先手中飛車 vs 2手目△1四歩

プロの棋譜(敬称略)

2016年6月1日:順位戦(▲北浜健介vs△先崎学)

▲北浜健介 vs △先崎学戦の進行

2手目△1四歩2手目△6二銀
先手中飛車を明示した初手▲5六歩に対して、2手目△1四歩(左図)は挑発的な手です。先手がそのまま中飛車を目指せば、①△3四歩の角道を保留できる(角は端から使える)、②△8四歩の飛車先も保留できる、というメリットがあります。

しかし、それだけなら2手目△6二銀(右図)と指してもいいはずです。後からでも十分に突ける△1四歩を2手目に指した狙いは何なのでしょうか?

4手目△4二玉まで

▲北浜△先崎戦では4手目△4二玉(上図)のさらなる挑発が継続した狙いでした。流石にここまでされると先手は居飛車にしたくなります。居飛車にしたくなる理由としては、

①△1四歩が甘くなる可能性が高い。じっくり組み合う展開でも、先手の棒銀に対して弱体化している。

②△4二玉で玉が飛車先の戦場に近づいている。

③角交換のない形で△3二金とすると、玉形を発展させるのに制限がある。(△4二銀~△4一玉ができない)

というわけで、先手は中飛車をやめて居飛車にします。

20手目△5二飛まで

20手目の△5二飛(上図)でようやく後手の構想が明らかになります。居角左美濃+中飛車が後手の狙いでした。最近、居角左美濃の急戦矢倉が有力視されていますが、これを矢倉中飛車風に応用したものと思われます。

ただし、こうなると気になるのが2手目に突いた△1四歩です。後手の角は居角で十分に利いているように見えるので、端角を含みにした△1四歩は甘そうな気がします。将来的な▲1五桂などの筋も消していますが、桂の筋を気にするならば、肝心の△7四歩~△7三桂の活用が遅れています。急戦調の将棋で1手の遅れは大きいです。

やはり、先手の得意戦法である中飛車を避けるというのが、この作戦の一番大きなポイントだと思います。厳密には少々損をしたとしても、得意戦法を指させないメリットの方が大きいという判断です。

しかし、本当に本譜のような展開で後手の△1四歩がやや損になっているのでしょうか?

①▲7七銀型や▲7九角の引き角型を強制する。

②△8四歩を保留できる。

③居角左美濃の玉形が作れる。

このような3つの条件が成立する場合に、もしかすると△1四歩のデメリットとバランスが取れている可能性もあります。▲北浜△先崎戦では先手が勝ちましたが、後手の作戦が損であったかどうかは不明です。

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