いの一部かどうかが不確かになります。

すなわち、玉を中心として、玉から2マス以内が特に重要なエリアと考えられます。

 

矢倉、美濃、穴熊の3つの代表的な囲いの場合

まずは、代表的な囲いを例に考えてみましょう。

矢倉(金矢倉)美濃(本美濃)穴熊(基本形)ではどうでしょうか?

矢倉(金矢倉)と玉から2マス以内のエリア穴熊(基本形)と玉から2マス以内のエリア

上図では、玉から2マス以内のエリアをで色付けしています。

矢倉(金矢倉)と穴熊(基本形)では、金銀が玉から2マス以内のエリアに収まっています。もちろん、これらの金銀は囲いの一部として玉の守りに十分に働いている駒です。

美濃囲い(本美濃)と玉から2マス以内のエリア

上図の美濃囲い(本美濃)の場合、3八の銀4九の銀は玉から2マス以内にありますが、5八の金は玉から3マスの遠さにあります。

香車の場合と異なるのは、5八の金は横に利きがあるので、玉の2マス以内のエリアを「利き」でカバーしているということです。5八の金の場合は、4七と4八の2つの「利き」が玉の2マス以内のエリアに利いています。「守備駒が玉から3マスの距離でも、利きが玉の2マス以内のエリアにあれば守備駒として有効に働く」という考え方もできます。

 

以前の記事で、駒の「利き」と「存在」という2つの視点について考察しています。

将棋の格言「桂先の銀、定跡なり」の分析:3つの関係性
「桂先の銀、定跡なり」という格言があります。「桂先の銀」とは図1のように、相手の桂の頭に銀がある形のことです。盤上の銀が桂頭に移動す...

 

この考え方は、自陣の飛車の守りについても応用できます。

矢倉と自陣の飛車

上図は矢倉と自陣の飛車の関係を示しています。2八の飛車の「存在」は自玉から遠く離れていますが、飛車の「利き」は玉から2マス以内のエリアまで届いています(青色のマス目)。相矢倉における飛車は、攻めの軸であると同時に、遠くから自玉の守りにも働いています。玉飛接近は悪形なので、遠くから利かすのが、飛車を使った自玉の守り方のコツです。

 

ところで、美濃囲い(本美濃)は横からの攻めに対して強い囲いの代表格です(下図)。

美濃囲い(本美濃)と玉から2マス以内のエリア

少し横に出っ張った5八の金は、横からの攻めへの耐久力を増しています。一般化すると、

「玉から3マス以上の遠い場所に配置された駒(美濃囲いの場合の5八の金)でも、その方向からの攻め(美濃囲いの場合は横からの攻め)に対してなら有効に働く」

となります。

 

美濃囲いの2八玉型と3九玉型の比較

「攻めの方向」についてもう少し考えてみましょう。同じ美濃囲いでも、振り飛車vs居飛車の対抗型と、相振り飛車の美濃囲いでは少し違った使われ方をします。

2八玉型の美濃囲い3九玉型の美濃囲い

通常、美濃囲いは2八玉型(左図)が基本形と考えられていて、3九玉型(右図)は2八玉型よりも囲い方が浅いと考えられがちです。これは昔からある振り飛車vs居飛車急戦のイメージが強いためです。

しかし、3九玉型にもメリットがあり、実戦では一概にどちらの方が堅いとは言えません(形勢判断の参考記事)。3九玉を中心に考えると、美濃囲いの金銀3枚のすべてを玉から2マス以内のエリアに収めることができます。この点で、3九玉型の方が金銀の守備力を生かし切れている可能性もあるわけです。

一方で、2八玉型で横以外から攻められた場合に、5八の金が守備駒として有効に働かない場合があります。

美濃囲いへのこびん攻め美濃囲いの受けの手筋

例えば、左図では先手玉に△3六桂▲1八玉△2八金までの詰めろがかかっています。角と桂のコンビネーションを利用した美濃崩しの代表的な形です。このこびん攻めに対する有名な受けの手筋として、左図から▲4六歩△同角▲4七金(右図)があります。5八金の位置だとこびん攻めに対する守備駒としては働かないので、4七の位置へ金を移動させるのがポイントです。この受けの手筋は、「玉から3マスの距離から2マス以内のエリアに守りの金を移動させている」と解釈することもできます。戦いの中で金銀を玉の近くに引きつけるのが玉の守り方のコツです。

玉から3マスの距離にある金銀については、次のように考えられます。

「玉から3マスの距離にある金銀は、その方向からの攻めに対しては守備駒として有効に働く。しかし、別の方向から攻められた場合に、受けに働かない場合もある」

 

実戦でよく現れるその他の囲いの場合

実戦でよく現れる矢倉、美濃、穴熊以外の囲いも見てみましょう。

船囲いと玉から2マス以内のエリア雁木と玉から2マス以内のエリア中原囲い(中原玉)と玉から2マス以内のエリアミレニアムと玉から2マス以内のエリア

玉を守備駒で囲うわけですから、守備駒が玉の近くにあるというのは当たり前といえば当たり前なのですが、船囲い雁木中原囲いミレニアムでは、玉から2マス以内のエリアに金銀が収まっています。

このことから、「玉から2マス以内のエリアにある金銀は、基本的に守備駒として考えていい」という指針が生まれます。実戦で見慣れない玉形になった時に、玉の堅さを計るための指標の一つとして役立ちます。逆に、玉から3マス以上離れた金銀は守備駒としての働きが弱い可能性があるので、玉の近くに引きつけたり、攻め駒として働かせたりすることが有効になります。

 

玉を中心に相手の攻め駒の位置を考える

逆に考えると、玉から2マス以内のエリアに相手の攻め駒がある場合は、玉の危険度が上がります。あるいは、このエリアに相手の攻め駒の「利き」がある場合も、玉の危険度が上がっています。

雁木と飛車先の歩

例えば、上図のように飛車先の歩を突かれた場合に、手抜きができないことは非常に多いです。図面の濃い赤で示した8七のマス目に、後手の8六の歩の利き(と8二の飛車の間接的な利き)が侵入しています。このマス目は、6九の玉から2マス以内のエリアにあります。次に、8七歩成と成られると、7八との王手で守りの金を取られる手が、非常に厳しい狙いとして残ります。

穴熊と端歩

また、上図のように穴熊で端歩を詰められている場合に、端歩を突かれると手抜きができないことも非常に多いです。

これらの場合は、歩の利きが玉から2マス以内のエリアに侵入しています。あと2手で王手がかかる可能性がある、あるいは、あと1手で詰めろや必死がかかる可能性がある、というスピード感の攻めなので、手抜きをすると玉がかなり危険な状態になります。

 

玉の囲いと守り方のコツのまとめ

①玉から2マス以内のエリアは、玉の守りに非常に重要です。
将棋の実戦でよく現れる優れた囲いは、このエリアに金銀を集めています。
③このエリアに相手の攻め駒や利きが侵入してきた時は要注意です。
④戦いながら玉の近くに守備駒を引きつけるのが玉の守り方のコツです。

 

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将棋の形勢判断:玉の囲いの堅さの定量的な評価 https://shogijugem.com/keisei-handan-kakoi-katasa-945 Tue, 26 Apr 2016 17:33:01 +0000 https://shogijugem.com/?p=945 将棋の形勢判断シリーズの第2回です。 今回は、形勢判断の4要素の一つである「②玉の堅さ」を深掘りします。 相手に攻められて「基本形から形が変わってしまった囲い」の堅さをどのように評価したらよいでしょうか? じゅげむの実戦...

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将棋の形勢判断シリーズの第2回です。

今回は、形勢判断の4要素の一つである「②玉の堅さ」を深掘りします。

相手に攻められて「基本形から形が変わってしまった囲い」の堅さをどのように評価したらよいでしょうか?

じゅげむの実戦を題材にして、玉の囲いの堅さを評価するときに、精度を上げる方法を色々と考えてみます。

 

形勢判断シリーズ(No.2)
前回:将棋の形勢判断シリーズのスタート:形勢判断の4要素
次回:将棋の形勢判断:①~④の4要素で優劣の評価が割れた場合

このページの目次

 

向かい飛車 vs 三間飛車の相振り飛車のテーマ図

形勢判断2:向かい飛車vs三間飛車の相振り飛車のテーマ図

先手向かい飛車 vs 後手三間飛車の相振り飛車でじゅげむの昔の実戦です。将棋倶楽部24でレーティング 2000を達成した思い出深い対局で、先手がじゅげむです。

この対局では、先手が端攻めで先攻して、端を破って銀桂交換の駒得を達成しました。そのあと後手が、先手の金無双の急所である玉のこびんを狙って、4筋の継ぎ歩攻めから4六の歩を取り込んで反撃した局面です。

 

形勢判断の4要素

早速、形勢判断をします。①駒の損得、②玉の堅さ、③駒の働き、④手番、をどのように評価したらよいでしょうか?

 

駒の損得

形勢判断2:向かい飛車vs三間飛車の相振り飛車のテーマ図

「①駒の損得」は、銀桂交換で先手の駒得。

他の駒については歩の枚数(盤上の歩+持ち歩)まで全く同じです。

 

玉の堅さ

形勢判断2:向かい飛車vs三間飛車の相振り飛車のテーマ図

「②玉の堅さ」については、もともと先手は金無双、後手は美濃囲いだったのですが、どちらも既に手が付いています。つまり、最初の手付かずの綺麗な囲いではなく、「攻められて形が変わった囲いの堅さ」を適切に評価する必要があります。

先手の囲いは金銀4枚、後手の囲いは金2枚ですので、金銀の枚数だけ見ると先手がかなり有利です(以下は参考記事です)。

将棋の初心者でも簡単にわかる囲いの堅さの原則1~3
囲いの堅さの原則がわかっていると、実戦で知らない形が現れても応用が効きやすいです。 非常にシンプルな原則なので、将棋の初心者でも簡単にわか...

 

しかし、先手の囲いは2八の銀が壁銀の悪形で、玉の逃げ道を塞いでいます。さらに、玉のこびんの急所を攻められていて、後手の4六の歩は大きな攻めの拠点となっています。

先手の2八の壁銀については、「銀がいない方がよかった」という展開も大いにありえます。その場合は、銀1枚分の守備力は無効、ひどければさらにマイナスになります。すると、先手の囲いを金銀3枚の評価、あるいはもっと低く評価することもできます。しかしながら、2八の銀は玉頭の3七に利いているので、完全な邪魔駒というわけではありません。例えば、△3六歩▲同歩△3七歩のような攻めに対しては、受け駒として立派に働いています。2八の壁銀をどの程度のマイナスと評価するかは難しいですが、分からないながらも何とか定量化したいので、一応2八銀の守備力はゼロと評価しておきます。つまり、あってもなくても同じという評価です(参考1図:2八の銀がない仮想局面)。

金無双の堅さ:▲2八銀がない

次に、4六歩の傷をどう評価するかです。この歩の脅威はかなり大きくて、少なくとも金銀1枚分以上はありそうです。例えば、先手の5六銀がない代わりに、後手の4六歩がなくて、先手の4七歩がある形(参考2図)と比較してみます。こちらの方がずっと安全に見えます。

金無双の堅さ:5六銀と4六歩がない

また、後手が△4七香と打ち込む筋を想定して、△4七香▲同銀△同歩成▲同金左△4六歩▲同金△同角(参考3図:1二の香を持ち駒と仮定して、4七に打ち込んだ仮想局面)と進んだとしますと(他の受け方ももちろん考えられますが)、簡単に金銀2枚をはがされます。

そこで、4六歩の傷を消そうとして、テーマ図から▲4七歩△同歩成▲同銀△4六歩▲同銀△同角▲4七歩△2四角(参考4図)としますと、先手の囲いから銀1枚が消えて、さらに後手の手駒に銀が1枚増えてしまいます。

これらのことを総合的に考えて、4六歩と取り込まれた形を金銀1.5~2枚分ぐらいのマイナスと評価したいです。

金無双の堅さ:△4七香と打ち込んだ金無双の堅さ:4筋の傷を消す

一方、後手の囲いはどう評価すればよいでしょうか。

基本は金2枚で、銀のないカニ囲いです。端に手が付いていることと、7三桂が跳ねている形は弱点で、明らかにマイナスポイントです。また、8五の歩が上ずっているので、▲8三歩や▲8四歩の垂れ歩や、桂を持ったら▲8四桂も厳しいです。5二の金が浮き駒になっているのも気になります。

それらを考慮した上で、後手の囲いを「金2枚のカニ囲い」の評価からどのくらい割り引けばいいでしょうか。先手の攻め方によって耐久力が変わりますし、定量化することは難しいですが、金0.5~1枚分ぐらい割り引いてもいいような気がします。

 

以上の考察から、先手は(金銀4枚-銀1枚-金銀1.5~2枚=)金銀1~1.5枚分の守備力、後手は(金2枚-金0.5~1枚=)金1~1.5枚分の守備力であると考えられます。結論としては、「②玉の堅さ」は互角に近く、少なくとも大差ではありません。

 

駒の働き

形勢判断2:向かい飛車vs三間飛車の相振り飛車のテーマ図

「③駒の働き」はどうでしょうか。先手も後手もひどい遊び駒はありません。

先手の飛車は攻めに働きそうですし、角はいいポジションにいてよく働いています。

一方、後手の飛車は先手の玉頭をにらんでいて、5四の銀が動けば飛車の横利きも利いてきそうです。後手の角は金無双の急所にある4六の歩を支えていて、3三の桂にヒモを付けて守備にも働いています。

飛角の働きの比較は難しいところで、よくわからないというのが本音ですが、先手の6六の角がかなりよく働いているので、若干先手持ちのような気もします。

それから、先手だけ左桂をさばいているのは明確なポイントです。飛角の働きはともかくとして、左桂の分があるので、駒の働きは先手にやや軍配が上がるかもしれません。

 

手番

形勢判断2:向かい飛車vs三間飛車の相振り飛車のテーマ図

「④手番」は先手。

既に双方の玉の囲いに手が付いています。中盤の後半あたりに見えますが、互いの玉形が比較的薄いので一気に終盤戦に突入してもおかしくない局面です。手番の価値はそれなりに高いと言えます。

 

総合的な形勢判断

①~④まで出そろったので、最後に総合的に形勢を判断します。

形勢判断2:向かい飛車vs三間飛車の相振り飛車のテーマ図

①駒の損得:銀桂交換で先手がやや駒得。
②玉の堅さ:互角に近い。少なくとも大差ではない。
③駒の働き:やや先手が良さそう。
④手番:先手

①~③までで大きく差が開いている項目はないですが、「①駒の損得」と「③駒の働き」は先手がやや良さそうなので、「④手番」も握っている先手が優勢と判断します。

ただし、「②玉の堅さ」の評価にはかなり苦労したので、この項目が本当に互角に近いかどうかは、何とも言えないところです。しかし、中盤の終わりから終盤の入り口に差し掛かっている局面なので、手番をどちらが握っているかは大きいです。したがって、玉の堅さの評価が多少ブレたとしても、先手が指せるという結論は変わらないと思います。

結論は先手優勢。

 

実戦ではこの後、手番を握った先手が攻める時間の方が長かったです。後手に受けの疑問手があって、最終的には形勢に差が開きましたが、攻められ続ける展開で疑問手が出るのは仕方がありません。玉が薄い形で攻められ続けると、どうしても悪手や疑問手が致命的になりやすいので、後手としては難しい展開だったと思います。

 

今回、基本的な形勢判断の枠組みとしてはオーソドックスな方法を用いて、その中の一項目である「②玉の堅さ」について特に力を入れました。次回は、①~④の項目で優劣の評価が割れた場合について考えます。

 

形勢判断シリーズ(No.2)
前回:将棋の形勢判断シリーズのスタート:形勢判断の4要素
次回:将棋の形勢判断:①~④の4要素で優劣の評価が割れた場合

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囲いの堅さの原則4~5 https://shogijugem.com/kakoi-gensoku-2-697 Sat, 16 Apr 2016 08:21:33 +0000 https://shogijugem.com/?p=697 囲いの堅さの原則のパート2です。 本記事では原則4と5を取り上げますが、これらは原則1~3と密接な関係があります。 囲いの堅さの原則1~3と一緒に覚えておくと役に立つでしょう。   ・原則4:駒の連結が良い方が...

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囲いの堅さの原則のパート2です。
本記事では原則4と5を取り上げますが、これらは原則1~3と密接な関係があります。
囲いの堅さの原則1~3と一緒に覚えておくと役に立つでしょう。

 

原則4:駒の連結が良い方が堅い(特に金銀)

原則5:玉が7~9筋(1~3筋)にいると、桂香が囲いの一部になるので堅い

囲いの堅さの原則1~5のまとめ

 

原則4:駒の連結が良い方が堅い(特に金銀)

金銀の枚数が同じでも、駒の連結が良いと堅い囲いになります。
特に、金銀が連結して離れ駒がないことが重要です。
金銀の連結を良くすることは、「自陣を引き締める」と表現されることが多いです。
自陣を引き締める時に、金銀を玉の方に寄せると原則2の効果も生じます。

 

片美濃片美濃崩れ

例1:片美濃>片美濃崩れ

片美濃は金銀2枚の囲いの中で、最も代表的なものの一つです(左図)。

片美濃の4九の金を一つ上がった片美濃崩れ(右図)では、
4八の金が離れ駒になり囲いが弱体化しています。

この場合は、▲4九金と引いて片美濃に戻すと、金銀の連結が良くなり堅くなります。

 

松尾流穴熊7八金型穴熊

例2:松尾流穴熊7八金型穴熊

7八金型穴熊は、▲6八銀~▲7九銀右の2手で松尾流穴熊に組み替えることができます。

この組み替えによって7八金の離れ駒がなくなり、金銀の連結がずっと良くなります。
7八の金だけでなく、2枚の銀の連結も良くなっていることに注目です。

この場合は同時に「金銀が玉に近づいて堅くなる」という効果も生まれます(原則2)。
「金銀を玉に近づけて密集させ、結果として金銀の連結が良くなった」ということです。

 

原則5:玉が7~9筋(1~3筋)にいると、桂香が囲いの一部になるので堅い

駒の数を増やすという意味では原則1に似ています。
守り駒として金銀を増やすだけではなく、桂香も守りに働かせようという発想です。

参考記事:将棋の格言の拡張「玉の守りは金銀三枚+桂香」

玉を盤面中央の戦場から遠ざけるという意味では原則3と似ています。
ただし、端攻めを狙われている場合などでは、玉がかえって戦場に近くなることもあります。

 

矢倉(金矢倉)中住まい(金開き)

例1:金矢倉中住まい

金矢倉は金銀だけではなく、玉が8筋にいるので桂香も囲いに参加しています。

一方、中住まいは玉が盤面中央の5筋にいるので、端の桂香が玉から遠く離れています。
桂香が囲いに参加しない分、中住まいの玉はなかなか堅くならないです。

ちなみに、矢倉美濃穴熊は最も代表的な囲いで実戦でよく現れますが、
これら3種類の系統の囲いはすべて桂香が囲いの一部になっています。

 

片美濃(入城後)片美濃(入城前)

例2:片美濃への入城後>入場前

片美濃への入城後(▲2八玉型)と入城前(▲4八玉型)を比較します。

金銀の形は全く同じですが、入城後と入城前では玉の堅さが全く違います。

その理由の一つが、端の桂香の働きです。
玉が入城することによって、端の桂香の守備力を最大限に生かすことができます。

 

囲いの堅さの原則1~5のまとめ

原則1:金銀の枚数が多い方が堅い。
原則2:金銀の位置が玉に近い方が堅い。
原則3:玉の位置が戦場から遠い方が堅い。
原則4:駒の連結が良い方が堅い。(特に金銀)
原則5:玉が7~9筋(1~3筋)にいると、桂香が囲いの一部になるので堅い。

 

以上の原則1~5を説明しましたが、これらの原則は相互に関連しています。

例えば、金銀が玉に近くなると(原則2)、金銀の密集度が上がり、結果として金銀の連結が良くなる傾向(原則4)があります。

他には、玉の位置を戦場から遠ざけるために(原則3)、玉を7~9筋方面に逃がすと、桂香が守りに働いてきて堅くなる(原則5)ことがあります。

実戦でよく現れる有名な囲いは、原則1~5の多くを満たしていることが多いです。
また、実戦で知らない形が現れた時に、原則1~5を覚えておくと役立ちます。

 

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