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]]>棋聖戦第3局▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖戦は、序盤戦略の面白さと将棋の怖さが詰まった一局となりました。
序盤は羽生善治棋聖が意外な戦法を採用します。昔プロでも大流行して、アマでは今でも大人気の戦法です。
中盤で未知の局面に突入してから、勝負は一つの山場を迎えます。形勢不明の中盤戦で、お互いの読みの力が試されます。
終盤は、将棋というゲームの怖さがよく分かる展開になってしまいました。非常に鮮やかな手順が盤上に現れます。
本記事では、将棋ソフト「技巧」を用いて、棋聖戦第3局の棋譜解析をしながら、ポイントとなった局面を振り返っています。
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序盤早々に驚いたのが、羽生善治棋聖の戦法です。2手目△3四歩で横歩取りかと思われたのですが、なんと4手目△4四歩と角道を止めてからの6手目△4二飛(図1)で四間飛車となりました。
最近では、羽生善治棋聖の四間飛車はなかなか珍しいのですが、藤井システムが流行っていた時期は居飛車側も振り飛車側もかなり指していたと思います。
予想されにくく、かつ経験が豊富な戦法を選んだと言えます。あるいは、2連勝して余裕ができたために、振り飛車を選んだということでしょうか?
斎藤慎太郎七段は、19手目▲3六歩(図2)で急戦を見せて、居玉のままの藤井システムを牽制します。
この辺りの指し方は、藤井システムが流行していた時期にかなり細かく研究されていたと思います。四間飛車側の待ち方としても、△6四歩、△9五歩、△4三銀など組み合わせが色々とあり、どのような布陣にするかは難しいところです。
将棋ソフトでは振り飛車の評価値が低めに出るという話があるのですが、本局の序盤でも技巧の評価値は200ぐらいとなっており、居飛車がやや指しやすい数値を示しています。
図3が序盤の大きな分岐点です。△8五桂の仕掛けも考えられる局面ですが、羽生棋聖は△7一玉で囲いを優先して、仕掛けを見送りました。
△7一玉で16分も時間を使っているので、有力だったのかもしれないです。
藤井システムは振り飛車側からの急戦が大きな特徴ですが、本局では藤井システムらしい展開ではなく普通の四間飛車になりました。
斎藤慎太郎七段の駒組みが慎重で、後手に仕掛けのチャンスを与えなかったのか、それとも羽生善治棋聖が本局の進行でも十分とみたのでしょうか?
将棋ソフト「技巧」の読み筋でも、△8五桂と仕掛ける手は示されていないようです。
評価値はほぼ互角ですが、先手は居飛車穴熊、後手は美濃囲いなので、玉の堅さには大きな差があります。
41手目▲3五歩(図4)の仕掛けで中盤戦に突入します。
この仕掛けには前例があり、2006年12月の棋聖戦▲羽生善治三冠 vs △藤井猛九段戦と全く同じ手順です。
先手は3筋と2筋の歩を突き捨てて▲6五歩から角交換を狙います。△6五同桂が銀に当たるので駒損になりますが、▲2四飛まで進むと飛車先を突破することができます。
仕掛けの手順は、将棋ソフト「技巧」の推奨手順とも完全に一致します。この辺りは、選択肢がなく一本道ということなのでしょう。
54手目△4八角(図5)の局面までは▲羽生△藤井猛戦と同じでしたが、55手目▲6七金寄で前例を離れて未知の局面に突入します。
羽生棋聖は昔自分が居飛車を持って指した将棋なので、その時に色々な変化手順を研究したのではないでしょうか。本局で羽生棋聖が逆の四間飛車側を持っているということは、少なくとも互角以上には戦えるとみているのでしょう。
羽生棋聖の過去のタイトル戦をいろいろと並べていると、途中まで前例と全く同じで、そのまま優勢になって、自然に勝ち切っている将棋がちょこちょこあります。いわば、経験や知識で勝っている将棋です。
斎藤七段は▲6七金寄のところで46分の長考をしています。このタイミングで長考をするということは、前例の▲羽生△藤井猛戦は当然把握しているということでしょう。前例と同じままでずるずると行くよりは、早い段階で変化した方が得策だと判断したのでしょうか?
ただし、ここで長考したために斎藤七段の残り時間は2時間を切ってしまい、羽生棋聖とは1時間近くの差があります。
ここまでの展開を結果だけで見てみると、羽生棋聖が経験のある形に誘導したために、持ち時間ではかなり有利になっています。
序盤の戦法選択からの駆け引きで、羽生棋聖が持ち時間のアドバンテージを得たと考えると、なかなか興味深い展開です。
実は、将棋ソフト「技巧」の推奨手は、55手目▲6七金寄ではなく▲6八金でした。ただし、▲6八金は守りの金が玉から離れるので、人間的にはかなり指しにくい一手です。
また、55手目▲6七金寄からは、実戦の指し手と技巧の推奨手が食い違うケースがかなり多くなります。有力手が多くて変化が幅広い中盤の難所に入ったということです。
この辺りは本局の勝負所の一つだったのだと思います。羽生棋聖も時間をたっぷりと使ったために、持ち時間の残りもほとんど同じになっています。
形勢はどうかというと、技巧の評価値ではほぼ互角で推移し、両対局者ともミスなく難解な中盤戦を乗り切ったことが分かります。
中盤までに形勢が傾くことがなく、ほぼ互角で終盤戦に突入したので、あとは終盤の読みの勝負ということになります。
羽生棋聖の66手目△5五桂(図6)は自然な攻めですが、技巧の推奨手の△2八龍よりも勝っているということで「好手」とソフトに認定されています。ソフトが自分で間違えを認めているみたいで、不思議な気分になります。
もう終盤戦なので、厳密に読めば勝ち負けの結論が出るはずです。
しかし、将棋ソフトの膨大な読みを持ってしても、終盤戦は難しいということが分かってきており、最近では終盤まで持ち時間を残す傾向になっているようです。
本局でも△5五桂の辺りで、両対局者とも1時間ぐらい持ち時間を残しています。
羽生棋聖の70手目△6八銀、斎藤七段の71手目▲3四馬(図7)は、もしかすると疑問手かもしれません。技巧の評価値が200以上振れています。
しかし、ソフトも間違えることがありますし、評価値の変化もものすごい大きいわけではないので、本当に疑問手かどうかはよく分からないです。
ずっと互角に近い形勢で、バランスの取れた白熱した終盤戦となっています。
ここまでほぼ互角の熱戦が続いていましたが、羽生棋聖の78手目△6七桂(図8)が一手ばったりの敗着となってしまいました。将棋の怖さがよく分かる一手です。
次の79手目▲7三金のタダ捨てが鋭い一手で、後手玉は一気に寄ってしまいます。
敗着の△6七桂からは完全に一本道です。技巧の読み筋と実戦の進行は完全に一致し、評価値はずっと1500ぐらいで斎藤七段の勝勢です。
87手目▲5二金(図9)のところでは、もう後手玉に受けがなくなっています。
羽生棋聖は苦し紛れに王手龍取り(図10)をかけて、先手の攻め駒を抜きますが、駒を渡しすぎてしまったので大勢は決しています。
98手目△4一角(図11)では、後手玉に即詰みがあります。
実は一手前の97手目▲6七桂の合駒が上手い一手で、この桂馬が詰みに働いて華麗な収束となります。
投了図の▲7五同桂(図12)までで、先手の斎藤慎太郎七段の勝ちとなりました。
投了図から、△7四玉や△9四玉や△7二玉なら▲8三角以下、△9二玉や△8二玉なら▲8三金以下、△9三玉でも▲9四金以下、いずれも即詰みとなります。
これで、斎藤慎太郎七段にとっては嬉しいタイトル戦初勝利となりました。
棋聖戦第3局の本局は、羽生善治棋聖が四間飛車の藤井システムを採用するという驚きの序盤からスタートしました。
中盤の途中まで前例のある将棋でしたが、未知の局面に突入してからは、形勢不明の難解な中盤戦が繰り広げられます。
ほぼ互角で終盤に突入し、終盤勝負という展開でしたが、羽生善治棋聖に痛恨のミスが出てしまい、一手ばったりで斎藤慎太郎七段の勝勢となりました。
最後の斎藤慎太郎七段の決め方は、非常に鮮やかだったと思います。
これで、棋聖戦五番勝負は斎藤慎太郎七段の1勝、羽生善治棋聖の2勝となりました。
次の第4局は、斎藤慎太郎七段にとっては再びの角番で、羽生善治棋聖にとっては棋聖戦10連覇がかかった一局となります。
第4局の日程は7月11日(火)です。次も熱戦を期待したいと思います。
<棋聖戦五番勝負第3局 ▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖>(flash盤の棋譜)
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]]>棋聖戦第2局▲羽生善治棋聖 vs △斉藤慎太郎七段戦は、中盤から終盤にかけて見所が多い熱戦となりました。
序盤は流行の最新形となり、途中から未知の局面に突入します。
中盤は本局の一番の見所です。互いに急所の角を放ち、どちらの角がよく働くかが見物です。攻めるか守るか難しい局面が現れ、読みの力と大局観が試されることになります。そして、ごちゃごちゃした局面での細かな対応の違いで形勢が動いてしまいます。
終盤は、逆転を許さない非常に正確な指し手が目立ちました。
本記事では、将棋ソフト「技巧」を用いて、棋聖戦第2局の棋譜解析をしながら、ポイントとなった局面を振り返っています。
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戦型は角換わりの最新形です。
先手の羽生善治棋聖は、流行している▲4八金・▲2九飛型を選択し、後手の斎藤慎太郎七段も△6二金・△8一飛型の同型で追随しています。
それ以外の駒組みのポイントとしては、最近では△4二銀ではなく△2二銀と上がる形が主流になっていることです。▲5五角の筋を警戒するとともに、△3一玉→△2二玉まで囲うのではなく、△4二玉型で戦う展開も視野に入れています。
(初手から31手目▲5六銀までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)
将棋ソフト「技巧」の棋譜解析によると、形勢は全くの互角です。
上図は4二の玉を△5二玉と動かした局面です。後手の斎藤慎太郎七段が、攻め合いの方針ではなく、手待ちをしながら右玉の構想であることがはっきりします。
△5二玉の一手前までは、プロの実戦例が9局あります。この△5二玉で実戦例が2局に減り、次の▲8八玉からは未知の局面になります。
後手は右玉に組み換えながら手待ちをして、先手が打開を狙う展開となります。
このように、腰掛け銀から右玉に組み換える将棋は最近では増えてきており、流行最先端の戦型となっています。
(32手目△3三銀から50手目△5一飛までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)
将棋ソフト「技巧」の評価値は、-200から200の範囲内でほぼ互角です。
上図の▲4七角の自陣角が、羽生善治棋聖の決断の一手です。
一手前に▲9八香と上がってから▲4七角と打つのが独特の間合いの測り方です。
ところが、将棋ソフト「技巧」は、一手前の▲9八香のところですぐに▲4七角と打つ手を推奨しています。また、▲9八香と上がった後は、▲4七角ではなく素直に▲9九玉と潜る手を推奨しています。
すなわち、将棋ソフトの方が自然な手順を示しており、羽生善治棋聖の方が凝った手を指しているということになります。この辺りの違いは面白いです。
(51手目▲9八香から62手目△7四同銀までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)
将棋ソフトと羽生善治棋聖の指し手は違いますが、形勢としてはほぼ互角です。将棋ソフトの推奨手を外したからといって、すぐに不利になるというわけではありません。
▲4七角の自陣角から将棋は中盤戦に突入します。
上図の辺りで中盤戦の難所を迎えます。斎藤慎太郎七段は感想戦で「ここからわからなかった」と話しています。
△4四同銀は▲5二歩が気になるので、実戦は△5四銀でしたが、将棋ソフト「技巧」の推奨手は△4七歩の叩きです。
この辺りは感想戦でも熱心に検討されましたが、なかなか結論が出ない難解な中盤戦となっています。
(63手目▲4四歩から71手目▲4五角までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)
将棋ソフト「技巧」で棋譜解析すると、63手目▲4四歩、64手目△5四銀、66手目△6三銀、67手目▲7五歩は、実戦の進行と技巧の推奨手が異なっています。
しかし、形勢としてはほぼ互角で、局面のバランスを保っています。
上図の辺りが中盤戦の山場の一つだったと思います。
後手の斎藤慎太郎七段が急所の角を打った局面ですが、どうやらこの辺りから先手の羽生善治棋聖が徐々に優勢になっているようです。
△7四角は△9五歩の端攻めを狙っており、厳しい一手に見えるのですが、この角打ちが疑問手だったのでしょうか?
(72手目△7四角から86手目△9六歩までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)
将棋ソフト「技巧」は、72手目△7四角~74手目△9五歩の攻めよりも、△4二歩の受けを推奨しています。
74手目△9五歩の後は、しばらく先手も後手も技巧の推奨手順の通りに進むのですが、79手目▲7五金のところでは既に評価値が約500で、先手がはっきり優勢となっています。
後手の斎藤慎太郎七段が悪くなったのは、図5で△7四角~△9五歩と攻めた方針が問題だった可能性はあります。もしそうでなければ、図4あたりが問題だったことになるでしょう。
上図は中盤戦から終盤戦に突入するあたりの局面です。
本局で明暗を分けたのはこの辺りです。非常に難しい局面で、両者にチャンスがあったと思いますが、最終的には先手の羽生善治棋聖が力を見せています。
(87手目▲2一とから95手目▲8七歩までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)
将棋ソフト「技巧」の棋譜解析の結果によると、最初に大きな疑問手を指したのが後手の斎藤慎太郎七段で、図6での△8六歩がその疑問手です。
技巧の推奨手は△9五銀ですが、△8六歩の一手で評価値が82から477まで大きく先手優勢に振れています。
しかし、直後の羽生善治棋聖の▲8六同歩も疑問手で、今度は評価値が477から177まで大きく後手の方に傾いています。ここで▲8六同銀なら先手優勢だったようです。
しかし、その後の斎藤慎太郎七段の92手目△8六銀が、また疑問手だったらしく、ここでは△8七歩の叩きを入れた方が良かったようです。
両者とも最善を逃していた可能性が高いですが、図6での△8六歩、92手目△8六銀の2度の疑問手を指してしまった斎藤慎太郎七段が、最終的には劣勢になってしまいました。
劣勢で終盤を迎えてしまった斎藤慎太郎七段としては、どこかで逆転を狙った勝負手を放つ必要があります。
上図の96手目△9七歩成は勝負手の一つで、攻めに活路を見出そうとしています。技巧の評価値は悪くなりますが、攻めないと逆転のチャンスは生まれないということでしょう。
(96手目△9七歩成から106手目△5四香までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)
勝負手は正確に対応されると悪くなるという性質の手なので、評価値が1000以上になってしまったのも仕方のないことです。
ここからは、羽生善治棋聖の正確な差し手が目立ちます。将棋ソフト「技巧」との一致率が高いですし、一致しない手でも評価値が下がっているわけではないので、有力な手が複数あるということだと思います。
既に先手の羽生善治棋聖がどのように決めるかという局面になっています。
上図では▲7三同桂成と踏み込んでも勝ちですが、冷静に▲5四角と香車を取って勝勢を確実なものにしています。
(107手目▲6三桂成から117手目▲6八玉までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)
ソフトの評価値を解析していると、終盤戦では羽生善治棋聖と技巧の指し手の一致率がかなり高いことが分かります。
そして、指し手が一致していないのに、急激に評価値が上がることもあります。
たとえば、109手目▲7三香成の後で、評価値が1767から2488に急激に上がっています。おそらく、技巧の推奨手よりも羽生善治棋聖の指し手の方が勝っているからです。
逆に、ソフトの踏み込みが素晴らしいこともあり、図8での▲7三同桂成のような手は、リスクを恐れないソフトらしい決め方と言えます。
上図では後手玉に即詰みがあります。
▲7三桂成から詰まして、先手の羽生善治棋聖の勝ちとなりました。
投了図以下は、△8三同玉▲7二角成△9三玉▲8四金△9二玉▲8三金△9一玉▲8二金までの即詰みです。
(118手目△9七飛成から投了図までの棋譜と、将棋ソフト「技巧」による棋譜解析の結果)
棋聖戦第2局となる本局は、中盤戦が一番の見所でした。
非常に難解な局面が続き、読みの正確さと大局観が試される展開で、地力に勝る羽生善治棋聖がねじ伏せたという印象です。
終盤では羽生善治棋聖の正確な指し手が目立ち、斎藤慎太郎七段の勝負手にもチャンスを与えることなく、見事に勝ち切っています。
これで、棋聖戦五番勝負は羽生善治棋聖の2連勝となりました。
次の第3局は羽生善治棋聖にとっては、棋聖戦10連覇がかかった将棋になります。斎藤慎太郎七段にとっては角番で、まずは1局返したいところです。
第3局の日程は、7月1日(土)です。両対局者による熱戦を期待したいと思います。
<棋聖戦五番勝負第1局 ▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖>(flash盤の棋譜)
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]]>棋聖戦第1局▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖戦は、素晴らしい内容だったと思います。
斉藤慎太郎七段はタイトル戦初登場で、羽生善治棋聖にとっては棋聖戦10連覇が懸かったシリーズです。
序盤は互いの駆け引きの結果として、昭和の時代のような古風な将棋になりました。
中盤は攻め合いで非常に激しい展開となり、変化が広い難解な局面が続きます。
本局の一番の見所は終盤戦です。羽生善治棋聖らしい勝負術が盤上に現れ、両者にチャンスのある際どい終盤戦となります。最後までどちらが勝つか全く分からない熱戦で、名局賞の候補にもなりそうな素晴らしい将棋だったと思います。
本記事では、将棋ソフト「技巧」で棋聖戦第1局の棋譜解析をしながら、ポイントの局面を振り返っています。
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戦型は相矢倉になりました。先手の斎藤慎太郎七段が相矢倉に誘導して、後手の羽生善治棋聖が受けて立った形です。
もともと斎藤慎太郎七段は矢倉を好んで指しています。タイトル戦初登場の初戦で矢倉を選んだのは、得意戦法ということもあるでしょうし、格式が高く伝統ある矢倉戦を選んだという意味合いもあるかもしれません。斎藤慎太郎七段には正統派という印象を強く受けます。
一方で、後手の羽生善治棋聖は急戦を意識した駒組みをしています。△6四歩から△7三桂(図1)のタイミングが早く、いつでも△6五歩からの仕掛けを狙っています。
将棋ソフト「技巧」の評価値はほぼ互角です。先手が100点ぐらいを中心に推移していますが、評価値で100点というのは互角の範囲内です。
後手の羽生善治棋聖が△4四歩と角道を止めたことで急戦はなくなりました。持久戦調のじっくりとした相矢倉に進みます。
図2は△2二玉で後手の囲いが完成した局面で、完全に先後同型になっています。▲4七銀▲3七桂型(△6三銀△7三桂型)の同型は、昭和の時代によく指された古風な相矢倉です。
図2から▲4五歩で先手の斎藤慎太郎七段が仕掛けて、中盤戦の戦いが始まります。
図2の形勢判断は、将棋ソフト「技巧」によるとほぼ互角です。先後同型なので、手番を握っている先手の方にやや振れているぐらいです。
▲4五歩の仕掛け以降は、さまざまな変化手順があります。変化が広い難解な中盤戦で、斎藤慎太郎七段の51手目▲2四歩は32分の長考、次の▲3五歩にも21分使っています。
この時点で、斎藤七段は持ち時間の半分以上の2時間21分を使っていて(棋聖戦は持ち時間4時間制)、残り時間が羽生棋聖よりも40分も少なくなっています。この持ち時間の差が、終盤戦で響いてくることになります。
羽生棋聖が期待したのが図3の△6七歩で、▲5七角でも▲6七同金でも大きな利かしになります。
将棋ソフト「技巧」によると、△6七歩の辺りから評価値に動きがあります。
どうやら技巧は△6七歩に対する▲5七角をあまり評価していないらしく、評価値61→-179で200点以上も後手が良くなっています。技巧の推奨手は▲6七同金です。
羽生棋聖が期待した△6七歩に対して、斎藤七段が対応を誤り、形勢がやや後手に傾いた可能性があります。すなわち、「対戦相手が対応を誤りやすい難しい局面を渡す一手」に羽生棋聖が期待していたわけです。
その目論見通りに斎藤七段が対応を間違えてしまい、後手ペースになったようです。この辺りに羽生棋聖の勝負術の一端がうかがえます。
△6七歩の好手で一時は後手がペースを握っていましたが、その後で羽生善治棋聖が疑問手を指してしまいます。
図4の△8五歩が一度目の疑問手で、将棋ソフト「技巧」の評価値によると、後手優勢(-357)からほぼ互角(21)まで差が詰まってしまっています。
さらに、図5の△6五桂が二度目の疑問手だったようです。技巧の推奨手は△4七金で、それならほぼ互角とのことです。
羽生棋聖の二度の疑問手によって、斎藤七段が優勢で終盤戦に突入します。
終盤戦は非常に難解で、将棋ソフトも読み切れずに手の平を返しているのが驚きです。
たとえば、83手目の▲4四角から90手目の△同玉まで、実戦の進行と技巧の推奨手順はほぼ同じです(3三の地点で歩が先に成るか、桂馬が先に成るかの違いはある)。この間、技巧の推奨手順とほぼ同じなのに、評価値は-439から413に変わっています。後手優勢から先手優勢へと手の平を返しており、ソフトが完全に読み切れていない証拠と言えます。
ニコニコ生放送で表示される解析ソフトはもっと精度が高いのですが、この辺りは互角に近い評価値が続き、どちらが勝ってもおかしくない熱戦だったことが分かります。
図6の▲7七同桂を技巧は疑問手と判定していますが、本当に疑問手だったかどうかは難しいところです。それだけ難しい終盤戦ということです。
ただし、▲7七同桂以下、△7五角▲同歩△8六歩▲同歩△6七歩(図7)が角切りから一転して上手い手渡しです。「終盤の忙しい場面で難しい局面を相手に渡す」という羽生棋聖が土壇場でたびたび見せる勝負術です。ニコ生解説の田村康介七段によると、図7では正確に指せば先手の勝ちがありそうだが、時間がないと勝ち切るのはかなり難しいようです。
斎藤七段は持ち時間を使い切り、△6七歩の局面から1分将棋です。一方で、羽生棋聖は30分以上残しています。
図7の△6七歩以下、斎藤七段は▲4四角から猛攻しますが、形勢に決定的な差がつかない難解な終盤戦がまだ続いています。
終盤戦は最後までどちらが勝つか分からない展開でしたが、最終盤で斎藤慎太郎七段にチャンスがあったようです。
図8がポイントの局面で、ここで▲4四歩なら先手が優勢だったようです。しかし、▲4四歩の代わりに指した▲5三金が悪手で、一気に逆転してしまいます。
互いに持ち駒が豊富で王手がたくさんかかりますし、攻防手や詰めろ逃れの詰めろが現れやすい局面なので、読み切るのは非常に難しいです。
斎藤七段は持ち時間も残っていなかったので、ミスをするのは仕方がなかったと思います。
図9が投了図です。盤面の駒が少なく、熱戦だったことがよく分かる投了図だと思います。
角1枚、金3枚、銀3枚、桂馬3枚、歩3枚の後手の持ち駒を、四暗刻単騎の角待ちと言っていた田村康介七段のセンスには脱帽です。
棋聖戦第1局の本局は、特に終盤戦が素晴らしい対局だったと思います。
羽生善治棋聖の終盤での手渡しから、斎藤慎太郎七段が決め切れるかどうかというギリギリの勝負になり、最後まで緊迫した将棋になりました。
次の五番勝負第2局の日程は6月17日(土)です。両対局者の将棋はよく噛み合っている印象で、また熱戦になることが期待できそうです。
<棋聖戦五番勝負第1局 ▲斎藤慎太郎七段 vs △羽生善治棋聖>(flash盤の棋譜)
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