角換わり腰掛け銀・1筋位取り型の棋譜
2016年8月26日:叡王戦(▲近藤誠也vs△増田康宏)(生放送)
角換わり腰掛け銀・1筋位取り型について
最近の角換わり腰掛け銀では、端歩の駆け引きが激しくなっています。
△9四歩省略型が代表的ですが、それ以外でもさまざまな形が実戦で現れています。
一昔前と異なり、互いに両端を突き合う形が当たり前ではなくなっているようです。
先手が1筋を突き越すと、後手玉を狭くして終盤で利いてくるので、一つの主張になります。
しかし、端に2手余分にかけているので、慎重に駒組みをしないと後手に先攻されます。
たとえば、2016年8月26日の叡王戦(▲近藤誠也vs△増田康宏戦)では、下図の△6五桂からの仕掛けで後手がペースを握り、そのまま快勝しています。
ここまでの先手の駒組みに不備がありました。解説の佐々木勇気さんによると、▲7九玉とする前に▲4七金と上がり、桂頭の弱点をカバーしておく必要があったようです。
上図の△6五桂以下、▲6八銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△7六飛▲6六歩△3五歩が後手の攻め筋で、先手が受け切るのは容易ではないみたいです。
角換わり腰掛け銀の流行形と桂馬
佐々木勇気さんの解説によると、最近の角換わり腰掛け銀では、いろいろな局面で桂馬を早めに跳ねる筋が見直されているとのことです。
先手が▲4五桂からの速攻を仕掛ける将棋もあり、近藤誠也さんはよく指しているそうです。上記の▲近藤誠也vs△増田康宏戦の生放送でも、変化手順の一例が解説されています。
また、NHKテキスト将棋講座2016年8月号の村山慈明さんの講座でも、最新の角換わり腰掛け銀では「カギは桂馬」とのことです。
たとえば、△9四歩省略型が流行したのは、端の9筋を絡めずに、従来よりも早めに△6五桂と跳ねて攻める筋が有力視されるようになったからです。(下図)
さらに、最近注目を浴びている▲4八金型でも、下図のように早めに右桂をさばいてしまう筋が下地となっています。下図の▲4五桂以下、△4四銀▲4六歩で桂馬を歩で支えることができます。桂馬を跳ねた後にできる△3七角のスキを金がカバーしているからです。